【完結】悪役令嬢なのに、冷酷王太子に溺愛されています

22時完結

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朝の光が差し込む中、私は王宮の広間に足を踏み入れた。昨夜、レオナードとの間で交わされた言葉がまだ心に残っている。彼の言葉は、冷徹でありながら、どこか温かさを含んでいて、私の中で不安と期待を同時に掻き立てていた。

「お前を守る」と言った彼の言葉が、私の胸の奥に深く刻まれている。それは単なる約束ではなく、彼自身の決意と覚悟を含んだものだと感じた。しかし、同時にその約束が私に課せられた重い責任を物語っていることも理解していた。

王宮内では、貴族たちが集まり、日々の業務が進行していた。私はその中で、何も知らないふりをしていた。レオナードが私を守り抜く決意をしている以上、私はその期待に応えなければならない。そして、ただの「悪役令嬢」ではなく、彼と共に歩む者として、王宮内での立場をしっかりと築き上げなければならないと感じていた。

会議の合間に、レオナードが私のそばに近づいてきた。彼の視線は鋭く、冷徹に見えるが、その瞳の奥には何か深いものが隠されているようだった。私の存在が彼にとってどれほど大きな意味を持っているのか、私は少しずつ理解し始めていた。

「お前がいることで、すべてが変わる」と彼は静かに言った。

その言葉が、私にとってはどれほど重いものなのか、私は理解していた。レオナードの世界において、私は単なる王太子妃ではなく、彼の未来を共に作り上げる存在だということを。

私は深く息を吸い、覚悟を決めると、静かに答えた。「私も、あなたと共に未来を歩みます」

レオナードは何も言わず、ただ私を見つめるだけだった。彼の瞳には、私を守り抜くための意志が強く宿っていることが伝わってきた。そして、私はその意志に応えるべく、これから何があろうとも立ち向かう覚悟を決めた。

その後、私たちは再び王宮の業務に戻り、日々の仕事に追われる中で、私たちの関係は少しずつ深まっていった。レオナードの指導のもと、私は王宮内での立ち回りを学び、貴族たちとの交流を深めていった。最初は緊張していたが、次第にその中で自分自身を見つけ出すことができるようになった。

ある日、王宮の庭園でひとときを過ごしていると、レオナードが私に近づいてきた。今日は彼があまりにも真剣な表情をしていたため、私は自然に身構えた。

「お前に伝えなければならないことがある」と、彼は低い声で言った。その言葉に、私は身を引き締めるようにして彼を見つめた。

レオナードは、少し沈黙した後に口を開いた。「王宮内には、多くの陰謀が渦巻いている。お前もすでに感じているだろうが、これから先、お前もその一部に巻き込まれることになるだろう」

その言葉を聞いた瞬間、私は背筋が寒くなるのを感じた。王宮内で起こる陰謀――それは、私が以前予感していたことでもあった。しかし、いざ彼の口からそれが語られると、現実の重みがひしひしと伝わってきた。

「私はお前を守る」とレオナードは断言した。その言葉には、彼の強い覚悟と愛情が込められていることを感じた。

私はしばらく黙って彼を見つめた後、静かに答えた。「私も、あなたのために戦います」

その瞬間、レオナードの瞳に一瞬だけ温かな光が宿った。冷徹であるはずの彼が、ほんの少しだけ心を開いたように感じられた。

レオナードの言葉が私の胸に深く刻まれた。「私も、あなたのために戦います」と返した私の言葉に、彼は驚いた表情を一瞬だけ見せたが、それをすぐに隠した。

「その覚悟、忘れるな」と彼は言った。冷徹な王太子の顔が、少しだけ柔らかく見える瞬間だった。その後、彼は無言で私を見つめてから、ゆっくりと歩き始めた。

私はその後を追いながらも、自分の中で新たに決意を固めていた。これから王宮内で待ち受ける試練に対して、私はどう向き合っていくべきか。それには、レオナードの信頼を裏切らないようにしなければならない。彼の言葉通り、王宮には隠された陰謀があり、私もその渦中に巻き込まれることになるだろう。

だが、今までの私では通用しない。悪役令嬢として生きてきた私にとって、王宮内での立ち回りは初めての経験だ。レオナードの助けを借りながらも、私は自分自身の力でその場を切り抜けなければならない。

その日、王宮内での仕事を終えた私は、静かな部屋に戻った。外の景色は美しく、夕日が差し込んでいる。しかし、心の中は沈んでいた。レオナードの言葉が頭の中でぐるぐると回り続け、今後の展開を想像するたびに胸が苦しくなる。

「どうしてこんなに心が乱れるのだろう」と、私はひとりつぶやいた。答えはすぐには見つからなかったが、ふと気づけば、私の目の前にレオナードの姿が現れていた。

「お前、大丈夫か?」と、彼はいつもよりも優しい声で言った。

驚きながらも、私は頷いた。「はい、大丈夫です」

「無理をしなくていい」と彼は静かに言い、私に近づいた。その距離感に、心が高鳴るのを感じた。レオナードは、普段の冷徹な態度とは裏腹に、私に対して深い思いやりを見せてくれる瞬間が増えてきたように思う。

「あなたが私を守ってくれるなら、私は何でもします」と、私は思わず口にしていた。

その言葉に、レオナードは少しだけ眉をひそめたが、すぐにそれを解きほぐすように微笑んだ。「お前が選んだ道だ。俺が守るのは当然だ」

その言葉に、私は胸が熱くなるのを感じた。今まで冷徹で無感情だと思っていた王太子が、少しずつ私に心を開いてくれているのだと感じた。彼の言葉には、確かな温かさがあった。

「ありがとう、レオナード」私は静かにそう言うと、彼は無言で頷いた。その後、私たちはしばらく静かな時間を過ごした。言葉少なに過ごす時間は、意外にも心地よく、私はこの瞬間が永遠に続けばいいと思った。

だが、そんな平穏な時間も長くは続かなかった。

突然、部屋の扉が開き、王宮の使者が入ってきた。「王太子様、お呼びがかかっています」と一言告げると、すぐに去っていった。

レオナードはその言葉に少しだけ顔をしかめたが、すぐに私を見て、「お前も来るか?」と尋ねた。

「はい、行きます」と私は答えた。これから起こるであろうことに対して、少しの不安もあったが、レオナードと共に歩んでいく決意は揺らいでいなかった。

私たちは王宮の広間へと足を進め、そこには既に多くの貴族たちが集まっていた。レオナードはその中で堂々とした姿勢を見せ、私も彼の隣でその雰囲気に飲み込まれることなく、冷静に振る舞うように心がけた。

広間に集まった貴族たちは、私たちの姿を見ると一斉に静まり返った。レオナードの存在感が圧倒的で、誰もが彼の意向に従わざるを得ないことを理解していた。

その中で、私は改めて感じた。これからの私の役割、そしてレオナードとの関係がどれほど重要になるのか。

今、この瞬間から、私は彼と共に王宮の陰謀と戦うことになるのだ。

王宮の広間に入ると、空気が一変した。静寂が広がり、私たちが歩む足音がその空気をさらに引き締める。レオナードの周りに集まった貴族たちの視線が一斉に私たちに集まり、その圧力を感じる。私は冷静を保とうと努めながら、レオナードに少しだけ視線を向けた。彼は静かに、そして堂々とその場に立っていた。

「レオナード王太子様、こちらにお座りください」と、広間の中央に設けられた椅子を示す貴族が声をかけた。

レオナードは無言で頷き、その指示に従った。私も彼の後を追い、席に座ると、部屋の中の貴族たちが一層静まり返った。それだけ、私たちの登場が注目を浴びていたのだろう。私の背中には、無意識に冷たい汗が流れていたが、それを振り払うように心の中で深呼吸をした。

その後、会議は始まった。王太子レオナードが関与している大事な議題について話し合われているのだろうが、私はその内容に完全にはついていけなかった。しかし、レオナードは鋭い視線で会議を見守り、時折その手で机を軽く叩きながら発言をしていた。

「王太子様、こちらの提案についてはどうお考えでしょうか?」と、別の貴族が口を開いた。

レオナードは一度、しっかりとその人物を見つめてから、静かに答えた。「その提案は受け入れ難い。もしそれを進めるならば、今後の事態に大きな影響を与えるだろう」

彼の言葉は冷徹であったが、同時にその裏には鋭い洞察力と決意が感じられた。貴族たちはその言葉に従い、他の提案を出し始めたが、レオナードの意見はすぐに重視され、会議は彼のペースで進んでいった。

その後、私はレオナードの指示に従い、いくつかの書類をまとめたり、他の貴族たちとのやり取りを行う役割を果たすことになった。最初はその重責に対する不安があったが、次第に私はその役目をこなすことに集中できるようになった。

会議が終わった後、レオナードは私に軽く目を向け、言った。「よくやった。次回はもっとスムーズに進めるようにしよう」

その言葉には、少しの賞賛と共に、次への期待が込められていた。それを聞いた私は、彼の期待に応えなければならないという思いで胸がいっぱいになった。

「ありがとうございます、レオナード王太子様。次回も精一杯努めます」と私は答え、彼に微笑んだ。その瞬間、レオナードは少し驚いたような表情を見せ、すぐに冷徹な表情に戻った。

「お前の笑顔は貴族たちに見せるべきではない」と、彼は低く言った。

その言葉に少しだけ驚いたが、すぐにその意味がわかった。王太子としての立場、そして私が「悪役令嬢」であることが今後の関係に影響を与えることは避けられない。それを踏まえた上で、私は冷徹に振る舞う必要があるのだろう。

会議が終わり、私はレオナードと共に王宮を後にした。私たちは静かな廊下を歩きながら、言葉少なにその日の出来事について話をした。だが、その会話の中で私は一つ確信したことがあった。それは、レオナードが私に対して冷徹な態度を取っているようでいて、実は私を気にかけているということだ。

その証拠に、彼は時折私を気遣い、私が間違えそうなことを未然に防いでくれる。その気配りが、私にとってはとても新鮮であり、少しずつではあるが、彼の内面を理解し始めている気がした。

「王太子様、次回はもっとしっかりと準備して臨みます」と、私はもう一度彼に言った。

レオナードはそれに微笑みを浮かべ、「お前がそれを言うなら、安心だ」と言った。その言葉に、私は嬉しさと同時に、少しの戸惑いを感じた。レオナードの微笑みは、私にとっては非常に珍しいもので、心を掴まれる思いがした。

その日、私たちは王宮の外に出ると、夕焼けが美しく広がっていた。私は少し立ち止まり、その景色を眺める。

「美しいですね」と私は言った。

レオナードはその言葉に応えるように、静かに頷いた。そして、少しだけ距離を詰めて、彼の声が低く響いた。「これからの道を、共に歩んでいくことになる。覚悟を持って進め」

その言葉に、私は静かに頷いた。これから何が待ち受けているのかは分からないが、私はレオナードと共にその道を歩んでいく覚悟を決めた。

その後、私は再び王宮内での任務をこなしながら、レオナードと共に過ごす日々が続いた。日々、彼の冷徹な態度に触れることが多かったが、時折見せる優しさに心が温かくなる瞬間もあった。王太子としての責務を果たすために忙しい毎日を送りながらも、私は彼のことを少しずつ理解していくことができた。

ある日、私がレオナードの元に呼ばれると、彼はいつものように冷たい表情で私を迎えた。しかし、その目には少しだけ緊張した様子が浮かんでいるのがわかった。

「今日は重要な会議がある」とレオナードは言った。「お前も参加することになった」

「私がですか?」と私は驚いた。これまで、私が会議に参加することはほとんどなかった。しかし、レオナードは無言で頷いた。

「お前も王宮の運営に関わることになる。準備はしておけ」

その言葉に、私は覚悟を決めてうなずいた。「分かりました」

会議の日、私はレオナードと共に広間に足を運んだ。会議は非常に厳粛な雰囲気で、各貴族たちが真剣に話し合っていた。その中で、私は自分の立場に改めて気づくことになった。悪役令嬢としての立場と、王太子の側近としての立場が交錯し、どちらに従うべきかを常に考えながら行動しなければならなかった。

「あなたが今回の会議で示す意見が、今後の王宮の運命を左右する」とレオナードは静かに言った。彼の目は真剣そのもので、私はその重さをひしひしと感じた。

会議の中で、私は一度も発言を許されなかった。レオナードがその場で堂々と意見を述べ、他の貴族たちは彼の言葉に耳を傾けていた。私はその横で、黙って彼の側に立っているだけだったが、次第にその立場に慣れていく自分を感じていた。

会議が終了すると、レオナードは私に目を向け、軽く頷いた。「よくやった」

その一言に、私は心が温かくなった。冷徹な王太子が、私を認めてくれていることが何よりも嬉しく感じた。

その後、私たちは王宮の庭園を歩きながら、しばしの休息を取ることになった。周囲には美しい花々が咲き誇り、穏やかな風が吹いていた。その景色を見ながら、私はレオナードに言った。

「王太子様、私はまだまだ未熟ですが、できる限りお手伝いをしたいと思っています」

レオナードは私の言葉を受け止め、少しだけ微笑んだ。「お前がそう言ってくれるなら、頼もしい限りだ」

その微笑みに、私は胸が高鳴った。しかし、その後すぐにレオナードは冷徹な表情に戻り、私に向かって言った。

「だが、今はお前に余計なことを考えさせるわけにはいかない。お前はまだ王宮での立ち回りに慣れていない。焦るな」

その言葉に私は少しだけ戸惑ったが、すぐに頷いた。「はい、分かりました」

その後も、私たちは互いに静かな時間を過ごした。レオナードの冷徹さと優しさが交錯するその日々に、私は少しずつ惹かれていく自分を感じていた。しかし、同時に私は冷徹な王太子としての彼の姿に対して、恐れと尊敬の気持ちを抱き続けていた。

私はこの先、どのような道を歩んでいくのだろうか。王宮内での陰謀、そしてレオナードとの関係がどのように変化していくのか。そのすべてが、私の中で徐々に形を成し始めていた。

だが、この道を進むことが私にとって最良の選択であると信じることにした。それが、王太子と共に歩んでいく道だから。

その日、王宮の庭園で過ごした静かな時間が終わると、私たちは再び王宮内へ戻った。レオナードは他の仕事をこなすために一人で去り、私は一人で王宮内を歩くことになった。その時、少しばかりの自由な時間が与えられたのだ。

歩きながら、私はふと立ち止まり、周りの景色をじっくりと見渡した。王宮の美しい建物、整えられた庭園、そこに咲く花々が、私を包み込むような安心感を与えてくれる。しかし、同時にその全てが私にとっては遠く、手の届かないもののように感じられることもあった。

「こんな日が続くのだろうか」と私はひとりごちた。

その時、背後から声がかけられた。振り返ると、そこには王宮の侍女が立っていた。彼女の目には少しばかりの心配が浮かんでいた。

「お嬢様、大丈夫ですか?」と彼女は言った。

私は軽く笑みを浮かべ、うなずいた。「大丈夫です、少し考え事をしていただけです」

その侍女は少し安心した様子で、「ご無理なさらないように」とだけ言い、再び歩き出した。その後ろ姿を見送りながら、私は再び一人静かな時間を過ごすことにした。

その時、ふと視界の隅にレオナードが歩いているのが見えた。彼は一人で何かを考えているように見え、目を伏せながら歩いていた。その姿に引き寄せられるように、私は無意識に足を踏み出した。

「王太子様」と私は声をかけた。

レオナードはその声に気づき、ゆっくりと顔を上げた。その冷徹な表情の中に、少しだけ驚きの色が浮かんだ。

「お前、まだここにいたのか」と、少し冷たい声で言った。

「はい、少し考え事をしていただけです」と私は答える。

レオナードはしばらく私を見つめ、やがて静かに言った。「なら、少し休んでいるといい」

その一言が、私には非常に重く感じられた。彼の言葉には、何かしらの意味が込められているような気がしたからだ。

私は無言で頷き、少し距離を取って歩き始めた。レオナードはそのまま歩き去り、私も再び静かな時間を過ごすことにした。しかし、その後ろ姿に、どこか物悲しさを感じずにはいられなかった。

その日は、それ以降も静かな時間が続いた。王宮内の人々は忙しく動き回り、私もまたその中で自分の役割を果たしていった。しかし、レオナードの存在が私の中でますます大きくなっていくのを感じていた。

彼の冷徹さに包まれた王太子としての姿と、時折見せる優しさのギャップ。そのすべてが、私の心に刻まれていった。

翌日、再び王宮の大広間で行われた重要な会議に出席することになった。今回は私も発言する機会があり、緊張しながらも自分の意見を述べることができた。レオナードはその様子を静かに見守り、私が話すたびにわずかに頷いていた。

会議が終わり、レオナードが私に歩み寄ると、静かに言った。「お前、なかなかやるな」

その言葉は、私にとって何よりも嬉しく感じられた。彼が認めてくれたこと、それが私にとっては何よりも大きな励みとなった。

「ありがとうございます、王太子様」と私は笑顔で答えた。

レオナードは少し驚いたように私を見つめ、次いで無表情で答えた。「今後もその調子でやっていけ」

その後、彼と一緒に王宮の庭園を歩く時間が少しの間あった。その静かなひとときが、私の心を落ち着かせてくれた。

「王太子様、もしお時間があれば、今後も少しずつ学んでいきたいと思っています」と私は言った。

レオナードは少し黙った後、冷徹な表情で答えた。「あまり急ぐな。だが、次回の会議ではお前に話してもらうことになるだろう」

その言葉に私は心を決めた。この先も彼と共に歩んでいくことが、私の選んだ道だと。どんなに冷徹に感じられても、レオナードの中には確かに優しさが存在している。私はその優しさを見逃さないようにしたいと強く思った。

その日から、私は王宮内での任務を一層真剣に取り組むようになった。レオナードの指導を受けながら、私は少しずつではあるが成長していった。冷徹な王太子である彼の言葉は厳しく、時には私を試すような問いかけが続いたが、その全てが私を強くしていった。

レオナードが言うように、私には急ぐことなく、王宮での立場や仕事を理解し、着実に自分の役割を果たすことが求められた。最初は戸惑いながらも、その責務を果たすことで、少しずつ自信を持つようになった。

だが、そんな日々の中で、私の心にある疑問が芽生えてきた。それは、レオナードの冷徹さと優しさのギャップがあまりにも大きいことだ。時には無表情で、私を冷たく扱うこともあれば、ふとした瞬間に私を気遣うような言動を見せる。その不思議な心の動きに、私は次第に引き寄せられていった。

ある日、会議の後、レオナードと二人きりで話す機会があった。彼はいつも通り、無表情で私を見つめていたが、その目にはいつもと違う何かが宿っているように感じた。

「お前、だいぶ王宮のことに慣れてきたようだな」と、レオナードは静かに言った。

「ありがとうございます。王太子様のおかげで、少しずつですが理解が深まっています」と私は答えた。

レオナードは少し黙り込んだ後、冷徹な表情のまま言った。「だが、お前のことをもっと知っていかなければならない」

その言葉に、私は驚いた。レオナードが私に関心を持っているとは思ってもみなかったからだ。

「知る?どういう意味ですか?」と私は思わず問い返した。

「お前がどう考えているのか、どう感じているのか。それを、もっと知りたいと思っただけだ」と彼は答えた。その言葉は、私にとって大きな意味を持った。

その瞬間、私はレオナードの心の中に潜む複雑な感情を感じ取った。彼が私に対して抱いている感情が、単なる冷徹な王太子としてのものではなく、何かもっと深いものだということに気づいたのだ。

しかし、同時に私はその感情に答える準備ができているのだろうかと、心の中で自問自答していた。レオナードの優しさに触れる度に、私は彼に対してもっと深く惹かれていく自分を感じていたが、その一歩を踏み出す勇気がなかった。

「もし、私がもっと知りたいことがあれば、教えていただけますか?」と私は意を決して尋ねた。

レオナードは少し間を置いてから、冷たくもあり、どこか優しさを含んだ表情で答えた。「お前が望むのであれば、教えてやる」

その言葉に私は少しだけ安心した。そして、彼との関係が少しずつ変わっていく予感を感じながら、私は彼の側にいることを選んだ。

その後、私たちはさらに多くの時間を共に過ごし、王宮内での仕事をこなしていった。彼との関係は少しずつ変化し、私の心はますます彼に引き寄せられていった。しかし、その一方で、私がレオナードに対して持っている感情が本当に正しいのか、そしてこの関係がどこに向かっているのか、私は自分でも分からなくなりつつあった。

レオナードが冷徹でありながらも私に対して示す優しさが、私を悩ませ、同時に魅了していた。私はその心の動きに答えられるのだろうか。私の心に浮かぶのは、いつもその問いだけだった。

――日々が過ぎる中で、王宮内の陰謀の気配は次第に濃くなっていった。私自身はレオナードのもとで、任務に精を出しながらも、内心では自分の感情と未来への不安に悩まされ続けていた。あの日、レオナードが「お前が本当に何を望んでいるのか知りたかった」と語った言葉は、今も私の胸に深く刻まれている。彼の冷徹な外面の裏側に隠された、確かな温かさと情熱。そのすべてを、私は受け止めながらも、果たして自分は彼の期待に応えられるのか、迷いと戸惑いを拭い切ることができなかった。

ある夜、王宮の奥にある小さな書斎で、レオナードと二人きりになった時のことだ。外は深い闇に包まれ、窓から漏れる月明かりだけが、わずかな光を部屋に差し込んでいた。書斎の静けさの中、レオナードは普段の厳格な面持ちではなく、どこか切実な表情で私を見つめていた。

「アイリーン……」彼は、普段はあまり使わない柔らかい口調で、しかしどこか決意を含んだ声で語り始めた。「お前の中にある、あの揺れる想いは、俺も感じ取っている。だが、俺はお前にただ従わせたいのではない。お前と共に、この厳しい王宮の中で未来を切り拓きたいと思っているんだ」

その言葉に、私は一瞬息をのみ、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。彼の目は、いつもの冷徹さの奥に、本当に大切なものを守ろうとする強い意志と、私への信頼が宿っているように見えた。しかし同時に、その言葉は、王宮内に潜む闇や陰謀と戦う覚悟も伴っているようで、私にはその責任の重さが痛いほど伝わってきた。

「私……私も、あなたと共に歩みたい。でも、どうしていいのか分からなくて」私は、かすかに震える声で答えた。これまで数多の試練と陰謀の中で、必死に己を保ってきた私だが、レオナードの前では、素直な自分の気持ちを言葉にすることに戸惑いを覚えた。

レオナードはしばらく黙って私の瞳を見つめた後、ゆっくりと語り続けた。「お前がどんなに弱く感じても、俺はお前の力になる。お前自身の答えを探す時間は惜しむことはない。だが、これからの王宮は、より一層厳しい現実が待っている。だからこそ、俺たちは互いを支え合い、真実を見極めながら進まなければならない」

その言葉は、私にとっては希望であり、同時に大きな覚悟を求めるものであった。レオナードの手が、ふと私の手に触れた瞬間、冷たさと温もりが奇妙に混じり合う感触が走った。彼の手のひらから伝わる確かな力が、私の不安を少しずつ溶かしていくように感じられた。

その夜、書斎を後にする際、レオナードは静かに告げた。「お前には、これからの道を自分で選んでもらいたい。だが、どんな選択をしようとも、俺は変わらずお前の側にいる。信じろ」

私はその言葉を胸に刻みながら、暗い廊下を歩いた。足音が静かに響く中、これからの未来に対する不安と同時に、彼と共に歩む決意が一層強くなったのを感じた。王宮内で繰り広げられる政治的な策略、そして自分自身の成長と葛藤。すべてが、私たち二人の絆の試練となるに違いなかった。

翌朝、再び大広間で行われる会議の前に、私は自らの意志を固めるために、ひとり静かに庭園を訪れた。霧がかかった朝の空気の中、色づく花々と静謐な噴水の音だけが、私の心を落ち着かせた。そこでふと、かすかな決意が心に芽生える。たとえどんなに暗い影が王宮を覆おうとも、私はレオナードと共に、真実を掴み、未来を切り拓いていく。自分自身の感情に正直に、そして強くあろうと誓った瞬間だった。

その時、背後から軽やかな足音が聞こえ、振り返ると、レオナードが静かに微笑んでこちらに向かっていた。彼の眼差しは、今まで以上に柔らかく、しかし確固たる決意が宿っているようだった。

「アイリーン、お前が今ここに立っていることが、俺には何よりも頼もしい。今日の会議でも、お前の意見をしっかり伝えてくれ。お前の声が、王宮に新たな風をもたらすと信じている」

その一言に、私は深く頷いた。これまでの不安や迷いは、彼の言葉によって少しずつ和らぎ、代わりに新たな覚悟と期待が心に宿った。王宮内の策略に立ち向かい、己の信念を貫くための力となる。レオナードと共に歩むこの道が、たとえ険しくとも、私たちにはその先に光があると信じていた。

こうして、また新たな一日が始まろうとしていた。王宮の大広間に集う貴族たちの前で、私たちは再びそれぞれの役割を果たすために動き出す。内面に秘めた決意と、レオナードとの確かな絆を胸に、私は未来へ向かって一歩を踏み出すのだった。

――次第に、王宮内の陰謀は形を成し、そして私たちの物語も、さらに深い謎と試練の中へと進んでいく。だが、今ここで交わされた言葉と、互いの信頼が、私たちの歩む道を確かなものにしていくと、心から信じることができた。
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