【完結】悪役令嬢なのに、冷酷王太子に愛されすぎています

22時完結

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追放されるはずだった私

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追放への序章

「エリナ様、本日もお美しいですわ。」
微笑みながら私に話しかける令嬢たちの言葉は、虚ろに響いた。彼女たちの視線には、尊敬でも親愛でもない、どこか冷たい打算が混じっている。私はそれを感じながらも、顔には出さず微笑み返す。

――リオネル殿下の婚約者という立場がなければ、彼女たちは私にこうして声をかけることもなかっただろう。

「ごきげんよう、皆様。」
完璧な礼儀作法で応じる私に、彼女たちは一瞬言葉を詰まらせた。けれど、すぐに取り繕うように、楽しげに笑い出す。

「エリナ様、本日の舞踏会ではどなたと踊られるのかしら?」
「きっと殿下がお迎えにいらっしゃるのでしょうね。羨ましいわ。」

私に向けられる言葉は、決して心からの祝福ではない。むしろ、羨望と嫉妬、そして侮蔑が込められていた。

――私は王太子妃にふさわしくない。そう思っているのだろう。

「まだわかりませんわ。殿下もお忙しい身ですから。」
柔らかな声で応じながらも、胸の奥に重たいものが沈んでいく。

リオネル殿下――私の婚約者であり、この国の次期王太子は、私に対してほとんど興味を示さない。それどころか、時折冷たい目を向けてくる。まるで私がそこに存在しないかのような扱いに、何度心を傷つけられたかわからない。

「エリナ様、また噂が広がっていますわね。」
背後で控えていた侍女のミーナが、気遣わしげに囁いた。その声に私は反射的に眉をひそめる。

「どんな噂かしら?」
「……エリナ様が他の令嬢を妬んで、意地悪をした、と。」

その言葉を聞いた瞬間、心の奥が冷たく凍りついた。

――まただ。

最近になって、私の周囲では根も葉もない噂が次々と流れ始めていた。それはどれも私を悪役に仕立て上げるものばかりだった。

「ミーナ、誰がそのようなことを?」
低い声で問うと、ミーナは困惑した表情で首を振った。

「誰が広めているのかまではわかりません。ただ、殿下がその噂を信じていらっしゃる、という話も…」

心臓が跳ね上がるのを感じた。

「――リオネル殿下が?」
「申し訳ありません、エリナ様。ただ、皆様がそう噂しているのです。」

私は口元を押さえた。

冷酷と評される殿下が私の婚約者であるという立場が、どれほどの負担となっていたか。それでも私は、次期王妃としての責務を果たすために努力してきた。それなのに、彼がその噂を信じているというのなら――。

貴族たちの視線

その日の舞踏会は、一層厳しいものであった。
私が会場に足を踏み入れると、視線が一斉に私に向けられる。そのほとんどが好奇の目と軽蔑の色を含んでいた。

「見て、エリナ様よ。」
「あの方、本当に悪い噂が絶えないわね。」

囁き声が耳に届くたびに、胸が締め付けられるような痛みを覚える。けれど、私は顔には出さず、背筋を伸ばして歩き続けた。

――私は悪役令嬢なんかじゃない。

心の中で何度もそう繰り返す。しかし、周囲の視線は私の言葉を否定するかのように冷たかった。

そのとき、会場の空気が一変した。
入口に立つ黄金の髪と鋭い青い瞳――リオネル殿下が現れたのだ。

彼の存在感は圧倒的で、誰もがその場で足を止め、道を開ける。私は息を飲み、その視線が私に向けられるのを感じた。

「エリナ・ルフェール。」
鋭い声が私の名を呼ぶ。

「――はっ!」
反射的に礼を取る私に、彼は冷たく言い放った。

「お前の行いについて、話を聞いた。」

その言葉に、周囲の貴族たちがざわめく。私の背中を冷たい汗が伝った。

裁きの日

舞踏会から数日後、私は王宮に呼び出された。
「エリナ・ルフェール、ここに名誉を持って裁かれるべき罪人として立つ。」
高らかに告げられる声が、広間に響き渡る。

私は立ち尽くし、冷たい床の感触を足元に感じた。

「待ってください! 私は無実です!」
声を振り絞って叫ぶ私に、リオネル殿下は冷ややかな視線を向けるだけだった。

「証拠があるのか?」
「それは…」

周囲の視線が私に突き刺さる中、私の声は小さく消えていった。

「証拠がない以上、お前の罪は動かない。エリナ・ルフェール、お前を追放する。」

その宣告は、私の全てを奪い去るものであった。

追放のはずが

追放の日、私は王宮を後にするはずだった。
けれど、その道中で現れたのは――リオネル殿下だった。

「――お前の罪は消えない。」
冷たい声が私の耳元に響く。

「だが、その罪を償う場所を用意してやる。」

そう告げる彼の瞳は、どこかいつもとは違う光を宿していた。

彼の手が私を引き寄せた瞬間、私の心に芽生えたのは、恐怖か、それとも――。

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