【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結

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 夜が深まり、館内は静寂とともに月明かりに包まれていた。これまでの日々――かつてただひっそりと生きることを望んでいた私が、いつしかディートハルト公爵との出会いと共に変わりゆく心情に、戸惑いと切なさ、そして不思議な充足感を抱くようになった軌跡が、ふと胸中に鮮明に蘇る。あの日々の一瞬一瞬は、時に甘美であり、またある時は苦悩に満ち、私の内側に無数の光と影を刻みつけた。今、私はその全てを受け入れ、新たな自分として歩む決意を固めている。

 館の回廊を一人歩くと、これまで感じたどんな時よりも、ディートハルト公爵の存在が穏やかに、しかし確固たる重みを持って私の周囲に広がっていることに気づく。かつて逃れようと必死に抵抗していたあの頃とは違い、今では彼の視線が私に語りかけるたび、その眼差しに込められた深い愛情と、守り抜くという強い意志に、心が穏やかに、そして確実に温められていくのを感じた。私自身、長い間孤独の中で自分の存在を否定していたが、今やその孤独は、かえって新たな光を見出すための土台となっていた。

 ある静かな夜、私はふと庭園に足を運んだ。月光に照らされた小道は、これまでの暗い影を一掃するかのような清らかな輝きを放ち、ひとつひとつの花が、私の心に新たな命の息吹を運んでくる。冷たい風が頬を撫でる中、私は自然の営みに自らの内面を重ね合わせ、これまで抑え込んできた感情の全てが、今まさに解放される瞬間を感じ取った。ふと、背後から静かな足音が聞こえ、振り返ると、そこにはいつものように変わらぬ表情で立つディートハルト公爵がいた。彼の視線は、今まで以上に柔らかく、しかし確かな決意に満ち、私の全てを包み込むような温もりを漂わせていた。

 「セシリア」――その一言が、風に乗って私の耳に届く。彼の声は、かつての厳しさや独占欲を超え、今では優しく、そして深い愛情を含んでいる。私の心は、長い間探し求めていた答えを、ようやく見つけたかのような静かな安堵感に満たされた。振り返ることなく、私は彼の元へと歩み寄る。かつては、自らの存在を否定し、逃げ出そうと必死に心を閉ざしていた私が、今やその全てをさらけ出し、愛されることの意味を知る覚悟を持っている。彼の存在は、私にとって避けがたい運命であり、同時に自らの中に眠る本当の自分を目覚めさせる光でもあった。

 ディートハルト公爵は、無言のまま私の手を取る。その手の温かさは、これまで感じたことのない安心感と、同時に未来への希望を運んでくれる。二人の間に流れる時間は、静かでありながらも力強く、今後歩むべき道の先にある喜びと苦悩を、確かなものとして感じさせた。過ぎ去った日々のすべてが、今この瞬間に集約され、私の心は新たな旅立ちへと向かっていた。

 館内に戻ると、ふと窓越しに映る自分の姿に目を留めた。以前の私は、ただの影に過ぎなかった。しかし、今やその瞳は深く輝き、内に秘めた情熱と愛情が、はっきりと浮かび上がっている。これまでのすべての孤独と苦悩は、今となっては新たな自分の一部として、確かな価値を持っているように思えた。私自身が変わり、成長し、そして何よりも誰かに真摯に愛される存在へと生まれ変わったことを、静かに誇りに感じながら。

 そして、再びディートハルト公爵と共に歩む決意を新たにし、私は未来へと踏み出す。彼と手を取り合いながら、私たちはこれまでのすべてを乗り越え、互いの存在が作り出す新たな世界へと向かう。過ぎ去った日々の悲しみや苦しみは、今では遠い記憶となり、二人の未来を照らす柔らかな光となっている。たとえその道が険しく、また未知なる挑戦に満ちていたとしても、共に歩むことで、私たちは必ずその先にある真実の愛を見出すことができると信じていた。

 夜空に瞬く星々は、私たちのこれからの旅路をそっと祝福するかのように、無数の光を放っていた。私の心は、もはや過去の影に怯えることなく、未来への大いなる期待と共に、今ここに確かに存在している。ディートハルト公爵の愛情と共に生きるという、避けがたい運命を受け入れた私には、これまで感じたことのないほどの強さと、柔らかな温かさが宿っていた。

 こうして、私たちは新たな一歩を踏み出した。静かな館の廊下を共に歩み、月明かりが未来への扉をそっと照らす中、私は心の中でこう誓った。これまでのすべての出会いと別れ、そして数え切れないほどの心の葛藤が、私たちの物語を形作る大切な要素である。未来がどれほどの喜びや試練をもたらそうとも、共に歩むその道の先に、真実の愛が待っていると信じ、強く、そして優しく生き抜く覚悟を持って。

 夜の静けさに包まれた最後の瞬間、私はディートハルト公爵の腕の中で、静かに瞼を閉じた。そこには、ただひたすらに温かな愛情と、これまでのすべてを超越した深い絆があった。私の心は、永遠に続くかのような愛の中に溶け込み、やがて新たな朝の光とともに、二人の物語は新たな幕を迎えるのだと、確信を持っていた。
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