【完結】婚約破棄された令嬢ですが、冷酷公爵に拾われて溺愛されています

22時完結

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心の距離

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     城での生活が始まって一週間が過ぎた。リディアの魔術の腕前は日に日に向上し、アレクセイも満足げな表情を見せることが多くなった。
「今日は実戦形式で訓練を行う」
 アレクセイが構えを取ると、周囲の空気が張り詰めた。彼の魔力は圧倒的で、リディアは思わず身を縮こまらせた。
「怖がるな。私は手加減する」
 それでも、アレクセイの放つ魔術は迫力があった。リディアは必死に防御魔術を展開し、反撃を試みる。
「もっと集中しろ。感情に流されては、真の力は発揮できない」
 厳しい指導の合間に、アレクセイは時折優しい表情を見せた。リディアが疲れて息を切らしていると、さりげなく休憩を取らせてくれる。
「水を飲め。無理をするな」
「ありがとうございます」
 リディアが微笑むと、アレクセイの頬がわずかに赤くなった。しかし、すぐに表情を戻す。
「まだまだ甘い。午後も続けるぞ」
 訓練の後、リディアは図書室で魔術の理論を学んでいた。膨大な蔵書の中には、珍しい魔術書も多数含まれている。
「これらの本は、公爵様が集められたのですか?」
「ああ。知識は力だ。特に魔術においては、理論を理解することが重要になる」
 アレクセイが隣に座り、難しい部分を説明してくれる。彼の知識の深さに、リディアは感嘆した。
「公爵様は、どこでこれほどの知識を身につけられたのですか?」
「……昔、師匠がいた。だが、もういない」
 アレクセイの表情が暗くなった。きっと辛い過去があるのだろう。リディアは、それ以上は聞かなかった。
 夕食の時間、いつものように二人きりで食事をとっていると、アレクセイが口を開いた。
「明日は街に出る。君も一緒に来い」
「街に?」
「領民の様子を見回るのが、領主の務めだ。君にも現実を知ってもらいたい」
 翌日、二人は馬車で街へ向かった。街は活気に溢れ、人々は穏やかな表情をしていた。
「皆さん、幸せそうですね」
「この平和を守るために、力が必要なのだ」
 アレクセイの表情は真剣だった。領主としての責任感の強さが伝わってくる。
 市場では、商人たちがアレクセイに丁寧に挨拶した。冷酷と言われる公爵だが、領民からは慕われているようだった。
「公爵様、いつもありがとうございます」
「最近、魔物の出現が減って助かっています」
 人々の言葉から、アレクセイが領地の安全のために尽力していることが分かった。
 帰り道、馬車の中でリディアは尋ねた。
「公爵様が冷酷だという噂は、本当ではないのですね」
「噂など気にするな。重要なのは、実際の行動だ」
「でも、誤解されるのは辛くありませんか?」
 アレクセイは少し考えてから答えた。
「昔はそうだった。だが、今は……」
 彼の視線がリディアに向けられた。
「今は、理解してくれる人がいれば十分だ」
 リディアの心臓が早鐘を打った。まさか、自分のことを言っているのだろうか。
 その夜、リディアは眠れずにいた。アレクセイへの気持ちが、恋愛感情に変わりつつあることを自覚していた。しかし、自分は追放された身。彼の好意に甘えてはいけない。
 翌朝、訓練中にリディアの集中力が欠けているのを、アレクセイは見逃さなかった。
「どうした。昨日から様子がおかしい」
「何でもありません」
「嘘をつくな。私には分かる」
 アレクセイがリディアの肩に手を置いた。その温もりに、リディアの心は揺れた。
「私は……私は公爵様に迷惑をおかけしているのではないでしょうか」
「迷惑?」
「追放された身の私が、このような待遇を受けて……」
 アレクセイの表情が険しくなった。
「誰がそんなことを言った?」
「誰も言っていません。でも、私には何の価値も……」
「黙れ」
 アレクセイの声が厳しく響いた。
「お前に価値がないなど、二度と言うな。私が認めた人物を、お前自身が否定するな」
 リディアは驚いて顔を上げた。アレクセイの瞳に、確かな感情が宿っている。
「お前は……お前は大切な人だ」
 その言葉に、リディアの心は大きく揺れた。
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