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番外編
オーウェンの思い
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「オーウェン殿下、お加減はいかがですか」
「ああ、昨日に比べたら大分良くなった」
雨が王城を濡らす朝方、エリックは熱を出して寝込んでいた主君を見舞っていた。エリックの姿を見ると、オーウェンはベッドからゆっくりと身体を起こした。
「……ラブレス家の娘の件は」
「恐らく破談、ということになるでしょう」
オーウェンとその娘との間には、以前から婚約が結ばれていた。しかし、正式に結婚への段取りをつけようとしたところで、ラブレス家が巨額の借金を隠していたことが発覚したのだ。
オーウェンが彼女をどう思っていたのか、本当のところは従者のエリックには分からない。
オーウェンは俯きながら掠れた声で言った。
「私は人を信じてはいけない、愛してはならないと神が知らしめているのだろうか」
オーウェンは幼い頃、ある事情でエリックを含めたごく近しい者を除いて、誰とも話せなくなった時期があった。心を閉ざし孤独を貫くことで、己を守っていたのだろう。
「お辛かったでしょう。ですが、ご自分を責める必要はありません」
エリックの言葉に、オーウェンは静かに頷いた。
「――私は、父上のように、気丈で聡明な妃と力を合わせて、共に国を治めていきたい」
「殿下ならきっとできます。それに、年が明けて2年生になられたら、学院でまた素敵な方に出会えるかもしれませんし」
エリックは続けた。
「まずはお身体を治してください。剣術クラブの試合も近いですから。練習ならこのエリック・ウォレスがいくらでもお相手いたします」
「はは、そうだな」
笑いながら、オーウェンはベッドから窓の外を見やった。王城の庭が柔らかな朝の光に照らされていた。
いつの間にか、雨は上がっていたようだった。
「ああ、昨日に比べたら大分良くなった」
雨が王城を濡らす朝方、エリックは熱を出して寝込んでいた主君を見舞っていた。エリックの姿を見ると、オーウェンはベッドからゆっくりと身体を起こした。
「……ラブレス家の娘の件は」
「恐らく破談、ということになるでしょう」
オーウェンとその娘との間には、以前から婚約が結ばれていた。しかし、正式に結婚への段取りをつけようとしたところで、ラブレス家が巨額の借金を隠していたことが発覚したのだ。
オーウェンが彼女をどう思っていたのか、本当のところは従者のエリックには分からない。
オーウェンは俯きながら掠れた声で言った。
「私は人を信じてはいけない、愛してはならないと神が知らしめているのだろうか」
オーウェンは幼い頃、ある事情でエリックを含めたごく近しい者を除いて、誰とも話せなくなった時期があった。心を閉ざし孤独を貫くことで、己を守っていたのだろう。
「お辛かったでしょう。ですが、ご自分を責める必要はありません」
エリックの言葉に、オーウェンは静かに頷いた。
「――私は、父上のように、気丈で聡明な妃と力を合わせて、共に国を治めていきたい」
「殿下ならきっとできます。それに、年が明けて2年生になられたら、学院でまた素敵な方に出会えるかもしれませんし」
エリックは続けた。
「まずはお身体を治してください。剣術クラブの試合も近いですから。練習ならこのエリック・ウォレスがいくらでもお相手いたします」
「はは、そうだな」
笑いながら、オーウェンはベッドから窓の外を見やった。王城の庭が柔らかな朝の光に照らされていた。
いつの間にか、雨は上がっていたようだった。
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