生き残りBAD END

とぅるすけ

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第4章 見えた世界 偏

そして一難去る

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 「鬼月さんもう大丈夫なの?」
「あ、はい、瑛太さん、お陰様で!」

 客間の四角いテーブルを囲むように座る瑛太、ショウ、臨、いろは 。
 楓彩と剣得は空いていた、短い辺に並んで座る。

「さてと、俺に状況を詳しく説明してくれるか?」

 剣得はあぐらでテーブルに両肘をついて顎を支える体勢になる。
 そして、ショウはショウを指揮官として、奪われた本部を奪還する作戦を決行した事を話した。

「そうか…人道の洗脳にかかっていた俺を瑛太と楓彩が助けたと…」
「助けたのは俺だけどな」

 と いろは が訂正する。

「まぁ、どちらにせよ、迷惑をかけたすまない…で、これからの事だが」

 その時

「剣得ぉー」

 襖を開けて花麗が再び登場する。

「花麗ちゃん?」

 相変わらず、剣得は花麗のことを「ちゃん」付けで呼ぶが、この際、気にする者は居なかった。
 真っ直ぐ剣得の方へ小走りで向かうと、あぐらをかいている剣得の膝の上に小さく座る。

「いやー…寝るに寝れなくてなー? 昼寝をしたいのだが…剣得の上が落ち着くのだよ」

 と、花麗は頭を剣得の胸に擦り付ける。
 すると、瑛太はテーブルに両手をついて立ち上がり

「こらっ花麗!」

 と声を出しながら花麗の着ている着物の後ろ襟を掴む。

「瑛太ぁ!? いいではないか!」
「邪魔になるだろ!」

 しかし、剣得の反応は予想外なもので

「いや、いいよ瑛太…急に押しかけているのは俺らだからな…これくらいはしてやらないと」

 と、花麗の好きにさせる。

「むふふ…優しいなぁ剣得は…頭をなでなでしてくれるか?」
「はいよ」

 剣得は花麗の猫耳のような髪を倒しながら頭を撫でる。
 その時

「っ!? こ、これ本物の猫耳じゃん」
「「「え?」」」

 剣得は触った感じが髪の毛の質と全く違うことに気づいた。
 それを聞いて他の、楓彩、ショウ、臨も驚いた表情見せる。

「? 見て分からぬのか?」

 確かに、花麗の能力はビースト
 動物会話の能力だけではなく、形として身体に特徴が出てもおかしくはない…希なケースだが。
 剣得は珍しく思い、やたらと花麗の耳を触る。

「本当に猫耳だな…」
「んんん…くすぐったいぞぉ…剣得ぉ」
「あっ、ごめん」

 剣得は耳に気をつけながら引き続き花麗の頭を撫でる。
 隣で鬼の形相で花麗を睨んでいる楓彩に気付かずに。

「さて、本題に戻ろうと思うのだが…これからの事だが…」

 ショウ達のロリコンを見るような軽蔑した目を無視して話を断行する剣得。

「本部の修理が完了し次第、G,S,Aの勤務を開始する…臨、そう伝えてくれ…」
「了解です」
「それまで…瑛太、ここで世話になる…」
「おぉ、剣得はずっとここにいるのか?」
「あぁ、世話になる」
「やったぁ!」

 花麗は剣得を強く抱きしめる。

 その時

「おぉ、花麗ちゃん、尻尾まであるのか」

 剣得の顔の前に、花麗の着ている着物の隙間から、白い毛で覆われた猫の尻尾の様なものが出てくる。

「ひぇっ!?」
「花麗!!」

 瑛太と花麗はその声とともに立ち上がり、瑛太は花麗を自分の後ろに隠し、皆の視界から花麗の姿を消す。

「え? どうしたの?」

 ショウはキョトンとした目で気まずい顔をしている瑛太を見上げる。

「いや…その…」
「ふぇ…」

 元気な花麗には想像も出来ない恥じらいと恐怖に満ちた顔で瑛太の後ろから皆を見ていた。

「み、花麗さん? どうしたんですか?」
「み、見た? 尻尾…」

 その花麗と瑛太の「花麗の尻尾を見られた」反応に対して、ショウは

「……ねぇ、瑛太…花麗のこと、話してくれる?」


 瑛太と花麗は隣合って座り、瑛太は花麗のことについて語る。

「花麗は、実は捨て子なんです…その、花麗の母親が花麗の体を見て何を思ったのか…」
「……育児放棄か…」
「……はい」

 瑛太の話によると、育児放棄に会った花麗は瑛太の1人の父親に引き取られ、瑛太の妹として家に招かれたが、瑛太の父親は間もなくして他界。
 それから父親が残した広い家で、2人きりで現在まで暮らしていた。
 さらに、花麗は学校へ通っていたが、体のことで酷いいじめを受け、現在も不登校。
 そのいじめの内容として、尻尾引っ張られるというものがあり、それがトラウマとなり、尻尾を人に見せたり、触られたりすることを花麗は酷く拒んでいる。

「酷でぇ話だな…こんな可愛い子に…」

 剣得は左隣で瑛太と並んで小さく正座で座っている花麗の頭を優しく撫でる。

「許せない話です! 何ですか! 花麗さんは何も悪くないじゃないですか!!」

 楓彩も両手を机に叩きつけて悔しそうな顔をして花麗を見る。
 
「楓彩…? なんで楓彩が怒っているのだ?」
「花麗さんのご両親も、花麗さんをいじめた人達も、私が説教したいくらいです!!」

 花麗の表情は気恥ずかしさを含みながらも嬉しい反応を見せる。

「現在、花麗は外に出る際は帽子を被って隠しています…」
「じゃあ、瑛太? 質問するけど、私達が来た日、花麗は居なかったけど…何をしてたの?」

 ショウ達が来た日、花麗は居なかった、それについて、ショウは質問する。

 「あぁ、俺の事情を知っている友達の家の店で、手伝いをさせてもらってるんです」
「へぇ、働き者だね、花麗は」

 ショウは花麗に向けて柔らかい笑を向ける。
 すると、花麗は剣得の顔を見上げる。

「……なぁ、剣得はしばらくここにいるのだろ?」
「あぁ、そうだけど?」
「…今日から一緒に寝てもよいか? 暖かそうだ…」
「いいえ、剣得さんは私と寝ます」

 花麗の質問に答えたのは先程まで花麗に同情していた楓彩だった。

「…えぇ!? よかろう! お主は剣得といつも寝ておるのだろ? ウチも剣得と寝たいぞ」
「だめです! 剣得さんは私と寝るんです!」

 楓彩は花麗が剣得の膝の上に座っている時から抱いていた嫉妬をついに爆発させた。

「むぅ!! 楓彩のケチ!! 剣得はウチと寝るのだ!!」

 またもや始まった剣得をめぐる楓彩と花麗の睨み合い。

「おい! お前ら、また!」

 睨み合う2人を、剣得は取っ組み合いが始まる前に遠ざける。
 その時、ふと、剣得は自分に冷たい視線が当たっていることに気づく。

「……え?」

 ショウの死んだ魚を見るような目、臨の嫉妬に満ちた怖い目、いろは の「やれやれ」という目。

「…」
「な、なんだよ、ショウ…」

 ショウは前髪で隠れていない左目で鋭利な視線を送り、無言の圧力をかけていた。

 その時、沈黙を破ったのは、玄関の戸が開くガラガラという音だった。

「ただいまー」

 その声は小雨のものだった。

「小雨さん?」

 客間に近づいてくる1人の足音。
 そして、襖が開き、小雨が入ってくる。

「ただいま…」

 いつも通り、明るい表情…しかし、心做しか悲しそうに見える。

「小雨さん…」
「楓彩ちゃん…抱きついていい?」
「だめです」



 その後、日は沈み、瑛太と花麗は夕飯を作りに台所へ。
 その頃、楓彩はというと、剣得の花麗に対しての態度について言及していた。

「剣得さん、花麗さんの事好きなんですか?」
「え? あぁ、可愛いよな…」
「…」
「楓彩?」

 楓彩は無言のビンタを剣得の右頬にくらわせる。

「痛ぇ!! 何すんだ!」
「もう! 剣得さんなんか!」

 少し涙目で剣得を見る楓彩。
 その後の方に、未だに無言の圧力をかけるショウ、小雨、臨の姿。

「まてまて! 楓彩よりも大切な人はいないって!!」
「うっ!」
 
 その言葉に、楓彩の表情は明るくなるが、後ろの臨は酷く心を傷めた。

「ん? どうした? 臨、体調でも悪いのか?」
「い、いえ、何でもありません」

 その時

「皆さん、出来ましたよー」
「皆のものー、ウチの料理に惚れるが良い!!」

 そして、食卓に並ぶ和食。
 味噌汁、あじの開き、出し巻き卵、その他、漬物など…。
 メニューとしては一般的だが、どれもレベルの違う雰囲気を醸し出している。

「へぇ、花麗ちゃんもお手伝いしたのか、偉いな」
「むっ、剣得! 違うぞ?」
「剣得さん、手伝いをしたのは俺なんです…」

 と、瑛太は皿を皆の前に並べながら言う。

「え? じゃあ、この料理…」
「うむ、ウチが作った! すごいだろ?」

 その後、剣得も花麗の料理の虜になった。
 

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