生き残りBAD END

とぅるすけ

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第5章 「罪」偏

天災

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 翌朝、剣得が目を覚ますと、そこは臨の家の寝室だった。

「あれ…」

 どうやら昨日は飲みすぎたらしい。
 剣得の頭は正常に働いていなかった。
 
「あぁ…頭痛てぇ……」

 その時、やっと一つのことに気づく。

「あれ? 楓彩は…?」

 いつもなら騎乗………馬乗りになっている楓彩の姿がない。
 その代わりにシロンが乗っているだけだった。
 ふと、左側のカーテンの間から差し込む光に目線を送る。

「ん?」

 すると、そこから出るベランダに人の気配を感じる。
 剣得は立ち上がりベランダへ向かう。
 窓を開け、ベランダに出ると、転落防止の透明な柵のようなものがあり、標高が高いからか、やけに肌寒い。

「寒……」

 右を見ると、灰色の空を見上げる水色の寝間着を着た楓彩の姿が。

「楓彩…ここにいたのか…」
「剣得さん…もう大丈夫なんですか?」

 楓彩は空から目を離さずに剣得に話しかける。

「あぁ、少し頭が痛いが…臨が運んでくれたのか?」
「はい…」

 楓彩の様子がおかしい。
 剣得は直感で察知した。

「楓彩? どうした?」
「あれ…」

 楓彩はおもむろに灰色の空を指さす。

「ん?」

 剣得は楓彩が指さす方を見る。

「────おい…なんだよ…あれ…」

 剣得が見たのは空飛ぶ蛇のような影をした超巨大生物。
 目測で全長は約2kmと言ったところ。
 雲の上を浮遊し、影だけを見せていた。
 
 剣得は咄嗟に、楓彩の肩を引き、家の中に入る。

「楓彩! 座ってろ!」 

 どこかボーッとしている楓彩を剣得はリビングのソファに座らせ、テレビをつけて情報を収集する。
 それと同時に携帯を取り出し、メールやG,S,Aの業務メッセージを探すが、新着は何も無かった。

「なんなんだよ!」

 テレビに映るのはいつもと同じ朝の報道番組。
 超巨大生物の事など触れていなかった。

 こんな状況、ショウは気づいているのか。
 剣得はショウに電話をかける。

「…出ろ…出ろ…っ! ショウ!」
『んん…何よぉ…まだ6時じゃないのぉ…』

 どうやら寝起きらしい。

「空を見ろ! 空!」
『そら? なんかいるの?』
「あぁ、緊急事態だ! 俺もすぐ行く! 対策を頼む!」

 剣得は通話を切り、楓彩の方に向く。

「楓彩!!」
「?」
「本部に行くぞ! 朝飯は後だ!」

 剣得は楓彩の服を脱がせ、適当な服を着せると、自分も着替え、寝癖も直さずに楓彩と玄関から出る。

「おい! 楓彩! 起きろ!」
「起きてますよ…」

 なぜか、楓彩は終始ボーッとしている。
 あの生物の関係か。
 剣得にはそれくらいしか考えることが出来なかった。

「しっかりしてくれよ?」




 剣得は街中を少し早歩きですすんだ。
 なぜならこのことを市民は知らず、今全力で走ってしまえば、それだけでパニックになりかねないからだ。
 そして、楓彩は小走りでその剣得の背中を見失わないようにしっかり付いてきていた。

「ちっ…何なんだよあれは一体…偵察してるのか…」

 行き交う人々は何食わぬ顔で歩いていた。
 恐らく雲に浮かぶ影を見たところで、雲同士の陰影だろうとしか思わないのだろう。
 生存者《サバイバー》を見た事があるものは市民では少人数だろう。

 ───刹那

 剣得の目の前の地面は陥没する。

「───っ!?」

 そして、そのクレーターに巻き込まれた人々の中心に黒いローブを着た人が立っていた。

 人々は尻もちを付きながらも、状況を判断できる者と、悲鳴をあげる者に別れた。
 だが、その一瞬で混乱を招いたのは確かだ。

「楓彩……!」

 剣得はまず、身近にいる人々から救うことを考える。
 楓彩が狙われているのは確かだ。

「皆逃げろ!!!!」

 剣得はここぞとばかりに大声をあげる。
 その場にいた人々の決断力があった事が助けになり、数分で当たりに人気は無くなった。
 その間ローブの男は剣得と楓彩を見つめているだけのようだが。

人気が無くなった街道に残された正体不明のローブの男、剣得、そして楓彩。

「おい…楓彩…東区へ行け…。お前の足なら追いつかれることは無いだろ…」

 剣得は楓彩の方を向く。
 依然として、ボーッとしている。

「楓彩?」
「……」
「楓彩!!」

 怒鳴り声で楓彩を呼ぶ。

「───っ!」

 楓彩はやっと反応をして体をビクッと震わせる。

「頼むぞ…東区へ行け───」

 ────刹那

 剣得は前方からの殺気を感じ取り、ローブの下から伸びる歪な緑色の腕を義手で防ぐ。

「──行けぇぇーー!!」

 その声に楓彩は意識を取り戻し、返事よりも先に破裂音と共にその場から超速で姿を消した。
 剣得と、ローブの男性は一度距離を取る。

 そして、訪れる沈黙。

「……(さっきの腕…あの時の野郎か…)」
「……(見つけた…あの時の金髪…)」

 男はローブのフードを取り、素顔を晒す。

「やぁ…久しぶり…」

 赤いニット帽に額に掛けているだけの丸いレンズのゴーグル。
 そして、気だるそうな顔。
 間違いない、以前、剣得と互角に戦った男だ。

「姫さんを返してもらうよ?」

────刹那

 ぶつかり合う剣得の左拳と男の歪で緑色の拳。
 その衝撃で近くの建物のガラスが粉々になり降り注ぎ、近くに駐車してあった車の警報音が鳴り響く。

「「───っ!!」」

 続くお互いの回し蹴りの衝突も、大気を揺るがし、残ったガラスを粉砕した。





 その頃、東区の代表室では

「あーー…飲みすぎたぁー」

 朝日は朝の剣得と同様、柔らかいキャスター付きの高そうな椅子に腰掛け、グダっていた。

「気持ち悪いーー…」

 そして、その隣に萌え袖越しに濡れた布を持って朝日の額を拭いている自称アシスタントの真希菜。

「大丈夫ですか? 自分は酔わないので分かりませんが…」
「辛いぞぉーー…。真希菜とキスすれば治る…」

 と、一瞬で表情をキリッとさせる朝日。

「どういう事ですか…まったく…。…仕方ありませんね」

 上を向いている朝日の顔に覆い被さるように顔を近づける真希菜。

 その時、

「───朝日さん!!」

 楓彩がドアを乱暴に開けて駆け込んでくる。
 そして、息を切らし、ドアの縁に右手を当てて体を支えていた。

「「──ぶっ!!」」

 朝日と真希菜は瞬時に距離を取る。

「また…鬼月ちゃん…ノックしてって言ったじゃん!! ……ってどうし──」
「──剣得さんが!!」


 

 その頃、ショウはG,S,A本部の屋上に出て驚愕していた。

「なんで…なんで…警報が鳴らないの……?」

 ショウは空を見上げ、島の中心にそびえる摩天楼「スカイネクスト」の真上にとぐろを巻く蛇のような超巨大生物が浮遊しているのを目撃する。

「……」

 ショウは一度は焦りを見せるものの、すぐに、状況を確認するために携帯を取り出し、剣得に電話をかけながら司令室へ向かう。

 度々聞こえる地鳴りのようなものを聞きながら。






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