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第6章 頂点に立つ
正者の方針
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翌日、楓彩、剣得、ショウ、そして小雨と臨と
瑛太。
各々の部署はかつて無いほど忙しかった。
昨日の、草善からの発表は、人々に驚きと絶望、そして希望を一度に与えた故、街は若干パニック状態に陥っていた。
剣得はいつも通りに資料に目を通している場合ではなく、街のパニックを治めるために楓彩と瑛太と共に街へ降りた。
「はーい、慌てないで歩いてくださーい、時間はまだありますからー」
剣得は商店街の人混みの側面に3人で立ち、人の列を整理していた。
そう、来る新生活に備えて、必要品を買い揃えようとしている人々が街には溢れているのである。
「いやぁ、忙しいっすね…総督」
「瑛太、気を抜いてるといつどこのバカがしでかすか分かんねぇから引き締めてろ」
「あ、はい…」
「えへへ、怒られましたね…瑛太さん…」
楓彩は元気な笑を浮かべて瑛太を見る。
「あはは…」
その時、
『こちら、本部から東区へ。暴動が発生、ポイントを送ります、周辺の隊員は向かってください』
本日何度目かの本部からの連絡。
剣得達に休む暇は来るのだろうか。
それを他所にショウは独りで工房にこもり、情報を整理していた。
「ねぇ、彩楓も寝てないで手伝ってよ」
「やなこった」
ショウが忙しそうに彩楓に訴えかけるが、彩楓はソファで横になり欠伸をしていた。
「ねぇ、彩楓? どう思う? 今回の出来事」
「いいんじゃないか? 信用して、俺が思うに、ハワイ島でもSABERはタブーな存在だったらしいし、タイミングはおかしいが…」
「そう…まったく…人道はどこに行ったのか…」
「さぁな、幹也の考えてることとSABERの考えているともよく分からん」
「「はぁ…」」
1日が過ぎ、G,S,Aで働いていた剣得を始めとする楓彩、瑛太、臨、小雨、ショウ、そして彩楓は神ヶ丘邸に集合して、花麗の料理を求め、客間に入った。
「うへっ!? 皆どうしたのだ? そんな引きつった顔をして」
「疲れましたぁ…」
楓彩は客間に敷かれている畳にまるで自分の家のように滑り込む。
「こら、楓彩! 自分家じゃねぇんだから…」
「あはは…良いですよ、別に、俺ら以外じゃ持て余すほど広いですから」
その後、皆は花麗が用意した鮭のムニエル、安いパンをこんがり焼き、高級レストランに出てくるような加工を施されたパン。
そして、ミネストローネ。これは絶品。
「ふぅ…美味しかったぁ」
「本当に美味しいな、花麗ちゃんの料理は」
「むふふ…そんなに褒めても何も出んぞー…」
「そうだ! 剣得さん! 初任給が出たので買い物してきたんです!」
楓彩は打って変わって剣得に向かっていつもの笑顔で話しかける。
「仕事の合間にか?」
「はい!」
そして、右ポケットから金色のチェーンに輪形状の赤黒い石が付いたネックレスを渡してくる。
「熱烈の石だそうです! 剣得さんにピッタリだったので! 日頃の感謝の気持ちです!」
「っ! ……」
────やばい、泣きそう…
剣得以外の者もそう思った。
食事が終わり、ひとまず休憩とすると、楓彩が何やら虚しい顔をして、ため息をついているのが皆の目にとまった。
「楓彩? どうした?」
臨は一番近くにいたので、訊ねて見る。
「なんか、ここももう居れなくなると考えると…寂しいですね」
確かに、ハワイ島への移住が完全に成功してしまえばここも捨てなければならない。
「それに、G,S,Aも…解散…ですかね…」
ここぞとばかりに発揮される楓彩の察しの良さ。
「あ、あぁ…そうなるな…──」
「けど! 人は離れないのだろ? またハワイ島でこうしてウチの料理を食べるのだろ?」
花麗の明るい発言に瑛太は優しく微笑んで隣にいる花麗の猫耳を倒すように撫でる。
「んんー…なんだぁ…瑛太…」
そんな微笑ましい風景を眺められるのもあとどれ位だろうか。
花麗はそんなことを言っていたが、そう簡単には行かないことは大人の皆は分かっていた。
新環境、問題は山積みだ。G,S,Aという向こうからしたら謎の武力集団だ。下手をしたら逮捕される可能性だってある。
そんな大人達の事情を他所に、時間は流れていく。
ハワイ島からの救援艇到着まで1日。
朝早くからG,S,A本部の地下にある全隊員が集まれるほどの広さを誇るホールに約2000人もの人が集まっていた。
その壇上には剣得とショウの姿が。
これほどの人数がいるにも関わらず、声一つしない。これがG,S,Aの統率力だろう。
「今日まで、よく戦ってくれた!! 我々が目指す平和はすぐ目の前だ! だが、油断はしないで欲しい! 問題は山積みなのだ! そこで、俺から最後の任務を言い渡す!! どうか、セラフィスのG,S,Aとして! 市民を最後まで守って欲しい! 市民が無事ハワイ島で生活を送れるようになるまで!
ここに至るまでたくさんの犠牲を払ったが、これが最後だ! そして…ハワイ島で会おう!」
その剣得の言葉に皆からの歓声が上がる。
「以上だ! 解散してくれ!!」
【それだけかよ!!】
ツッコミの一体感も素晴らしい。
と、言いつつも、各々の仕事場へ向かった隊員達。
広いホールに残されたのは剣得、ショウ、楓彩の3人。
「これが、最後か…」
「まだだよ、G,S,Aは終わっても、生存者《サバイバー》との戦いは終わらない」
「あぁ、そうだな…」
「じゃあ! 東区に行きますね!」
「そうだな、俺は本部に残らなきゃいけねぇ…。ショウ、ついて行ってやってくれ」
「うん、やること無いからいいよー」
そして、ショウと楓彩は東区へ向けて歩き出した。
街中は昨日に引き続き騒然としており、賑やかだ。
「今日も忙しくなりそうですね!」
「うん、そうだね」
「…なんだか、ショウさんとこうして街を歩くのって久しぶりですね」
「そうねー…楓彩はやっぱり寂しい?」
「そうですね……少し……? ショウさん? なんだか変じゃありませんか?」
2人が東区周辺に着いた時、妙な静かさに異変を感じる。
「ちょっと急ごう…」
2人は小走りで東区本部に向かった。
「っ! ショウさん! 血の匂いがします!」
「っ! 楓彩! 止まって!」
「───っ!?」
ショウは東区目前にして楓彩を引き止める。
「もうここは戦場だ…静かに…」
「……はい」
ショウはそう小声で言うと懐からご自慢の万能銃を取り出し、アサルトライフルの形にする。
「楓彩? 刀は?」
「な、中です…」
「はぁ…じゃあ、これかしてあげる」
ショウの手にしてるアサルトライフルから、少量の液体金属が剥離し、鍔無しの刀を象る。
「あ、ありがとうございます」
ショウは楓彩にその刀を手渡すと、前かがみになって、楓彩と共に静かに東区の建物に侵入する。
「し、静かですね…」
「確かに、血の匂いがするね…よし、なんか見なくても大体状況が掴めたから、剣得に連絡しよう」
ショウはそう言ってポケットから携帯を取り出して剣得に電話をかける。
「もしもし? 剣得? 緊急事態」
『どうした?』
「東区が襲撃にあった…。人がたくさん死んでる…多分SABERの仕業じゃないかな…じゃなきゃG,S,Aをこんな目に合わせることなんか出来るはずがない」
『────』
「ん? 剣得?」
『────』
「ダメだ…繋がらなくなった…」
「え……!?」
「本部に行こう、楓彩…嫌な予感がする…」
「おい!! どうした! 楓彩は無事なのか!?」
剣得の方もショウとの通話が途切れ、携帯をしまうと立ち上がり、館内に放送を入れるために司令室へ向かおうと立ち上がる。
その際、机に置いて眺めていた楓彩からのプレゼントを右ポケットにしまう。
「クソッ」
その時、総督室のドアが開き朝日が入ってくる。
「おい、朝日、何してんだ! 東区が────」
「なぁ、剣得…俺は…正しいのか…」
「は、はぁ?」
朝日の銀色の前髪が邪魔でよく表情がうかがえない。
「どうした…朝日…?」
「まぁいいや、剣得…お前には悪いが…付き合ってもらうぞ…」
「────ッ!!」
その頃、ショウと楓彩は楓彩の刀を取りに行くために東区の武器庫へ向かっていた。
廊下の電気は点滅し、薄暗い光が血に塗られた廊下や壁、そしてバラバラになった人体を照らす。
ショウは楓彩の心のケア、「大丈夫?」と、声かけをしながら進むのだが、それも三回くらいでやめた。なぜなら楓彩は沢山の酷い死体を目の当たりにしても動じないのだ。まっすぐ道を進んでいる。
「楓彩…本当に強くなったね…」
「いいえ…なれませんよ…こんなの…さぁ、着きましたよ…」
そんなショウの心配をよそに、武器庫に辿り着く。
「じゃあ、私が先行するよ…」
ショウは普段は自動で開くドアを手動で重そうに開ける。
その時、中から冷気が足元に流れてくる。
「寒いね…」
「はい…」
ショウはアサルトライフルのライトを点灯させ、楓彩の前を歩く。
「刀、どこにあるの?」
「結構奥の方です…」
ゆっくり進んでいくと、どんどん気温が下がってくるのがわかる。
「寒いです…」
そして、2人の目の前に現れたのは
「────ッ!!」
氷漬けになったG,S,A隊員の死体だった。驚いた理由はしたいの状態だけでは無い。そんな殺し方が出来る人物に心当たりがあったからだ。
直後
屋外で怒号が鳴り響く。
「「───っ!!」」
2人は急いで武器庫の奥に急ぎ、楓彩の刀を取ると
「急ごう!!」
と言ってショウは楓彩の手を取る。
「はい!」
「───ちょっ! まっ!!」
楓彩は急ぐの意味を少し履き違えたのだろう、ショウの肩が危うくなるほどのスピードで駆け抜けた。
屋外に出た頃、息切れするショウに楓彩は駆け寄り、「ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝ると、ショウは顔を上げて音の原因を探す。
「はぁ…はぁ…さて? 何事か………っまじかよ」
「っ!!」
東区から見て北側、距離的に本部の方、巨大な氷山が出来上がっていた。
「あ、朝日さん……?」
「急ぐよ!」
数分前、本部、総督室では
「悪いな…剣得…───」
───刹那
剣得に襲い掛かる無数の氷刃。
一本は剣得の右頰をかすめるが、致命傷になりそうな氷刃は全て熱気で溶かされた。
「朝日───!!」
剣得が朝日の方を見ると既に氷刃を右手に、剣得の間合いに入っていた。
第二波
剣得の体制から防御および回避は間に合わない。なら、剣得のとる行動、
「朝日…」
───刹那
朝日を神々しい橙色の火炎が包む。
「うっ!!」
その熱に、朝日の体は吹き飛び、総督室のドアを突き破って廊下に出る。
「…くっ…」
黒い煙を絡めて、剣得の姿が露見する。その表情は怒りでも憎しみでも無い、悲しい顔をしていた。
「お前は、こんな世の中でも、信じていたい奴だった…どうしてだ…」
「ふっ…てめぇの胸に聞いてみろ…信じたい奴のことを熟知していたのか? 俺の暗躍に気づけずに…」
「……そうか……俺の知っている朝日は…凍海 朝日は…もういないのか…」
「なぁ、俺のためを思っているなら助けてくれよ! 俺のために…死んでくれ」
「何と戦っている…敵はなんだ」
「いいや…俺は俺のために…お前を倒す!」
まるで会話になっていない。もう朝日には後がないようだ。乱心しているようにも見える。
───刹那
剣得の目の前に巨大な氷山が現れ、数秒で本部から、本部周辺を覆い尽くした。
瑛太。
各々の部署はかつて無いほど忙しかった。
昨日の、草善からの発表は、人々に驚きと絶望、そして希望を一度に与えた故、街は若干パニック状態に陥っていた。
剣得はいつも通りに資料に目を通している場合ではなく、街のパニックを治めるために楓彩と瑛太と共に街へ降りた。
「はーい、慌てないで歩いてくださーい、時間はまだありますからー」
剣得は商店街の人混みの側面に3人で立ち、人の列を整理していた。
そう、来る新生活に備えて、必要品を買い揃えようとしている人々が街には溢れているのである。
「いやぁ、忙しいっすね…総督」
「瑛太、気を抜いてるといつどこのバカがしでかすか分かんねぇから引き締めてろ」
「あ、はい…」
「えへへ、怒られましたね…瑛太さん…」
楓彩は元気な笑を浮かべて瑛太を見る。
「あはは…」
その時、
『こちら、本部から東区へ。暴動が発生、ポイントを送ります、周辺の隊員は向かってください』
本日何度目かの本部からの連絡。
剣得達に休む暇は来るのだろうか。
それを他所にショウは独りで工房にこもり、情報を整理していた。
「ねぇ、彩楓も寝てないで手伝ってよ」
「やなこった」
ショウが忙しそうに彩楓に訴えかけるが、彩楓はソファで横になり欠伸をしていた。
「ねぇ、彩楓? どう思う? 今回の出来事」
「いいんじゃないか? 信用して、俺が思うに、ハワイ島でもSABERはタブーな存在だったらしいし、タイミングはおかしいが…」
「そう…まったく…人道はどこに行ったのか…」
「さぁな、幹也の考えてることとSABERの考えているともよく分からん」
「「はぁ…」」
1日が過ぎ、G,S,Aで働いていた剣得を始めとする楓彩、瑛太、臨、小雨、ショウ、そして彩楓は神ヶ丘邸に集合して、花麗の料理を求め、客間に入った。
「うへっ!? 皆どうしたのだ? そんな引きつった顔をして」
「疲れましたぁ…」
楓彩は客間に敷かれている畳にまるで自分の家のように滑り込む。
「こら、楓彩! 自分家じゃねぇんだから…」
「あはは…良いですよ、別に、俺ら以外じゃ持て余すほど広いですから」
その後、皆は花麗が用意した鮭のムニエル、安いパンをこんがり焼き、高級レストランに出てくるような加工を施されたパン。
そして、ミネストローネ。これは絶品。
「ふぅ…美味しかったぁ」
「本当に美味しいな、花麗ちゃんの料理は」
「むふふ…そんなに褒めても何も出んぞー…」
「そうだ! 剣得さん! 初任給が出たので買い物してきたんです!」
楓彩は打って変わって剣得に向かっていつもの笑顔で話しかける。
「仕事の合間にか?」
「はい!」
そして、右ポケットから金色のチェーンに輪形状の赤黒い石が付いたネックレスを渡してくる。
「熱烈の石だそうです! 剣得さんにピッタリだったので! 日頃の感謝の気持ちです!」
「っ! ……」
────やばい、泣きそう…
剣得以外の者もそう思った。
食事が終わり、ひとまず休憩とすると、楓彩が何やら虚しい顔をして、ため息をついているのが皆の目にとまった。
「楓彩? どうした?」
臨は一番近くにいたので、訊ねて見る。
「なんか、ここももう居れなくなると考えると…寂しいですね」
確かに、ハワイ島への移住が完全に成功してしまえばここも捨てなければならない。
「それに、G,S,Aも…解散…ですかね…」
ここぞとばかりに発揮される楓彩の察しの良さ。
「あ、あぁ…そうなるな…──」
「けど! 人は離れないのだろ? またハワイ島でこうしてウチの料理を食べるのだろ?」
花麗の明るい発言に瑛太は優しく微笑んで隣にいる花麗の猫耳を倒すように撫でる。
「んんー…なんだぁ…瑛太…」
そんな微笑ましい風景を眺められるのもあとどれ位だろうか。
花麗はそんなことを言っていたが、そう簡単には行かないことは大人の皆は分かっていた。
新環境、問題は山積みだ。G,S,Aという向こうからしたら謎の武力集団だ。下手をしたら逮捕される可能性だってある。
そんな大人達の事情を他所に、時間は流れていく。
ハワイ島からの救援艇到着まで1日。
朝早くからG,S,A本部の地下にある全隊員が集まれるほどの広さを誇るホールに約2000人もの人が集まっていた。
その壇上には剣得とショウの姿が。
これほどの人数がいるにも関わらず、声一つしない。これがG,S,Aの統率力だろう。
「今日まで、よく戦ってくれた!! 我々が目指す平和はすぐ目の前だ! だが、油断はしないで欲しい! 問題は山積みなのだ! そこで、俺から最後の任務を言い渡す!! どうか、セラフィスのG,S,Aとして! 市民を最後まで守って欲しい! 市民が無事ハワイ島で生活を送れるようになるまで!
ここに至るまでたくさんの犠牲を払ったが、これが最後だ! そして…ハワイ島で会おう!」
その剣得の言葉に皆からの歓声が上がる。
「以上だ! 解散してくれ!!」
【それだけかよ!!】
ツッコミの一体感も素晴らしい。
と、言いつつも、各々の仕事場へ向かった隊員達。
広いホールに残されたのは剣得、ショウ、楓彩の3人。
「これが、最後か…」
「まだだよ、G,S,Aは終わっても、生存者《サバイバー》との戦いは終わらない」
「あぁ、そうだな…」
「じゃあ! 東区に行きますね!」
「そうだな、俺は本部に残らなきゃいけねぇ…。ショウ、ついて行ってやってくれ」
「うん、やること無いからいいよー」
そして、ショウと楓彩は東区へ向けて歩き出した。
街中は昨日に引き続き騒然としており、賑やかだ。
「今日も忙しくなりそうですね!」
「うん、そうだね」
「…なんだか、ショウさんとこうして街を歩くのって久しぶりですね」
「そうねー…楓彩はやっぱり寂しい?」
「そうですね……少し……? ショウさん? なんだか変じゃありませんか?」
2人が東区周辺に着いた時、妙な静かさに異変を感じる。
「ちょっと急ごう…」
2人は小走りで東区本部に向かった。
「っ! ショウさん! 血の匂いがします!」
「っ! 楓彩! 止まって!」
「───っ!?」
ショウは東区目前にして楓彩を引き止める。
「もうここは戦場だ…静かに…」
「……はい」
ショウはそう小声で言うと懐からご自慢の万能銃を取り出し、アサルトライフルの形にする。
「楓彩? 刀は?」
「な、中です…」
「はぁ…じゃあ、これかしてあげる」
ショウの手にしてるアサルトライフルから、少量の液体金属が剥離し、鍔無しの刀を象る。
「あ、ありがとうございます」
ショウは楓彩にその刀を手渡すと、前かがみになって、楓彩と共に静かに東区の建物に侵入する。
「し、静かですね…」
「確かに、血の匂いがするね…よし、なんか見なくても大体状況が掴めたから、剣得に連絡しよう」
ショウはそう言ってポケットから携帯を取り出して剣得に電話をかける。
「もしもし? 剣得? 緊急事態」
『どうした?』
「東区が襲撃にあった…。人がたくさん死んでる…多分SABERの仕業じゃないかな…じゃなきゃG,S,Aをこんな目に合わせることなんか出来るはずがない」
『────』
「ん? 剣得?」
『────』
「ダメだ…繋がらなくなった…」
「え……!?」
「本部に行こう、楓彩…嫌な予感がする…」
「おい!! どうした! 楓彩は無事なのか!?」
剣得の方もショウとの通話が途切れ、携帯をしまうと立ち上がり、館内に放送を入れるために司令室へ向かおうと立ち上がる。
その際、机に置いて眺めていた楓彩からのプレゼントを右ポケットにしまう。
「クソッ」
その時、総督室のドアが開き朝日が入ってくる。
「おい、朝日、何してんだ! 東区が────」
「なぁ、剣得…俺は…正しいのか…」
「は、はぁ?」
朝日の銀色の前髪が邪魔でよく表情がうかがえない。
「どうした…朝日…?」
「まぁいいや、剣得…お前には悪いが…付き合ってもらうぞ…」
「────ッ!!」
その頃、ショウと楓彩は楓彩の刀を取りに行くために東区の武器庫へ向かっていた。
廊下の電気は点滅し、薄暗い光が血に塗られた廊下や壁、そしてバラバラになった人体を照らす。
ショウは楓彩の心のケア、「大丈夫?」と、声かけをしながら進むのだが、それも三回くらいでやめた。なぜなら楓彩は沢山の酷い死体を目の当たりにしても動じないのだ。まっすぐ道を進んでいる。
「楓彩…本当に強くなったね…」
「いいえ…なれませんよ…こんなの…さぁ、着きましたよ…」
そんなショウの心配をよそに、武器庫に辿り着く。
「じゃあ、私が先行するよ…」
ショウは普段は自動で開くドアを手動で重そうに開ける。
その時、中から冷気が足元に流れてくる。
「寒いね…」
「はい…」
ショウはアサルトライフルのライトを点灯させ、楓彩の前を歩く。
「刀、どこにあるの?」
「結構奥の方です…」
ゆっくり進んでいくと、どんどん気温が下がってくるのがわかる。
「寒いです…」
そして、2人の目の前に現れたのは
「────ッ!!」
氷漬けになったG,S,A隊員の死体だった。驚いた理由はしたいの状態だけでは無い。そんな殺し方が出来る人物に心当たりがあったからだ。
直後
屋外で怒号が鳴り響く。
「「───っ!!」」
2人は急いで武器庫の奥に急ぎ、楓彩の刀を取ると
「急ごう!!」
と言ってショウは楓彩の手を取る。
「はい!」
「───ちょっ! まっ!!」
楓彩は急ぐの意味を少し履き違えたのだろう、ショウの肩が危うくなるほどのスピードで駆け抜けた。
屋外に出た頃、息切れするショウに楓彩は駆け寄り、「ごめんなさい」と申し訳なさそうに謝ると、ショウは顔を上げて音の原因を探す。
「はぁ…はぁ…さて? 何事か………っまじかよ」
「っ!!」
東区から見て北側、距離的に本部の方、巨大な氷山が出来上がっていた。
「あ、朝日さん……?」
「急ぐよ!」
数分前、本部、総督室では
「悪いな…剣得…───」
───刹那
剣得に襲い掛かる無数の氷刃。
一本は剣得の右頰をかすめるが、致命傷になりそうな氷刃は全て熱気で溶かされた。
「朝日───!!」
剣得が朝日の方を見ると既に氷刃を右手に、剣得の間合いに入っていた。
第二波
剣得の体制から防御および回避は間に合わない。なら、剣得のとる行動、
「朝日…」
───刹那
朝日を神々しい橙色の火炎が包む。
「うっ!!」
その熱に、朝日の体は吹き飛び、総督室のドアを突き破って廊下に出る。
「…くっ…」
黒い煙を絡めて、剣得の姿が露見する。その表情は怒りでも憎しみでも無い、悲しい顔をしていた。
「お前は、こんな世の中でも、信じていたい奴だった…どうしてだ…」
「ふっ…てめぇの胸に聞いてみろ…信じたい奴のことを熟知していたのか? 俺の暗躍に気づけずに…」
「……そうか……俺の知っている朝日は…凍海 朝日は…もういないのか…」
「なぁ、俺のためを思っているなら助けてくれよ! 俺のために…死んでくれ」
「何と戦っている…敵はなんだ」
「いいや…俺は俺のために…お前を倒す!」
まるで会話になっていない。もう朝日には後がないようだ。乱心しているようにも見える。
───刹那
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ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
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