生き残りBAD END

とぅるすけ

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第6章 頂点に立つ

戦友との記憶

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 凍海 朝日、彼は剣得とは青年期からの中だ。
 剣得と朝日は口数の少ない仲だったが、そんな仲が保っていたのにはある一人の女性の存在がある。

 13年前

 剣得達は16歳、海沿いの高校に通っていた。

「はやくんーー! おっはー!」

 塩風薫る、水平線が望める通学路を歩いていると、後ろから小柄な、現在で言う楓彩に少し似た女性が背中に胸を押し当てながら飛びついてくる。

「うわっ! …急に飛びつくな、胸を押しあてんな」

「えへへ、割とわざとだよーん」

 この黒髪で頭の上の一本のアホ毛が印象的な女性、鳴瀬《なるせ》 美桜《みさ》。剣得と同じ高校に通う女子高校生だ。さらに言うならば、幼馴染で、剣得の彼女。

「今日もいい天気だねーー」

「そうだなぁ…」

「授業寝ちゃうかもねーー」

「そうだなぁ…」

「むっ…(さては、相づちだなぁー? よーし)……はやくーん、セッ◯スしよー」

「そうだなぁ……するか…今晩でいいか? 俺ん家誰もいないし コンドームなら持ってるし」

「ふぇっ!?」

 美桜は頭から煙を出して、顔を真っ赤にした。

「女子がそんな下品なこと言うじゃない」

 剣得は美桜の頭に軽くチョップをかます。

「痛っ……んもぉーー…はやくんーー!? からかわないでよー!」

 ばつが悪そうな顔をして剣得を見上げる美桜。
 すると、

「ん? はやくん? あれ…」

 美桜が見る方向に剣得も目線を送ると、砂浜に砂煙が立ち込める場所があった。

「まーたやってんのか…」

 剣得は、そう言って、小走りでその上まで急いだ。
 近づくにつれて鈍い音と、怒鳴り声が聞こえてきた。

「ありゃりゃ…」

 剣得と、美桜が駆けつけた時には、もう遅く、剣得達と同じ高校の少し汚れた制服を着た、朝日が、足元で呻き声を上げているネクタイの色から上級生と思われる人達を見下ろしていた。

「また派手にやったな…朝日…」

 と、堤防から話しかけて来た剣得を見上げる朝日の目は座っていた。

「あっ! あっくん!? 何やってんのよー!」

 続いて美桜も朝日に呼びかける。
 朝日は返事をせずにカバンを持ち上げると、学校の方へ歩いて行った。

「相変わらず喧嘩後は無愛想だな…」

「はやくん、アタシ、先に行ってるね? あっくんちょっとだけ怪我してるみたいだから」

「おう、行ってやってくれ」



 剣得が学校に着くと、既に美桜は自分の席に座っていた。
 剣得は美桜の後ろの席にカバンを置き、着席する。
 すると、美桜は剣得に気づき体を捻って振り返ってくる。

「大丈夫だったか? あのバカは」

「うん、手首捻ってたけどすぐ治してあげたよ」

「すまんな……」

「なんで、はやくんが謝るのよー…」

「いや…そうだな…」

 剣得は理由を言おうと思ったが、気恥ずかしくなり美桜の頭を撫でするだけだった。



 放課後、剣得と美桜は生徒が忙しく部活動に行く中、屋上へ向かった。

「おーっす…朝日…」

「ん? 剣得か…」

「あっくん? また授業サボってたの?」

 2人は落下防止の鉄格子に寄りかかってパックジュースを片手に空を見ていた朝日に話しかける。

「シシッ…まぁな、知ってること教わったって暇だろ?」

「テストだけで大学行けると思うなよ?」

「大丈夫だよ、剣得、俺は最低限の事はしてる」

 剣得と、美桜は隣合って朝日の近くに腰を下ろす。
 朝日も、それに釣られるように鉄格子を背もたれに座る。

「ふっ…流石、入試も定期テストも総合1位をかっさらって行く朝日君の言うことは意味がわかんねぇ…」

「ま、天才なんで!」

「うぅぅ…あっくんーー…べんぎょう、おじえでぇぇ」

 美桜は目尻に涙を浮かべて朝日に泣すがる。

「ええー? いいけど、剣得に聞いたらどうだ? 剣得だって、学年2位だろ?」

「まぁな…」

 それに比べて美桜はド底辺だ。美桜は医学の道に進むと言っているが、正直、美桜にはそんな知識や技能は必要ない。
 なぜなら、

「ふぅぇ……? あっ…あの鳥…」

 その時、屋上の中央当たりに片方の羽をだらんとさせた鳩が歩いているのを見る。
 美桜は静かに近づき、優しく両手で持ち上げると剣得達の方へ戻ってくる。

「ん? 怪我してんのか? その鳩…」

「うん」

 そう言うと、鳩の右の羽にある痛々しい傷から、青色の炎が吹き出す。
 そして、数秒程炎が放出されると火が消えた時には鳩の傷は綺麗さっぱり無くなっていたのだ。

「よし、さぁ、気を付けるんだよ?」

 そう、美桜は能力者で今で言う H《ヒール》の持ち主。
 だが、この時代、能力は危険なものとして扱われており、剣得や朝日はこれを隠しながら生活している。

「相変わらず逆に痛そうだな…」

 朝日は若干引いた目で美桜を見上げる。

「むぅー熱くないんだよ?」

「知ってる知ってる…お世話になってます」

 すると、美桜の両手から鳩は元気よさそうに飛び立った。

「さてと、もうそろそろ暗くなりそうだし、帰ろっ? はやくん、あっくん!」

「「そうだな…」」


 平和な日々だった。
 考えていたのは将来と人間関係だけだった。
 “奴ら”が現れるまでは…



 2090年 6月 25日 日曜日

「ふぁぁ…」

「はやくん、起きてよぉー…遊ぼーよー」

 朝早くから美桜は剣得の家に遊びに来ていた。
 美桜は剣得の寝ているベッドに腰をかけて、剣得の腰を揺すっていた。

「日曜くらい寝かせてくれよぉ…」

「むっ、はやくん、アタシのこと嫌い?」

「愛してる」

「ふぇっ!?」

 美桜は顔を赤くして頭から煙を出した。

「まぁ、愛してるのは本当だが、今は寝かせてくれないかな…」

「むぅ…じゃあ、アタシも一緒に寝る!」

 美桜はそう言って剣得の寝ている布団に入り込んでくると剣得の隣に顔を出す。

「近い近い…」

「いいじゃん…ぁ、はやくん、興奮しちゃうの?」

「うぜぇ…そんな貧乳に興奮するかよ…」

「(ガビーーン!!!!) っ!! は、はやくん!? いくら付き合ってるからって身体的特徴を突くのは良くないよ!」

 涙目で美桜は剣得を見つめる。
 流石に言い過ぎたと思った剣得は美桜の頭を優しく撫でて

「悪かったよ…大きい大きい…」

 と、フォローを入れる。

「フォ、フォローになってないし! つか、もっと最低だし…」

 美桜はそう言いつつも剣得の背中に両手を回し、剣得の胸に顔を押し当ててくる。

「よしよし…」

 天気もいいし、いつもより車が通る音が少なく、鳥の鳴き声と波の音しか聞こえない。
 腕の中には美桜の暖かい温もり。

 ──あぁ、寝そう…

 剣得は再度眠気に襲われる。
 その時、

「昼間っから…熱いねぇ? 剣得…美桜…」

 「「ぬわぁ!!」」

 2人は飛び上がり部屋の入口を見る。

「朝日!?」「あっくん!?」

「しっかり避妊しろよ?」

 朝日は右手にレジ袋を持ち、部屋に入ってくると、中央に置いてあった机にレジ袋を置くと、自分の家のようにテレビを付ける。

「おっ、録画してあんじゃん…」

「朝日? 何しに来た?」

「暇だからな、これからどっか行かね?」

「行くってどこへ? あっくん…」

 剣得と美桜はベッドに腰をかけて、ベッドを背もたれにしている朝日に話しかける。

「そうだなぁー…適当に、駅周辺? とか?」

「いいけどよ…3人でか?」

「寂しいこと言うなよ…いいよな? 美桜?」

「うん! いいよー」

 
 その後、剣得は重たい体を動かし、朝日と美桜に引っ張られるように外に出た。
 駅周辺は日曜日ながらガランとしていた。
 
「…あれ? 人すくねぇな」

「ねー?」

 剣得は来て愕然とした。

 それを他所に3人はカラオケやボーリング、ゲームセンターなどを周り、遊んだ。

「疲れたぁ…声でねぇ…」

「あはは…あっくん、一番歌ってたもんね」

「俺はボーリングなんか、二度とやらねぇぞ…」

 声を枯らしてうなだれている朝日の横でボーリングのスコア表を難しい顔をして見ている剣得と、ゲーセンで剣得に撮ってもらった高さ10センチほどの紺の猫のぬいぐるみを抱いている美桜。

「さてと、まだ、昼下がりだぞぉ…何する? 美桜、剣得」

「うんーー…どうする? はやくん…」

「……? まて…」

 剣得はなにかに感づき、周りを見渡す。

「どうした?」

「どうしたの?」

「嫌な予感がする…」

 剣得の中を悪寒が駆け巡る。だが、相変わらず人の量は少なく、平和そうな光景だった。

「ん? 気のせいだろ、もっと都会行こうぜ、電車乗ってさ」




─── 生存者《サバイバー》出現まで2時間
 
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