生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

明星が落ちた日

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────声が聞こえる

───────臨!

────馴染み深い、安心する声

───────戻って来い!





────あぁ、だめだ…頭がボーッとする

────今はいつだ? どこだ? ここは…

────オレは…だれだ…




「臨…お前は強くなりなさい…」

「おじいちゃん……私は…っ!」

「大丈夫…お前は…立派に俺の後を継いでくれると信じている…ゴホッ」

「おじいちゃん!? おじいちゃん! しっかりして!」

 その後、直ぐに 帝 頴禅は息を引き取った。

 臨が遺品を整理していると一通の手紙を見つける。

『───臨へ
 お前がこの手紙を読んでいる時は俺はもう立ち上がってお前に槍を教えてやることが出来ないでいるだろう。
 師として、最後の教えだ。
 我が槍の全てを知ったお前も知らない極意。
 それは、この槍術は人を殺めるためではなく、何か大切な物を、人を守るために有る。それが極意だ。
 お前がいつか大切な人を見つけて守ってやれるように。

 そして、親として、最後の教えだ。
  別れは忘れ、出会いは消えるまで宝物にしなさい。
 俺はもう寄り添えはしないかもしれないが、最後に、俺はお前と一緒にいて楽しかった───』

 臨は静かに手紙をしまう。
 
「うん…! おじいちゃん…師匠…! “オレ”頑張っておじいちゃんの名を継ぐよ!」




────ごめん…おじいちゃん…オレ…『帝』の名に…おじいちゃんの願いに添えなかった…

────けど…オレは…仲間だけは…宝物だけは! 絶対に守る!

 
「───っ!! がぁぁぁあ!!」

 小雨の目の前でレヴィアタンはもがき苦しみじ始めた。

「っ!」

「うわぁぁあ!! 出てくるなぁ!!」

 レヴィアタンの白い髪の毛が生え際から臨の茶髪へと戻っていく。

「り、臨…なの?」

「や、やぁ…! こ、こさ…小雨…!」

 臨は苦しそうに足元おぼつかない様子で立ち上がり、まだ黒い眼光で小雨を見る。

「ま、まだ、近づくな…! はぁ…はぁ…まだ、体の主導権を…奪いきれてない!」

 臨は苦しそうに槍を持つ右手を抑え込む。

『あ…あぁ! 舐めるなぁ!! 人間!』

「───くっ! 小雨…もっと…! 離れろ!」

 内面では激しい争奪戦が行われているのが分かる。
 レヴィアタンの口調と、臨の口調が目まぐるしく入れ替わる。

『殺す! 殺してやる!』

「……返せ…! オレの体を返せ!!」

 次の瞬間、突風とは違う圧が臨を中心に広がっていく。

「『はぁぁぁぁあああ!!!!』」

 

 直後、場を締め付けていた圧が弾け飛ぶ。

 小雨は、その衝撃に目を背け、慌てて目線を臨に戻す。

「……わぁぁ!」

 そこには左手に作った握りこぶしを高く掲げた臨の姿があった。

「…ははっ…か、勝った……」

 小雨には分かった。艶やかな茶髪と、綺麗な瞳。
 臨だ。打ち勝った。レヴィアタンに。

「り、臨…!」

 小雨はそんな臨に駆け寄る。

「えへへ…ありがとう…小雨…。あんたのおかげだよ…」

「え?」

「まぁ、難しい話なんだけどさ」

 臨はレヴィアタンに体を奪われる直前、自分の精神とレヴィアタンの精神をS《サイコキネシス》の能力で隔て、精神汚染を防いだものの、体は完璧にレヴィアタンに奪われてしまう。
 だが、臨には皮算用だが、作戦があった。
 レヴィアタンが臨の能力を乱発し、疲弊するのを待った。
 疲弊した直後、臨はレヴィアタンの精神を自らの能力で押し出す。能力を乱発し、脳が疲れているレヴィアタンは臨の精神を能力で抑え込むことが出来ずに、打ち負ける。
 今はレヴィアタンは臨の中で消滅した。

「な、なんかよく分からないけど…よかったぁ…臨ーー!」

 小雨は臨に抱きつく。
 2人とも体に力が入らないからかそのまま倒れ込んだ。
 その時、臨は気が付いた。
 小雨の体が妙に軽い事に。

「小雨…あんた…」

「うん…気づいちゃった? 私…もうそろそろ死んじゃうかも…」

「っ!!」

 小雨は先の能力全開放で生力の大半を使ってしまった。
 言わば、寿命を削ってしまったのだ。

「大丈夫だよ…もう後数日しか生きられないと思うけど…臨が助かってくれたんだもん! 私の目的は達成されたよ!」

 いつも通り、明るい笑顔を魅せる小雨。

「さて、立って? 臨…楓彩ちゃん達の所へ行こう?」

「う、うん…」

 臨は立ち上がって、小雨の肩を持ち槍を右手にスカイネクストへ向けて歩き始めた。

「小雨…本当にごめんなさい…オレ…オレ何かのために」

「臨だからだよ! 大丈夫だって! ショウちゃんが何とかしてくれるよ! きっと!」


 次の瞬間


────ズブッ


 そんな音共に臨は右手の槍で小雨の胸を刺し貫いた。

「───え?」

「───え?」

 2人とも、困惑した声をあげる。
 直後、臨は槍を手放し、自分の首を締め付け始める。

「──っ!!」

 小雨はうつ伏せに倒れ込んだ。

「───かひゅっ!! あぁ!」

 臨は一瞬で察しがついた。
 レヴィアタンは打ち負けてなどいなかった。臨が打ち勝つ瞬間、意識を臨の右腕だけに持って行ったのだ。
 そうなったらもう、体の主導権は握れない。
 右腕の中で反撃のチャンスを伺うという相打ち覚悟の作戦。

「レ、レヴィ…アタン!!」

 臨は地面に突き刺さった槍を拾い上げて自らの右腕を叩き切った。

「ぐぁぁあ!!」

 すかさず、槍を投げ捨てて小雨を隻腕で仰向けに抱き抱える。

「…こ、小雨! しっかりして! 小雨!!」

 臨は右肩に奔る激痛を無視して小雨の体を揺する。
 小雨は胸から多量の血を流しぐったりしていた。

「…り、臨……だい…じょう…ぶだよ…」

「うん! わかったから! 喋らないで!」

「いま…まで…一緒に…いてくれて…友達として…いてくれて…本当に…ありがとう……」

 最期と悟った小雨の言葉。
 小雨は臨の頬に手を触れさせる。

「だい…すきだよ……」

 臨の頬に触れていた手は重力に逆らわずに落ちた。

「………」

 臨はおもむろに空を見上げる日が落ちかけ、橙色になりつつある空。
 視界の中心には紫色の星。

「ごめんね…小雨…オレが弱いから」

 臨はそっと小雨の亡骸を抱きしめた。

────守れたのかな…私…おじいちゃんの言いつけ…守れたのかな…

────悔いは残る。けど悲しみは残さない。私は小雨と一緒にいたから──



 2人の周りに明るい紫色の光が降り注ぎ、やがて真っ白に染め上げた。





 その日、紫色の星、明けの明星が降り、セラフィスを更地にした。

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