生き残りBAD END

とぅるすけ

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終章

彼らは走る。自分が生きる、世界のために

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 小雨とレヴィアタンの戦闘は地下を抜け、戦場を移していた。
 地下何百mもの深さを突き上げるほどの火力を小雨は出したのだ。
 結果、大半の体力を使い果たしたが、レヴィアタンを外へ誘導することが出来た。

「っちっ! 外か────」

 レヴィアタンが小雨の開けた穴から地上に出た瞬間。
 光の雨が降り注ぐ。

「っ!!」

 レヴィアタンは傘状に展開したバリアで雨を防ぎ、念力で宙を舞う。

「しゃらくせぇ!! どこだ! 隠れてないで出てきやがれ──」

 レヴィアタンの後方、四時の方角から伸びた光はバリアによって阻まれる。
 
「ははっ! そこか!」

 振り向いた直後、前方、十一時の方角からもレーザーが飛んでくる。

「ちっ!」

 その時になって気づいた。四方八方、鏡のようなビルがレヴィアタンを囲んでいることに。

「そういう事か…」

 光の反射。それを利用した小雨の策略にまんまと引っかかった事にレヴィアタンは苛立ちを覚える。

「ゴミ虫が…」

 レヴィアタンは一度浮遊を止め、地に足を着ける。
 
「いいぜ? 遊んでやるよ」

 レヴィアタンは銀槍を構え、周囲に集中する。

────刹那

 先程とは比べ物にならないほど強大なレーザーが背後からレヴィアタンへ向けて伸びてくる。
 それをレヴィアタンは銀槍で打ち払う。

「っ!」

 ビルとビルの間の闇から小雨は姿を現した。

「いいよ…もう…こうやってても決着はつかない…。臨を長く苦しませないように…」

 直後、小雨の体が黄金のオーラを帯び始めた。

「っ!?」

「…あんたのために…! 使ってやるよ! “とっておき”を!!」

 小雨の両手首から指先の先にかけて、黄金の刃が形成される。
 小雨は周囲の熱を両手首に集めるだけではなく、体全身に熱エネルギーを溜め込み、自身を炉心とした。
 こうなった小雨の体はもう持たない。助かったとしても後遺症は残るだろう。
 だが、この状態が小雨の最強の形態だ。生物を超えたスピード、パワーを得ることが出来る。


────刹那


 レヴィアタンの周りを囲っていた重力のバリアは力によって粉砕され、それに驚いたレヴィアタンは大勢を崩しながらも銀槍で防ぐ。

「───っ!!」

「───止まってる暇なんかないぞ!!」

 更に刹那の内に数多の斬撃と斬撃は交わされた。
 
「くっ! 人間ごときに!」

「───っ!」





 その頃、ショウは天井から垂れ下がった電圧線と暗闇の中、ハワイ島からの使者──ケルト・ローレンスと、銃撃戦を行っていた。

「はぁ…はぁ…」

 今は遮蔽物に隠れて、ケルトの位置と武器を探っていた。

「拳銃、手榴弾2個…あとはレイピアの柄? かな…」

 彩楓達と別れた今、楓彩の位置を知るのは恐らく遊撃の真希菜か、運が良ければ彩楓も知っているだろう。
 ショウはケルトの圧倒的な戦闘力に苦戦を強いていた。

「こっちの残ってる武装は拳銃2丁と短剣3本。そして…ブリュンヒルデ…」

 ショウの武器を代表する銃──ブリュンヒルデ。
 これはショウが頭で思い描いた物に変形するという万能な代物だ。

 だが、ケルトは見るからに近接戦の方が強いだろう。
 近接戦ではショウに勝ち目はない。
 しかし、これまでの銃撃戦でも、こちらが放った弾丸を撃ち抜くなど、ショウにも匹敵する射撃精度を魅せている。

「こりゃ、逃げるが勝ちか?」

 その時、彩楓、真希菜、小雨、楓彩の姿が頭を過ぎる。

「そうは行かない…奴を倒す…考えろ…私の頭ならいける…考えろ」

 ショウは全ての神経を研ぎ澄ます。
 遠くの方で壁を突き抜けて聞こえる多数の銃声。これは真希菜の戦闘だろう。
 斬撃と斬撃が絶え間なくぶつかり合う甲高い音。これは彩楓の戦闘力だろう。

 そして、右の壁の向こう、通路の突き当たり右側から近づいてくる足音───1人。

「そこか…」

 ショウは短剣と拳銃を構えその場から足音が聞こえた元へと向かう。足音を立てないように、息を殺して。

「───こんにちは」

────刹那

 背後から銃撃、では無く、鋭い一突き。
 それはショウの髪の毛を突き抜け、空を切る。

「───っ!」

 ショウはケルトがUZI、短機関銃を発砲しながら銃口を薙ぎ払ってきたのに鋭く反応し、片手でバク転して交わす。

「ちっ!」

「ほらほらーぬるいぞー」

 ショウが大勢を立て直した時にはケルトは眼前まで迫っていた。

「っ!」

 ケルトはショウの短剣を持っている方の手をつかみあげ、拳銃を持っている方の手を右足で壁に押さえつける。

「くっ!!」

「ふーん…君は能力者じゃないのか…。ていうか美人だね…」

 ケルトはショウの右目を隠している前髪を退ける。

「…くっ!」

「ほら、美人だ…。ハワイ島で一緒に暮らさない?」

 何とも、緊張感の無い発言だろう。
 ショウは舐められていことに気付き、睨みつける。

「おぉ、怖い怖い…それも美しいけど」

「…ぺっ」

 ケルトの顔に唾をはきかけるショウ。

「お前なんかに負けるか…バカ野郎」

───刹那

 ショウの右胸の当たりから、銀色で鋭利な鉄が突出し、ケルトの左胸を突き刺す。
 
「(狙いがそれた!)」

 ケルトの力が緩んだ瞬間にショウは銃を構える。
 だが、ケルトの方が構える速度が速かった。
 それに気づいたショウは再度、右胸のブリュンヒルデをトゲ状に前方へ向けて拡散し、ケルトの武装の大半を破壊することに成功する。

「───っな!?」

 その攻撃は効果的でケルトの左足も貫いた。
 ケルトは大勢を崩す。
 それを見逃さなかったショウは胸元からブリュンヒルデを取り出し、剣に形を変化させて迫撃する。
 しかし、ケルトはレイピアの柄を握り、刀身を出現させながら応戦する。

 ショウの剣の刀身は砕かれた。

「───っ!?」


────刹那

 
 ケルトの強烈な突きはショウの左肩を貫き、壁に突き刺さった。

「──かはっ!」

 ケルトは右腰についているガンホルダーから拳銃を取り出し、ショウの右太ももを撃ち抜く。

「───くぁぁあ!!」

 ショウの悲痛な叫びが暗い中に響く。

「ごめんごめん、ちょっとやり返した…うん、苦しいのは可愛そうだからとどめを刺すね?」

 ケルトはショウの額に拳銃の銃口を接触させる。

「───お前が先に逝け!!」

 ケルトが引き金を引くよりも速く、大量の銀棘がケルトの首、胸、左腰を背後から貫き、ショウを目前に止まる。
 ショウの体はケルトの血で赤く染まった。

「──かはっ!」

「美人って…いったよね…可愛い子には棘があるんだよ…バーカ」

 ショウはケルトの持っていた銃を奪い、ケルトの眉間に1発撃ち込んだ。

 先程ショウを助けたのはブリュンヒルデだ。
 砕かれたショウの剣の破片。それは棘となってケルトの背後を取っていた。
 頭の回転、どんな窮地でも考え続けるショウの才能が輝いた。

 ショウは右足を重そうに引きずりながら、彩楓達と合流すべく暗闇の中を進む。



 その頃、彩楓はケルトの補佐と対峙していた。
 金髪に、迷彩服の割には首からチャラいネックレスを掛け、彼の緊張感のなさを模していた。

「やるっすね…あんた」

「貴様も若い割にはなかなかの手練の様だな」

「まぁ、そうっすね」

 その男は多種多様に変化する心鉄器を駆使し彩楓に苦戦を強いていた。
 恐ろしいのは武器ではない。彼の術技だ。
 日本刀、短剣、槍、三節棍、拳銃その他にも色々な武器を自在に操っていた。

「(くっ…目まぐるしく変わる戦略…頭が追いつかねぇ…)」

 更には彩楓は能力無しというハンデも課せられていた。

「さてと…もうそろそろ決着をつけるっすよ」

 チャラい男は槍を二つに折り、片方を日本刀、もう片方を長槍に変化させる。
 左手に刀、右手に長槍。

「……」

 チャラい男の柔和な顔が一瞬にして獲物を狩る狩人の目になった。

───刹那

 彩楓の顔の右側を鋭利な一突きが通った。
 直後、左側から、日本刀が迫り、彩楓はそれを切り上げた後、槍のリーチの外に出るために後ろへ下がる。
 
「ちっ! (まるで2人に攻められているみたいだ…槍兵と剣士…。この場…一対一ではないな…二対一、いや、それ以上か)」

 男は距離を詰め、日本刀で攻撃し、少し離れたなら長槍で迫撃する。
 だが、彩楓はそんな彼の短所を見つけていた。
 しかしそれは彩楓がテレポートを使わなければ勝てないという事を指していた。

「ちっ! (前面への圧倒的な反応速度、弱点があるとすれば背後だな…。テレポートを使えば一瞬で片がつく)」

 槍は前方に長く、刀は横の広範囲を捉える。しかし、背後を攻撃するには振り向くという行動を取るので前方よりは反応が遅れる。
 彼が背面で攻撃しようものなら、それは武器を弾くチャンスになるということ。

「(一か八か…持ってくれよ…体!)」

「さぁ、終わりっす!」


────刹那


 彩楓は、鞘を腰から抜き取り、日本刀を弾くと、先行してきた槍を蹴り上げる。

「───っ!?」

 男は、慌てずに蹴られた槍をそのまま縦に回転させて、再度鋭い突きを繰り出した。

───刹那

 彩楓はテレポートし、男の突きは空を切った。

「──何っ!?」

 男は背後から感じた殺気を信じて鞘で弾かれた刀で振り向きざまに切りかか───

「───あまい!」

 彩楓は手首ごと日本刀を切り上げ、男が痛みを感じ、槍で迫撃を仕掛けるよりも先に首をはねた。

「───」

 彩楓に血の雨が降り注ぐ。

「かはっ!」

 彩楓の吐血を隠すように。




 その頃、真希菜は最後の1人を追い詰めていた。

「覚悟を…」

「や、やめて! …し、死にたくない…」

 女性の声だ。
 左腕は無く、脚もズタズタ。生きている方が辛いだろう。

「……」

 その時、真希菜は目にしてしまった。
 地面に転がる彼女の左腕、その薬指には指輪がはめてあった。

「か、…帰らなきゃ…愛する人がいる…!」

「……」

 彼女の目は段々と光を失ってくる。放っておいても死ぬだろう。

「自分は…任務を果たすだけですので…」

 真希菜は容赦なく彼女にとどめを刺す。

────なんだろう…この気持ち…

────前にも…こんな

 


────おかえり、真希菜…今日もお疲れ様

「はい…朝日さん…どうせ自分は朝日さんの性玩具でしかないので…」

────そんなことねぇぞ?

「え?」

────俺、人を愛した…失いたくないと思ったのは久しぶりだよ…。ずっと一緒にいてくれるよな? 真希菜…

「……朝日さんが望むなら…自分は」

───望んでるのは俺だが、そうしたいのはお前だろ?

「っ!」




────なんで…今になって思い出してしまうのだろう…

────自分には…もう…何も残っていないのに…

────自分が生きているから…思い出してしまう…

────もう…自分を導いてくれる人は…いない…

────なら…せめて仇だけでも…


 真希菜は歩き出した。あてもなく、目的だけを持って。



「おしまいだ…人間…少し楽しかったぞ…」

 レヴィアタンは肩で息をしてスタミナ切れで膝まづく小雨を見下ろしていた。
 辺りに建っていたビルのいくつかは消滅している風景からその戦闘の凄まじさが伺える。

「死ね…」

「はぁ…はぁ…。…ん?」

「あ…あれ?」

 レヴィアタンは念力で小雨を潰そうと試みるが、何故か、念力が発動しない。

「…ははっ! お前もスタミナ切れか!」

 小雨は辛そうな表情で立ち上がった。

「(だめだ…頭がボーッとする…)」

「…ちっ」

 レヴィアタンは銀槍を握りしめて、小雨に近づく。

「…やるじゃん…」

 直後、レヴィアタンの脳内に稲妻が奔る。

「くっ!! あぁぁあ!!」

 レヴィアタンは頭を抱えて倒れ込む。

「ま、まさかっ…! 貴様ぁぁぁあ!!」

「な、何っ!?」


 
 
 
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