153 / 159
終章
人生の支え
しおりを挟む
───臨との出会いはいつだっだろうか、ずいぶん昔の話だった気がする
───G,S,Aの入隊試験の時、たまたま席が隣になっただけ。やけに美人だったから気になって名前を知った
臨には親がいない。その強力過ぎる力故に不気味に思った両親が道端に捨ててしまったのだ。
そんな彼女を拾ったのは今は亡き槍術の師、帝 (みかど) 頴禅(えいせん)だった。
だが、頴禅も歳で、臨が槍術を極めた18歳の時に寿命で息を引き取る。
────その話をたまたま上官から盗み聞いてから臨の事が放っておけなくなった。
────まぁ? その後すぐに離れ離れになっちゃうし、向こうも私の事なんか気にも留めなかったから私の片思いなんだけどね
臨はG,S,Aの試験を首席で通過。
小雨は上位だっものの、西支部へ移動した。
────でも私は臨の事を思い続けた…なぜかって? そりゃ…似てるからでしょ? 私と
臨と違って、親の顔を知ってる。
臨と違って、兄がいて途中まで辛いことをわかちあえた。
臨と違って、失ったものが多い。
けど、同じところがある。
1人だ。小雨も臨も。
────頑張ったなぁ…本部勤務できるまで…臨の所に行けるまで…死にものぐるいで仕事して目立ったなぁ…
────でも、いざ、本部勤務して見れば、臨は恋してる様子でボーッとしてたな…。もちろん1人で
────最初は私に話されただけで、あたふたしてた女の子は今では表情豊かに感情表現するようになって…最後まで剣得くんに想いは伝えられなかったけど、臨は頑張ってた思うよ、最初から…
────だから! 最後まで! 臨を頑張らせろ!!
異能の勝負。
臨の体を纏ったレヴィアタンが放つ雨のように繰り出される重力波。
小雨はそれに装備を潰されながらも致命傷は避け、針の刀ながらも、レーザーで反撃していた。
「アハハハっ!! ほらほら! 攻撃を1発でも当ててみろよ!」
小雨の放つレーザーは毎回レヴィアタンの目前で離散してしまう。
小雨は一度、遮蔽物に身を潜める。
「…はぁ…はぁ…(1発でも当たったら即死か…これ…見えないけど、狙いを定めなけれはならないことは知ってる…なら、動き続ければいい! 後は向こうのスタミナ切れを待つのみ!)」
体力には自身がある小雨が出した作戦だ。
「お? 今度は隠れんぼかな? だけど!」
レヴィアタンを中心にクレーターが広がっていく。
「っ! (まずいな…このままじゃ、崩れ落ちる…なら、外に出た方が吉かな…)」
小雨は不思議と勝機を感じていた。
その正体とは、
「っ! ちっ! …この能力、割と頭に来るな…」
頭を抑えて、苦い顔をする
そう、臨の能力のデメリットを小雨は知っていた。
「(やっぱり、臨の能力のままなんだ…)」
小雨は屋内での戦闘は危険と判断し、外への脱出路を探す。
「壊すしか…ないか…(あれを使うのかぁ…やだなぁ…)」
小雨の火力で、ここから地上をまで吹き飛ばし、退路を作ることは出来るが、それには大きなリスクが伴う。
「よし!」
小雨は覚悟を決めた。
その頃、ショウ、楓彩、彩楓は真希菜の体が通った破壊後をたどって真希菜の捜索をしていた。
「どこまで飛んでったんだ! あいつ!」
「大丈夫! あの子は強いし、そう簡単には壊れない!」
次の瞬間、とてつもない突風とすれ違う。
「───きゃっ!!」
「っ!!」
「くっ!」
3人は一斉に振り返る。
「い、今の…真希菜…さん?」
楓彩には見えなかったが、恐らく、そうだろう。
彩楓とショウが焦っていないのが証拠だ。
少しすると、3人の視界の奥の方から橙色の炎を尾に引きながら、真希菜が帰ってくる。
「みなさん! 無事でしたか!」
真希菜は両腕のジェットを前に突き出し、ブレーキをした後に着地する。
「うん、真希菜も無事? 損傷は?」
「大丈夫です、システムの一部はレッドですが…」
「それって?」
「生命探知機能が潰されました…」
「わかった、それだけ?」
「はい」
「よし、小雨が戦闘中だ、今すぐ応援に迎えるかな。私達は最下層まで降りてから戦闘に加わる」
「了解しました───」
真希菜、楓彩、ショウは彩楓に突き飛ばされる。
直後、天井が崩落し、彩楓はその瓦礫を素早く抜刀し粉々にするが、一片が頭に当たってしまう。
「くっ!」
ショウは瞬時に状況を理解し、真希菜と楓彩を遮蔽物まで引っ張る。
遅れて彩楓も遮蔽物に隠れる。
「彩楓…! 大丈夫?」
声にならない声で、彩楓に呼びかけるショウ。
しかし、彩楓は無言でショウの口を右手で塞ぐ。
彩楓のその頭からは血が滴っていた。
「さーて? ビンゴかな?」
開いた天井から、武装した兵士数人と、ケルト・ローレンスが降りてくる。
「地下なら瘴気がありませんからね…生体反応、近いです…恐らくそこの角かと思われます」
「おっけい! やっちゃって!」
────刹那
近づいてきた5人の兵士の首をはねる彩楓。
続いて、ケルトの首を取ろうと迫り、一閃入れるが、1人の隊員に阻まれてしまう。
「ちっちー…甘いっスよ! 能力者!」
その2人の背後からさらに増援が来てしまい、彩楓は一度テレポートで近くの遮蔽物に隠れる。
「はぁ…はぁ…はぁ…っ! (1回でもキツイな…テレポート…。もう1回!)」
彩楓はもう1度テレポートでショウ達が隠れている遮蔽物に移動する。
「かはっ!!」
着地した直後に盛大に吐血する彩楓。
「ちょっ!? 彩楓!?」
「大丈夫だ…! とにかくだ! 時間が無い! 真希菜は雑魚どもを掃討してくれ…。ショウ…お前はケルトを頼む。俺はあいつの隣にいる敵だ…奴は危険だ…」
「彩楓!? 何を考えて…」
その時、ショウと彩楓の目が合う。
「っ!」
本気の目、冗談の入混じらない瞳。
ショウでは下せない決断を、指示を、彩楓は出した。
「楓彩…これをやる…思ったより邪魔だ」
彩楓は左腰に差していた日本の刀の内、短い方。楓彩の愛刀を楓彩に渡す。
「え? これは?」
「? お前の刀だろ…」
彩楓は即座に察した。
「(それすらも覚えてないか…)」
「まって! 私はケルトの相手をするとして、楓彩は? 楓彩は誰が守るの?」
そうだ、こうなると戦える3人は自分のことで手一杯になってしまい、楓彩がガラ空きになる。
さらに不味いことにケルトの狙いも生存者《サバイバー》を宿している楓彩だ。
「…とにかく走れ…後ろは振り向くな、俺らが守るから…」
「……走る…」
「お前の得意技だろ?」
次の瞬間、3人の近くに何か丸いものが投げ込まれる。
即座に反応した真希菜はそれをキャッチして投げ返す。
兵士達の焦りの悲鳴の後すぐに爆発音が響く。
それを合図に、真希菜は飛び出した。
「それしかありません! 鬼月さん! 走ってください! 背中は自分達が守ります!」
「仕方ない! やるよ! 彩楓! 楓彩!! とにかく走れ!!」
2人は応戦しながら、二手に別れる。
「頼んだぞ! 退路を開く!」
彩楓は屈んでいる楓彩の頭を強く撫でるとショウ達に続いて退路を開きに先陣を切った。
「「「走れーー!!」」」
「っ!」
楓彩は走り出した。
何も考えず、危険なことは味方に任せて。
みんなのために、自分のために。
───G,S,Aの入隊試験の時、たまたま席が隣になっただけ。やけに美人だったから気になって名前を知った
臨には親がいない。その強力過ぎる力故に不気味に思った両親が道端に捨ててしまったのだ。
そんな彼女を拾ったのは今は亡き槍術の師、帝 (みかど) 頴禅(えいせん)だった。
だが、頴禅も歳で、臨が槍術を極めた18歳の時に寿命で息を引き取る。
────その話をたまたま上官から盗み聞いてから臨の事が放っておけなくなった。
────まぁ? その後すぐに離れ離れになっちゃうし、向こうも私の事なんか気にも留めなかったから私の片思いなんだけどね
臨はG,S,Aの試験を首席で通過。
小雨は上位だっものの、西支部へ移動した。
────でも私は臨の事を思い続けた…なぜかって? そりゃ…似てるからでしょ? 私と
臨と違って、親の顔を知ってる。
臨と違って、兄がいて途中まで辛いことをわかちあえた。
臨と違って、失ったものが多い。
けど、同じところがある。
1人だ。小雨も臨も。
────頑張ったなぁ…本部勤務できるまで…臨の所に行けるまで…死にものぐるいで仕事して目立ったなぁ…
────でも、いざ、本部勤務して見れば、臨は恋してる様子でボーッとしてたな…。もちろん1人で
────最初は私に話されただけで、あたふたしてた女の子は今では表情豊かに感情表現するようになって…最後まで剣得くんに想いは伝えられなかったけど、臨は頑張ってた思うよ、最初から…
────だから! 最後まで! 臨を頑張らせろ!!
異能の勝負。
臨の体を纏ったレヴィアタンが放つ雨のように繰り出される重力波。
小雨はそれに装備を潰されながらも致命傷は避け、針の刀ながらも、レーザーで反撃していた。
「アハハハっ!! ほらほら! 攻撃を1発でも当ててみろよ!」
小雨の放つレーザーは毎回レヴィアタンの目前で離散してしまう。
小雨は一度、遮蔽物に身を潜める。
「…はぁ…はぁ…(1発でも当たったら即死か…これ…見えないけど、狙いを定めなけれはならないことは知ってる…なら、動き続ければいい! 後は向こうのスタミナ切れを待つのみ!)」
体力には自身がある小雨が出した作戦だ。
「お? 今度は隠れんぼかな? だけど!」
レヴィアタンを中心にクレーターが広がっていく。
「っ! (まずいな…このままじゃ、崩れ落ちる…なら、外に出た方が吉かな…)」
小雨は不思議と勝機を感じていた。
その正体とは、
「っ! ちっ! …この能力、割と頭に来るな…」
頭を抑えて、苦い顔をする
そう、臨の能力のデメリットを小雨は知っていた。
「(やっぱり、臨の能力のままなんだ…)」
小雨は屋内での戦闘は危険と判断し、外への脱出路を探す。
「壊すしか…ないか…(あれを使うのかぁ…やだなぁ…)」
小雨の火力で、ここから地上をまで吹き飛ばし、退路を作ることは出来るが、それには大きなリスクが伴う。
「よし!」
小雨は覚悟を決めた。
その頃、ショウ、楓彩、彩楓は真希菜の体が通った破壊後をたどって真希菜の捜索をしていた。
「どこまで飛んでったんだ! あいつ!」
「大丈夫! あの子は強いし、そう簡単には壊れない!」
次の瞬間、とてつもない突風とすれ違う。
「───きゃっ!!」
「っ!!」
「くっ!」
3人は一斉に振り返る。
「い、今の…真希菜…さん?」
楓彩には見えなかったが、恐らく、そうだろう。
彩楓とショウが焦っていないのが証拠だ。
少しすると、3人の視界の奥の方から橙色の炎を尾に引きながら、真希菜が帰ってくる。
「みなさん! 無事でしたか!」
真希菜は両腕のジェットを前に突き出し、ブレーキをした後に着地する。
「うん、真希菜も無事? 損傷は?」
「大丈夫です、システムの一部はレッドですが…」
「それって?」
「生命探知機能が潰されました…」
「わかった、それだけ?」
「はい」
「よし、小雨が戦闘中だ、今すぐ応援に迎えるかな。私達は最下層まで降りてから戦闘に加わる」
「了解しました───」
真希菜、楓彩、ショウは彩楓に突き飛ばされる。
直後、天井が崩落し、彩楓はその瓦礫を素早く抜刀し粉々にするが、一片が頭に当たってしまう。
「くっ!」
ショウは瞬時に状況を理解し、真希菜と楓彩を遮蔽物まで引っ張る。
遅れて彩楓も遮蔽物に隠れる。
「彩楓…! 大丈夫?」
声にならない声で、彩楓に呼びかけるショウ。
しかし、彩楓は無言でショウの口を右手で塞ぐ。
彩楓のその頭からは血が滴っていた。
「さーて? ビンゴかな?」
開いた天井から、武装した兵士数人と、ケルト・ローレンスが降りてくる。
「地下なら瘴気がありませんからね…生体反応、近いです…恐らくそこの角かと思われます」
「おっけい! やっちゃって!」
────刹那
近づいてきた5人の兵士の首をはねる彩楓。
続いて、ケルトの首を取ろうと迫り、一閃入れるが、1人の隊員に阻まれてしまう。
「ちっちー…甘いっスよ! 能力者!」
その2人の背後からさらに増援が来てしまい、彩楓は一度テレポートで近くの遮蔽物に隠れる。
「はぁ…はぁ…はぁ…っ! (1回でもキツイな…テレポート…。もう1回!)」
彩楓はもう1度テレポートでショウ達が隠れている遮蔽物に移動する。
「かはっ!!」
着地した直後に盛大に吐血する彩楓。
「ちょっ!? 彩楓!?」
「大丈夫だ…! とにかくだ! 時間が無い! 真希菜は雑魚どもを掃討してくれ…。ショウ…お前はケルトを頼む。俺はあいつの隣にいる敵だ…奴は危険だ…」
「彩楓!? 何を考えて…」
その時、ショウと彩楓の目が合う。
「っ!」
本気の目、冗談の入混じらない瞳。
ショウでは下せない決断を、指示を、彩楓は出した。
「楓彩…これをやる…思ったより邪魔だ」
彩楓は左腰に差していた日本の刀の内、短い方。楓彩の愛刀を楓彩に渡す。
「え? これは?」
「? お前の刀だろ…」
彩楓は即座に察した。
「(それすらも覚えてないか…)」
「まって! 私はケルトの相手をするとして、楓彩は? 楓彩は誰が守るの?」
そうだ、こうなると戦える3人は自分のことで手一杯になってしまい、楓彩がガラ空きになる。
さらに不味いことにケルトの狙いも生存者《サバイバー》を宿している楓彩だ。
「…とにかく走れ…後ろは振り向くな、俺らが守るから…」
「……走る…」
「お前の得意技だろ?」
次の瞬間、3人の近くに何か丸いものが投げ込まれる。
即座に反応した真希菜はそれをキャッチして投げ返す。
兵士達の焦りの悲鳴の後すぐに爆発音が響く。
それを合図に、真希菜は飛び出した。
「それしかありません! 鬼月さん! 走ってください! 背中は自分達が守ります!」
「仕方ない! やるよ! 彩楓! 楓彩!! とにかく走れ!!」
2人は応戦しながら、二手に別れる。
「頼んだぞ! 退路を開く!」
彩楓は屈んでいる楓彩の頭を強く撫でるとショウ達に続いて退路を開きに先陣を切った。
「「「走れーー!!」」」
「っ!」
楓彩は走り出した。
何も考えず、危険なことは味方に任せて。
みんなのために、自分のために。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる