157 / 159
終章
私/俺は…いるよ…
しおりを挟む
「ハァ……ハァ……────」
暗く長い廊下に少女の吐く吐息と、足音が響く。
短くなった髪の毛が揺られて、頬に当たる。
左手に握られた、さやに収められた日本刀は少 女の数少ない仲間が託してくれた物だ。
外の光が見え、その光は次第に大きくなり少女───鬼月 楓彩を包む。
楓彩はとある施設の廊下を走っていたが、廊下は途中で無くなり、更地となった外に繋がっていた。
そして…
絶句した。
「っ!! ─────」
紅く染まった空の下、楓彩の前に立ちはだかる人物。
長く伸びた黒髪はかかとまで伸びている。
「……鬼月 楓彩…久しぶりだね……ボクはキミを待っていたよ……」
髪の長い少女は楓彩の肌がピリピリとするほどの凄まじい殺気を放つ目で楓彩を見つめていた。
「あなたが…ルシファー…」
────分かる…この人は敵だ
楓彩は左手に握りしめていた日本刀を覚悟を決めて静かに抜刀する。
それを見て髪の長い少女は殺気ばしった目を向けたまま、不敵な笑みを浮かべる。
戦力差は圧倒的、楓彩の消失してしまった能力は頼ることが出来ない。
絶望的。
生存は不可能。
分かっていた、こうなることも。
しかし、挑まなければ、楓彩自身も、これまで犠牲になった命も報われない。
勝負は今…この時。
「始めようか……鬼月 楓彩!!」
───そう、始めよう私の「存在証明」を!! ──────
─────刹那
目にも止まらぬスピードでルシファーの両腕は刃に変形しながら伸びてきた。
「───」
楓彩は直感で1本の触手を弾いた。
運がいいことに、弾いた触手と迫っていた触手が衝突し、その攻撃で楓彩にはかすり傷もつかなかったが、凄まじい衝撃で楓彩の体は軽く吹き飛んだ。
「──きゃあ!」
楓彩は手首を傷めたのか、刀を持つ右手首を抑える。
「っ…!」
────痛い…怖い…寂しい…
「あれ? 鬼月 楓彩と戦えばアスモデウスも同時に出てくるはずなんだけど…おかしいなぁ…」
「……」
楓彩は立ち上がろうと地面に手を着いたその時、
「!?」
立ち上がろうとして初めて気がついた。
「あれ…腰に…力が…」
心より先に、体が恐怖に臆していた事に。
呆れた顔でルシファーが歩み寄ってくるのが見える。
「あ…やだ…! 立ってください…! お願いだから!」
楓彩は自分の足を焦った様子で強く叩く。
「ほんっとに詰まらねぇな! もういいや死体だけ頂くよ…」
ルシファーは再度、両腕の先に扇状の刃を生成し、うねらせる。
「うーん…首を切り落として、食べやすいように輪切りにするか…それともサイコロ状にする?」
「い、いや…来ないで…」
「えへへ…ボクそういう恐怖に歪んだ顔好きかも…」
直後、ルシファーは風を切る高い音と共に触手を楓彩へ伸ばしてきた。
「──ひっ!」
楓彩は目を閉じた。もう開くことは無いかもしれない。そう、思いながら。
────ガキンッ!
甲高い金属音。
楓彩は静かに目を開ける。
目の前に建っていた銀髪を一つにまとめた女性。
肩から伸びた銀色の機械仕掛けの両腕が目に止まる。
「目標を確認…そこのあなた…逃げてください…ここにいては危険です」
「あ、あなたは…」
「自分は大丈夫です…機械ですので…あなたは違う…逃げてください」
「え…でも……」
銀髪の女性は振り返る。
機械とは思えないほど精巧な、美しい顔。
「ん? あなた…どこかで…」
不思議そうな顔をする銀髪の女性。
だが、直ぐにルシファーの方を向いて肘から刃を出す。
「まったく…毎回毎回、邪魔ばっかり!」
────刹那
楓彩の目の前で、刃と刃が目にも止まらぬスピードでぶつかり合う。
銀髪の女性のありえない反応速度で迫り来る無数の触手を薙ぎ払っていた。
「…す、すごい…」
楓彩は刀を拾い、立ち上がる。
────心強い…
楓彩は彼女に希望を託して後退ろうと、した。
────刹那
白髪の女性の右腕が宙を舞った。
「あ」
「───っ!」
それを機に触手は引いていき、ルシファーの腕は原型に戻る。
銀髪の女性は体制を立て直し、残された腕の武装を展開する。
「ちっ!」
────刹那
青白く発光した光を尾に銀髪の女性は目にも止まらぬスピードで直角的な動きをする。
「──」
ルシファーも触手を伸ばして銀髪の女性の攻撃を弾き始める。
「動きは速いか……でもさ…」
───刹那
銀髪の女性はルシファーの背後を捉えた。
そして掌底を光らせルシファーへ向ける。
「吹き飛べ───」
───刹那
彼女の左腕前腕は輪切りにされた。
「───!?」
「あまいんだよ…バーカ」
銀髪の女性から青白い光が引いていき、無造作に落下する。
「あ…ぁ…あ…」
銀髪の女性が失くなった腕を使って立ち上がろうとした直後、3本の触手が女性の腹部を貫く。
「──あっ!!」
「………っ」
楓彩はあまりの衝撃に声が出なかった。
「んー…自爆されると困るから…」
ルシファーの腕が女性の首元に伸びる。
────はぁ…自分は結局何一つできなかった
────最後まで…木偶の坊…
───────バスッ!
そんな鋭い音と共に綺麗な銀髪は散った。
「…あ…」
楓彩はまたしても絶望の淵に立たされる。
「さてと…」
「い、いや…来ないで…」
ルシファーは機嫌が悪そうな顔をして歩み寄ってくる。
「……」
「こ…来ないで…」
「ふっ」
口角をあげて右腕を2本に枝分かれさせる。
「哀れだな…アスモデウス…命乞いか…」
「や……やだ……来ないで…」
2本の触手は風邪を切る音を出して楓彩に迫る。
「──嫌っ!!」
───刹那
楓彩に迫っていた触手は青白い雷に焼き切られる。
「聞いたぜ…お前の助けを求める声…」
「……え…?」
楓彩は目を開き、楓彩の前に立つフードを被った男を見る。
「悪ぃが、俺は今…何でもいいから守りたい衝動に駆られていてな…」
「あ、あなたは…」
迸る雷鳴。
楓彩の肌を刺激する電気。
「俺か? …俺は神ヶ丘 瑛太だ──」
暗く長い廊下に少女の吐く吐息と、足音が響く。
短くなった髪の毛が揺られて、頬に当たる。
左手に握られた、さやに収められた日本刀は少 女の数少ない仲間が託してくれた物だ。
外の光が見え、その光は次第に大きくなり少女───鬼月 楓彩を包む。
楓彩はとある施設の廊下を走っていたが、廊下は途中で無くなり、更地となった外に繋がっていた。
そして…
絶句した。
「っ!! ─────」
紅く染まった空の下、楓彩の前に立ちはだかる人物。
長く伸びた黒髪はかかとまで伸びている。
「……鬼月 楓彩…久しぶりだね……ボクはキミを待っていたよ……」
髪の長い少女は楓彩の肌がピリピリとするほどの凄まじい殺気を放つ目で楓彩を見つめていた。
「あなたが…ルシファー…」
────分かる…この人は敵だ
楓彩は左手に握りしめていた日本刀を覚悟を決めて静かに抜刀する。
それを見て髪の長い少女は殺気ばしった目を向けたまま、不敵な笑みを浮かべる。
戦力差は圧倒的、楓彩の消失してしまった能力は頼ることが出来ない。
絶望的。
生存は不可能。
分かっていた、こうなることも。
しかし、挑まなければ、楓彩自身も、これまで犠牲になった命も報われない。
勝負は今…この時。
「始めようか……鬼月 楓彩!!」
───そう、始めよう私の「存在証明」を!! ──────
─────刹那
目にも止まらぬスピードでルシファーの両腕は刃に変形しながら伸びてきた。
「───」
楓彩は直感で1本の触手を弾いた。
運がいいことに、弾いた触手と迫っていた触手が衝突し、その攻撃で楓彩にはかすり傷もつかなかったが、凄まじい衝撃で楓彩の体は軽く吹き飛んだ。
「──きゃあ!」
楓彩は手首を傷めたのか、刀を持つ右手首を抑える。
「っ…!」
────痛い…怖い…寂しい…
「あれ? 鬼月 楓彩と戦えばアスモデウスも同時に出てくるはずなんだけど…おかしいなぁ…」
「……」
楓彩は立ち上がろうと地面に手を着いたその時、
「!?」
立ち上がろうとして初めて気がついた。
「あれ…腰に…力が…」
心より先に、体が恐怖に臆していた事に。
呆れた顔でルシファーが歩み寄ってくるのが見える。
「あ…やだ…! 立ってください…! お願いだから!」
楓彩は自分の足を焦った様子で強く叩く。
「ほんっとに詰まらねぇな! もういいや死体だけ頂くよ…」
ルシファーは再度、両腕の先に扇状の刃を生成し、うねらせる。
「うーん…首を切り落として、食べやすいように輪切りにするか…それともサイコロ状にする?」
「い、いや…来ないで…」
「えへへ…ボクそういう恐怖に歪んだ顔好きかも…」
直後、ルシファーは風を切る高い音と共に触手を楓彩へ伸ばしてきた。
「──ひっ!」
楓彩は目を閉じた。もう開くことは無いかもしれない。そう、思いながら。
────ガキンッ!
甲高い金属音。
楓彩は静かに目を開ける。
目の前に建っていた銀髪を一つにまとめた女性。
肩から伸びた銀色の機械仕掛けの両腕が目に止まる。
「目標を確認…そこのあなた…逃げてください…ここにいては危険です」
「あ、あなたは…」
「自分は大丈夫です…機械ですので…あなたは違う…逃げてください」
「え…でも……」
銀髪の女性は振り返る。
機械とは思えないほど精巧な、美しい顔。
「ん? あなた…どこかで…」
不思議そうな顔をする銀髪の女性。
だが、直ぐにルシファーの方を向いて肘から刃を出す。
「まったく…毎回毎回、邪魔ばっかり!」
────刹那
楓彩の目の前で、刃と刃が目にも止まらぬスピードでぶつかり合う。
銀髪の女性のありえない反応速度で迫り来る無数の触手を薙ぎ払っていた。
「…す、すごい…」
楓彩は刀を拾い、立ち上がる。
────心強い…
楓彩は彼女に希望を託して後退ろうと、した。
────刹那
白髪の女性の右腕が宙を舞った。
「あ」
「───っ!」
それを機に触手は引いていき、ルシファーの腕は原型に戻る。
銀髪の女性は体制を立て直し、残された腕の武装を展開する。
「ちっ!」
────刹那
青白く発光した光を尾に銀髪の女性は目にも止まらぬスピードで直角的な動きをする。
「──」
ルシファーも触手を伸ばして銀髪の女性の攻撃を弾き始める。
「動きは速いか……でもさ…」
───刹那
銀髪の女性はルシファーの背後を捉えた。
そして掌底を光らせルシファーへ向ける。
「吹き飛べ───」
───刹那
彼女の左腕前腕は輪切りにされた。
「───!?」
「あまいんだよ…バーカ」
銀髪の女性から青白い光が引いていき、無造作に落下する。
「あ…ぁ…あ…」
銀髪の女性が失くなった腕を使って立ち上がろうとした直後、3本の触手が女性の腹部を貫く。
「──あっ!!」
「………っ」
楓彩はあまりの衝撃に声が出なかった。
「んー…自爆されると困るから…」
ルシファーの腕が女性の首元に伸びる。
────はぁ…自分は結局何一つできなかった
────最後まで…木偶の坊…
───────バスッ!
そんな鋭い音と共に綺麗な銀髪は散った。
「…あ…」
楓彩はまたしても絶望の淵に立たされる。
「さてと…」
「い、いや…来ないで…」
ルシファーは機嫌が悪そうな顔をして歩み寄ってくる。
「……」
「こ…来ないで…」
「ふっ」
口角をあげて右腕を2本に枝分かれさせる。
「哀れだな…アスモデウス…命乞いか…」
「や……やだ……来ないで…」
2本の触手は風邪を切る音を出して楓彩に迫る。
「──嫌っ!!」
───刹那
楓彩に迫っていた触手は青白い雷に焼き切られる。
「聞いたぜ…お前の助けを求める声…」
「……え…?」
楓彩は目を開き、楓彩の前に立つフードを被った男を見る。
「悪ぃが、俺は今…何でもいいから守りたい衝動に駆られていてな…」
「あ、あなたは…」
迸る雷鳴。
楓彩の肌を刺激する電気。
「俺か? …俺は神ヶ丘 瑛太だ──」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる