四季百合々々の折

花楸フリカ

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春の1「桜」

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 学校の帰り道、桜を流す暖かい風に私たちのスカートはゆったりと揺れる。四月の斜陽は並んで歩く影法師を地面に映す。並ぶ二人の片割れが立ち止まり、もう一方は振り返る。
 桜の花が散る中で彼女は手を広げている。狙い澄まして、ばっと腕を伸ばし手拍子一回。閉じた両手をこっそりのぞいて、満足したらしい。手を閉じたままこちらに駆け寄ってくる。息づかいを少し荒らげたまま
「ほら」
 玉手箱のように両手を開くと、二片ふたひらの花びらが寄り添っている。
 これがどうしたの、と口を開きかけたとき、彼女は薄紅の唇をすぼめてシャボン玉を吹くように、ふうぅぅーー
 息に流れた花びらは、ふわりと此方へ飛んでくる。鼻さきでちろちろと、ひとしきり春の香りを漂わせれば、付かず離れず一緒に空へ飛んでいく。
 目で花びらを追っていると、暖かな夕焼けに目が眩んだ。彼女を見れば、桜を浴びて、身体を大きく使ってくるくると踊っている。艶やかな黒髪に、桜の花はよく映える。私が見ているのに気づいたのか、回りながらこちらに両腕を伸ばし、微笑みかけている。きっと一緒に回ろうと誘っているのだ。近寄ってみると両手を握られ振り回されるように一緒に回る。
 遠心力を感じるうちに、桜並木はぼやけて薄れ、残像になる。世界の実像は彼女と私の二人だけになった。倒れないように手を握り直すと、彼女も強く握り返した。滑らかな両手から彼女の熱が伝わる。彼女はこちらを見つめて、けらけら笑っている。
「楽しい?」
と聞くと、ゆったりとした笑みで
「楽しくないの?」
 しばらく回ると、彼女は回転を止める。片手は繋いだまま、私を引っ張って走り出す。
 彼女が連れてきたのは、一面桜色の平原だった。彼女は勢いよく跳んで、桜の絨毯へ身体を投げだす。積もった花びらは煽られたように巻き上がる。柔らかな地面に寝転び、彼女は背伸びをする。
「んん」
と息を詰まらせ、唇から漏らすようにはく。彼女が隣を叩くので、私も彼女の隣に横になる。優しい風が私たち二人を撫でていき、甘い香りがする。
「楽しいかも」
と小声で漏らせば、彼女はにっこりとして覆い被さり、私の口元に唇を寄せてくる。アッという驚きの声を飲み込んで、固く目を瞑ると、頬に柔らかい感触がした。目を開くと、彼女は桜の花びらを軽く咥えていた。


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