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ヴィクターの寝室
しおりを挟む「ここがヴィクタ様ーの寝室だ。基本使用人も最低限しか入ることは許されてないから、気にせず寛げばいい」
「無理だよ!」
さて、ロイの後についてヴィクターの寝室に連れてこられたリーネだったが、その平民の家が1つ建つぐらいのその広さに愕然としていた。
ロイと過ごした部屋もなかなか広いと思っていたが、ここはその倍はあるかもしれない。
奥には、見たことがないサイズの天蓋付きベッド。(やたら高そうな布が何重にも垂れ下がっており、中が見えないようになっている)
細かな装飾が施された、おそらく王国一の職人によるオーダーメイドのもののソファー(たぶん4人くらいは座れると悠仁はみた)、そして同じデザインのローテーブル。
それとは別に、ダイニングテーブルも置かれているし、壁にはズラっと本棚と暖炉。その前には一人がけのソファーが2つ。
大きな窓の外には広めのバルコニーがあり、美しい庭園を見下ろしながらお茶が飲めるように、これまたテーブルと机があった。
お金持ち。めちゃくちゃお金持ちだ…と、かつて住んでいたシャルドンの家と比べてリーネの足は震え出す。
(とんでもない人に買われてしまった…)
この下に引いてある絨毯だって、柔らかく踏み心地がかなりいいことから、かなり高いものをひいてあるのだろう。もし、ここに何か零したら…と思うだけでゾッとする。
「へぇ、家具を増やしたのか。まあ、リーネもここに住むから当然だな」
ロイが横でそう呟くのも、リーネの耳には入らない。
何も触ってはいけない気がして、リーネの足は凍りついたように動かなくなった。
そんなリーネに気が付かず、ロイは適当に座ってヴィクターを待つようにとリーネに指示する。
「で、でも、ろ、ろいぃ…」
「どうした情けない声を出して」
「こんな、高そうな部屋、俺怖いよ…」
「別に、普通だろ」
このブルジョワめ!と、リーネはロイを涙目で睨むが、ロイは何をそんなに気にする?と首を傾げるだけだ。
「直ぐにヴィクター様はくるから、安心しろ。それに、さっきも説明した通り、ここには俺とヴィクター様以外は近寄らせないようにするから、大丈夫だ」
「わ、わかった」
「すまないリーネ、なるべく側にいてやりたいが」
「ありがとう。でもロイも仕事あるもんね」
「ああ…」
ビビっててもしょうがない。自分は買ってもらったのだと、リーネはパシンと顔を叩いて気合を入れる。
「何かあったら俺に言え。なんでもいい。ヴィクター様のイビキがうるさいとか、ヴィクター様のセクハラが酷いとか、ヴィクター様の「ロ、ロイ、大丈夫だから」」
過保護を発動させたロイに、リーネはありがとう!と、苦笑いしながら大丈夫だと伝える。
「俺もすぐ顔を出すからそんな不安そうな顔をするな」
「ご、ごめん」
「謝る必要もない…リーネ」
優しくとろけるような眼をしたロイにリーネは内心吃驚する。面倒見はいいが、常に不愛想が歩いているような雰囲気の男だったのに。なんだ、この、とろとろのあまい表情は!
ロイはそっとリーネの頬に手を当てて、そしてその端正な顔を近づけると、リーネの頬にキスを落とした。
「ちょっと!ロイ!」
「友達なんだからこれくらい普通だろう?」
「え、え…そうなのかな」
「そうだよ」
(た、たしかに、頬へのキスはあいさつでもあるか…でもでも、こんなに甘ったるい雰囲気でするものだっけ?)
ロイはまったく気にした様子はなく、最後に我慢はするなとだけ伝えると、ヴィクターの寝室を後にした。
閉まるドアを頭を下げて見送り、足音が聞こえなくなってから、リーネは頭を上げ、ロイがいってしまったことで少し寂しそうな顔になる。
(またすぐ会えるかな)
「大丈夫…とは言ったけど、俺何すればいいんだろう?掃除?」
今までの買われた家では掃除洗濯買い物諸々の捌け口などなど、ありとあらゆる雑用をしてきたが、このヴィクターの屋敷では、掃除担当や料理担当するものが(しかもプロなのだろう)しっかりと配置されているようで、リーネの出番は今のところ全くなかった。
なんなら、護衛のようなことも出来るが、きっと買われたばかりの自分にそんな大事な役割をくれるとも思わない。
(盾ぐらいにはなるんだけど)
そわそわしながら、リーネは部屋の中を歩き回り、あらかた見学ツアーが終わってしまうと、いよいよすることが無くなって、部屋の片隅に蹲る。
ほっと息を吐くと、そう言えばいつの間にやらこの体勢が一番安心できることに気がつく。
小さく、小さく丸まって。世界から自分を隠すように。
ーーーーーーーーーー
日が陰ってきてもヴィクターはこの部屋に来ない。
夕日が窓から強く差し込み、その光の強さに少しうとうとしていたリーネは目を開け、細めた。
(仕事、立て込んでるのかな)
ロイ曰く、ヴィクターはこの国でもかなりの重要なポストについており、その秀でた才能から、そのポスト外の仕事まで毎日舞い込んでくるらしい。
国王補佐と通称呼ばれているらしく(本来はもっと長ったらしい肩書きらしい)、言わば国王の右腕。
自由な時間はかなり限られているそうだ。
確かに、ロイに世話になっていた時もたまにしか顔を出さず、短時間の間にリーネを構い倒すと、ロイが引きずるように執務室にヴィクターを連れていく様はもはや名物と化していた。
(まだかな)
日も落ち、暗くなってきた部屋でリーネは抱えた膝に顔を埋める。
(そう言えば、ロイがヴィクター様仕事で遅れるかもしれないから、その時は先に寝てろって言ってたな)
リーネはゆらゆら立ち上がる。
風呂に入ろうにも場所は分からないし(ロイにふろは毎日入れと言われたが)、勝手に部屋の外に出ていいかもわからなかった。
日没を迎え部屋の温度はだんだん下がっていくため、せめて主人が帰るまで暖炉に火をくべたほうがいいだろうか?と、考え、薪をくべ火をつける。火かき棒を手に取った瞬間、前に熱された火かき棒で折檻されたことを思い出し、思わず硬直して手を離してしまう。
(痛い痛い熱い熱い痛い助けて痛い痛い!)
叫びたいのをこらえて、痛みに歯を食いしばった日々がフラッシュバックしリーネを襲う。
聞こえてくるのはかつての主人たちの嘲る声。
『はは!!!のたうち回ってるぞ!』
『あーあー来たねぇなぁ、この糞奴隷!』
『命令もまともに聞けねぇのか!』
『ほら、お仕置だ!喜べ!!!』
(やめてやめて痛い怖いやめてすみません許して痛い痛い熱い熱い)
「うあっ…ああ、かひゅっ…うう」
ゆらゆらと揺らめく炎を見たのを最後にリーネは意識を手放した。
(全然役にてたたないお奴隷だな、俺は…)
そんなことを最後に思いながら。
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