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番外編
**.漂流者は時の狭間で溺れる
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あたしは悪くない。
なのに、なんでこんなエンディングに……
※ ※ ※ ※
あたしは昔から運が悪かった。
まず、親ガチャ。ブサイクなクソ親父に似たせいで、結婚できなかった。
次に、時代。就職氷河期のせいで、ブラックにしか入れなかった。クソ過ぎて三日で辞めた。
そして、今。店舗特典目当てで予約したゲームを引き取りに外出たら、歩道橋の階段から落ちて死んだ。
あたしの人生ってなんだったんだろ。
もっと美人に生まれてたら。もっとお金持ちの家に生まれてたら。もっと周囲に恵まれてたら。もっといい時代に生まれてたら。もっと……もっと……
救急車で運ばれてく自分を見ながら、あたしはなんでこんなに運が悪いんだってムカついてきた。
「もっとかわいく生まれてたら……あたしだって、きっと」
例えば。今日、これからやるはずだった乙女ゲー「永劫回帰DESTRUCTION《ディストラクション》2」、これの主人公モルタとか、無印主人公とか、そのライバルだった王女アブンダンティアとか……そういう美少女に生まれてたら、あたしだって。
「ふふ、見ーつけた」
いきなり後ろから声がして振り向いたら、ハリウッド女優かよって美女が立ってた。
「こんにちは。私ねぇ、異世界で神様やってるんだぁ。今日はズバリ、あなたをスカウトしにきちゃいましたぁ」
「うそ、マジで⁉」
最後の最後できた! クソみたいなあたしの人生って、もしかしてこれのためのフラグだったんじゃね?
「今ねぇ、私のいる世界の王女様が死にかけてるの。ていうかぁ、このままだと死んじゃうんだぁ。アブンダンティアちゃん」
アブンダンティアって……もしかしてこれ、ゲーム世界に転生ってやつ⁉ いや、小説の世界に転生ってパターンも捨てがたいな。
「アブンダンティアに転生すればいいの?」
「うん。ただアブンダンティアちゃんの中に入ったら、こっちのあなたの体は魂なくなるから死んじゃうけど。どうする?」
そんなん決まってる。あんなクソな体なんかいらない。アブンダンティアになれるんなら、そっち選ぶに決まってる。
若さも、美貌も、お金も。全部持ってるなんてずるい。死ぬんならそれ、全部ちょうだいよ。あたしが有効活用してあげるから。
「やる」
じゃあね、低スペックな古いあたし。
※ ※ ※ ※
「十三歳⁉ 聞いてないんだけど!」
無印の「永劫回帰DESTRUCTION」に出てきたアブンダンティアは十六歳だった。てことはもしかしてこれ、ゲーム始まる前の時間に転生ってやつ?
えー、予定と違う。……でも、まあいっか。ゲーム終わったあとの時間とかだったらどうにもできなかったけど、前なら。たく、あのクソ女神ちゃんと説明しとけっての。
えーと、アブンダンティアが十三歳ってことは……サートゥルヌスは十七歳か。無印で出てきたサートゥルヌスは二十歳だったけど、十代のサートゥルヌス見られるとかラッキーじゃん。超楽しみ。
無印のときは攻略できなかったからなぁ、サートゥルヌス。主人公チェンジの2で攻略対象になったけど、無印より前の時間の今から攻略ってできんのかな?
「あたしの知ってるのと違う!」
アイアースから渡された攻略対象の情報は、あたしの知ってるものと微妙にずれてた。
まず、年齢。サートゥルヌスはアブンダンティアより四つ上だったはずなのに、ここでは三歳差の十六歳。しかも2の主人公のモルタとすでに婚約済み。
ふざけんな! まだ2が始まる前の時間なのに、なんでもう攻略終わってんだよ‼
モルタ、絶対に許さねぇ。……あ、もしかしたらこれって、モルタの中身も転生者なんじゃね? てことは、あたしって役割的に悪役令嬢?
「オーケーオーケー。てことは、ヒドインは最終的に死刑か国外追放あたり?」
これ年齢とか微妙にずれてるのは、もしかして二次創作の世界に転生したからなんじゃね? だとすると前世の知識あんまり使えないな。どの二次創作なのか全然わかんないし。
でも、あったかな? 十三歳のアブンダンティアに転生する小説なんて。アブンダンティアに転生するやつ結構読んでたけど、これは読んだ覚えないなぁ。
ま、いいや。とりあえずまずは攻略対象全員フリーに戻ってもらわなきゃ。
待っててね、サートゥルヌス。あたしがヒドインの洗脳から解放してあげるから。
※ ※ ※ ※
「なんでだよ! 話が違うじゃねぇかクソ女神‼」
なんで。なんであたしが元のクソな自分に戻されて、こんな牢屋なんかに入れられなきゃなんねぇんだよ!
「話が違うって、なぁに?」
「クソ女神!」
あたしの今の不幸の元凶、クソ女神がいきなり目の前に現れやがった。なにキョトンとしてんだよ! お前のせいであたしは……あたしは!
「ここ、永ディスの世界じゃなかったのかよ!」
「えぇ~、私はそんなこと一言も言ってないよぉ」
「は……? いや、ここ永ディスの世界でしょ? ゲームか二次小説かはわかんなかったけど。だって、アブンダンティアって無印の方のライバルキャラじゃん!」
無印の主人公は見かけなかったけど、2の主人公はいたし、攻略対象たちだっていた。それぞれ微妙に年齢とか立ち位置とか違ってたけど。
「私はぁ、私のいる世界の死んじゃう王女様の体に入らないかって聞いただけだよぉ」
「じゃあここ永ディスの世界じゃないってこと⁉ なにそれ、詐欺じゃん!」
「やだぁ、詐欺だなんて人聞きの悪い。私ぃ、最初から一言もゲーム世界とか小説世界なんて言ってないでしょぉ」
そんな……だって、こんなシチュどう考えてもweb小説の異世界転生だったじゃん。愛され逆ハーで大勝利のやつだったじゃん。
「じゃあ……じゃあ、なんだったんだよ! どうしてあたしを転生させたんだよ‼」
「えーと、暇だったから?」
「……は?」
なんだよ。なんだよ、それ。
「私もねぇ、永ディスやってたよぉ。でね、自分の世界が永ディスの世界にそっくりだなぁって思ってた。だからねぇ、ちょっと遊んでみたくなっちゃったんだぁ」
クソ女神が無邪気に笑う。
「面白かったよぉ。アブンダンティア逆ハーエンドはなかなかにR18でこれはこれでアリって感じだったしぃ、モルタトゥルーエンドはバッドエンド乗り越えて辿り着く王道って感じでこっちも楽しかったぁ」
「待ってよ! あたしの逆ハーエンドって何⁉ そんなの知らない‼」
くすくすと。クソ女神はあたしを見て笑った。
「あったんだよぉ、そういう未来も。でもねぇ、サートゥルヌスちゃんがロードして、モルタちゃんがやり直したから、上書きされてその未来はなかったことになったんだぁ」
「待ってよ。サートゥルヌスがロードしたって、どういうこと?」
やっぱここってゲームの世界だったの? でも、なんでサートゥルヌスが?
「サートゥルヌスちゃんってばね、『モルタがいない世界なんていらないー』ってキレちゃってぇ、ヤーヌスちゃんの力借りて時間戻しちゃったの。そのときにヤーヌスちゃんがちょーっと協力したみたいでぇ、モルタちゃんには巻き戻る前の記憶が残るようにしたみたい~」
それって死に戻り⁉ じゃあ、本当はあったあたしの逆ハーエンドは、それでなかったことにされたってこと?
「ずるい! あたしもロードしてよ‼」
「ごめんねぇ、無理~。時間は私の管轄外でーす」
「ずるいずるいずるい! なんでモルタはできて、あたしはダメなんだよ‼」
地団太を踏むあたしを見て、クソ女神は憐れむように嗤った。
「だってぇ。あなたにはぁ、あなたのために大切なものを捧げてくれるような相手、いなかったでしょぉ」
言い返せなかった。
だって、あたしの周りにいたのは、盗まれて心が空っぽになったお人形だけだったから。
「でもぉ、楽しかったよぉ。奪ってでも全部を欲しがったあなたの強欲さ、私は好きだった」
クソ女神があたしを抱きしめた。そして甘ったるい匂いが鼻をかすめた直後、唇にふわりと温かいものが落とされて――
あたしの人生ってなんだったんだろ。
もっと美人に生まれてたら。もっとお金持ちの家に生まれてたら。もっと周囲に恵まれてたら。もっといい時代に生まれてたら。もっと……もっと……
※ ※ ※ ※
「あーあ。ヤーヌスちゃんにも怒られちゃったしぃ、しばらくはリアルゲームできなくなっちゃったなぁ」
ホムンクルスの中から盗み出した魂を手のひらで転がし、ラウェルナは小さなため息を吐いた。
「拾ってきた魂は元の場所に返してきなさいって、ヤーヌスちゃんってばお母さんみたいなんだからぁ。あ、そーだ! せっかくだからぁ、日本行くついでに色んな漫画とかゲームとかゲットしてこよっと」
気まぐれで残酷な女神は微塵も反省することなく、意気揚々と異世界へと消えていった。
なのに、なんでこんなエンディングに……
※ ※ ※ ※
あたしは昔から運が悪かった。
まず、親ガチャ。ブサイクなクソ親父に似たせいで、結婚できなかった。
次に、時代。就職氷河期のせいで、ブラックにしか入れなかった。クソ過ぎて三日で辞めた。
そして、今。店舗特典目当てで予約したゲームを引き取りに外出たら、歩道橋の階段から落ちて死んだ。
あたしの人生ってなんだったんだろ。
もっと美人に生まれてたら。もっとお金持ちの家に生まれてたら。もっと周囲に恵まれてたら。もっといい時代に生まれてたら。もっと……もっと……
救急車で運ばれてく自分を見ながら、あたしはなんでこんなに運が悪いんだってムカついてきた。
「もっとかわいく生まれてたら……あたしだって、きっと」
例えば。今日、これからやるはずだった乙女ゲー「永劫回帰DESTRUCTION《ディストラクション》2」、これの主人公モルタとか、無印主人公とか、そのライバルだった王女アブンダンティアとか……そういう美少女に生まれてたら、あたしだって。
「ふふ、見ーつけた」
いきなり後ろから声がして振り向いたら、ハリウッド女優かよって美女が立ってた。
「こんにちは。私ねぇ、異世界で神様やってるんだぁ。今日はズバリ、あなたをスカウトしにきちゃいましたぁ」
「うそ、マジで⁉」
最後の最後できた! クソみたいなあたしの人生って、もしかしてこれのためのフラグだったんじゃね?
「今ねぇ、私のいる世界の王女様が死にかけてるの。ていうかぁ、このままだと死んじゃうんだぁ。アブンダンティアちゃん」
アブンダンティアって……もしかしてこれ、ゲーム世界に転生ってやつ⁉ いや、小説の世界に転生ってパターンも捨てがたいな。
「アブンダンティアに転生すればいいの?」
「うん。ただアブンダンティアちゃんの中に入ったら、こっちのあなたの体は魂なくなるから死んじゃうけど。どうする?」
そんなん決まってる。あんなクソな体なんかいらない。アブンダンティアになれるんなら、そっち選ぶに決まってる。
若さも、美貌も、お金も。全部持ってるなんてずるい。死ぬんならそれ、全部ちょうだいよ。あたしが有効活用してあげるから。
「やる」
じゃあね、低スペックな古いあたし。
※ ※ ※ ※
「十三歳⁉ 聞いてないんだけど!」
無印の「永劫回帰DESTRUCTION」に出てきたアブンダンティアは十六歳だった。てことはもしかしてこれ、ゲーム始まる前の時間に転生ってやつ?
えー、予定と違う。……でも、まあいっか。ゲーム終わったあとの時間とかだったらどうにもできなかったけど、前なら。たく、あのクソ女神ちゃんと説明しとけっての。
えーと、アブンダンティアが十三歳ってことは……サートゥルヌスは十七歳か。無印で出てきたサートゥルヌスは二十歳だったけど、十代のサートゥルヌス見られるとかラッキーじゃん。超楽しみ。
無印のときは攻略できなかったからなぁ、サートゥルヌス。主人公チェンジの2で攻略対象になったけど、無印より前の時間の今から攻略ってできんのかな?
「あたしの知ってるのと違う!」
アイアースから渡された攻略対象の情報は、あたしの知ってるものと微妙にずれてた。
まず、年齢。サートゥルヌスはアブンダンティアより四つ上だったはずなのに、ここでは三歳差の十六歳。しかも2の主人公のモルタとすでに婚約済み。
ふざけんな! まだ2が始まる前の時間なのに、なんでもう攻略終わってんだよ‼
モルタ、絶対に許さねぇ。……あ、もしかしたらこれって、モルタの中身も転生者なんじゃね? てことは、あたしって役割的に悪役令嬢?
「オーケーオーケー。てことは、ヒドインは最終的に死刑か国外追放あたり?」
これ年齢とか微妙にずれてるのは、もしかして二次創作の世界に転生したからなんじゃね? だとすると前世の知識あんまり使えないな。どの二次創作なのか全然わかんないし。
でも、あったかな? 十三歳のアブンダンティアに転生する小説なんて。アブンダンティアに転生するやつ結構読んでたけど、これは読んだ覚えないなぁ。
ま、いいや。とりあえずまずは攻略対象全員フリーに戻ってもらわなきゃ。
待っててね、サートゥルヌス。あたしがヒドインの洗脳から解放してあげるから。
※ ※ ※ ※
「なんでだよ! 話が違うじゃねぇかクソ女神‼」
なんで。なんであたしが元のクソな自分に戻されて、こんな牢屋なんかに入れられなきゃなんねぇんだよ!
「話が違うって、なぁに?」
「クソ女神!」
あたしの今の不幸の元凶、クソ女神がいきなり目の前に現れやがった。なにキョトンとしてんだよ! お前のせいであたしは……あたしは!
「ここ、永ディスの世界じゃなかったのかよ!」
「えぇ~、私はそんなこと一言も言ってないよぉ」
「は……? いや、ここ永ディスの世界でしょ? ゲームか二次小説かはわかんなかったけど。だって、アブンダンティアって無印の方のライバルキャラじゃん!」
無印の主人公は見かけなかったけど、2の主人公はいたし、攻略対象たちだっていた。それぞれ微妙に年齢とか立ち位置とか違ってたけど。
「私はぁ、私のいる世界の死んじゃう王女様の体に入らないかって聞いただけだよぉ」
「じゃあここ永ディスの世界じゃないってこと⁉ なにそれ、詐欺じゃん!」
「やだぁ、詐欺だなんて人聞きの悪い。私ぃ、最初から一言もゲーム世界とか小説世界なんて言ってないでしょぉ」
そんな……だって、こんなシチュどう考えてもweb小説の異世界転生だったじゃん。愛され逆ハーで大勝利のやつだったじゃん。
「じゃあ……じゃあ、なんだったんだよ! どうしてあたしを転生させたんだよ‼」
「えーと、暇だったから?」
「……は?」
なんだよ。なんだよ、それ。
「私もねぇ、永ディスやってたよぉ。でね、自分の世界が永ディスの世界にそっくりだなぁって思ってた。だからねぇ、ちょっと遊んでみたくなっちゃったんだぁ」
クソ女神が無邪気に笑う。
「面白かったよぉ。アブンダンティア逆ハーエンドはなかなかにR18でこれはこれでアリって感じだったしぃ、モルタトゥルーエンドはバッドエンド乗り越えて辿り着く王道って感じでこっちも楽しかったぁ」
「待ってよ! あたしの逆ハーエンドって何⁉ そんなの知らない‼」
くすくすと。クソ女神はあたしを見て笑った。
「あったんだよぉ、そういう未来も。でもねぇ、サートゥルヌスちゃんがロードして、モルタちゃんがやり直したから、上書きされてその未来はなかったことになったんだぁ」
「待ってよ。サートゥルヌスがロードしたって、どういうこと?」
やっぱここってゲームの世界だったの? でも、なんでサートゥルヌスが?
「サートゥルヌスちゃんってばね、『モルタがいない世界なんていらないー』ってキレちゃってぇ、ヤーヌスちゃんの力借りて時間戻しちゃったの。そのときにヤーヌスちゃんがちょーっと協力したみたいでぇ、モルタちゃんには巻き戻る前の記憶が残るようにしたみたい~」
それって死に戻り⁉ じゃあ、本当はあったあたしの逆ハーエンドは、それでなかったことにされたってこと?
「ずるい! あたしもロードしてよ‼」
「ごめんねぇ、無理~。時間は私の管轄外でーす」
「ずるいずるいずるい! なんでモルタはできて、あたしはダメなんだよ‼」
地団太を踏むあたしを見て、クソ女神は憐れむように嗤った。
「だってぇ。あなたにはぁ、あなたのために大切なものを捧げてくれるような相手、いなかったでしょぉ」
言い返せなかった。
だって、あたしの周りにいたのは、盗まれて心が空っぽになったお人形だけだったから。
「でもぉ、楽しかったよぉ。奪ってでも全部を欲しがったあなたの強欲さ、私は好きだった」
クソ女神があたしを抱きしめた。そして甘ったるい匂いが鼻をかすめた直後、唇にふわりと温かいものが落とされて――
あたしの人生ってなんだったんだろ。
もっと美人に生まれてたら。もっとお金持ちの家に生まれてたら。もっと周囲に恵まれてたら。もっといい時代に生まれてたら。もっと……もっと……
※ ※ ※ ※
「あーあ。ヤーヌスちゃんにも怒られちゃったしぃ、しばらくはリアルゲームできなくなっちゃったなぁ」
ホムンクルスの中から盗み出した魂を手のひらで転がし、ラウェルナは小さなため息を吐いた。
「拾ってきた魂は元の場所に返してきなさいって、ヤーヌスちゃんってばお母さんみたいなんだからぁ。あ、そーだ! せっかくだからぁ、日本行くついでに色んな漫画とかゲームとかゲットしてこよっと」
気まぐれで残酷な女神は微塵も反省することなく、意気揚々と異世界へと消えていった。
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