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番外編2
ビスカスホリディ 2 ★
しおりを挟む「やめましょうよ! 幽霊なんて素人が手を出したらマズイですって!!」
「別に幽霊だって確定しているわけじゃないでしょう? まずは確かめてみないと」
「本当にやめましょうって! 警察に言ってパトロール強化してもらうとかにしましょうよ~」
「それは当然もうやってるの。でも警察はあくまでパトロールだけで、みんながおかしくなる根本的な原因はわかってなくて。だから残念だけど、海はやっぱりやめた方がいいと思うわ。誘っておいて申し訳ないけど、車はうちで出すから別の場所で遊びましょう」
ハイビスカス先輩が援護射撃をしてくれた。
この人、中身は常識人で本当にいい人なんだよなぁ。麗ちゃん先輩と同じタイプ。見た目のインパクトで最初はびっくりしたけど。
「なら、余計原因を突き止めないと。せっかく新しい水着買ったのよ。山田さんのだってかわいいの選んだのに、それがお披露目できないなんて許せないわ!」
「それは許せん。俺がなんのためにビデオカメラを新調したと思ってるんだ!」
「知らないよ! つか録るなよ!! それと私の水着お披露目なんて近所の市民プールで充分なんで」
おまえ何どさくさに紛れてしれっと無断撮影しようとしてるんだよ、風峯。ほんと、絶対やめてよ。
「それにね……幽霊だろうが変質者だろうが、私のバカンスを邪魔する者はすべて消さないと。安心して、確実にやるから」
なんにも安心できないんですけど。消すってそれ、除霊とかですよね? 本体ごとやっちゃだめですからね? なんか武田先輩の「やるから」は、「殺るから」にしか聞こえないんですけど。
「でも紫、やるったってどうすんのよ?」
わが同好会の良心、麗ちゃん先輩。お願いします、この女王様を止めてください。
「とにかく、まずは現地調査からでしょ。みんな、海行くわよ」
「私は嫌ですよ。絶対、ぜーーーったいに、嫌ですから!」
「安心しろ、玲。おまえは俺が守る。だから安心して水着を着てこい」
「あ、いいです。ていうか、撮影禁止だからな。とりあえずその持ってるカメラをしまえ。目を逸らすな」
結局――
私は今、白い砂浜に立っていた。目の前には透明度の高い海。波は穏やかで、家族連れやリア充の群れが夏を満喫している。いいなぁ。私もそっち側に行きたい。
「おい、玲! なんでパーカーなんて羽織ってるんだ!!」
「山田ちゃん! せっかくの海なのに、なんで!?」
不満げに私を見下ろしてきたのは、サーフパンツにTシャツを着た風峯。右手にはしっかりとあのビデオカメラがある。その隣には林くん。こちらもサーフパンツにぶかぶかのパーカー……多分だけど、パーカーの下は縄だと思う。絶体に脱がないでほしい。
「うっさいわ、風峯がビデオ回してるからだろ!! あと林くんはさっきから鼻息が荒い!」
絶対脱がない。このパーカーだけは絶対脱がない。水着は紫先輩と麗ちゃん先輩が選んでくれた、上半身が色々カバーされてるかわいいデザインのやつだけど、こいつらの前では絶対脱がない。ぶかぶかパーカー死守!!
「いいか、玲。俺は自分の欲のためだけに撮影してるわけじゃない。幽霊といえば心霊写真や心霊動画はお約束だろ? 俺たちに見えないものも、カメラを通せば見えるかもしれない」
「う……それは、一理あるけど」
「というわけだ。今すぐそのパーカーを脱いでもらおうか」
「そうだ、そうだ!」
「いや、それはまったく関係ないよね。却下。いいから海録ってろ」
この二人、普段はそんな仲良くないのに。こういう時だけやたら息ピッタリで頭痛くなってくる。
「見て見て、司ちゃ~ん。この水着、かわいくない? ていうか、私がかわいくない? ほらほら、思う存分録ってもいいわよぉ」
「ピンクゴリラの水着姿に割く容量なんぞ微塵もないわ!」
「ほらほら、遊んでないで調査始めるわよ」
「ああん、紫さまぁ! その美しい御御足で、今日も僕を踏んでください~」
もうわけわかんないな、これ。しっかし武田先輩、やっぱりスタイルいいなぁ。胸元がレースアップになってる黒のビスチェタイプのビキニがめちゃくちゃ似合ってる。……うん、黒とレースアップで、どこどなく女王様のオーラも増してるような気がする。強そう。
麗ちゃん先輩はこちらも破壊力抜群な、たくさんのフリルがついたパステルピンクのギンガムチェックのビキニ。そして――
「ねえ、本当にいいの? せっかくの夏休みなのに、同好会のお仕事だなんて」
ハイビスカス先輩は、とてもハイビスカスでした。ハイビスカス模様のブーメランパンツに、頭にはトレードマークの真っ赤なハイビスカス。麗ちゃん先輩みたいに女子の水着じゃなくて、こちらは小麦色の大胸筋を惜しげもなくさらしてる。
ハイビスカス先輩、普段は女子の制服着てたから、てっきり水着も女子のかと思ってた。
全員揃ったところで、ようやく海へ。とりあえずは入らないで観察してるんだけど、今のところ変わったとこなし。
みんな楽しそうでいいなぁ。私も普通に海を楽しみたいよ。帰ったら六花と華ちゃん誘ってプール行こ。
「出ないな」
「出ないわね」
ひたすら海を録り続ける風峯がつまらなそうにつぶやくと、武田先輩も小さくため息をついた。そして武田先輩は風峯からビデオを受け取ると、その映像を確認し始めた。
「ここはやっぱり、いつも通り囮作戦かしら」
「やですよ! 私、絶対やらないですからね!!」
無理無理無理、幽霊も水着も撮影も全部無理。今回は絶対いや。
「やだ、かわいい後輩である山田さんを、そんな危ない目にあわせるわけないじゃない」
ころころと笑う武田先輩。……でも、ほんとに?
「安心して。ちゃーんと考えてるから」
そう言うと、武田先輩は大きく振りかぶって――
「ばっ、おい――」
「ああん……って、なんでお前まで――」
投げた愛用の縄で林くんと風峯をまとめて捕縛すると、悲鳴をあげる二人をそのまま海へと勢いよく投げ入れた。
あ、海水浴客のみなさんがドン引いてる。ですよねー。すっかり慣れっこになっちゃってたけど、これ、普通にドン引き案件ですよね。……ヤバいな、私。
「うまく釣れるかしら」
この人、幽霊一本釣りする気だったのか。てことは餌は林くん、浮きが風峯かな?
「とりあえずただ待ってても暇だし、お茶でもどう?」
イラスト:星影さきさま
いつの間にやらハイビスカス先輩のお家のお手伝いさんたちが来てて、ビーチパラソルやビーチチェア、テーブルやら諸々がセットされてた。ハイビスカス先輩は一人、すでに優雅なティータイムに入ってる。めっちゃホリディって感じ!
「や~ん、先輩さっすが~! ぜひぜひ、ご一緒させてくださーい」
「ありがとうございます、扶桑花先輩」
「ありがとうございます!」
それからしばらくお茶しながら待ってたんだけど、結局風峯たちに変化はなし。どうやら幽霊、今日は出てこないらしい。どうせならこのまま、もうずっと出てこなければいいのに。
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