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CASE 中島加世子
第十七話 心のコア
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綺麗な女性だった。
いや、女の子と言っていいか? 女性と言っていいか? 分からない。
歳は十代後半にも見えるし、二十代前半にも見える。
手足が長く、スラッとした体型で、リクルートスーツの上からでも分かる、大きめの胸。
まるで、モデルみたいな体型だ。
睫毛が長く、大きな瞳だが、眠たそうに半眼にしているため、美人を台無しにしている。
髪はショートカットで、とても黒く艶やかで、これほどの美人はそうそういないと思う。
「キ、キミが頭の中の声?」
「……」
眠たそうな瞳で僕を見つめる、女の子。
案の上、欠伸をして、僕の前のソファーに豪快に腰掛ける。
「そうだよ」
そう言って、真っ白い手を差し出す。
僕は手を震わしながら、掴み取ろうとした。
そしたら、この子は僕の腕に思いっきりシッペした。
「痛っっ!!」
「無茶しやがって!! 私の言うこと聞きなさいよ! 馬鹿!!」
頭をぽかぽか殴る。
しかし、口はこう言っているが、目はまるで死んでいる。
一見、やる気がなさそうに見える表情だが、行動や心情は別なのだろうか?
そして、再び、死んだ魚のような目で僕を見る。
「何か、質問は?」
ソファーに豪快にもたれかかって、僕を見下すような目でみつめている。
「名前はなんていうの?」
すると、初老の男が立った。
「私はおいとまさせてもらうよ。後はパートナー同士、しっかり話し合いなさい」
「はーい」
女は右手を気だるそうに持ち上げて、言った。
「で? 何?」
「名前?」
「ないよ」
「え……」
「私はね、今こんな姿をしているけど、心のコアみたいなものなの」
「心のコア?」
「私は、心のコアがここにある。そしてそれが私を形成している」
「?」
僕は言っていることが全く理解できない。ただ名前を聞いただけなのに、訳分からないことを言っている。だが、よく考えたら、頭の中に話しかけたり、空を飛ばしたり、目の前にいるこの子のは、よくよく考えたら常識なんてもので推し量れない、不思議な存在なのだ。
女の子は自分の胸を〈ここ〉をアピールするように、叩いてみせてくる。
「あっ、性別はあるよ、私は女だよ。最近では性自認なんて言葉もあるけど、それとは違う、完全に女……」
「はい?」
聞いてもないことまた勝手に説明してくる。まあ、僕も普通の人間じゃないって思ったけどさ……。
「そう、それで心のコアが私を具象化している。外から私を認知できる姿を形作っている」
「……」
「つまり、キミは誰かに作られたの?」
一瞬迷ったが、聞いてもいいはずだ。この子は説明も含めて文字通り〈普通〉ではないのだから。
「違う。キミは一体何を言ってるのよ? キミもこうやって存在しているよね?」
「はい……」
「心のコアは作られた、生まれた、というものではなく、あまねくこの世の中に存在している。キミも今、存在しているように、私も存在している」
僕が馬鹿なのか、頭が固いのか、分からないが、この子の言っていることは全く受け入れることができない。
抽象的なイメージをあたかも現実に存在しているから、理解しろと言われているようなものだ。
女の子は大きな溜息をついた。
よくよく考えたら、僕の思考は全て読まれているのである。別に目の前に頭の声が、姿を現したからと言って、今までやってきたことは何も変わらない。
「まあ、キミの立場になら、理解を受け付けないのは分かるけどね。キミはこの世界について何も知らないのもあるし」
僕はゆっくりと頷いた。
「でも、聞かせて欲しい。キミはキミ自身のことをどれだけ知っているのよ?」
トクンと胸が一度だけ高鳴った。
僕が僕自身のこと……。
それは難しい問いだった。僕は僕自身のことをどれだけ知っているのだろう?
僕はいじめられた、だが、いじめていた人のことを好きになった。僕は勇気などないと思っていた。だが、僕には今まで、いや以前の自分では全く想像もつかない行動と勇気を実行してきた。
僕は僕を知らなかったのではないか? 僕は自分を知れば、もっと変れるのではないか?
「……そうね、人は人を理解出来てはいない。例えば、心の存在一つ、とってもみても、脳に心があると解明されてきてはいるけど、魂や思念が、どうやって存在するか、科学では永遠に解明できない」
「……」
僕が聞かされるがままになっていた。というより、何を話したらいいかも分からない。
「キミがキミと分からないこと、それが人間が人間である証でもあるんだよ」
「……」
もういいや、全く理解でない。とりあえず、この子は普通の人間ではない、名前、姿形、全て普通ではないと思うことにした。
「いいところに気づいたね! 私は姿形を変えられる」
「……勝手に思考の中を読み取らないで」
「今はキミのお好みの姿になっているが、キミがもっと胸を大きくさせたいなら、お好みで」
「今のままでいいよ!!」
僕は顔を真っ赤にして声を上げた。
「いやいや、巨乳好きは悪いことではないよ。胸が大きいければ大きいほど、女性的だということは私でも分かってる。女の人もほとんどの人がそう思っているからね」
「もういいって!!」
それを聞くと、眠たそうな瞳がちょっとだけ、活き活きとしてきたような気がした。
彼女なりの笑顔だろうか?
そして、ウーンと伸びをして言った。
「場所変えましょう。次のターゲットの話をしよう」
「次のターゲット……」
また、スピリチャルモンスターを討伐するのか……。
僕は彼と彼が変貌した鬼の姿をもう一度、思い出す。
あんな、あんな思いをまたするのかもしれない……。そう思うと気持ちがずーんと重くなる。
そして、おもむろに彼にやられた腹や、奥歯を確かめた。
――……。
不思議だった。
昨日一晩寝ただけで、何の処置もしていない。まだ傷は癒えていないと思っていた。
だが、完治していると言っていい。
それどころか、奥歯、生え替わっている。
頭の声がずっとうるさいから、今まで気づかなかったこと自体、僕もどうかしていたが、本当に不思議だった。
「今頃、気づいたの? キミ」
せっかくの美人が台無しの、寝ぼけ眼のような目で僕を見つめてくる。
「な、なんで?!」
「まあ、眠っている間に、治しておいたのよ、私が」
「……」
もう何も言うまい。
「後、着替えて、服は用意しておいたから、あそこから出て、正面のドアの部屋に入って着替えておいてよ、私、韓国料理屋の前で待ってるよ」
「…分かった」
いや、女の子と言っていいか? 女性と言っていいか? 分からない。
歳は十代後半にも見えるし、二十代前半にも見える。
手足が長く、スラッとした体型で、リクルートスーツの上からでも分かる、大きめの胸。
まるで、モデルみたいな体型だ。
睫毛が長く、大きな瞳だが、眠たそうに半眼にしているため、美人を台無しにしている。
髪はショートカットで、とても黒く艶やかで、これほどの美人はそうそういないと思う。
「キ、キミが頭の中の声?」
「……」
眠たそうな瞳で僕を見つめる、女の子。
案の上、欠伸をして、僕の前のソファーに豪快に腰掛ける。
「そうだよ」
そう言って、真っ白い手を差し出す。
僕は手を震わしながら、掴み取ろうとした。
そしたら、この子は僕の腕に思いっきりシッペした。
「痛っっ!!」
「無茶しやがって!! 私の言うこと聞きなさいよ! 馬鹿!!」
頭をぽかぽか殴る。
しかし、口はこう言っているが、目はまるで死んでいる。
一見、やる気がなさそうに見える表情だが、行動や心情は別なのだろうか?
そして、再び、死んだ魚のような目で僕を見る。
「何か、質問は?」
ソファーに豪快にもたれかかって、僕を見下すような目でみつめている。
「名前はなんていうの?」
すると、初老の男が立った。
「私はおいとまさせてもらうよ。後はパートナー同士、しっかり話し合いなさい」
「はーい」
女は右手を気だるそうに持ち上げて、言った。
「で? 何?」
「名前?」
「ないよ」
「え……」
「私はね、今こんな姿をしているけど、心のコアみたいなものなの」
「心のコア?」
「私は、心のコアがここにある。そしてそれが私を形成している」
「?」
僕は言っていることが全く理解できない。ただ名前を聞いただけなのに、訳分からないことを言っている。だが、よく考えたら、頭の中に話しかけたり、空を飛ばしたり、目の前にいるこの子のは、よくよく考えたら常識なんてもので推し量れない、不思議な存在なのだ。
女の子は自分の胸を〈ここ〉をアピールするように、叩いてみせてくる。
「あっ、性別はあるよ、私は女だよ。最近では性自認なんて言葉もあるけど、それとは違う、完全に女……」
「はい?」
聞いてもないことまた勝手に説明してくる。まあ、僕も普通の人間じゃないって思ったけどさ……。
「そう、それで心のコアが私を具象化している。外から私を認知できる姿を形作っている」
「……」
「つまり、キミは誰かに作られたの?」
一瞬迷ったが、聞いてもいいはずだ。この子は説明も含めて文字通り〈普通〉ではないのだから。
「違う。キミは一体何を言ってるのよ? キミもこうやって存在しているよね?」
「はい……」
「心のコアは作られた、生まれた、というものではなく、あまねくこの世の中に存在している。キミも今、存在しているように、私も存在している」
僕が馬鹿なのか、頭が固いのか、分からないが、この子の言っていることは全く受け入れることができない。
抽象的なイメージをあたかも現実に存在しているから、理解しろと言われているようなものだ。
女の子は大きな溜息をついた。
よくよく考えたら、僕の思考は全て読まれているのである。別に目の前に頭の声が、姿を現したからと言って、今までやってきたことは何も変わらない。
「まあ、キミの立場になら、理解を受け付けないのは分かるけどね。キミはこの世界について何も知らないのもあるし」
僕はゆっくりと頷いた。
「でも、聞かせて欲しい。キミはキミ自身のことをどれだけ知っているのよ?」
トクンと胸が一度だけ高鳴った。
僕が僕自身のこと……。
それは難しい問いだった。僕は僕自身のことをどれだけ知っているのだろう?
僕はいじめられた、だが、いじめていた人のことを好きになった。僕は勇気などないと思っていた。だが、僕には今まで、いや以前の自分では全く想像もつかない行動と勇気を実行してきた。
僕は僕を知らなかったのではないか? 僕は自分を知れば、もっと変れるのではないか?
「……そうね、人は人を理解出来てはいない。例えば、心の存在一つ、とってもみても、脳に心があると解明されてきてはいるけど、魂や思念が、どうやって存在するか、科学では永遠に解明できない」
「……」
僕が聞かされるがままになっていた。というより、何を話したらいいかも分からない。
「キミがキミと分からないこと、それが人間が人間である証でもあるんだよ」
「……」
もういいや、全く理解でない。とりあえず、この子は普通の人間ではない、名前、姿形、全て普通ではないと思うことにした。
「いいところに気づいたね! 私は姿形を変えられる」
「……勝手に思考の中を読み取らないで」
「今はキミのお好みの姿になっているが、キミがもっと胸を大きくさせたいなら、お好みで」
「今のままでいいよ!!」
僕は顔を真っ赤にして声を上げた。
「いやいや、巨乳好きは悪いことではないよ。胸が大きいければ大きいほど、女性的だということは私でも分かってる。女の人もほとんどの人がそう思っているからね」
「もういいって!!」
それを聞くと、眠たそうな瞳がちょっとだけ、活き活きとしてきたような気がした。
彼女なりの笑顔だろうか?
そして、ウーンと伸びをして言った。
「場所変えましょう。次のターゲットの話をしよう」
「次のターゲット……」
また、スピリチャルモンスターを討伐するのか……。
僕は彼と彼が変貌した鬼の姿をもう一度、思い出す。
あんな、あんな思いをまたするのかもしれない……。そう思うと気持ちがずーんと重くなる。
そして、おもむろに彼にやられた腹や、奥歯を確かめた。
――……。
不思議だった。
昨日一晩寝ただけで、何の処置もしていない。まだ傷は癒えていないと思っていた。
だが、完治していると言っていい。
それどころか、奥歯、生え替わっている。
頭の声がずっとうるさいから、今まで気づかなかったこと自体、僕もどうかしていたが、本当に不思議だった。
「今頃、気づいたの? キミ」
せっかくの美人が台無しの、寝ぼけ眼のような目で僕を見つめてくる。
「な、なんで?!」
「まあ、眠っている間に、治しておいたのよ、私が」
「……」
もう何も言うまい。
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