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CASE 中島加世子
第二十五話 決戦
しおりを挟む僕は彼女が寝ているベッドとは違う、ベッドの下に隠れていた。
この部屋には誰もいないことが功を奏し、誰も不審な行動を訴えるものなどいない。
そして、これから行おうとしていることも、事前に止められることも、すぐに気づかれることもおそらくない。
だが、僕は本当にうまくできるだろうか? と、この緊迫状態の中でも、やはり不安に駆られてしまう。
僕は弱い。彼女の、中島加世子の力とどっこい、どっこいとも言える。
できるのか?! 僕に……。
しかし、今、彼女を救えるのは僕しかいない。
やるんだ! やってやるんだ! と自分を鼓舞し続けた。
父親と思わしき男がやってきた。
そして、後ろを確認して、扉を閉める。鍵を閉める音が聞こえる。
本当だ……。
加世子の言うとおりに本当に、行動した。
僕はあまりの気持ち悪さに戦慄する。
ダメだ……。怖れては……。
こんな時、思い出すのは、また自分を勇気づけるのは、卓に、スピリチャルモンスターに立ち向かった経験だった。
僕はあんなに、自分の弱さにも恐怖にも立ち向かってきた。できる!!
しかし、さらなる僕を慄かせる、気持ち悪い声が聞こえる。
「やっと見つけたよ。加世子……」
「……」
彼女は黙っているようだ。
ベッドの下からではよく分からない。ただ、震えているだろう。心が恐怖で埋め尽くされているだろう。
僕は目を瞑ることで、彼女の気持ちになって起る衝動を落ち着かせた。
――まだだ。このクソ親父は彼女の体に触れている時に、一番油断していると彼女は言った。それまで、彼女が持つか? いや僕が持つのか?
恐れと奴に対する怒りが僕には混在している。
しかし、どうしても許せない。弱い立場である絶対に抵抗できない女の子、それも自分の子に、性的暴行を受け入れさせることは、僕には絶対に許すことができない。
触っている。明らかに触っているのが分かる。
そのために、わざわざ部屋の外を確認し、扉の鍵を閉めた。
本当に、こんな女の子にとって、最低で酷悪な父親が存在するのだ。
僕は唇を強く噛みしめ、意識をはっきりさせた。
耐えろッ! 耐えろッ!
今の僕は、彼女を救う強い使命感が恐怖に打ち勝てさせていると言える。
「なあ、加世子、加世子は僕だけのものだ。僕が加世子を幸せにするから。キミもそう思わないかい?」
反吐が出そうになる、衝動をどうにか抑えて、僕はようやく動き出した。
ベッドの下からそろりと出て、音を立てないように細心の注意を払う。
そして、目の前にある光景に、思わず声を上げそうになった。
彼女の父親が、加世子のブラウスの隙間に手をつっこみ、胸を触っている。
「ねえ、加世子、キミもパパが好きだろ? キミの心も体も、僕だけのものだ……」
彼女は不覚にも感じてしまっているようで、声を殺しながら、必死に耐えている。
僕はもう我慢の限界だった。
僕は空いている隣のベッドの上にそろりと乗った。
ここで音を立てたら、全て台無しになる。ここで気づかれる訳にはいかない。
そして、もう目の前には、あのクソ親父が、加世子の胸を両手で揉んでいる後ろ姿がある。
自分の男性器がズボンの前側を圧迫するため、痛みを緩和するために、腰を突き出している。
なんて、醜悪な姿だ……。
もう、自分の湧き上がる衝動に耐えられなかった。
僕は飛んだッ! 奴の背中に、僕の膝が当たるように、豪快に体をぶつけたッ!
真っ正面ではなく、角度をつけた。
もし、真正面からぶつかっていれば、彼女も押し倒されることになる。
怒りと焦りで我を忘れていた僕だが、この一瞬で、このことだけでも、頭が回ることができてよかった。
事前の打ち合わせでは、僕がパイプ椅子で殴る予定だった。
だが、こんな醜い、醜態、事実をこれ以上、見続けることなどできようがない。
そのため、予定の行動が飛んでしまったのだ。
しかし、僕の行動は、迂闊ではあったが、功を奏した。
父親は反応できずに、僕の渾身の体当たりを背中からもろに喰らう。
誰もいないと思った、無警戒の状態の生身の体は実は脆い。
それはイジメを受けていた僕からしたら常識だった。
殴られると思って、殴られたら、体が準備するため、その痛みは心因的な効果もあって、最小限にされる。
だが、知らぬ間の打撃は、とんでもない痛みを伴う。
当たり前のことだが、その当たり前の効果は絶大だ。
明らかに僕の方が力が弱く、小さいのに、僕の全力の攻撃は、僕が立てた膝が奴の脊椎に強い衝撃を与え、斜めに倒れ込んだ奴はベッドの脇の鉄製の柵に男性器を強打し、その後、勢いのまま、柵に顔、喉、そして肋骨を強く打ち付けた。そして、そのまま、床に倒れ落ちる。
「うううう、」
あまりの痛さに、悶絶している。
醜くも勃っていた、男性器はむなしく縮み、縮小され、仰向けに体勢で、痛みに悶えている。
僕は昂ぶった感情でそれを見つめていると、奴は最後の力を振り絞るがごとく怒鳴った。
「貴様はなんだッッ?!」
しかし、力を込めようとしても、立ち上がれないようだ。
変な倒れ方をしたため、運良く足までもひねったようだ。
――勝った!!
僕は全身全霊でそれを実感した。
ハッとしてすぐに加世子を見る。
「もう、怖いことはないよ。逃げれる」
とにかく安心させるように、言葉をかけた。
だが、彼女は、まだ、過呼吸を抑えるようにして、きつく目を瞑っていた。
僕は興奮している息を整え、彼女に右手をゆっくり差し伸べた。
「立てる?」
僕はできるだけ、優しく問いかけた。彼女はゆっくりと頷き、震える足で一歩一歩、確認するように歩みを進めた。
「じゃあ、早く行こう!」
僕がそう言うと、彼女は僕の右手を握り返してくれる。
僕たちは顔を見合わせて、頷き、動けない奴を見下ろしながら、この部屋からできるだけ早く脱出する。
だが、こんな時でも、僕は彼女が僕の手を握り返してくれていることが、胸に暖かさと優しさを与えてくれてくれて、とても、ドキドキして、この瞬間がずっと続けばいいと思わされてしまった。
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