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 今日は随分と綺麗な青空だ。
 絶好の晴れ日和で、まさに門出に相応しい天気だ。

 「うっ…お姉様! 手紙を送りますわ! 来年は私も行きますから! それまで頑張ってくださいませ!」
 「アリア! これやるよ! 大事にしろよ、俺の宝物なんだぞ!」

 そう言って弟のリトから貰ったのは、四角い石だった。角ばっててかっこいいだろうと弟は言う。

 「かっこいいわね、ありがとう、大切にするわ」

 机に飾っとけば大丈夫だろうか? と思いつつ、鞄に入れる。
 私はこれから王都に向かい、イリーン学園に入学する。
 別に長期休みには帰ってくるというのに、ミッシェルは訳が分からないくらい泣いていた。けれど、15年いた家を出るというのは、まだ実感が無いけど、寂しくなるだろう。
 
 「アリアお嬢様、気をつけて行ってらっしゃいませ」

 執事のルークが口を開く。結局ミッシェルと相談し、ルークはミッシェル付きの執事になったので、連れていかないことにした。乙女ゲームとやらが始まるのは私が3年生のときである。ミッシェルは2年生で学園にいるだろうし、結果的に始まる前にミッシェルが死んだら困るし、それは私が辛いので、ルークが側にいれば死なないのでは? となった。少なくともルークは王族になにかを指示されて、ここにいるのは確かだが、それは暗殺では無いだろうと考えた。
 お父様は凄い金額の税金を収めているらしいし。料理作っているのは私とミッシェルだと知られているし、守ってくれるだろう。
 ミッシェルには私が執事を連れていかなかったことにより死ぬかもしれないと言われたが、少なくとも3年生までは生きているはずと物語の力を信じ、突っぱねた。
 ……実際はルークを見ると恐怖を感じるから嫌だっただけなのだが。

 「アリアお嬢様! 準備終わりましたよ!」

 私に声を掛けたのは、新しく私付きになった侍女のニーナだ。年は3つ上でつい最近学園を卒業したばかりの子爵の令嬢だった。
 執事を断ってしまったからか、お父様は侍女で良い人を、と言ってニーナを連れて来た。しかし子爵令嬢が侍女というのも学園を卒業したばかりだというのに、まさか私に付くせいで、学園に戻るのもなんだか申し訳ないと言ったら、私は子爵令嬢と言っても、姉が4人いるので、親からは自由にやっていいと言われてここに来たので大丈夫ですよ! むしろアリア様のお世話をできるなんて光栄です! と言ったニーナはとても眩しかった。
 お父様は良い人材を見つけてくるのが上手い。

 「ええ、ありがとう。それじゃあ行ってくるわ」

 お父様、お母様、リト、ミッシェルの順に顔を見た。後ろには、使用人全員私のために来ていた。

 「ああ、気をつけて」
 「あなた意外と抜けてるのに気づいていないから気をつけるのよ」
 「石無くすなよ!」
 「こちらは大丈夫ですから! 心配しないで下さいませ!」

 それに手を振って、馬車に乗る。私の目標は、生きて学園を卒業し、帰ってくる! それだけだ。


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