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年上の男
年上の男①
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俺の状態が落ち着いたのを確認すると、楠ノ瀬はそそくさと俺から離れた。
俺に背を向けて身なりを整える楠ノ瀬に向かって、わざと軽い調子で声をかけてみる。
「なぁ楠ノ瀬、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なに?」
「おっぱい揉ませて」
「……」
「お願いします!」
俺は勢いよく手を合わせて、頭を下げた。
「バカなの?」
俺のささやかなお願いを冷たい声で一蹴される。楠ノ瀬の顔を伺うと、ゴキブリでも見るような目で俺を見ている。
「だってさぁ……お前とこういうコトする時って、俺いっつも動けないし。してもらう一方で、なんもできないし……これ『ヘビの生殺し』ってやつじゃねーの?」
俺の能天気な発言に、楠ノ瀬が呆れている。
「……どこまで聞いてるか知らないけど、これは『治療』だからね。私が奉仕してるのは高遠くんに対してじゃないんだから……」
はぁ、と溜息をつきながら、楠ノ瀬は浮かれている俺に念を押した。
「まったく……高遠くんが苦しそうにしてるから、今日は特別がんばったのに……」
楠ノ瀬が口を尖らせてぶつぶつ言っている。
――なんでだろう?
物理的には体を絡ませ合っていたさっきのほうがよっぽど近くにいたはずなのに……。今こうやって他愛のないバカ話をしている方が、よっぽど楠ノ瀬に近づけた気がする。
「きよちゃん」
楠ノ瀬と普通に冗談を言い合えることが嬉しくて、子供の頃のように呼びかけた。
「……なに?」
名前で呼ばれた楠ノ瀬は一瞬間を開けてから、ぶっきらぼうに答える。ちょっと照れてるみたいだ。
――かわいい。
「ありがとな」
「え……」
唐突な俺の言葉に、彼女は戸惑ったように目を泳がせた。
「なんか忙しいみたいなのに、俺のために時間割いてくれてるんだろ?」
「……別に、そういうわけでも、ないけど」
楠ノ瀬が下を向いて、ぽつぽつと答える。
「次は俺が元気なときにしような! 俺もがんばるから!」
「……」
楠ノ瀬は冷たい一暼をくれた後、無言で部屋を出て行った。
*****
「あ、楠ノ瀬ー!」
学校の廊下で出くわした楠ノ瀬に、俺はニコニコしながら手を振った。
向こうから歩いてくる楠ノ瀬は俺に気づくとピクっと反応し、固い顔で小さく会釈した。
そんな楠ノ瀬のわずかな動きを見逃さなかった「あやちゃん」が楠ノ瀬の姿を隠すように俺の前に立ちふさがった。きっと顔を上げて、俺のことを威嚇するように睨みつけてくる。
――番犬かよ。
あやちゃんは顔立ちの整った……まぁ美人といってもいいタイプだが……それだけに真顔で凄まれると、ちょっと怖い。少しつり目がちで大きな目の眼光もハンパなく、圧倒された俺は引き下がるしかなかった。
あやちゃんは有無を言わさず楠ノ瀬の手を引いて、俺の脇をさっさとすり抜けていく。
――なんでこんなに嫌われてるんだ……俺?
よくよく観察してみると、楠ノ瀬とあやちゃんはいつも二人でいる。たまに他の女子が混ざっているときもあるけれど、基本的には二人だ。美人系の二人に寄ってくる男も多いだろうに、あの二人が男といるところを見たことがない。
――デキてんのか?
最近そういうカップルも多いっていうしな……。
まぁそれはないにしても。
楠ノ瀬って、彼氏とかいないのかな?
高校に入ってから楠ノ瀬が男と喋ってるところは見たことがないし、そういう噂も聞いたことないけど……。
――慣れてる、よなぁ……。
俺は学校の制服姿からは想像もつかない、紅い襦袢姿を身に纏ったときの妖艶な楠ノ瀬を思い出す。俺の体を焦らしながら這いまわる舌、ぴたっと吸い付く唇、そして絶頂へと導く指の動き……。
ちょっと思い出しただけで、体の中心が熱くなる。
ダメだ……俺は邪念を振り払うように頭を振った。
――俺以外の男とも、ああいうことしてるんだよな……きっと。
「だあぁぁぁ~~~!!」
俺はどうしようもないモヤモヤを持て余して髪の毛をかきむしった。
奇声を発しながら悶える俺を、他の生徒たちが見て見ぬフリをして通り過ぎていった。
俺に背を向けて身なりを整える楠ノ瀬に向かって、わざと軽い調子で声をかけてみる。
「なぁ楠ノ瀬、ちょっとお願いがあるんだけど」
「なに?」
「おっぱい揉ませて」
「……」
「お願いします!」
俺は勢いよく手を合わせて、頭を下げた。
「バカなの?」
俺のささやかなお願いを冷たい声で一蹴される。楠ノ瀬の顔を伺うと、ゴキブリでも見るような目で俺を見ている。
「だってさぁ……お前とこういうコトする時って、俺いっつも動けないし。してもらう一方で、なんもできないし……これ『ヘビの生殺し』ってやつじゃねーの?」
俺の能天気な発言に、楠ノ瀬が呆れている。
「……どこまで聞いてるか知らないけど、これは『治療』だからね。私が奉仕してるのは高遠くんに対してじゃないんだから……」
はぁ、と溜息をつきながら、楠ノ瀬は浮かれている俺に念を押した。
「まったく……高遠くんが苦しそうにしてるから、今日は特別がんばったのに……」
楠ノ瀬が口を尖らせてぶつぶつ言っている。
――なんでだろう?
物理的には体を絡ませ合っていたさっきのほうがよっぽど近くにいたはずなのに……。今こうやって他愛のないバカ話をしている方が、よっぽど楠ノ瀬に近づけた気がする。
「きよちゃん」
楠ノ瀬と普通に冗談を言い合えることが嬉しくて、子供の頃のように呼びかけた。
「……なに?」
名前で呼ばれた楠ノ瀬は一瞬間を開けてから、ぶっきらぼうに答える。ちょっと照れてるみたいだ。
――かわいい。
「ありがとな」
「え……」
唐突な俺の言葉に、彼女は戸惑ったように目を泳がせた。
「なんか忙しいみたいなのに、俺のために時間割いてくれてるんだろ?」
「……別に、そういうわけでも、ないけど」
楠ノ瀬が下を向いて、ぽつぽつと答える。
「次は俺が元気なときにしような! 俺もがんばるから!」
「……」
楠ノ瀬は冷たい一暼をくれた後、無言で部屋を出て行った。
*****
「あ、楠ノ瀬ー!」
学校の廊下で出くわした楠ノ瀬に、俺はニコニコしながら手を振った。
向こうから歩いてくる楠ノ瀬は俺に気づくとピクっと反応し、固い顔で小さく会釈した。
そんな楠ノ瀬のわずかな動きを見逃さなかった「あやちゃん」が楠ノ瀬の姿を隠すように俺の前に立ちふさがった。きっと顔を上げて、俺のことを威嚇するように睨みつけてくる。
――番犬かよ。
あやちゃんは顔立ちの整った……まぁ美人といってもいいタイプだが……それだけに真顔で凄まれると、ちょっと怖い。少しつり目がちで大きな目の眼光もハンパなく、圧倒された俺は引き下がるしかなかった。
あやちゃんは有無を言わさず楠ノ瀬の手を引いて、俺の脇をさっさとすり抜けていく。
――なんでこんなに嫌われてるんだ……俺?
よくよく観察してみると、楠ノ瀬とあやちゃんはいつも二人でいる。たまに他の女子が混ざっているときもあるけれど、基本的には二人だ。美人系の二人に寄ってくる男も多いだろうに、あの二人が男といるところを見たことがない。
――デキてんのか?
最近そういうカップルも多いっていうしな……。
まぁそれはないにしても。
楠ノ瀬って、彼氏とかいないのかな?
高校に入ってから楠ノ瀬が男と喋ってるところは見たことがないし、そういう噂も聞いたことないけど……。
――慣れてる、よなぁ……。
俺は学校の制服姿からは想像もつかない、紅い襦袢姿を身に纏ったときの妖艶な楠ノ瀬を思い出す。俺の体を焦らしながら這いまわる舌、ぴたっと吸い付く唇、そして絶頂へと導く指の動き……。
ちょっと思い出しただけで、体の中心が熱くなる。
ダメだ……俺は邪念を振り払うように頭を振った。
――俺以外の男とも、ああいうことしてるんだよな……きっと。
「だあぁぁぁ~~~!!」
俺はどうしようもないモヤモヤを持て余して髪の毛をかきむしった。
奇声を発しながら悶える俺を、他の生徒たちが見て見ぬフリをして通り過ぎていった。
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