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年上の男
年上の男②
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結局、ろくに楠ノ瀬と話す機会もないまま一週間が過ぎた。あやちゃんが優秀なSPすぎて、近寄るスキが微塵もないのだ。
明日こそは……と毎日のように思っていたのに、早くも金曜日の放課後を迎えてしまった。
迎えの車を待っているのだろうか……校門の前で鞄を抱えて佇む楠ノ瀬。隣にはあやちゃんもいる。十分ほど所在なげに待っていた二人の前に、一台の黒い車が停まった。
俺の家も田舎だけど、あいつの家はさらに山奥にあるから、帰りはいつも迎えの車がやって来る。
運転席のドアが開いて、背の高い細身の男が降りてきた。
「あれ? いつもの人と違うような……」
あやちゃんに見つからないよう門の影に隠れて様子を伺っていた俺は、いつもの白髪頭の運転手とは違うことに疑問を抱いた。
「誰だよ、あの男……」
男は軽く微笑んで後部座席のドアを開けると、楠ノ瀬とあやちゃんの背中に手を添えてエスコートする。
二人が席に着いたのを見届けると、男も運転席に乗り込んで車を発車させた。
遠ざかる黒い車を見送りながら、俺は楠ノ瀬に近づく男が気になってしょうがなかった。
大学生? 社会人?
ネイビーのスーツをビシッと着こなしていたあの男は、明らかに俺たちより年上だろう。
――まあいい。
明日は土曜日。
俺は例の『治療』を受けるために、楠ノ瀬の家へ行くことになっている。
またあの強烈な痛みと対峙しなければいけないのかと考えると憂鬱だが……。その後で楠ノ瀬から与えられるご褒美のような快感を思い浮かべると頬が緩んだ。
この時、俺はまだ想像もしていなかったのだ。
あの男が楠ノ瀬にとってどういう存在なのか、を――。
*****
――なんで、あの男がいるんだ!?
予定通り朝から楠ノ瀬家を訪れた俺は、昨日楠ノ瀬たちを迎えに来ていた背の高い年上の男に遭遇した。
俺が楠ノ瀬の待つ離れを目指して長い廊下を歩いていると、男が離れから出て来たのだ。
白いシャツのボタンを三つほど開け、気怠げな足どりでこちらへ向かってくる。……ムカつくほど脚が長い。
すれ違いざま、足を止めた男が、
「君が高遠の後継者? ……へぇ」
白い顔に薄笑いを浮かべながら言った。
――なんだ、こいつ……。
俺はこいつのことを知らないのに、こいつは俺のことを知ってるみたいだった。
値踏みするような粘っこい視線が絡みつく。あっちの方が頭半分ほど背が高いから、完全に見下ろされている気分だ。
この男に対する本能的な不快感を覚えた俺は、軽く一礼だけして、何も言わずにそそくさとその場を通り過ぎた。
*****
「来るの早くない?」
俺の顔を見た楠ノ瀬が開口一番そう言った。
「え、なんかマズかったか……?」
たしかにまだ朝の九時にもなっていないが、前回もこのくらいの時間だったから大丈夫かと思ったのだけど。
「マズくはないけど……ごめんなさい、まだ『お清め』が済んでないの』
「お清め?」
「うん……。悪いんだけど、ちょっと待っててもらっていい?」
申し訳なさそうに俺の顔色を伺いながら尋ねる楠ノ瀬に、
「もちろんいいけど」
おれがそう言うと、彼女はホッとしたように笑った。
楠ノ瀬は胸元がV字に開いたライトグレーのニットにラベンダー色のロングスカートを合わせている。
彼女の私服姿を見るのは何年ぶりだろう?
いつも制服か襦袢を身につけたところしか見ていなかったことに気づいて、俺は改めて楠ノ瀬に目を向ける。
うん。普段着の楠ノ瀬もいい感じだ。
隠しきれない胸の膨らみがニットのセーターを押し上げている。その下に隠されたものをすでに知っている俺は……頭の中で彼女の服を剥いでいた。俺の上で乱れる楠ノ瀬の裸体が目に浮かんでくる……。
「……楠ノ瀬!」
想像だけで興奮してしまった俺は、思わず楠ノ瀬を畳の上に押し倒してしまった。
「え!? な、なに……?」
俺を見上げながら楠ノ瀬が目を丸くしている。
「こないだ約束したよな。今度は俺が元気な時にしよう、って」
いつもとは体勢が逆転したこの状態に、俺はちょっと調子に乗った。
明日こそは……と毎日のように思っていたのに、早くも金曜日の放課後を迎えてしまった。
迎えの車を待っているのだろうか……校門の前で鞄を抱えて佇む楠ノ瀬。隣にはあやちゃんもいる。十分ほど所在なげに待っていた二人の前に、一台の黒い車が停まった。
俺の家も田舎だけど、あいつの家はさらに山奥にあるから、帰りはいつも迎えの車がやって来る。
運転席のドアが開いて、背の高い細身の男が降りてきた。
「あれ? いつもの人と違うような……」
あやちゃんに見つからないよう門の影に隠れて様子を伺っていた俺は、いつもの白髪頭の運転手とは違うことに疑問を抱いた。
「誰だよ、あの男……」
男は軽く微笑んで後部座席のドアを開けると、楠ノ瀬とあやちゃんの背中に手を添えてエスコートする。
二人が席に着いたのを見届けると、男も運転席に乗り込んで車を発車させた。
遠ざかる黒い車を見送りながら、俺は楠ノ瀬に近づく男が気になってしょうがなかった。
大学生? 社会人?
ネイビーのスーツをビシッと着こなしていたあの男は、明らかに俺たちより年上だろう。
――まあいい。
明日は土曜日。
俺は例の『治療』を受けるために、楠ノ瀬の家へ行くことになっている。
またあの強烈な痛みと対峙しなければいけないのかと考えると憂鬱だが……。その後で楠ノ瀬から与えられるご褒美のような快感を思い浮かべると頬が緩んだ。
この時、俺はまだ想像もしていなかったのだ。
あの男が楠ノ瀬にとってどういう存在なのか、を――。
*****
――なんで、あの男がいるんだ!?
予定通り朝から楠ノ瀬家を訪れた俺は、昨日楠ノ瀬たちを迎えに来ていた背の高い年上の男に遭遇した。
俺が楠ノ瀬の待つ離れを目指して長い廊下を歩いていると、男が離れから出て来たのだ。
白いシャツのボタンを三つほど開け、気怠げな足どりでこちらへ向かってくる。……ムカつくほど脚が長い。
すれ違いざま、足を止めた男が、
「君が高遠の後継者? ……へぇ」
白い顔に薄笑いを浮かべながら言った。
――なんだ、こいつ……。
俺はこいつのことを知らないのに、こいつは俺のことを知ってるみたいだった。
値踏みするような粘っこい視線が絡みつく。あっちの方が頭半分ほど背が高いから、完全に見下ろされている気分だ。
この男に対する本能的な不快感を覚えた俺は、軽く一礼だけして、何も言わずにそそくさとその場を通り過ぎた。
*****
「来るの早くない?」
俺の顔を見た楠ノ瀬が開口一番そう言った。
「え、なんかマズかったか……?」
たしかにまだ朝の九時にもなっていないが、前回もこのくらいの時間だったから大丈夫かと思ったのだけど。
「マズくはないけど……ごめんなさい、まだ『お清め』が済んでないの』
「お清め?」
「うん……。悪いんだけど、ちょっと待っててもらっていい?」
申し訳なさそうに俺の顔色を伺いながら尋ねる楠ノ瀬に、
「もちろんいいけど」
おれがそう言うと、彼女はホッとしたように笑った。
楠ノ瀬は胸元がV字に開いたライトグレーのニットにラベンダー色のロングスカートを合わせている。
彼女の私服姿を見るのは何年ぶりだろう?
いつも制服か襦袢を身につけたところしか見ていなかったことに気づいて、俺は改めて楠ノ瀬に目を向ける。
うん。普段着の楠ノ瀬もいい感じだ。
隠しきれない胸の膨らみがニットのセーターを押し上げている。その下に隠されたものをすでに知っている俺は……頭の中で彼女の服を剥いでいた。俺の上で乱れる楠ノ瀬の裸体が目に浮かんでくる……。
「……楠ノ瀬!」
想像だけで興奮してしまった俺は、思わず楠ノ瀬を畳の上に押し倒してしまった。
「え!? な、なに……?」
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「こないだ約束したよな。今度は俺が元気な時にしよう、って」
いつもとは体勢が逆転したこの状態に、俺はちょっと調子に乗った。
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