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彼女の異能
彼女の異能②
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俺は恐る恐る自分の左頬に手を当てた。
さっきまで血が滲んでいたその場所に……。
「……ない。傷が、治ってる……?」
掌に広がるのは、凹凸のない肌の感触。
俺は鏡に映った自分を見ながら、すっかり元通りになった頬をすりすりと撫でた。
「え、なんで……なんだ、これ……」
「覚えてない? これが私の……楠ノ瀬家の『力』だよ」
戸惑う俺に、楠ノ瀬が言い聞かせるように告げた。
楠ノ瀬の『力』とやらは知っているつもりだった。現に俺は何度も助けてもらっているのだから――。
だけどこうして目の前ではっきりとした形で示されると……あらためて彼女の力を思い知らされた気がして、楠ノ瀬の顔をまじまじと見てしまう。
「いつも神様に喰われそうになった俺を助けてくれるのも、同じ『力』なのか?」
「ん~……あれはちょっと違うかな。アレは神様との『取り引き』みたいなものだから」
楠ノ瀬が言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「取り引き?」
「そう。自分の身を捧げる代わりに、高遠くんを解放してもらうようにお願いする……っていう感じかな」
「……とんだエロジジイなんだな、神様って」
俺が率直な感想を漏らすと、
「ちょっ、なんて不謹慎な……!」
楠ノ瀬が「しーっ」と人差し指を口の前で立てながら、きょろきょろと辺りを見回した。
「え、神様って学校にいんの?」
挙動不審な楠ノ瀬がおもしろくて、俺はついつい軽口を叩いてしまう。
「もう……冗談じゃないんだからね」
呆れてむくれる楠ノ瀬が、俺を横目で睨む。
「そもそも、私のこの力を最初に『顕現』させたのは高遠くんだったんだよ」
「え?」
――何のことだ?
俺が首を傾げると、
「覚えてない? ほら、小学生の頃……」
「小学生……」
俺は子供の頃を思い出そうと、腕を組んで目を閉じた。
――どうして、きよちゃんと遊んじゃいけないの!?
――どうしてもなにも、それが昔からの『言いつけ』だ。もう二度と楠ノ瀬の娘には近づくんじゃない!
「お前と遊んでることがバレて、うちの祖父さんにすごい怒られたんだよな……」
俺がその時の祖父さんの剣幕を思い出して遠い目をして呟くと、
「うん……私も祖母に怒られた。あれ以来ケータイとか持たされて、監視がキツくなったもん」
楠ノ瀬も同意するように自分の状況を語った。
俺は楠ノ瀬の婆さんのトカゲみたいな目を思い出す。うちの祖父さんも怖いけど、本気で怒ったらあの婆さんの方が怖い気がする……何となく。
「俺がお前にケガさせたんだよな……」
「別に高遠くんだけのせいじゃなかったでしょ? というか、むしろ私が先に落ちて……ほら、山の中で迷子になったとき」
「迷子……」
楠ノ瀬の言葉に導かれるように、俺はあの時の記憶を辿る。
「……あ!」
小さく声を上げた俺に、
「思い出した……?」
楠ノ瀬が探るような目を向けた。
さっきまで血が滲んでいたその場所に……。
「……ない。傷が、治ってる……?」
掌に広がるのは、凹凸のない肌の感触。
俺は鏡に映った自分を見ながら、すっかり元通りになった頬をすりすりと撫でた。
「え、なんで……なんだ、これ……」
「覚えてない? これが私の……楠ノ瀬家の『力』だよ」
戸惑う俺に、楠ノ瀬が言い聞かせるように告げた。
楠ノ瀬の『力』とやらは知っているつもりだった。現に俺は何度も助けてもらっているのだから――。
だけどこうして目の前ではっきりとした形で示されると……あらためて彼女の力を思い知らされた気がして、楠ノ瀬の顔をまじまじと見てしまう。
「いつも神様に喰われそうになった俺を助けてくれるのも、同じ『力』なのか?」
「ん~……あれはちょっと違うかな。アレは神様との『取り引き』みたいなものだから」
楠ノ瀬が言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「取り引き?」
「そう。自分の身を捧げる代わりに、高遠くんを解放してもらうようにお願いする……っていう感じかな」
「……とんだエロジジイなんだな、神様って」
俺が率直な感想を漏らすと、
「ちょっ、なんて不謹慎な……!」
楠ノ瀬が「しーっ」と人差し指を口の前で立てながら、きょろきょろと辺りを見回した。
「え、神様って学校にいんの?」
挙動不審な楠ノ瀬がおもしろくて、俺はついつい軽口を叩いてしまう。
「もう……冗談じゃないんだからね」
呆れてむくれる楠ノ瀬が、俺を横目で睨む。
「そもそも、私のこの力を最初に『顕現』させたのは高遠くんだったんだよ」
「え?」
――何のことだ?
俺が首を傾げると、
「覚えてない? ほら、小学生の頃……」
「小学生……」
俺は子供の頃を思い出そうと、腕を組んで目を閉じた。
――どうして、きよちゃんと遊んじゃいけないの!?
――どうしてもなにも、それが昔からの『言いつけ』だ。もう二度と楠ノ瀬の娘には近づくんじゃない!
「お前と遊んでることがバレて、うちの祖父さんにすごい怒られたんだよな……」
俺がその時の祖父さんの剣幕を思い出して遠い目をして呟くと、
「うん……私も祖母に怒られた。あれ以来ケータイとか持たされて、監視がキツくなったもん」
楠ノ瀬も同意するように自分の状況を語った。
俺は楠ノ瀬の婆さんのトカゲみたいな目を思い出す。うちの祖父さんも怖いけど、本気で怒ったらあの婆さんの方が怖い気がする……何となく。
「俺がお前にケガさせたんだよな……」
「別に高遠くんだけのせいじゃなかったでしょ? というか、むしろ私が先に落ちて……ほら、山の中で迷子になったとき」
「迷子……」
楠ノ瀬の言葉に導かれるように、俺はあの時の記憶を辿る。
「……あ!」
小さく声を上げた俺に、
「思い出した……?」
楠ノ瀬が探るような目を向けた。
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