禁じられた逢瀬

スケキヨ

文字の大きさ
48 / 100

噂②

しおりを挟む
 仁科にしなはスマホを取り出してロックを解除すると、俺の前に差し出した。

「……何だよ、これ……」

 画面に映し出されたを見て、絶句した。

「……オレは知らないからな。オレに送ってきたヤツも、出どころが誰かまでは知らないみたいだし……」

 俺の顔色を伺いながら、おどおどとした様子で仁科が言った。

 ――今、見せられたものの衝撃が大きくて……頭が真っ白になる。

高遠たかとお、大丈夫か? 顔が真っ青だぞ」

 放心する俺の顔を覗き込みながら、仁科が本気で心配そうな声を出した。その声には、さっきまでのふざけた調子は一切なかった。

「……大丈夫……じゃねぇよ……!」

 俺は頭を抱えて、呻くしかなかった。

 こんな画像が出回って、しかも町の人間に知られるなんて……どうすりゃいいんだよ……!





「高遠くん!」

 床を見つめて項垂れる俺を一喝するような鋭い声が響いた。教室にいた同級生たちが、何事かと声のした方に顔を向けている。

 聞き覚えのあるその声に。

 俺も、恐る恐る、振り返った。

 そこには――

 恐い顔をしながら俺を手招きする……あやちゃんがいた。





 *****

 とんでもない力で腕を掴まれた俺は、問答無用で人気ひとけのない音楽準備室まで連れてこられた。

 先に来ていたらしい楠ノ瀬くすのせが窓際に置かれた古いソファに腰掛けていた。俺と目の合った楠ノ瀬が、眉を下げて困ったような笑顔を浮かべてみせる。

「どういうことっ!?」

 あやちゃんが開口一番、甲高い大声で俺を問い詰める。
 ……防音の効いた部屋でよかった。

「あやちゃん、落ち着いて……」

 ソファから立ち上がった楠ノ瀬があやちゃんの隣にやってきて、宥めるように声をかけた。

「なんで本人がそんなに落ち着いてんのよ……」

 はぁ、と溜息を吐きながら、あやちゃんが煩わしげに髪をかきあげた。

「なんで清乃きよのとあんたが付き合ってることになってるの?」

 疲れたように呟いて、あやちゃんが俺に目を向ける。咎めるような視線が痛い……。
 あやちゃんの口ぶりからすると、どうやらまだあの画像は見ていないようだ。

 俺は仁科に見せてもらった画像を思い出した。

 ――そこには、俺と楠ノ瀬の姿が映っていた。

 楠ノ瀬とキスをしながら彼女の胸元に手を伸ばし、その柔らかな双丘をがっつりと揉みしだく俺の姿が……。その後で楠ノ瀬が俺をベッドに押し倒した瞬間もばっちりと映し出されていた。

 背景や服装からしても、この間、楠ノ瀬が俺の家に来たときのもので間違いない。
 かろうじて目から上の部分は映っていなかったから、俺たちのことを全く知らない人間が見れ誰かは分からないかもしれない。

 しかし俺たちをよく知るS高の奴らが見れば、あれが俺と楠ノ瀬であることは一目瞭然だろう。現に仁科は楠ノ瀬の名前を特定していたのだから……。

 ――問題は、誰があれを撮ったのか……だ。

「……徳堂とくどうさんは?」

 俺は声を潜めて、あやちゃんに問いかけた。

「あのひとは……いま、動ける状態じゃないから」

 あやちゃんが沈んだ声で答える。俺の視線を避けるように俯いた彼女の顔に影が差した。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...