月と秘密とプールサイド

スケキヨ

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誰もいない更衣室で……

誰もいない更衣室で……(2)※

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「サボり、か?」

 耳元で囁かれた低い声。
 ひな子の背筋をぞくぞくとした何かが走り抜けた。

「んぁっ……やめて、ください……」

 ひな子が思いっきり首を捻って後ろを振り向くと、彼女の口を覆っていた手は意外にも簡単に離れていった。

火神かがみ先生……」

 ひな子が見上げた先には、口の端をわずかに持ち上げて微笑する火神の顔があった。
 火神はひな子の顔を見つめ返すと、はぁぁ~……と息を吹きかけてきた。

「んっ……タバコくさい……」

 火神の口元から漂う甘苦い煙の臭いに、ひな子は思わず顔をしかめる。

「……すまんな、ちょっと一服してた」

 火神はタバコの臭いに反応するひな子を観察するように見つめてから、悪びれる様子もなく言った。

「校内禁煙じゃなかったでしたっけ?」
「金曜日ともなると、ストレスが溜まるんだよ。それに……」

 だるそうな足取りでひな子から離れた火神は、更衣室の中央に置かれた木製のベンチにどしりと腰かけた。

「お前……人のこと言えるのか?」

 火神は白衣のポケットに手を入れ、斜め下から責めるような視線をひな子に向けた。

「あっ……いや、えと、あの、それは……」

 ひな子の目が泳いだ。
 火神は身じろぎもせず、真っ直ぐにひな子の目を見つめている。
 すべてを見透かすような鋭い視線にひな子はたじろいだ。火神の視線を避けるように下を向く。

「あ! そういえば、真山まやま先生が捜してましたけど」

 話題を変えようとしたひな子が大きな声で言うと、

「あぁ……またか」

 火神がうんざりといった様子で顔をしかめてみせる。

「いいじゃないですか、真山先生に追いかけてもらえるんなら。美人だし、火神先生と並んでもお似合いですよ」
「まぁ、あいつなら簡単に股開くだろうな。俺がちょっと誘えば」
「……教師とは思えない発言ですね」

 高慢な火神の放言にひな子が呆れていると、

「でも、それじゃ、つまんねぇから……」

 おもむろに立ち上がった火神が、彼女を背後のロッカーに押し付けた。スチール製のロッカーがガタン、と揺れる。

「すごい揺れてたな、
「や……っ」

 ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた火神が、ひな子の胸を鷲掴みにした。

「見てた、ん……ですか……?」
「そりゃ見るだろ」

 こともなげに答えた火神が、量感のあるひな子の乳房を掬いあげるようにたぷたぷと持ち上げる。

「俺だけじゃないさ。男子ども、みんな食い入るように見てたぞ。あいつらも……こういうコト、したいんだろうな」
「やっ、そんなこと……ぁあ……っ、……あっ」

 激しく揉み込まれて、ひな子の呼吸も乱れはじめた。薄い体操着越しに火神の手のひらの体温が伝わってくる。

「羽澄はココが弱いんだよな」
「あ……っ」

 火神は楽しそうにひな子の胸の先を指の腹でぐりぐりと押しつぶした。まるで何かのスイッチを押されたかのように、ひな子の身体に火がつく。
 無理矢理こんな風に触られて――嫌なのに……嫌で嫌で堪らないはずなのに……その刺激が衣服越しであることがもどかしくて仕方なかった。

「ぁ、あの…………」

 ひな子は上目遣いに火神を見やった。
 物欲しさに涙が滲んでいるのが自分でもわかった。

「なんだ、物足りないのか?」
「……っ!」

 火神に図星を突かれて、ひな子は恥ずかしさのあまり、慌てて目を伏せた。

「ふっ……わかりやすいな……」

 火神は小さく微笑んでから、ひな子の体操着を一気に捲りあげた。露わになった素肌に生温い残暑の空気が触れる。

「あっ……」

 火神はひな子の背中に手を回すと、素早くホックを外した。締め付けるものがなくなって、ひな子のたわわな双丘がぷるりと震える。
 火神は腰を落とすと、ひな子の左胸に食らいついた。柔肌を食みながら、温かく濡れた舌先でひな子の固くなった乳首を舐めまわす。

「はぁ……ん、ぁあ……っ、んん」

 敏感なトコロを攻められて、ひな子の口から甘い声が漏れる。誰かに聞かれたらどうするの……そう思うのに、止められない。

「声、抑えろ。もうすぐホームルームが終わって生徒たちが出てくるぞ」
「あ……んっ、そんなこと……言われたって……んんぅ」
「外に聞こえてもいいのか?」
「だって……せんせぃの、所為せい……でしょ……」

 ひな子が涙目で恨めし気に訴えると、

「……くそっ」

 小さく舌打ちをした火神が、だらしなく開いたひな子の唇に吸い付いた。

「んぅぅ……」

 タバコの香りが鼻をついた。
 ひな子が驚く暇もなく、火神の舌が侵入してきて彼女の咥内を這いまわる。わざとかと思うくらい大きな音をさせながら、ひな子の舌にねっとりと絡みつく。

「んん……あっ……!」

 濃厚なキスと同時に、胸への愛撫も止まることなく続いていた。
 さんざん舐めまわされてヌルヌルと濡れた左胸は、ほんのちょっと指先でつつかれただけでも蕩けそうなほどの刺激をもたらしてくる。

「はぁ……んっ、あ……もぅ、……っ」
「感じやすいな、お前……子供ガキのくせに」
「んっ……あぁ、あ……っ!」

 ひな子の身体がぶるぶると痙攣した。ロッカーに凭れかかりながら、ずるずるとその場に崩れ落ちる。

「はぁ……はぁぁ……はっ……」

 息の上がったひな子の耳元で、火神が囁く。

「なぁ、」

 ひな子の耳の穴に、火神の熱い息が吹き込まれる。

「お前……誰を庇ってるんだ?」
「……ぇ」

 ひな子はとろんとした目を火神に向けた。

「……そんな目で見んなよ」

 わずかに顔を赤らめた火神が、手のひらでひな子の目を隠した。

「…………水島みずしま、か?」

 閉ざされた視界の中に降ってきた探るような火神の声に――
 ひな子は無言で首を左右に振った。

「……そうか」

 ひな子の目から火神の手が離れていく。
 視界を取り戻したひな子の瞳に……すでに踵を返して更衣室の出口へと向かう火神先生の背中が映った。
 先生が去ったあとも、ひらりと翻った白衣の裾の残像が目に焼き付いて離れない。ロッカーの奥でスマホがぶるりと震えたことにも、ひな子はしばらく気づかなかった。


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