月と秘密とプールサイド

スケキヨ

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はやく食べて……

はやく食べて……(2)※

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「……へぇ」

 羞恥に赤く染まるひな子の首筋を見つめた火神がにやりと笑う。

「きゃ……っ!」

 火神は勢いよくひな子の両胸を鷲掴むと、痛いぐらいの強さでぎゅうぎゅうと揉みしだいた。

「これでいいか?」
「やっ……もっと、やさしく……して……ください……」

 目に涙を浮かべながら、ひな子が懇願すると、

「……ワガママだなぁ」

 火神は愉快そうに笑いながら、ひな子のカーディガンに手をかけた。その手つきは性急なのに丁寧だ。脱がせやすいように、ひな子も自ら腕を上げる。

「もっと嫌がれよ。つまんねぇだろ」

 脱がせたカーディガンを丸めて机の上に置きなから、火神が軽く舌打ちする。

「だって……」

 ひな子の弱々しい抗議を無視して、火神は手際よく制服の白いブラウスのボタンをぷちぷちと一つずつ外していく。ブラウスを脱がすと、最後に残った淡い水色のブラジャーまで全部むしり取ってしまった。
 ひな子の上半身がむき出しになって火神の眼前に晒される。日焼けの跡もすっかり消えた色白の裸体に身につけているのは龍一郎から貰ったクローバーのネックレスと、制服の赤いリボンだけ。
 乱れた呼吸に合わせて上下に動く豊満な双丘の中心で、薄いピンク色に色づいた蕾がぷっくりと今にも弾けそうに膨らんでいる。

「エロいな」

 火神の発言に、ひな子の白い肌がカアッと赤く染まる。
 火神は満足そうに微笑むと、おもむろに手を伸ばして、ひな子の豊満な胸を持ち上げた。その重さを確かめるようにたぷたぷ揺すると、柔らかな乳房が彼の手の内でぷるぷると震える。

「どうした、ここ……痣になってる」

 ひな子の左胸の下……脇に近い部分を指先でなぞりながら、火神が囁く。

「……なんでもありません。ちょっと、かぶれただけ…………ひゃあっ」

 火神の舌にそこをペロリと舐め上げられて、ひな子の言葉が途切れた。
 そのまま左胸を唾液の跡を残しながら這いまわる舌の動きに翻弄されて、胸の先に血が集まっていく。先端はもう今にも弾けそうな赤い実のように固く充血していた。

「んっ……」

 ――はやく食べて。

 強請ねだるように胸を突き出してみても……。
 先生は一向にひな子の望む刺激を与えてはくれない。
 ひな子は思わず、自分の胸に顔をうずめる日神の頭をかきいだいた。もどかしさをぶつけるかのごとく、少し伸び気味の柔らかな黒髪をかき混ぜる。

「おい、やめろって。クシャクシャになるだろ」
「……だって、」

 ひな子が口を尖らせて火神を見つめると、

「……まったく、とんだ淫乱だな」

 嬉しそうに言った火神が勃ちあがった乳首に吸いついた。

「あぁ……っ、はぁ……っ……んん」

 ピリッとした痛みと共に、なんとも言えない感覚がゾクゾクと背筋を貫く。
 侮辱されたはずなのに、傷つくどころか、興奮している自分がいることに――ひな子は気づかないフリをした。
 はちが戯れるように舌先でツンツンとつつかれたかと思うと、蛞蝓なめくじが這いまわるようにヌルヌルとねぶられる。

「あっ、あぁ……ん、はぁ……んっ、あ……」

 ひな子の嬌声が室内に響く。
 ここは学校なのに……誰かに聞かれたらどうするの……?
 頭の片隅ではちゃんとわかっているのに。
 ひな子は声を抑えることができなかった。
 まるで胸だけが別の生き物になってしまったかのように、火神から与えられる刺激に悦んでしまっている。

「ダメ。声、デカすぎ」

 火神かがみがひな子の口を手で塞いだ。

「お前なぁ、もっと嫌がれよ。……じゃないと、こっちも止められなくなるだろうが」

 困ったように視線を逸らして頭を掻く火神に、

「せんせい……真山先生とも、こういうコト……してるんですか?」

 ひな子が囁くような小声で尋ねた。

「……気になるのか?」

 少し意外そうな面持ちで、火神がまた質問に質問で返してくる。

「……別に」
「ふぅん?」
「……ウソ。やっぱり気になります」
「どうした?」

 火神がひな子との距離をつめて、彼女の顔を覗きこんだ。

「今日はやけに素直だな。言葉も……身体も」

 火神がひな子の耳元で囁く。
 熱い息がかかって、ひな子は思わず目を閉じる。

「いや、身体はいつも素直か」

 そう言って、火神がたのしそうに笑う。

「真山先生にはしてないようなコト……してください」

 ひな子はたわわな胸を押しつけるように、火神に抱きついた。
 これじゃあ、あの女と一緒だ。
 そう思うのに、ひな子のひねくれた欲望は止まらない。
 あの女がこの男……今、ひな子の目の前にいるこのひとに気があるのは傍目にも明らかだ。だけど、相手にされていない。

 ――見せつけてやりたかった。

 あの女が望んでも手に入らないであろう男に、自分が求められている姿を。
 ひな子は脚を開いて火神の膝の上に跨がった。スカートが捲り上がって、太腿まで露わになる。
 火神の股間が固く盛り上がっていることを確認すると、そこを刺激するように、ひな子は自分の腰を前後に揺らした。
 二人分の体重がかかった椅子が、ギシギシと音を立てる。

「おい、やめろって」

 火神が眉根を寄せて切羽詰まった声を上げたが、ひな子は無視して腰を振りつづける。膨らんだ陰核を、本能のまま、火神の股間にしつけた。ひな子の動きに合わせて、敏感になった胸の先がチラチラと火神の白衣に擦れる。

「んっ……ぁあ……きもち、いぃ……」

 ひな子が夢中になって動いていると、

「おい、ひとりで勝手に気持ちよくなるな」

 火神がいじけたように呟いた。かと思うと、ひな子の身体を突き上げるようにして、力強く自分の腰を打ちつけてくる。

「あぁ……っ、んんっ……!」

 ひな子の口から、一際ひときわ高い声が上がった。
 火神は片手で彼女の背中を支えながら、もう片方の手でひな子の無防備な胸を揉みしだく。

「あぁ、ん……はぁ、……ぁ……んっ」

 ひな子の胸元を汗が伝った。
 股間からは、じゅわぁ……と愛液が染み出してくる。

 ――どうしよう、このままじゃ先生の白衣を汚しちゃう……。

 ふたりの肉体を隔てる布が邪魔だった。
 火神も同じように思ったのか、白衣から腕を抜こうとしたその時――。

 トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル……

 机の上に置かれた電話が鳴った。

「あ……電話」
「放っとけ」

 火神が無視していると、呼び出し音が止まった。

「んぁ……っ、はぁ……あっ、ん……あ、」

 乱れた呼吸が室内に充満する。もはやどちらのものかわからない。
 激しさを増すふたりの傍らで――

 トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル……

 再び電話が鳴った。

「あ、また……」
「放っとけって……そのうち止むだろ」

 しかし電話はなかなか鳴りやまない。
 まるでこの部屋にふたりがいることを確信しているかのように、その電話は執拗に鳴りつづけた。

「チッ、しつこいな」

 火神は諦めてひな子の身体から身を離すと、しぶしぶ電話を取った。

「……はい、化学準備室、火神です」

 不機嫌を隠しきれていないぶっきらぼうな声で応える火神の横顔を、ひな子はぼうっと見つめる。ぬくもりをなくした身体が急速に冷えていく。

「悪い。ちょっと呼ばれた」

 ばつが悪そうな顔でひな子に向かってそう言うと、火神は白衣を羽織りなおした。

「そんな目で見るなよ」

 ひな子の顔を見た火神が眉を下げる。
 床に落ちたブラウスを拾い上げると、ぼんやりと熱のこもった目で自分を見つめるひな子に着させた。ひんやりとした布地が胸の先に触れて、はっとしたようにひな子の目が瞬く。

「え、あの……」
「お仕置き」

 にんまりと笑いながら、火神は手に持った水色のブラジャーをヒラヒラと揺らした。

「返してほしかったら、次の小テストで満点を取ること」
「えぇ!? それは無理です……!」

 正気を取り戻したひな子が悲鳴を上げる。

「仕方ない。九十点で譲歩してやる」
「……それも難しいかと」
「じゃあ八十点だ。これ以上は下げられないぞ」
「うぅっ……努力します」

 がっくりと肩を落としたひな子が泣きそうな声で答えると、満足したようにうなずいた火神がブラジャーを白衣のポケットにしまった。

「……ニオイとか、嗅がないでくださいよ」
「嗅ぐに決まってるだろ」
「げっ……ヘンタイ!」

 ひな子が顔を歪めて抗議すると、

「どうせ俺は変態教師だよ。……知ってんだろ?」

 小さく溜息をついた火神が人差し指の先でひな子の乳首をちょん、とつついた。

「やぁ……っ」

 膨らんだままのソコはちょっとした刺激にもすぐに反応してしまう。

「これ着とけよ」

 火神が笑いながら丸まったカーディガンを投げて寄越す。ひな子はあわててブラウスの上にそれを羽織った。

「じゃあな」

 火神が部屋を出て行くと、ひな子はひとり、中途半端に火のついた身体を持て余してしまう。鎮まりきらない自分の身体を何とか抑えて帰り支度を始めると、ひな子の鞄の中でスマホが震えた。

「すぐ来い、って……」

 画面に表示されたメッセージを目にしたひな子は、スースーと心もとない胸元を隠すようにカーディガンのボタンを全部留めると、自分を呼び出した人の元へと足を向けた。


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