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リオンとボクの秘密
しおりを挟むボクたちが、DCOを初めて三ヶ月が立つ。もうすぐ夏だ。
月末に迫る夏休みを控えて騒ぎ立つ教室の中で、リオンがポーッと空を見上げている。いつも、凛とした態度を崩さない彼女にしては珍しい。そんなリオンの様子が気になったボクは、彼女に声をかけてみることにした。
「リオン、どうしたの?ボーッとして」
「――ひゃぁ!――な、なんでもない!」
なんとクールなリオンが今日は、ボクに声をかけられて慌ててしまっている。ボクが近づいても気づかないくらいに、彼女は深く何か考えごとをしていたようだ。
そういえば、昨日ボクはゲームにログインをしなかった。きっとDCOで何かあったのだと思いついたボクは、リオンにそれを聞いてみることにする。
「DCOで何かあった?」
「ま、まあ、そんな感じ……」
彼女が取り繕うようにして、ボクに説明をしていた。きっとリオンは、偶然遭遇した特殊クエストをどうやってクリアするか考えていたのだろう。リオンもチナツも、ずっとDCOばかりプレイしている。彼女たちはいつもDCOのことを考えているくらいに、どっぷりとVRMMOにハマってしまっていた。
そのせいで最近は三人揃って遊べていないことに嫉妬したボクは、リオンを秘密の遊びに誘うことにする。ボクとリオンがみんなにずっと秘密にしてる、二人っきりの遊びだ。
「ねえ、リオン……ひさしぶりにしない?」
……
……
……
「……あんっ♡……あっ♡……あっ♡」
学校の帰り道、ボクとリオンはエッチしていた。リオンの部屋にお邪魔して、彼女の部屋で行う、ボクたちの秘密の行為だ。
幼なじみのボクたちは、性に興味を持ち始めた頃からこうして二人でたまに体を重ねている。いわゆる、セフレの関係だった。
お互いにオナニーするよりも、こうして性欲を満足させ合ったほうが気持ちいいのではないかと、どちらかが言い出したのが始まりである。そしてそんな関係が、ボクたちのあいだで数年間ずっと続いていた。
……くちゅ♡……くちゅ♡
「……あっ……だめだ……もう……イク」
「……シノブ♡……一緒に♡……イこう♡」
そして今日も、ボクたちは慣れたように二人一緒にイク。心も体も気持ちよくなれる、これがボクとリオンの関係だった。
「リオン、好きだよ」
「……シノブ♡……ありがとう♡」
今はセフレだけど、いつかリオンと付き合えたらいいなとボクは真剣に考えている。でも、彼女の気持ちはわからない。怖くてボクは、いつもリオンの気持ちを確かめられずにいた。
ボクと体を重ね合いながら気持ちよさそうに悶える彼女のかわいい顔を見ながら、今日もボクはリオンと腰を振る。
「リオン。エッチしたばかりなのに、ゲームするの?」
「フレンドと約束してるから……ごめんね」
エッチした後にリオンとイチャイチャとしたい気分だったけど、彼女はすぐさまDCOをプレイするためにログインをしてしまう。今までに見たことのないリオンの態度に、ボクはあっけに取られてしまった。
仕方なくボクは家に帰ることにする。せめてもの提案で一緒にプレイしようとリオンを誘うが、今日は特殊クエストがあるからと彼女にそれすらも断られてしまった。
何だか、ゲームにリオンを奪われてるみたいだ。ずっと一緒に過ごしてきたボクとリオンのあいだには、少しだけ距離ができ始めていた。
家に帰ると、誰もいない。両親はいつも仕事で不在だ。そしてチナツも、DCOにログインしている。たしか彼女も今日は、フレンドとクエストに行くと言っていた。
「……あっ♡……これ♡……すっごい♡……こんなの♡……初めて♡」
こっそりと妹の部屋をのぞくと、彼女は夢中になってDCOをプレイしている。この分では、チナツとおしゃべりすることも難しそうだ。
何だか一人ぼっちになってしまった気分になりながら、ボクは自室で一息つくことにした。
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