クロニクルストーリー ~なんでもできる大人のVRMMO~

第三世界(うたかたとわ)

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幼なじみと顔合わせ

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 ナナシ・ゴンベー

 職業 錬金術師

 HP 100
 MP 100
 力 10
 頑丈 10
 素早さ 10
 賢さ 10
 精神 10

 俺はゲーム開始直後の、自分の初期ステータスを確認しながらこれからの行動を考える。

 クロニクルストーリーでの初期ステータスは、全員一律の固定値だ。

 そして、キャラクターに対するレベルの概念はなく、戦闘や生産活動によって使ったステータス値が徐々に上がっていくというシステムを、クロニクルストーリーは採用していた。

 例えば、剣士として戦闘を繰り返せば、力、素早さ、頑丈、HPが徐々に上がっていき、街の中で生産活動を繰り返せば、MP、賢さ、精神のステータス値が少しずつ上がっていく。

 俺が最初に選んだ職業は錬金術師で、生産系のスキルを入手しやすい点以外に、賢さ、精神のステータス値が上がりやすいという補正がかかっていた。

 ゲーム内の職業に関しては、剣士職は力とHPが上がりやすく、盾職は頑丈とHPが上がりやすいといったような形で、各職で差別化がされている。

 また、転職はいつでも自由なので、ずっと同じ職を続けて自分を尖ったステータス値の特化型キャラクターにすることや、転職を繰り返してステータス値をまんべんなく上げることで、万能型のキャラクターになることも可能だ。

 各ステータス値に関しては、力が上がれば物理攻撃力が上がり、頑丈が上がれば防御力が上がり、HPが増えやすくなる。素早さは移動速度で、賢さは魔法攻撃力の上昇とMPの増えやすさ、精神は魔法防御力と状態異常耐性に影響を及ぼすステータスとなっている。

 そして、ゲーム内のスキルに関しては、特定の行動を繰り返すことで入手することができる。

 例えば、剣を繰り返し振ることで、剣のスキルを入手するといった形である。

 そのときに、剣士の職についている者は、他の職についている者よりも少ない回数で剣のスキルを入手することができる。

 だから、魔法使いでも剣を振り回していれば剣のスキルを入手することができるし、剣士の職についていても、魔法スキルを手に入れることもできる。クロニクルストーリーの世界では、基本的にはステータス上げもスキル獲得も自由だ。

 違いは、ステータスが上がるまでの戦闘回数や、スキルを入手するまでの試行回数が各職によって異なってくることくらいである。

 効率を求めるなら、自分が上げたいステータスや手に入れたいスキルによって、こまめに職を変えることが大切になる。

「おーい! ナナシー!」

 ゲーム内のステータスについて色々と考えていると、俺に向かって声をかけてくる二人組の女の子が現れた。

 片方の女の子は、白髪ショートカットに紫色の瞳をした女剣士。身長160センチメートルくらいのスラッとした長身に健康的なホットパンツ姿。そして、彼女が着込んでいる軽鎧の上からでもわかるくらいに立派な巨乳の持ち主だ。

 もう片方の女の子は白いフード付きのローブを羽織った、淡いピンク色の長い髪にきれいな水色の瞳をした女の子。身長は150センチメートルほど。彼女も、着ているゆったりとしたローブの上からでもわかるくらいの立派な巨乳の持ち主である。

 きっと、あのふたりは事前に交換していたフレンドコードのチャット機能を使って、ゲーム内で待ち合わせをした幼なじみだろう。彼女たちと俺は、今まで様々なゲームを一緒に遊んできているのだ。

 いつも、俺はナナシという名前と似たような容姿でVRMMOをプレイをしているため、遠目から見ただけで彼女たちは俺のことがわかったようだ。

 しかし、プレイするゲームによって名前や容姿を様々に変えている幼なじみを、クロニクルストーリー内で俺がなんと呼べばいいかわからないな。

 ゲーム内で本名を呼ぶのは、身バレなどの危険がありマナー違反である。

 なので、俺は幼なじみの二人組みに対して、どう名前を呼べばいいのかを尋ねることにした。

「えっと、この世界ではなんて呼べばいい?」

「へへっ! 私はソフィア!」

「私のことは、ニコルって呼んでください~」

 勝ち気な顔で笑っている白髪ショートカットの女剣士がソフィア、ほわほわとした天然系のかわいい笑顔で微笑んでいる回復術師がニコル。それが今回、彼女たちがクリエイトしたキャラクターのようだ。

 元はR18行為目的に開発されたクロニクルストーリーであるが、リアルなR18行為を追求しまくった結果、味覚、嗅覚、触覚などが細部まで再現できるようになり、臨場感のある戦闘行為や、食べても太ることのないバーチャルな世界での食事が高いクオリティで実現可能となった。

 そのため、最先端VRMMO技術がふんだんに使われているクロニクルストーリーには、R18行為目的以外の人達もたくさん参加をしている。

 見るからに戦いが好きそうな顔をしているソフィアが戦闘目的での参加。ふわふわとした笑顔を絶やさない天然娘なニコルが、スイーツなどの嗜好品目的でクロニクルストーリーに参加をしていた。

 なんでもありをうたっているが、プレイヤーに対する悪質なハラスメント行為や、粘着行為、ストーカー行為に関しては、即アカウント削除という厳しいルールがクロニクルストーリーには設けられている。

 まあ、そういったトラブルに関しては運営にまかせて、俺は思う存分にゲームを楽しめばいいだろう。

「ソフィア、ニコル。これから、よろしく」

「よろしくな!」

「よろしくです~」

 幼なじみ二人がゲーム内で使用している名前を聞いた俺は、ゲーム開始前に本名で登録していた彼女たちのフレンドコードを、ソフィアとニコルという名前に上書きしていく。

 クロニクルストーリー内で各プレイヤーが使えるフレンドコードはスマホの電話帳みたいな機能で、フレンドコードを登録することでメッセージを送り合ったり、お互いに離れた位置からでも通話をすることが可能になる。

 フレンドコードは、プライバシーの観点から他人が盗み見ることが絶対にできないように設定されているので、本名で登録することもできるし、自由にあだ名で登録することもできる。

 まあ、基本的にフレンドコードは、ゲーム内での名称で登録する人間が大多数だ。もしくは、妻や嫁など、自分との関わりで登録するくらいか。

「ナナシはこれからどうするんだ? よかったら、レベル上げに付き合うよ?」

 無事にお互いの顔合わせが終わった所で、気の強そうな顔で笑いながら、ソフィアが俺に質問をしてくる。

 ちなみに、製品版からゲームをスタートした俺と違って、β版からクロニクルストーリーをプレイしている彼女たちには、特典としてβ版でのステータスと装備が引き継がれている。

 β版の時点で攻略組と呼ばれるトップ層に入っていた彼女たちは、ゲームが開始されたばかりの現時点では、トッププレイヤーの一角というわけだ。

 彼女たちはまだゲームを始めたばかりで、初期ステータスのままの俺に気を使ってレベル上げを手伝ってくれると申し出てくれていた。

 しかし、ソロでゲームをプレイすることが好きな俺は、せっかくだけど彼女たちの申し出を断ることにする。

 それに、β版の続きから、ゲームの攻略を再開したいであろう彼女たちの足を止めるのも悪い。

「ナナシは目を離すと、すぐに変なことをしだすからなぁ……」

 最初はソロでのんびりプレイしたいからと彼女たちの申し出を断った俺に対して、紫色の瞳をジト目にしたソフィアが苦言をつぶやいてくる。

 うーん。変なこととはなんだろう。

 前にプレイしていたゲームで、謎の百鬼夜行を作ったことだろうか。

 ファンタジー世界なのに、夜中になると和風妖怪たちが列を作って、プレイヤーを大量にキルしながら、大陸中をランダムに移動していく光景はおもしろかったなぁ。

 ゲーム内にある国々の間で別大陸からの侵略者だと大問題になって、大陸内の全国家である32カ国が同盟を組んで、百鬼夜行の討伐部隊を結成し始めたんだっけ。

 プレイヤー側もゲーム内の公式イベントと勘違いして討伐部隊に参加し始めるし、有志が運営に問い合わせをしても運営からは公式イベントではないと否定されるしで、大混乱になったな。

 それとも、ソフィアが言っていることは、別のクラフト系VRMMOで、ゲーム内にある名もなき小さな村を、俺が試しに要塞と言えるまでガチガチに強化してみたことだろうか。

 ゲーム初期に訪問してから存在すら忘れていたような小さな村が、突然、対空砲やガトリングガンによって守られる堅牢な砦に変わったことで、何かの大規模イベントの前触れかとプレイヤーたちの間で話題になった。

 それから、様々な村や街を、プレイヤー側が勝手に魔改造するのがゲーム内で流行ったんだよな。それで、プレイヤー同士が砦落としの戦争を勝手に始めたりで、ほのぼのクラフト系ゲームが一転、カオスな戦争系ゲームに様変わりしたっけ。あれは、楽しかったなぁ。

「あ、これはまた、なにかやらかす顔だ……」

 俺が過去にプレイしていたゲームの思い出を振り返っていると、ソフィアが呆れたような顔を向けていることに気づく。

 うん。やっぱり俺は、特に変なことをしてはいない。きっと、ソフィアの勘違いだろう。

 過去を振り返ってそう確信した俺は気分を一新すると、彼女たちと別れることにする。ふたりと楽しく会話をするのもいいが、ゲームを始めたばかりだ。色々と探索したい。それは、彼女たちも同じだろう。

「まあ、俺のステータスが二人に追いついたら、一緒にダンジョンでも攻略しようよ」

「ああ! 楽しみにしてるからな!」

「それじゃあ、また後で~」

 別れの挨拶を済ませると、お互いの目的のためにそれぞれが行動を開始する。

「さて、まずは街の散策かな」

 そして、俺はクロニクルストーリーの世界で何をして遊ぶかを考えながら、街の散策をするのであった。

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