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第二話 異世界転移
しおりを挟むクトウの身が異世界の大地に舞い降りた頃より、時は少し戻る。
真っ白なだけの空間に、総数百名以上の人間が集められていた。
その中には、黒いスーツを着たクトウも含まれている。
そこで、彼らは異世界転移を告げられた。
「おー!」
「は? 意味わかんねー」
「異世界転移きたー!」
狂喜乱舞する者。泣き叫ぶ者。自分の置かれた状況が理解できぬ者。
多種多様な反応を見せる者たちの中で、ルール説明がおこなわれる。
彼らが手に入れたのは、宝くじで十億円を獲得するような幸運だろうか。
それとも、人生を破綻させるほどの悪運だろうか。
これから彼らが向かう先は、ステータスという概念があり、魔法があり、モンスターが住まう世界。
異世界転移者には最初に、使用する者が限られる強力なスキルが三つ与えられること。
異世界では義務などなく、自由に過ごしていいこと。
努力をすれば、転移した先でさらにスキルの獲得ができるということ。
簡単なルールが、異世界転移者たちに伝えられる。
そして、ルール説明のあとは、自分が所持するユニークスキルの選択時間となった。
異世界転移、しかも強力な初期ブースト持ち。
その情報を知り、しだいに落ち着きを取り戻した各々が、のんびりとした空気の中で自分のスキルを選ぶ。
……はずだった。
優雅なはずの時間は、すぐに終わりを迎える。
「まじかよ!」
「ユニークスキルって早い者勝ちかよ!」
『限られた者しか使えない』と明言されたユニークスキル。
ユニークスキルは誰かに獲得された瞬間にグレーアウトし、内容を読めるが選べなくなる。
「早くしなきゃ!」
「くそっ! 狙ってたスキルが誰かに取られた!」
そのことに気づく人間が増えるたびに、真っ白なだけの広場には怒りと焦りの声が響いた。
「ふむ……」
阿鼻叫喚の景色が広がる中、クトウは自分が選んだユニークスキルを確認する。
すでにクトウは、限られた人間しか使うことができないユニークスキルを選び終えていた。
クトウが選んだユニークスキルは三つ。
風化の語り部、神話大全、知識の遺産である。
『風化の語り部』は、風化してしまった物事を正確に認識できるスキル。
『神話大全』は、神話の真実を知ることができるスキル。
この二つのユニークスキルは、他に強力なスキルが数多く存在する中で、誰にも見向きされないスキルであった。
他に獲得するべきスキルはたくさんある。
知識など、本でいくらでも調べればいい。
誰もがそう思った。
しかし、クトウは違っていた。
三つ目である『知識の遺産』の効果にいたっては、見たり聞いたりしたものを理解し、学習することができるというもの。
人間なら誰もが持つ能力が、ただスキル化されただけに見える。
他の転移者にとっては、二足歩行がスキル化されているようなもの。
クトウ以外、誰も見向きをしていない。
「なかなか手強そうな人間もいるようだな」
ユニークスキルを選び終えたクトウは思考する。
クトウと同じく、スキル選択時間が始まった瞬間に『世界にひとつしかない』ユニークスキルの獲得を最優先に動いた者は数名。
今現在、彼らはお互いの存在をそれとなく観察しあっている。
異端者の観察、強者の駆け引き、仲間探し、抜け駆け、騙し討ちの下準備。
各々の脳内で、暗い思考、明るい思考が巡っている。
クトウにとって、彼らは強力な味方となるか、敵となるか。
そして、健全な心を持つ転移者たち。
知り合い同士で協力し、お互いの能力を向上させるユニークスキルの獲得を相談している者もチラホラと見える。
彼らも異世界での成長によっては、クトウたち強者を殺す存在へと成り上がるだろう。
油断など、何一つできない。
「俺たち、向こうで協力し合おうな!」
「はぁ!? せっかくお前をパーティに入れてやるって言ってんのに、断るのかよ!」
「お前はどのスキルを選ぶ?」
「俺は、このスキルを……」
協力者を得る者たち。離反する者たち。一人で生きていくことを決めた者たち。
様々な思惑が交差する中で、スキル選択の時間が過ぎていく。
『勇者の素養』『大賢者の素養』『スキル強奪』『コピー』
強力なユニークスキルを獲得した者たちが、次々と異世界の大地へと降り立っていった。
「それでは皆様、剣と魔法の世界をお楽しみください」
遊戯を楽しむような、ワクワクとした神々の声が響く。
それらは善神か。邪神か。
様々な者たちの英雄譚が、今この場から始まる。
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