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本編
リフレインsideA 3 〚キサ〛
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その次の日、活動再開について聞いたら「んーたぶんほんとー」なんて曖昧に返された。
「キサちゃん、今度はこれ歌ってよ。」
あの日からほぼ毎日、そう言われるようになった。
“plena”の歌であったり別の有名なロックバンドの歌であったり。
その時々で曲は違えど趣味が似ているのか知らない曲はほとんどなく、拒否するといいと言うまで粘られるから終いには大人しく歌うようになった。
カナの伸びやかなコーラスが冬へと移ろう空に響くのは気持ちいい。
退屈で単調な日常が鮮やかに色づいていく気がする。
あるいは、軽やかな声が憂鬱な世界を吹き飛ばしていくような気が。
「推薦受かったぜい。とゆーわけで、今度の土曜日暇?模試?なら夕方には終わるな!じゃー18時に駅前!」
おい何がとゆーわけでなんだ。そう思ったのに当日に駅前に足を向けてしまう俺も俺だ。
雑踏の中を縫うように歩き、ピンク色の頭を探す。
ちょうどいちごミルクと同じ色の頭はよく目立つし、頭ひとつ抜ける無駄な身長もこういう時は役に立つ。比較的すぐに見つかったカナは、今日はいちごミルクではなく棒付きの飴を咥えていた。
「キサちゃん!」
その呼び方はどうにかならんのか。
ぱあっと満面の笑みになったカナの声が雑音をかき消す。
それだけで息苦しい世界にそよ風が吹き込んだような心地がして、ふっと小さく笑いがこぼれた。
空を見上げると完全な冬空。だというのに、桜みたいな頭がぴょこぴょこと跳ねている。
軽く手を挙げて近づけば、カナの横にはくたびれた黒のギターケース。ギターケース?
「じゃー、行こっ!こっち!」
一学年上と言えど、3月産まれと4月産まれ。
年齢としては1ヶ月も離れていないというのに、本当にこいつの考えることはよくわからない。
けれど、カナと出会ってから退屈とは無縁だ。
あの日何か面白いことは起きればなんてバカみたいなことを考えたけれど、予想外の形でそれが叶った。
こいつとなら、クソッタレな満員電車にさえ乗れる気がしてぐいぐい押されるまま駅に向かった。
✢
向かった先はこじんまりとしたライブハウスだった。
音楽は好きだけれどライブにはあまり来たことがない。人混みは好きではないし、無駄にでかいから前の方で見るのも憚られる。
それでも来たいと思ったバンドは“plena”くらいだが、“plena”を知ったきっかけ自体が「ボーカル脱退・無期限活動休止」が流れたラジオでの曲に惹き込まれたせいだし、少し遅かった。
すべての作詞作曲を手掛けるギターの名前はなんと言ったか。確か―――
「ルナ!おせーぞ!」
「ごめんて!でも間に合ったっしょ?」
そう、ルナだ。………ルナ?
「でも調整する時間はねーぞ」「上等!」なんていうやり取りをして、明らかに客席ではない奥の方へと進んでいく。
いったいなんだっていうんだ。
俺はこいつといて何回これを思うんだろうか。
「キサちゃん、はいこれ水。上着脱いで。私服のセンスよくて良かったよー。曲はこれね、前座だから三曲だけ。肩慣らしにはちょうどでしょ?」
は?
………………は?
流れるように連れて行かれたのは舞台上。
狭苦しいライブハウスのギラギラとした照明。光で見えない暗い客席には、確かにたくさんの人がいる。
逆光で姿は見えなくてもつんざくような悲鳴と割れるような拍手でそれがわかる。
「“plena”おかえりー!」
次々と投げられる歓迎の声に、元々まっしろな頭がさらに真っ白になった。
そこからのことはあまり覚えていない。
強制的に演奏が始まり、カナにぐいっと首を引き寄せられ、でっかい目に間近で見つめられて。
強い光を浴びて濡れたように輝く瞳。笑みを消した真剣な顔。
その迫力に抗うように、ただ声を振り絞っていた。
「キサちゃん、今度はこれ歌ってよ。」
あの日からほぼ毎日、そう言われるようになった。
“plena”の歌であったり別の有名なロックバンドの歌であったり。
その時々で曲は違えど趣味が似ているのか知らない曲はほとんどなく、拒否するといいと言うまで粘られるから終いには大人しく歌うようになった。
カナの伸びやかなコーラスが冬へと移ろう空に響くのは気持ちいい。
退屈で単調な日常が鮮やかに色づいていく気がする。
あるいは、軽やかな声が憂鬱な世界を吹き飛ばしていくような気が。
「推薦受かったぜい。とゆーわけで、今度の土曜日暇?模試?なら夕方には終わるな!じゃー18時に駅前!」
おい何がとゆーわけでなんだ。そう思ったのに当日に駅前に足を向けてしまう俺も俺だ。
雑踏の中を縫うように歩き、ピンク色の頭を探す。
ちょうどいちごミルクと同じ色の頭はよく目立つし、頭ひとつ抜ける無駄な身長もこういう時は役に立つ。比較的すぐに見つかったカナは、今日はいちごミルクではなく棒付きの飴を咥えていた。
「キサちゃん!」
その呼び方はどうにかならんのか。
ぱあっと満面の笑みになったカナの声が雑音をかき消す。
それだけで息苦しい世界にそよ風が吹き込んだような心地がして、ふっと小さく笑いがこぼれた。
空を見上げると完全な冬空。だというのに、桜みたいな頭がぴょこぴょこと跳ねている。
軽く手を挙げて近づけば、カナの横にはくたびれた黒のギターケース。ギターケース?
「じゃー、行こっ!こっち!」
一学年上と言えど、3月産まれと4月産まれ。
年齢としては1ヶ月も離れていないというのに、本当にこいつの考えることはよくわからない。
けれど、カナと出会ってから退屈とは無縁だ。
あの日何か面白いことは起きればなんてバカみたいなことを考えたけれど、予想外の形でそれが叶った。
こいつとなら、クソッタレな満員電車にさえ乗れる気がしてぐいぐい押されるまま駅に向かった。
✢
向かった先はこじんまりとしたライブハウスだった。
音楽は好きだけれどライブにはあまり来たことがない。人混みは好きではないし、無駄にでかいから前の方で見るのも憚られる。
それでも来たいと思ったバンドは“plena”くらいだが、“plena”を知ったきっかけ自体が「ボーカル脱退・無期限活動休止」が流れたラジオでの曲に惹き込まれたせいだし、少し遅かった。
すべての作詞作曲を手掛けるギターの名前はなんと言ったか。確か―――
「ルナ!おせーぞ!」
「ごめんて!でも間に合ったっしょ?」
そう、ルナだ。………ルナ?
「でも調整する時間はねーぞ」「上等!」なんていうやり取りをして、明らかに客席ではない奥の方へと進んでいく。
いったいなんだっていうんだ。
俺はこいつといて何回これを思うんだろうか。
「キサちゃん、はいこれ水。上着脱いで。私服のセンスよくて良かったよー。曲はこれね、前座だから三曲だけ。肩慣らしにはちょうどでしょ?」
は?
………………は?
流れるように連れて行かれたのは舞台上。
狭苦しいライブハウスのギラギラとした照明。光で見えない暗い客席には、確かにたくさんの人がいる。
逆光で姿は見えなくてもつんざくような悲鳴と割れるような拍手でそれがわかる。
「“plena”おかえりー!」
次々と投げられる歓迎の声に、元々まっしろな頭がさらに真っ白になった。
そこからのことはあまり覚えていない。
強制的に演奏が始まり、カナにぐいっと首を引き寄せられ、でっかい目に間近で見つめられて。
強い光を浴びて濡れたように輝く瞳。笑みを消した真剣な顔。
その迫力に抗うように、ただ声を振り絞っていた。
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漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
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漁師の仕事だ。
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