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本編
リフレインsideA 5 〚キサ〛
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それまでの退屈はどこへ行ったのか。あの日から生活は大きく変わった。バンド活動の合間に受験勉強をし、受験勉強の合間にギターを爪弾く。
カナとは今までどおり普通にしている。というか、何事もなかったかのような振る舞いにあの時のことを忘れそうになる。
何かを抱えているはずなのにそれをおくびにも出さない。
ふとした瞬間に指先が触れたときの震えだけが、カナの想いを示す。
カナの想いの先には何がある?
想いを伝えただけの告白には、俺にどうしてほしいとか、俺とどうこうなりたいとか、そういうものが欠けていた。
ただ想いを溜めていた器からこぼれ出てしまっただけで、何も望まないと言いたげな態度。
ギターも歌詞もあんなにも雄弁なのに、自分の気持ちだけは呑み込む。―――それをわかっていて、敢えて聞かない俺も俺だ。
聞いたら、俺も答えを出さなければいけないから。
それが、良いものでも、悪いものでも。
2月になって3年は自由登校になったけれど、カナは毎日屋上に来て、いつものように歌い、ときにはギターを鳴らす。
あれから、ライブはまだ一度だけ。
二度目なら少しは冷静になれるかと思えば、そんなことはなかった。
俺を煽り立てて感情を昂ぶらせていく音。
それに喰らいつくように声を振り絞ると応えるようにギターも哭く。
睨み合うように声を響かせあって、鬱屈した想いを吐き出して。
ひどい高揚と熱に灼かれて俺という人間が一個の楽器になっていく。
ライトに白く飛んだ世界で、ただの楽器として、ただのケモノとして吼えた。
爆音の中、不思議とカナの声も息遣いも耳が拾って、重なり合うような混ざり合うような恍惚を感じる。
―――セックスしてるみてーだ。
下手するとそれよりも、赤裸々な行為。剥き出しの魂同士を触れ合わせているような。
この恍惚を、カナも感じているのだろうか。
✢
次のライブはスリーマンライブだった。
持ち時間は30分。“plena”はいつもほとんど話さずにただ音をかき鳴らす。
のっけから煽られるままに吼えて吼えて、30分なんてあっという間だ。教室という檻にいるとあんなに長いのに、時間の進みは一定ではない。
汗を拭いつつ控室に戻り、一言断って外へと向かう。
熱くなりすぎた心を鎮めなければ、耳に残るリフレインを消さなければ、とても他の音なんて聴けない。
夏なら頭から水を被りたいところだが、冬ではそうはいかない。
いつかの非常階段に足を向け、軋む扉を開けて外に出たら、閉まりかけた扉が誰かに止められた。
「お前が俺の後釜か。………お前もホモなわけぇ?」
カナかと思ったら違った。
特に特徴もない声だけれど腐るほどに聞いたからわかる。“plena”の前ボーカルだ。
そう言えばカナがゲイだとバレて折り合いがつかなかったと話していたか。
折り合いね、と嘲る気持ちを持ったから覚えている。
ゲイだからなんだ。そんな程度のことのどこが呑み込めないのか。“plena”のボーカルのくせに。
マイノリティー?だからなんだ。人と違って何がいけないのか。
背が高い女が好きなやつもいれば、低い方が好きなやつもいる。ノリのいい女が好みのやつもいれば、物静かな女に恋をするやつも。それなら、男を好きで何がいけない?
こいつはいったい何を思ってカナの歌を歌っていたのか。
鬱積した想いを、苦悩を抱え、「だからどうした」と己を奮い立たせるあの歌を。
俺が考えている間も、べらべらとよく回る舌が雑音を紡ぐ。
偏見と蔑視、嫌悪で包み隠した好奇心。浅ましく醜悪な男だ。
聞くに耐えない言葉を聞く義理もなく階段を上がれば追いすがるようについてくる。
昂ぶった心のまま殴り倒したいのを堪えて拳を握りしめた。ここで騒ぎを起こすわけにはいかない。
「なぁ、ルナの具合は?あいつなら女みてーだから抱いてやるって言ったのにな。男のがイイって本当か?」
血が沸騰するかと思った。
「騒ぎを起こすと“plena”の名が傷つく」そんな理性の警鐘なんて全く無視して立ち止まり、振り返り、蹴落とす。
金属製の非常階段が派手に鳴る。
背中から無様に落ちた男の横に飛び降り、顔の横を踏み抜くように蹴る。それでも収まらずに襟首を掴んで引きずり上げて、殴ろうと右手を振り上げて、寸前で止める。
こんなやつ、殴る価値もない。
「お前にあいつの何がわかる。」
「っは!そんなに怒るとかどんだけ夢中なんだよ!このホモ野郎が!やっぱ締まりが最高ってか!今度俺にも貸してくれよな!さぞ可愛く啼くんだろーなぁ!?」
目の前が赤く染まって、ぎりぎりで掴み直した理性の糸が今度こそ切れた。
醜く歪む顔を殴り、痛みに折った身体に膝蹴りを入れる。
倒れた男の髪を掴んで立たせ、顎を狙って拳を握りしめたら階段を上がってくる音がした。
カナ。
「………カズ、久しぶり。」
青褪めた頬。白くない吐息。………いったいいつから外にいた?この男の戯言を、いつから聞いていた?
疑念を持って見下ろすけれどカナは男を見つめたまま。
男も頬を腫らしたまま、どこか毒気が抜けた顔でカナを見つめる。
ああ、そうか。こいつは。
腑に落ちると同時にカナを腕の中に閉じ込めた。
きつく抱きしめてカナの耳を塞ぎ、頭越しに男を睨む。
「これは、俺のだ。」
ぐしゃりと顔を歪めた男が、舌打ちをして去っていく。
なんと歪んだ男だろうか。
カナのことが好きなくせにそれを受け容れられず、けれど他者が手に入れたと思えば悔しくて。
けれど取り合うことはプライドが許さないとでも言うように、この程度の威嚇ですぐに折れる。
結局、カナよりも自分が大事なのだろう。
「………………っぁの、キサちゃん、」
ああ。抱き心地がよくて忘れていた。
声は聞こえていないはずなのに顔が真っ赤だ。―――抱きしめたせいか。
狼狽えて声も出せずに顔を伏せるなんて、いつもの天真爛漫な笑顔はどうしたというのか。
真っ赤な耳に触れればびくりと身体を震わせて、潤んだ瞳で俺を見る。
ステージ上の射抜くような強さはない、ただ熱に浮かされたような瞳で。
―――頭の中がパンクするような心地がした。
音楽が奔流のように流れ込んできて、溺れそうになりながらそれを逆に呑み込んでいく。
カナもこんな感じなのだろうか。
いままでこれほどに感情が揺れることがなかった。
だから、知らなかった。感情の揺れに呼応して次々と音楽が生まれていくのだと。
俺はきっと、はじめから一個の楽器だったのだと。
それを教えてくれたのは、カナだ。
カナが俺をここへ連れてきて、カナへの想いが最後の鍵を開けた。
「…カナ。俺、歌を作るよ。」
がんじがらめになった心が解き放たれて、駆け回り、歓喜の歌を歌う。
なんのことはない。閉じ込めていたのは俺自身だった。
退屈に憂いて、日常に飽いて、けれど生きていくために心を殺していただけ。
俺は半分死んでいたんだろう。
カナに会うまでは。
突然の言葉に驚いたカナが目を丸くする。
まじまじと俺を見るでかい瞳に、見慣れない表情の俺が映る。
何度も何度も瞬いたカナが、泣きそうな顔で笑った。
カナとは今までどおり普通にしている。というか、何事もなかったかのような振る舞いにあの時のことを忘れそうになる。
何かを抱えているはずなのにそれをおくびにも出さない。
ふとした瞬間に指先が触れたときの震えだけが、カナの想いを示す。
カナの想いの先には何がある?
想いを伝えただけの告白には、俺にどうしてほしいとか、俺とどうこうなりたいとか、そういうものが欠けていた。
ただ想いを溜めていた器からこぼれ出てしまっただけで、何も望まないと言いたげな態度。
ギターも歌詞もあんなにも雄弁なのに、自分の気持ちだけは呑み込む。―――それをわかっていて、敢えて聞かない俺も俺だ。
聞いたら、俺も答えを出さなければいけないから。
それが、良いものでも、悪いものでも。
2月になって3年は自由登校になったけれど、カナは毎日屋上に来て、いつものように歌い、ときにはギターを鳴らす。
あれから、ライブはまだ一度だけ。
二度目なら少しは冷静になれるかと思えば、そんなことはなかった。
俺を煽り立てて感情を昂ぶらせていく音。
それに喰らいつくように声を振り絞ると応えるようにギターも哭く。
睨み合うように声を響かせあって、鬱屈した想いを吐き出して。
ひどい高揚と熱に灼かれて俺という人間が一個の楽器になっていく。
ライトに白く飛んだ世界で、ただの楽器として、ただのケモノとして吼えた。
爆音の中、不思議とカナの声も息遣いも耳が拾って、重なり合うような混ざり合うような恍惚を感じる。
―――セックスしてるみてーだ。
下手するとそれよりも、赤裸々な行為。剥き出しの魂同士を触れ合わせているような。
この恍惚を、カナも感じているのだろうか。
✢
次のライブはスリーマンライブだった。
持ち時間は30分。“plena”はいつもほとんど話さずにただ音をかき鳴らす。
のっけから煽られるままに吼えて吼えて、30分なんてあっという間だ。教室という檻にいるとあんなに長いのに、時間の進みは一定ではない。
汗を拭いつつ控室に戻り、一言断って外へと向かう。
熱くなりすぎた心を鎮めなければ、耳に残るリフレインを消さなければ、とても他の音なんて聴けない。
夏なら頭から水を被りたいところだが、冬ではそうはいかない。
いつかの非常階段に足を向け、軋む扉を開けて外に出たら、閉まりかけた扉が誰かに止められた。
「お前が俺の後釜か。………お前もホモなわけぇ?」
カナかと思ったら違った。
特に特徴もない声だけれど腐るほどに聞いたからわかる。“plena”の前ボーカルだ。
そう言えばカナがゲイだとバレて折り合いがつかなかったと話していたか。
折り合いね、と嘲る気持ちを持ったから覚えている。
ゲイだからなんだ。そんな程度のことのどこが呑み込めないのか。“plena”のボーカルのくせに。
マイノリティー?だからなんだ。人と違って何がいけないのか。
背が高い女が好きなやつもいれば、低い方が好きなやつもいる。ノリのいい女が好みのやつもいれば、物静かな女に恋をするやつも。それなら、男を好きで何がいけない?
こいつはいったい何を思ってカナの歌を歌っていたのか。
鬱積した想いを、苦悩を抱え、「だからどうした」と己を奮い立たせるあの歌を。
俺が考えている間も、べらべらとよく回る舌が雑音を紡ぐ。
偏見と蔑視、嫌悪で包み隠した好奇心。浅ましく醜悪な男だ。
聞くに耐えない言葉を聞く義理もなく階段を上がれば追いすがるようについてくる。
昂ぶった心のまま殴り倒したいのを堪えて拳を握りしめた。ここで騒ぎを起こすわけにはいかない。
「なぁ、ルナの具合は?あいつなら女みてーだから抱いてやるって言ったのにな。男のがイイって本当か?」
血が沸騰するかと思った。
「騒ぎを起こすと“plena”の名が傷つく」そんな理性の警鐘なんて全く無視して立ち止まり、振り返り、蹴落とす。
金属製の非常階段が派手に鳴る。
背中から無様に落ちた男の横に飛び降り、顔の横を踏み抜くように蹴る。それでも収まらずに襟首を掴んで引きずり上げて、殴ろうと右手を振り上げて、寸前で止める。
こんなやつ、殴る価値もない。
「お前にあいつの何がわかる。」
「っは!そんなに怒るとかどんだけ夢中なんだよ!このホモ野郎が!やっぱ締まりが最高ってか!今度俺にも貸してくれよな!さぞ可愛く啼くんだろーなぁ!?」
目の前が赤く染まって、ぎりぎりで掴み直した理性の糸が今度こそ切れた。
醜く歪む顔を殴り、痛みに折った身体に膝蹴りを入れる。
倒れた男の髪を掴んで立たせ、顎を狙って拳を握りしめたら階段を上がってくる音がした。
カナ。
「………カズ、久しぶり。」
青褪めた頬。白くない吐息。………いったいいつから外にいた?この男の戯言を、いつから聞いていた?
疑念を持って見下ろすけれどカナは男を見つめたまま。
男も頬を腫らしたまま、どこか毒気が抜けた顔でカナを見つめる。
ああ、そうか。こいつは。
腑に落ちると同時にカナを腕の中に閉じ込めた。
きつく抱きしめてカナの耳を塞ぎ、頭越しに男を睨む。
「これは、俺のだ。」
ぐしゃりと顔を歪めた男が、舌打ちをして去っていく。
なんと歪んだ男だろうか。
カナのことが好きなくせにそれを受け容れられず、けれど他者が手に入れたと思えば悔しくて。
けれど取り合うことはプライドが許さないとでも言うように、この程度の威嚇ですぐに折れる。
結局、カナよりも自分が大事なのだろう。
「………………っぁの、キサちゃん、」
ああ。抱き心地がよくて忘れていた。
声は聞こえていないはずなのに顔が真っ赤だ。―――抱きしめたせいか。
狼狽えて声も出せずに顔を伏せるなんて、いつもの天真爛漫な笑顔はどうしたというのか。
真っ赤な耳に触れればびくりと身体を震わせて、潤んだ瞳で俺を見る。
ステージ上の射抜くような強さはない、ただ熱に浮かされたような瞳で。
―――頭の中がパンクするような心地がした。
音楽が奔流のように流れ込んできて、溺れそうになりながらそれを逆に呑み込んでいく。
カナもこんな感じなのだろうか。
いままでこれほどに感情が揺れることがなかった。
だから、知らなかった。感情の揺れに呼応して次々と音楽が生まれていくのだと。
俺はきっと、はじめから一個の楽器だったのだと。
それを教えてくれたのは、カナだ。
カナが俺をここへ連れてきて、カナへの想いが最後の鍵を開けた。
「…カナ。俺、歌を作るよ。」
がんじがらめになった心が解き放たれて、駆け回り、歓喜の歌を歌う。
なんのことはない。閉じ込めていたのは俺自身だった。
退屈に憂いて、日常に飽いて、けれど生きていくために心を殺していただけ。
俺は半分死んでいたんだろう。
カナに会うまでは。
突然の言葉に驚いたカナが目を丸くする。
まじまじと俺を見るでかい瞳に、見慣れない表情の俺が映る。
何度も何度も瞬いたカナが、泣きそうな顔で笑った。
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