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本編
泣くところは 2 〚カナ〛
しおりを挟む「ルディとダグに会ったのはまだガキのころだな。」
狭いベッドにふたりで寝転がると、必然的にぺったりとくっつかなくてはならない。
それが嬉しくて、ベッドを買い替えたくないなんて言ったら笑われるだろうか。
俺を腕の中に閉じ込めてくれるのが嬉しいのだと言ったら。
とろとろと幸せに浸っていたら、ぽつりとキサちゃんが呟いた。
そのまま、ひとつずつ空中に言葉を置いていくみたいに、キサちゃんの話ははじまった。
「妾。愛人。2号。なんでもいーけど、俺の母親はそんなやつで、俺に戸籍上の父親はいない。……そいつが家に来るときは、家にいたくなかった。」
言葉の端々に現れる、両親への嫌悪。
夜中にふらつく子供に声を掛けたのは、母親を蔑む近所のご立派な大人たちではなく、ボロアパートに住むマトモじゃない異邦人だった。
そんなふうに笑いながら話すキサちゃんの言葉に、痛みなんて欠片もない。
『だからどうしたっていうんだ』
そう強く抗えるのは、ロックと出会ってからなのか、昔からなのか。きっと昔から、キサちゃんは強いのだろう。
不貞腐れたどうしようもないガキだったよ、なんて言いながら、瞳が懐かしく過去を見つめる。
ダグさんと、ルディさんと、まだ小さいキサちゃんがいた、古ぼけたアパート。
ロックも、喧嘩も、ピアスも。今のキサちゃんを形作った部屋。
その光景を思い浮かべたら自然と頬が緩んだ。
あいつらうるせーから、たぶん近々会わせることになると思う、なんて言ってくれて、嬉しくてますます笑顔になってしまう。
話を聞く限りキサちゃんのお兄さんみたいなふたり。
そのふたりに、紹介してくれるんだ。
なぁんだ。
ぐるぐる悩んでたのが、ほんとに馬鹿みたいだ。
キサちゃんは元から、俺とのことを隠したりしない。
人目なんて気にしたりしない。
―――ゲイだとバレたらとか、そんなくだらないこと、きっと考えもしないだろう。
「……ね、もし有名になってさ。それで俺と付き合ってるってバレたら、どうする?」
確信はあったけど試しに聞いてみたら、訝しげに眉根を寄せて「どうもしねー」って即答された。
うん。そうだ。それでこそだ。
心がぱたぱたと跳ね回って、大好きな歌を口ずさむ。
カナリア。苦しみに抗って。辛くとも笑って。
……泣くところは、ここにある。
ぎゅうっとキサちゃんにしがみついて、嬉しくて嬉しすぎて、ほんのすこし泣いた。
✢
土曜日を迎える前に、トモとミヤに話をした。
今までにあったことをかいつまんで話し、カズから脅されたこと、要求を突っぱねること、それによって、もしかしたらゲイだとバラされるかもしれないと伝える。
驚いたふたりに根掘り葉掘り聞かれるまま答えたら、珍しいくらい険しい顔になった。
「お前。……そーゆーことはもっと早く言えよ。」
「脱退してほしくなければ抱かれろだって?しかも今度はゲイだとバラされたくなければ抱かれろ?あーやだやだ気持ち悪い!なんだよ、何様なんだよ!?お前の粗チンなんか願下げだって言ってやった!?」
「いや、それが……ちょうどライブのあとで、ちょっと混乱してて。ふたりは、もしバラされても困らない?」
ライブのあとと言っただけで何のことかわかったんだろう。あぁ、と納得した顔をしたふたりが、俺の顔を見て少しニヤける。
もうそっちの不安はないみたいだなって、……そんなにわかりやすいだろうか?
ふたりが少しだけ視線を絡ませてから、しっかりと俺に目を合わせて、声を揃えて強気に笑った。
「『だからどうしたっていうんだ』だろ?」
こんなにかっこ良く言い切ったくせに、「だいたい、バンドにホモ疑惑はつきものだろ」なんて付け加えるから笑ってしまう。
―――うん、俺たちなら、大丈夫だ。
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