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本編
ミヤとトモの場合 2 〚ミヤ〛
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カズの脱退もいろいろ衝撃だったけど、キサの加入はもっと驚いた。
ようやく探し人が見つかったのに、2年半もうだうだしていたカナが思い切って声を掛けて、甘酸っぱい屋上での交流を微笑ましく聞いたりしていて。
ある日、カナが真剣な顔でボーカルを見つけたと言った。
カズとの一件が堪えたことといいボーカルが見つからなかったことから半年近い活動休止。
焦る必要はないと思ってたけど、へぇいい人が見つかったのか、なんて、最初に思ったのはその程度。
どうにかして口説くと言ったカナを信じてライブを入れ、やってきた男が到着からわずか5分でステージに上がり、たったひと呼吸で度肝を抜かれた。
ほんの3曲。けれど軽々と歌い上げた非凡なボーカルは、まさかのカナの恋の相手で、ゲイを容易く受け入れて、さらりと仲間に加わった。
魅力的な声と、すごすぎる歌唱力。恵まれた体格と、鋭く整った顔立ち。モデルか俳優か、そんなきらきらしい見た目のくせに、歌は本格的の域を超えている。
それなのに歌だけだと手持ち無沙汰と言い切りギターを練習して、いきなりすごいバラードを作ったりする。
あり得ないにも程がある。
初めて作ったCDは売り切れによる再版。キサが身に着ければグッズだって飛ぶように売れて、初めてのワンマンライブのチケットはまさかの完売。
そして、初回の挑戦で、サマーグルーヴさえ射止めた。
…………いったいなんの冗談だ?
「わーー!すごい!ね、キサちゃん!すごいよ!」
サマーグルーヴは長野のスキー場で行われる、大型野外フェスだ。
有名アーティストが名を連ねる国内最大級のロックフェス。ここのオーディション枠は、ブレイクへの登竜門とさえ言われるほど。過去の合格者を見ても、音楽シーンの第一線で活躍するバンドばかり。
ーーーだというのに、こいつらには緊張なんてないのかねぇ。
せっかくだからと露天風呂付きのコテージを借りた。4人で泊まればライブ会場でキャンプインするよりも安かったし。
ライブの前日に入って、ライブの翌日フェスを見て、その翌日に帰る、計三泊の住処。
安いから期待してなかったけど小さいなりに小奇麗にまとまっているし、トモがこだわったおかげで露天風呂までついてる。
「お前の裸はエロいから大浴場禁止」
そんな風に言うから、もう呆れるやら恥ずかしいやら。
あとからカナと話したら、キサも似たようなことを言っていたらしい。………ほんと、呆れたやつらだ。
きゃいきゃいとカナがはしゃいで、それをキサが愛おしげに眺めて手を伸ばして、慌てて部屋に引っ込んだ。
絶対、これからはじめちゃうやつだ。
願わくば、明日カナの声が掠れていないことを。アーメン。
「俺たちも、する?」
十字を切っていたら後ろからトモに抱き込まれた。
え、ちょ、ばか、って言うのにいーからいーからなんて俺をぽいっとベッドに投げる。
ていうか、ここ、壁大丈夫なのか!?
「ぁっ……!キサちゃ、」
ハイ大丈夫じゃないー!安宿にそこまで期待しちゃいけないー!
「カナ、声抑えて」
「む、むり……っ!………くち、ふさいでぇ……っ!」
それきり声が聞こえなくなって、却って生々しい。
ちょ、トモ、何してんの!?声聞こえるってわかったとこだよね!?
「あれイイな。………くちふさいでぇって言えるまで、頑張って喘がすか。」
両手首が一纏めにされて、頭のうえではりつけにされた。
ばかめ、これじゃあ脱がせまい!
と思ったのに、俺を押さえるなんて片手で十分なのかよ!身長同じのくせに!どんだけ力強いんだよ!
裾から入ってきた熱い手が、そわりと脇腹を撫でながらあがってくる。
かりりと乳首を引っ掻いて、もう片方をシャツ越しにじゅうっと吸われて。
声が漏れそうになるのを唇を噛んで耐えて、涙目のままトモを睨む。
「っはは、ミヤ、エロいな。」
かちゃかちゃとベルトが外されて、すっかり勃ち上がったそれを握り込まれた。
………キスで口を塞いでもらう羽目になったかどうかは、っ、ヒミツだ。
✢
トモとキサはどこかで密約を結んでいたらしい。風呂の時間も決まってたようで、部屋でして、お風呂でして、部屋に戻っても不思議とカナたちには会わなかった。
…………どう考えても風呂でヤる時間を見越して分けてる。
でも抱き潰すほどではないのは、今日の本番を考えてのことだろう。……むしろ帰ってきてからが怖いな?
約束した時間の通りに、全員が揃った。
やけにツヤツヤしたふたりと、赤くなって押し黙るふたり。
あー、この感じ、たぶんあっちにも聞こえたんだな。そんで、あっちも聞かれてたってわかっちゃって、お互い死ぬほど恥ずかしいと。
真っ赤なカナと目があって慌てて目を逸らす。俺だってきっと赤い。
………大舞台に向かう朝がこんな始まりでいーのか!?
✢
妙に力の抜けるはじまりだったけど、さすがにライブが近づいてくると緊張してきた。
カナもそわそわしてる。俺も、取り繕うので精一杯。トモも落ち着きなくスティックを回してるし、変わらないのはキサくらいだ。
「キサちゃん、緊張しないの?」
カナ、よく聞いた!俺も気になってた。
こいつの心臓には毛が生えてるんじゃないかって、少し、いやかなり、疑ってる。
普通なら、いきなりステージに上げられたら声なんて出ないし足は竦むはずだ。…………こいつは普通の枠には到底収まらないけれど。
不思議そうに首を傾げたキサが、ぐるりと周りを見渡す。
カナ。俺。トモ。そしてもう一度、カナを見て。
「頼もしすぎて、緊張もしない。」
肩を竦めてふっと笑った顔に、3人揃って撃沈した。
「でも実際、緊張しかないんだけど。」
前の組のライブが終わった。小休止を挟んで、俺たちの出番。
他のふたりに聞こえないようにトモに囁き、逞しい腕にそっと触れる。
ーーーえ、震えて、る?
驚いてトモを見たら、ぎらぎらと光る獣の瞳。
「ばか、武者震いだ。……ミヤ、行こう。」
痛いくらいに手が掴まれ、冷えた指先に熱が篭もる。
そっか、これは、武者震いだ。
サマーグルーヴがなんだ。たくさんの観客がなんだ。
いつだってライブのときは、そんなもの見えない。
ふたりの背中を見て、背中にトモを感じて、必死に走るうちにいつも終わっている。
『だからどうしたっていうんだ。』
その言葉を思い出し、肩から余分な力が抜けて。
目の前を歩く大きな背中に向かって、一歩足を踏み出した。
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