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本編
要求 3 〚キサ〛
しおりを挟む「…………それは、高いのかしら。安いのかしら。」
「安いっすよ!条件さえ飲めばそこらのデザイナーと大差ないじゃないっすか!この額でRDが仕事するなんて反則ですよ!どっかのレーベルが悔しがるんじゃないっすか!?」
「あなたね。その条件が高いか安いかっていう話なのよ。…………とにかくこれは、私達が決められることじゃないわね。メンバー全員で話し合ってくれる?私達はあなた達の決定を尊重するわ。」
物分りのいい担当で良かった。
俺たちの行く先を強制しようものなら、すべてを失くしてでも抗うところだ。まぁ、そうでないだろうところを選びはしたのだが。
とりあえず、メンバー全員に収集をかけ、最終決定がいつまでに必要かを確認して店を出る。
秋の風に、冬の気配が忍び寄っていた。
条件は3つ。
ジャケットもPVも、ルディたちに任せること。その際、どんな要求をされても必ず呑むこと。
次に、あいつらの知り合いの海外レーベルに所属すること。
最後に、俺があいつらのオモチャになること。
『オモチャなんて言ってないでしょー?ただ、逆にイブが俺たちの作品のモデルになれって言っただけで。』
脳内でルディが反論してくるが、それこそオモチャと同義語だ。嫌な予感しかしない。
RDの作品を見るに、キワモノのような格好はさせられないようだが、過去がそうだっただけで、これからはわからない。
ただ、これだけの条件を呑めば、今回のCDだけでなく、継続的に仕事をしてもいいという。
海外レーベルの話はまったくもって悪くない話だ。
俺がオモチャになるかどうかは、まぁ俺だけの問題で、それだけが気になったのなら即決していただろう。
問題は、ジャケットやPVのとき、どんな要求をされても必ず呑むこと。この一点だ。
どんな要求でもって、いったいなんなんだ。
全員の予定があったのは、それから数日後。
ちょうど模試の結果も届いた。結果はA判定。これで、カナとも大手を振って会える。
「キサちゃん!」
カナ。久しぶりだ。なんだかまた少し大人びたように見える。
けれど全開の笑顔と元気よく手を振る姿は、子供みたいだ。
思わず頬が緩んだら、トモとミヤが口をへの字に曲げた。
「なんで、また色気増し増してんの!?ほらカナなんて固まっちゃったじゃん!」
「予定変更。人目のあるとこで話したりしたら落ち着かねー。俺たちの家でいーか?」
俺たちってことは、同居しているのか、知らなかった。
特に問題ないから軽く頷いて、カナの赤い頬をつつく。
はやく打ち合わせを終わらせて、カナとふたりきりになりたい。
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