トワイライト・ラブ(陽炎)

流理(ルリ)

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トワイライト・ラブ(陽炎)

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3日目:セビリア歴史地区観光
朝食を終えて、今日の着る服の関係で、体感温度の確認でホテルの外に出てみた。
外は、ひんやりして寒い。出勤と思える人たちが、コートを着て足早に歩いて行く。通勤であろう女の人を見て、どこか格好いいと思った。

さて、今日は最初にセビリア観光だ。
このセビリアは、アンダルシア地方での主要な大都市で、人口が70万人なのだ。
歴史地区の観光で、まずは世界遺産のセビリア大聖堂に行く。
完成まで一世紀(100年)という歳月だけど、明後日に行く予定のサグラダファミリアは、2026年完成予定で、144年となる?
セビリア大聖堂を見学したが、ここは大量の金をふんだんに使って、全部がキンキラキンでした。
海外ツアーでは、セント・ポール大聖堂とか、それぞれの国の大聖堂を巡って行く定番コースだ。ここは、中央にはキリストではなく聖母マリアが鎮座している。どうやらセビリアはマリア信仰みたいです。
そして、あのコロンブスのお墓がある所でも有名なのだ。

大聖堂と言う様に、巨大で広いので、歩き疲れて一人で座って休んでいたら美紀が隣に座って話しかけて来た。
「お疲れ様です。広くて、疲れますね。」「おひとりですか」
「はい、妻は何処かを見ている様です。」
「ここのツアー、ほとんどの人がエコノミーやけど……」
美紀がぽつりとつぶやいた。英一が
「うん?」と顔を向けると、ちょっと得意げに笑いながら言った。
「うちら、ビジネスクラスで来てん。やっぱりこの歳やと、長旅はビジネスちゃうと体が持たんわ~。」「移動は、絶対ビジネスやわ」
その一言に、英一は一瞬言葉が詰まった。
(あぁ……なるほど、そういうタイプか。)
心の奥で思ったものの、顔には出さず、軽く笑って返した。
「ビジネスですか。良いですよね、快適だったでしょうね。」
「せやねん、全然ちゃうわ。やっぱりお金出す価値あるわ~。」
美紀はうなずきながら話を続ける。英一は心の中でため息をついた。
(このおばちゃん、関西人は、こういうとこ遠慮ないな……まぁ、それも元気の秘訣か。)
「あなたは?エコノミー?」と、美紀が聞いてきたので
「えぇ、まぁ……いつも通りですね。」
適当に相槌を打ちながら、英一は少しだけ遠い目をした。実際、経済的にはビジネスクラスも選べるのだが、妻が「もったいない」といつも却下する。
「ほんま、男の人って我慢強いよね~。うちら絶対ムリやわ。」
美紀は笑いながらそう言い、また窓の外を見た。
英一は、少し笑って、日差しを浴びるステンドガラスの景色に視線を移した。
眩しい光がチラチラと反射している――妙にまぶしいのは、太陽のせいだけではないような気がした。

美紀が、また話を振ってきた。まあ、旅行先では、定番の話の流れだ。
「海外旅行、よう慣れてはる感じやけど……よく行かはるん?」
興味半分、自慢話半分――そんな空気がなんとなく伝わる。
英一は軽く首をひねりながら答えた。
「えぇ、まぁ……妻が好きなんでね。特に妻が仕事を辞めてから多くなりまして、去年は四回行きました。」
「確か、スイス、ドイツ、ポルトガル……あとは、何処だったかな。マレーシアだったかな」
思い出しながら話すと、美紀の顔に一瞬驚きが走った。
「えっ、4回も?去年だけで?」
「ええ。来年も4月はベトナム辺りに行って、7月は……ああ、チエコとスロバキアだったかな。」
その瞬間、さっきまでの“ビジネスクラス自慢”の上から目線が、ほんのりトーンダウンするのが分かった。
「そ、そんなに行ってるの……それは、すごいですね。」
美紀は苦笑しながらも、ちょっと尊敬のような眼差しを向けてくる。
英一は少し肩をすくめて続けた。
「まあ、私は、妻の荷物持ち担当で、スケジュールとか、行先とかはお妻がやっているので、詳しくはあまり覚えていないのですよ」
「……以前はね、回数が少なかった時はビジネスクラスとか、プレエコノミー使っていましたけど。さすがに仕事も辞めて、これだけ回数が増えると、もうエコノミーじゃないと持たないですよ、財布が。。。」と、言って少し笑ったが美紀は
「はぁ~……」と感心したようにうなずいた。
「そりゃそうやねぇ……それだけ行ってたら、さすがに贅沢ばっかりしていられないですね。」
声のトーンがさっきとは微妙に違っていて、英一はなんとなくおかしくなり、笑いをこらえた。
(今風で言うと、マウント取ったりして、年齢の割には幼稚でいそがしい、単純な人だなと、思った。)

大聖堂観光の終了時間が来て、ガイドさんがそろそろ集合を呼びかけ始めた。立ち上がろうとしたとき、美紀が一瞬だけ、ちらっと英一の顔を見上げた。その視線は、最初とは少しだけ違って見えた。

外に出て、日差しが和らいで暖かくなって来た。
次に、お隣のヒエルダの塔に登った。
塔を下から見ると高い感じで98メートルある様だ。登って見たら、年齢的に結構きつい階段だったけど、大きな鐘のある上まで頑張って上った。
途中で、美紀とすれ違って目を見合わせた時、少し胸がざわついた。英一は、「ええっ、何だろう」と思ったけど、階段が急なので動悸もあり、その為だろうと思った。

それから昼食後、バスで約2時間かけてコルドバに移動した。
コルドバ歴史地区観光で、巨大モスク、メスキータの観光だった。
ここの建物は、今までに3回の拡張工事が行われて、今では2万5千人もの収容可能となった様だ。
ヨーロッパの寺院の中では最大で、世界3番目に大きいイスラム寺院との事です。イスラムとカトリックが存在する珍しい寺院となっているので、柱とか二つの宗教の特徴がそれぞれある感じだった。
モスクの中で、美紀と一緒になったので、少し話したが、声が響くのでお互いに差し控えた。

次に、またまたコルドバからグラナダへ3時間の大移動だった。
グラナダ到着して、ホテルにチエックイン後、夕食を済ませ、それからオプショナルツアーへ行く事になった。

日が暮れてから、ちいさなワゴン車2台で高台まで移動して、明日訪れる予定のアルハンブラ宮殿のライトアップを見学した。
高台では、若者が楽器と大きな声で歌っていて、観光客目当てにお金を要求された。しつこく寄って来たけど、「NO!NO!」と言って、逃げた。

そこから、フラメンコショーのお店まで歩いて行く。
席に座り、飲み物が出て来て、ショーを待っていたら、偶然に美紀が後ろに座っていて話かけて来た。さっきの「NO!」と言って逃げたのが、面白かった様で、声を出して笑った。
美紀に笑ってもらったので、何故か良かったと思った。里美と話すと、少し胸がザワザワした。どうやら、動悸じゃない様だと思った。

スペインと言えば、フラメンコなので、座って待っていたら、ショーが始まった。男と女が踊るのだが、激しい靴のタップで踊っていた。
ちょっと、凄いと思った。そういえば、40年前にもスペインのどっか路地裏みたいなところで、見たことがある様な思い出が蘇ってきた。

ここも同じく、洞窟みたいな狭いところで、椅子を並べて全員が長時間座って見るので、英一には何か息苦しかったので、早く出たいと思ったが、とりあえず我慢した。ショーが終わって、ようやく店を出て、冷たい風にあたりホッとした。

ホテルに戻って、明日も早いので早々にベッドに入った。でも、今日は美紀との会話が何度かあったので、何か不思議な胸騒ぎがしたが、疲れているので直ぐに眠った。
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