魔窟村ことシンク下〜たこ焼き粉とひろしと片栗粉仙人〜

氷下魚

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第九話〜ひろし捜索中、なぜか魔窟村が沸いた〜

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 あの朝の、おにぎり事件から数日後。


 主は、決意していた。


「今日こそ……さすがに今日こそ、ひろしを見つける……!」


 ひろし。
 ゆかりの弟、広島菜ふりかけ。


 買った記憶はある。

 近所の薬局か百均で、何かのついでに。

 未使用のまま、気づけば姿を消していた。


 あれがあれば、ローテーションに風が吹く。

 あれがあれば、おにぎりに革命が起きる。


「つまり……魔窟村……!!」


 主はシンク下の扉を開けた。

 片栗粉仙人はいつも通り、黙して鎮座。


 その横から、出るわ出るわ。


 乾燥春雨。
 くずきり。
 高野豆腐。
 マギーブイヨン(個包装バラバラ)。


「おまえら……今は出番じゃない……!」


 その横からもまだまだ出てくる。


 たこ焼き粉。
 天かす。
 お好みふりかけ(あおさ粉・ごま・煮干し・鰹節の混合)。
 ハ◯スのシチューミクス。
 パンケーキミックス(高いやつと普通のやつ)。
 明太子パスタソース。
 薄力粉500g、強力粉100g(目分量)。
 マギーコンソメ(ブイヨンあるのに)。
 無駄に拘るてんさい糖(まだあるのにダブらせてしまった計1.5袋)。
 無駄に拘るピンクの藻塩。

 概ね開封済。


 主、無言。


 さらにさらに下層から、何やらパッケージの派手な袋が。


 ——乾燥こんにゃく ワッ!!(商品名)


 10個入りのうち5個が使われ、残りは謎の沈黙。


「……まあまあ良いお値段した其方……こんな形で再会するとは……」



 これだけ掘り出して掘り出して掘り出して。


 ついに—— 


 シンク下最下層、謎の隙間。


 そこに、潰れた状態で潜んでいた。


 ひろし(未開封)。

 無言で取り上げる。

 時刻はまさかの午前一時。


「…………寝る…………」


 睡眠不足の、翌朝。


 押麦ごはんを用意する。


 その昼のおにぎりは、ひろし入りだった。


 少ししょっぱかったけど、美味しかった。






※これで「お金がない」とか、よく言えるよね☆
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