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本編
81話 掲げられた旗(フラグ) その33
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午後の中頃となる、ミナとレイン、エルマとミシェレが寮に戻っており、先程ノーラ達と事務所の前で別れた所で、マフダがありがとうございますと三姉妹を引き取り、またねーと大きく手を振り合った子供達となる、
「ムフフー、ハナコー、寂しかったー?」
嬉しそうにハナコを抱き上げワヤクチャにするミナ、当のハナコはミナが帰って来たその瞬間こそ嬉しそうに尻尾を振り回し飛び跳ねたが、こう撫で回されると不愉快なのか大きく身を捩じって抵抗していたりする、こらこらとレインが諫め、エルマもやり過ぎですと注意する始末、ミナはムーと寂しそうにハナコを床に下ろすと、
「ソフィー、あのねー」
と話し相手を求めて厨房へ駆け込んだ、やれやれと微笑むエルマとレイン、
「じゃ、簡単な反省会ね」
エルマは炬燵に足を入れつつミシェレに微笑む、ハイと笑顔で答えるミシェレ、
「レインちゃんもお願いできる?」
レインに笑顔を向けるエルマ、ん?と不思議そうにレインは首を傾げ、まぁ仕方ないかと二人に歩み寄る、
「ありがとう、でね、あんな感じでいいかなと思うんだけど・・・どうかしら、ミシェレさんは無理してない?」
上品に背筋を正して問いかけるエルマ、エルマとしては以前から言っていた厳しさはこの程度だろうかなとしっかりと調整したつもりである、ミシェレも恐らく厳しさの事かなと察し、レインは炬燵に足を入れつつフムと腕を組む、
「・・・そう・・・ですね、はい・・・私も奥さんもあの程度であれば対応できるかと思います、ほら、厳しい顔はしてたけど、怒鳴る事も叱りつける事も・・・少ないように思いますし・・・」
ミシェレが静かに答えた、
「子供達はどうかしら?」
「それはもう見ての通りだと思いますよ、でも・・・一番ほら、困惑してたのはミナちゃんとかサスキアちゃんもですかね・・・こっちに居る時と全然違いますし、サスキアちゃんは妙に警戒した感じでしたし・・・」
「それもそうね・・・でも、それは慣れてもらうしかないかしら・・・」
若干寂しそうに厨房へ視線を向けるエルマ、ミシェレもつられて見つめるも、無論ソフィアやミナの姿が見える事は無く、ただゆったりと甘い香りが漂ってきている、夕飯の香りにしてはなんか変だなと感じる二人、
「あれじゃな・・・エルマが無理をしているようだのう・・・」
レインが不意に口を開いた、エッとレインを見つめるミシェレ、エルマもアッとレインを見つめ、
「・・・わかる?」
小さく首を傾げる、
「わからいでか・・・どうせあれじゃろ、若い頃こうやっていたなとそれを踏襲したのであろう、違うか?」
フンと鼻で笑うレイン、
「・・・そうね、レインちゃんには見透かされちゃうかな・・・」
困ったように微笑むエルマ、そうなんだーとミシェレがエルマを見つめる、
「まずのう、じゃから、エルマはもう少し肩の力を抜くべきじゃ、厳しいのは大事だが、それで子供達と距離をとられては意味が無い、第一エルマ自身が疲れるじゃろ、相手はな、王家でも貴族でもないし、ここの生徒のような大人でもない、平民の幼児なのだ、無論・・・あれじゃ、叱る時は叱るべきだが、普段はな、遊び相手にされるくらいが丁度良かろう・・・まぁ・・・それも過ぎると宜しくないが・・・程度の問題じゃな・・・そう思うぞ・・・」
ムフンと鼻を鳴らすレイン、その通りかもねと優しく微笑むエルマ、ヒェーとミシェレはレインを見つめてしまう、レインがこれほどに明晰でかつ理論的であったのかと度肝を抜かれ、さらにはエルマの心情と言うべきか、内面までをも察している様子、こんなに小さい子なのにと感心を通り越して敬意すら感じてしまう、
「・・・ありがとう・・・そのね、客観的っていうのかな?そういう意見が欲しかったの・・・ほら、私もね、ミナちゃん達が初めてだったから、幼いね、他人の子供を相手するのは・・・やっぱり自分の子供と違ってね、気をつかうものだしね・・・といっても子育てだってもう10年以上前の事だし、正直・・・どんなだったか記憶にないのよね・・・」
「致し方ないのう、しかし、子供達は皆楽しんでおったようだ、まぁ、初めての授業でもあるしな、継続していくのが大事じゃろ、その内互いに慣れてくるものじゃ、その慣れがな、良い事もあれば良く無い事もある、教師と生徒の関係も然り、生徒同士の関係も然り・・・どうしても喧嘩もあれば好き嫌いもある、人とはそういうもので、やつらはまだ人としては未熟じゃしな・・・まぁ、そこはな、ミシェレと世話人で目を光らせる他ないのう・・・」
スッと背筋を正すレイン、ホヘーとミシェレはレインを見つめ、そうねと微笑むエルマ、そこに、
「見てー、これ見てー」
ミナがダダッと戻って来た、今度はなんだと振り返る三人、ハナコもピョンと飛び跳ねる、
「これー、新しいお菓子だってー、ソフィーが焼いたのー、見てー、プルプルー」
両手で皿を掲げて駆け寄るミナ、こりゃ危ないとレインが叫ぶもその勢いは止まらずダンとばかりに炬燵テーブルにその皿は置かれた、と同時にフルフルと揺れる黄色い物体、大きさは丸パンと同程度、太い円筒形で底面は茶色く焼かれており、側面は鮮やかな黄色である、そして大変に甘い香りを漂わせている、まぁと目を丸くするエルマとミシェレ、レインもこりゃまたと目を奪われた、
「ウフフー、凄いでしょー、プルプルでフワフワなのー」
キャーと叫ぶミナ、ハナコもその匂いにつられてか尻尾を振ってヘッヘとミナの隣りに駆け寄った、
「・・・ほんとだ・・・」
「うん、プルプルだ」
「フワフワじゃのー・・・」
思わず呟く三人、ウヘヘーと微笑むミナ、そこへ、
「こーら、騒がしくしないの」
ソフィアがゆっくりと厨房から顔を出す、なんともニヤケタ顔であった、
「これ、新しい料理ですか?」
ミシェレが目を輝かせ、エルマとレインは無言でソフィアを見上げてしまう、
「そうよー、タロウから教わったの、どう?見た目はいいわよねー」
ニコーと微笑むソフィア、そうなのーとミナが跳ねるも何がそうなのだろうと三人は思いつつまぁいいかと聞き流す、
「で、試食してみる?」
ニヤリと微笑むソフィア、当然、
「スルー、シショクするー、食べるー」
ギャンと吠えるミナ、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまうミシェレである、しかし昼過ぎにも子供達と一緒にジャムパンを頂いていた、これも美味しいんだよなーと子供達と堪能しており、もうこれだけで給金なんていらないかも等と口にはしなかったが甘味の愉悦に溺れたばかりであったりする、
「・・・えっと・・・いいんですか?」
エルマがマジマジと皿を見つめる、もう揺れが収まったその品、しかしうっすらと湯気を上げており、焼き立てなのだろうなと思う、そしてこういうのはやはり焼き立てが一番美味しいものだと経験的に理解しているエルマ、思わずミシェレと同じようにゴクリと喉を鳴らしてしまった、
「いいわよー、ただし」
ソフィアは手にした包丁を見せつけ、
「それ一個だけよ、あと、上の四人も呼んできて、生徒達が来る前に食べちゃうこと、喧嘩になるからねー」
意地悪そうに微笑むソフィアである、わかったーとミナが叫び、
「えっと、えっと、ユーリ?ユーリ呼んでくるー」
ダダッと階段に向けて駆け出し、ハナコがワフンと飛び跳ねた、
「あっ、あんたも欲しい?」
ソフィアがハナコに微笑みかける、当然とばかりに尻尾を振りまくってつぶらな瞳を向けるハナコ、
「少しだけよ、甘いからね」
ニコリと微笑み炬燵に歩み寄るソフィアである、そして三階では、
「ユーリ、ユーリ、いるー」
ミナの絶叫が響いた、なんだ?と顔を上げるカトカとゾーイ、
「ユーリはー、ユーリどこー」
遠慮なく叫ぶミナ、早くしろとばかりにピョンピョン飛び跳ね、めんどくさいのかつっかけに履き替えることなく階段上で飛び跳ねるものだから大変に危なかっしい、
「こら、落ち着いて」
ゾーイが思わず叱責し、カトカもまったくだと腰を上げる、
「ブー、いいの、いいから早く、ユーリはー」
「はいはい、所長はいるわよー、待っててねー」
カトカがユーリの研究室へ向かい、
「どうかしたの?」
とゾーイがウーンと伸びをする、
「あのね、あのね、ソフィーがね新しいお料理作ったの、ブルブルでヤワヤワであまいー匂いがするのー」
キャーキャーと叫ぶミナ、あっさっきのあれかーとゾーイは微笑むと、
「そっかー、で、所長はなんで?」
とユーリを呼び出す理由を問い直す、
「うん、あのね、あのね、ソフィーがねシショクしていいよって言ってー、で、上の人達も呼んできてってなってー、だからー」
ピョンと跳ねるミナ、あっなるほどねとゾーイは納得し、
「えー、じゃ、私達もいいの?」
とニヤリと微笑む、
「うん、みんなで来てー、食べよー、絶対美味しいと思うー」
若干落ち着いたのかニコーと微笑むミナ、フフッそっかーとゾーイが微笑むと、カトカが戻ってきて今度はなによとユーリが続く、
「あっ、いた、ユーリ、来てー、あと、ほかのもー」
「ほかのもって・・・もう」
呆れつつも腰を上げるゾーイ、
「何がどうしたのよ」
作業を中断させられ不愉快そうなユーリであった、カトカもさてと腰を下ろしてしまう、
「だからー、早くしてー」
もう何でもいいとばかりにジタバタと腕を振り回すミナ、まったくとゾーイが微笑み、
「ほら、さっき言ってた新しい料理?試食させてくれるらしいです」
「あらま・・・それは大事だ」
あっさりと理解するユーリ、カトカもエッと顔を上げる、
「じゃ、行くか、サビナ呼んできて、あと・・・タロウにも声かけておくか」
「ですね、私行きます」
カトカが再び腰を上げ、ゾーイは一応とテーブル上の書類をまとめる、
「そっか、で、どんなもんなの?」
と階段に向かうユーリ、
「あのねー、ブルブルでヤワヤワなのー」
「またそれー」
「またってなんだー?」
「またでしょう、なんだっけプリンとか蒸しパンとかもプルプルだったじゃないのさ」
とスリッパに履き替えるユーリ、
「そうなの?」
キョトンとユーリを見上げるミナ、
「そうよー、忘れた?」
「・・・わすれたー」
「そっか、まぁいいけどねー」
何とも気の抜けた会話であった、ゾーイが何を言っているんだかと微笑みつつスリッパに履き替え、カトカとサビナも合流する、
「あっ、タロウは?」
「俺は別にいいよーって言ってました」
「そっか、じゃ、行くぞ」
ミナの脇をスッと通り抜けて駆け下りるユーリ、
「あっ、だめー、先に行くなー」
ギャーと叫んで追いかけるミナ、だから危ないからと眉を顰める助手三人、そうして食堂に入ると、エルマ達に出迎えられお疲れさまーと労いの声が交わされる、そして、
「あらま・・・確かにこりゃまた違うのかしら?」
皿の上には切り分けられたその新しい料理とやらが並んでいる、
「これですか?」
「へー・・・なんか・・・あれですね」
「うん、プリンと蒸しパンを合わせた感じ?」
「あっ、それ近いわね」
ニヤリと微笑むソフィア、
「そうなんですか?」
「そうよー、でね、作り方はまぁいいとして、あれよ、玉子料理だわね」
「玉子料理?」
ヘーと女性達の声が響く、確かにタロウは玉子が大量にいるとかなんとかと言っていた、となれば玉子料理なのであろう、
「で、結構難しくてね、二個くらい失敗しちゃったわ、タロウさんは妙に上手く焼いたんだけど、まぁ、ほれ、食べてみて」
ニコーと微笑むソフィアである、ちなみにその上手く焼けた品は当然のようにタロウを含めた四人で試食しており、こりゃ凄いとソフィアもティルもミーンも夢中になってしまった、だろうと得意気に微笑むタロウ、ソフィアがムッと不愉快そうに睨むもまぁいいかとすぐに手を伸ばしてしまう程の品である、
「いいの?いいの?」
ミナがテーブルに手を着いてピョンピョン飛び跳ねた、ハナコも一緒になって飛び跳ねる、
「いいわよー、ただし一口ずつね、夕飯の後には丸っと一個ずつ頂きましょう」
「わかったー」
と言うが早いか手を伸ばすミナ、一番大きそうな欠片を選びヒョイと口に運ぶ、レインが意地汚い奴めと横目で睨みつつも手を伸ばし、女性達の手も自然と伸びた、そして、
「うわっ・・・フワフワ・・・」
「うん、柔らかいねー」
「それにしっとりしてる・・・」
「へー・・・こりゃまた違うわね」
「そうなのよー」
ウフフと満足そうに微笑むソフィア、どうやらこの品も成功らしい、厨房で夕食を作りつつ試行錯誤した甲斐があったというもので、厨房からそっと顔を覗かせたティルとミーンも笑顔であった、
「美味しー、もっとー、もっとたべたい」
ガシッとソフィアに抱き着くミナ、
「はいはい、夕飯の後ね、冷めても美味しいらしいから」
「そうなんですか?」
エルマもゴクリと飲み込んで自然な笑顔となっている、
「そうみたいよー、だから、まぁ楽しみにしてなさい」
ソフィアはウフフと腰を上げ、皿に手を伸ばす、少しばかり欠片が残ったようで、
「・・・このくらいならいいかしら?」
と一応とエルマをうかがう、
「このくらい?」
ハテ?と問い直すエルマ、
「ほら、ハナコにね」
ソフィアがニヤリと視線を落す、その先ではハナコがこれでもかと尻尾を振り、期待に満ちた眼差しをソフィアに向けている、今にも飛び掛からんとする勢いで、そういうことかーと女性達の目が一斉にハナコに向けられた、
「・・・そう・・・ですね、それほど甘くないですし・・・少しだけなら、はい」
やれやれと微笑むエルマ、正直癖になる為与えるべきではないのであるが、まぁ偶にはいいだろうなとも思う、
「そっか、じゃ、ミナ、これ、ハナコにあげて、ちょっとだけどね」
と手にした皿をミナに預けるソフィア、
「ウン、わかったー」
ミナはピョンと飛び跳ね、
「ハナコー、マテ、マテが先ー」
と暖炉の前の定位置に向かう、素直にそれを追うハナコ、いやこの場合ハナコはその皿に従っているだけであってミナに従っている訳では無いのであろう、ウフフと微笑んでしまう女性達である、そこへ、
「ウガー・・・なんとかなったぞー」
ノソリとタロウが階段を下りて来た、
「そうなの?」
ユーリがよっと腰を上げ、もっと食べたいなーと思いつつ助手三人も立ち上がる、
「まずねー・・・あれだな、製法から考えなければならない感じでなー・・・しかし、まぁ、なんとかはなったなー・・・しんどかったー」
やれやれと肩を落とすタロウである、
「そっ・・・じゃ、見せなさい」
ギンとタロウを睨むユーリ、
「ん、そのつもり、あっ、エルマさん戻ってたのね、丁度いいや、見てみる?」
ニヤリと微笑むタロウ、今度はなんだと目を細めるエルマ、ミシェレはこれがあれか毎日が騒がしい上に目新しいという事かとただただ驚いてしまっていたりした。
「ムフフー、ハナコー、寂しかったー?」
嬉しそうにハナコを抱き上げワヤクチャにするミナ、当のハナコはミナが帰って来たその瞬間こそ嬉しそうに尻尾を振り回し飛び跳ねたが、こう撫で回されると不愉快なのか大きく身を捩じって抵抗していたりする、こらこらとレインが諫め、エルマもやり過ぎですと注意する始末、ミナはムーと寂しそうにハナコを床に下ろすと、
「ソフィー、あのねー」
と話し相手を求めて厨房へ駆け込んだ、やれやれと微笑むエルマとレイン、
「じゃ、簡単な反省会ね」
エルマは炬燵に足を入れつつミシェレに微笑む、ハイと笑顔で答えるミシェレ、
「レインちゃんもお願いできる?」
レインに笑顔を向けるエルマ、ん?と不思議そうにレインは首を傾げ、まぁ仕方ないかと二人に歩み寄る、
「ありがとう、でね、あんな感じでいいかなと思うんだけど・・・どうかしら、ミシェレさんは無理してない?」
上品に背筋を正して問いかけるエルマ、エルマとしては以前から言っていた厳しさはこの程度だろうかなとしっかりと調整したつもりである、ミシェレも恐らく厳しさの事かなと察し、レインは炬燵に足を入れつつフムと腕を組む、
「・・・そう・・・ですね、はい・・・私も奥さんもあの程度であれば対応できるかと思います、ほら、厳しい顔はしてたけど、怒鳴る事も叱りつける事も・・・少ないように思いますし・・・」
ミシェレが静かに答えた、
「子供達はどうかしら?」
「それはもう見ての通りだと思いますよ、でも・・・一番ほら、困惑してたのはミナちゃんとかサスキアちゃんもですかね・・・こっちに居る時と全然違いますし、サスキアちゃんは妙に警戒した感じでしたし・・・」
「それもそうね・・・でも、それは慣れてもらうしかないかしら・・・」
若干寂しそうに厨房へ視線を向けるエルマ、ミシェレもつられて見つめるも、無論ソフィアやミナの姿が見える事は無く、ただゆったりと甘い香りが漂ってきている、夕飯の香りにしてはなんか変だなと感じる二人、
「あれじゃな・・・エルマが無理をしているようだのう・・・」
レインが不意に口を開いた、エッとレインを見つめるミシェレ、エルマもアッとレインを見つめ、
「・・・わかる?」
小さく首を傾げる、
「わからいでか・・・どうせあれじゃろ、若い頃こうやっていたなとそれを踏襲したのであろう、違うか?」
フンと鼻で笑うレイン、
「・・・そうね、レインちゃんには見透かされちゃうかな・・・」
困ったように微笑むエルマ、そうなんだーとミシェレがエルマを見つめる、
「まずのう、じゃから、エルマはもう少し肩の力を抜くべきじゃ、厳しいのは大事だが、それで子供達と距離をとられては意味が無い、第一エルマ自身が疲れるじゃろ、相手はな、王家でも貴族でもないし、ここの生徒のような大人でもない、平民の幼児なのだ、無論・・・あれじゃ、叱る時は叱るべきだが、普段はな、遊び相手にされるくらいが丁度良かろう・・・まぁ・・・それも過ぎると宜しくないが・・・程度の問題じゃな・・・そう思うぞ・・・」
ムフンと鼻を鳴らすレイン、その通りかもねと優しく微笑むエルマ、ヒェーとミシェレはレインを見つめてしまう、レインがこれほどに明晰でかつ理論的であったのかと度肝を抜かれ、さらにはエルマの心情と言うべきか、内面までをも察している様子、こんなに小さい子なのにと感心を通り越して敬意すら感じてしまう、
「・・・ありがとう・・・そのね、客観的っていうのかな?そういう意見が欲しかったの・・・ほら、私もね、ミナちゃん達が初めてだったから、幼いね、他人の子供を相手するのは・・・やっぱり自分の子供と違ってね、気をつかうものだしね・・・といっても子育てだってもう10年以上前の事だし、正直・・・どんなだったか記憶にないのよね・・・」
「致し方ないのう、しかし、子供達は皆楽しんでおったようだ、まぁ、初めての授業でもあるしな、継続していくのが大事じゃろ、その内互いに慣れてくるものじゃ、その慣れがな、良い事もあれば良く無い事もある、教師と生徒の関係も然り、生徒同士の関係も然り・・・どうしても喧嘩もあれば好き嫌いもある、人とはそういうもので、やつらはまだ人としては未熟じゃしな・・・まぁ、そこはな、ミシェレと世話人で目を光らせる他ないのう・・・」
スッと背筋を正すレイン、ホヘーとミシェレはレインを見つめ、そうねと微笑むエルマ、そこに、
「見てー、これ見てー」
ミナがダダッと戻って来た、今度はなんだと振り返る三人、ハナコもピョンと飛び跳ねる、
「これー、新しいお菓子だってー、ソフィーが焼いたのー、見てー、プルプルー」
両手で皿を掲げて駆け寄るミナ、こりゃ危ないとレインが叫ぶもその勢いは止まらずダンとばかりに炬燵テーブルにその皿は置かれた、と同時にフルフルと揺れる黄色い物体、大きさは丸パンと同程度、太い円筒形で底面は茶色く焼かれており、側面は鮮やかな黄色である、そして大変に甘い香りを漂わせている、まぁと目を丸くするエルマとミシェレ、レインもこりゃまたと目を奪われた、
「ウフフー、凄いでしょー、プルプルでフワフワなのー」
キャーと叫ぶミナ、ハナコもその匂いにつられてか尻尾を振ってヘッヘとミナの隣りに駆け寄った、
「・・・ほんとだ・・・」
「うん、プルプルだ」
「フワフワじゃのー・・・」
思わず呟く三人、ウヘヘーと微笑むミナ、そこへ、
「こーら、騒がしくしないの」
ソフィアがゆっくりと厨房から顔を出す、なんともニヤケタ顔であった、
「これ、新しい料理ですか?」
ミシェレが目を輝かせ、エルマとレインは無言でソフィアを見上げてしまう、
「そうよー、タロウから教わったの、どう?見た目はいいわよねー」
ニコーと微笑むソフィア、そうなのーとミナが跳ねるも何がそうなのだろうと三人は思いつつまぁいいかと聞き流す、
「で、試食してみる?」
ニヤリと微笑むソフィア、当然、
「スルー、シショクするー、食べるー」
ギャンと吠えるミナ、思わずゴクリと喉を鳴らしてしまうミシェレである、しかし昼過ぎにも子供達と一緒にジャムパンを頂いていた、これも美味しいんだよなーと子供達と堪能しており、もうこれだけで給金なんていらないかも等と口にはしなかったが甘味の愉悦に溺れたばかりであったりする、
「・・・えっと・・・いいんですか?」
エルマがマジマジと皿を見つめる、もう揺れが収まったその品、しかしうっすらと湯気を上げており、焼き立てなのだろうなと思う、そしてこういうのはやはり焼き立てが一番美味しいものだと経験的に理解しているエルマ、思わずミシェレと同じようにゴクリと喉を鳴らしてしまった、
「いいわよー、ただし」
ソフィアは手にした包丁を見せつけ、
「それ一個だけよ、あと、上の四人も呼んできて、生徒達が来る前に食べちゃうこと、喧嘩になるからねー」
意地悪そうに微笑むソフィアである、わかったーとミナが叫び、
「えっと、えっと、ユーリ?ユーリ呼んでくるー」
ダダッと階段に向けて駆け出し、ハナコがワフンと飛び跳ねた、
「あっ、あんたも欲しい?」
ソフィアがハナコに微笑みかける、当然とばかりに尻尾を振りまくってつぶらな瞳を向けるハナコ、
「少しだけよ、甘いからね」
ニコリと微笑み炬燵に歩み寄るソフィアである、そして三階では、
「ユーリ、ユーリ、いるー」
ミナの絶叫が響いた、なんだ?と顔を上げるカトカとゾーイ、
「ユーリはー、ユーリどこー」
遠慮なく叫ぶミナ、早くしろとばかりにピョンピョン飛び跳ね、めんどくさいのかつっかけに履き替えることなく階段上で飛び跳ねるものだから大変に危なかっしい、
「こら、落ち着いて」
ゾーイが思わず叱責し、カトカもまったくだと腰を上げる、
「ブー、いいの、いいから早く、ユーリはー」
「はいはい、所長はいるわよー、待っててねー」
カトカがユーリの研究室へ向かい、
「どうかしたの?」
とゾーイがウーンと伸びをする、
「あのね、あのね、ソフィーがね新しいお料理作ったの、ブルブルでヤワヤワであまいー匂いがするのー」
キャーキャーと叫ぶミナ、あっさっきのあれかーとゾーイは微笑むと、
「そっかー、で、所長はなんで?」
とユーリを呼び出す理由を問い直す、
「うん、あのね、あのね、ソフィーがねシショクしていいよって言ってー、で、上の人達も呼んできてってなってー、だからー」
ピョンと跳ねるミナ、あっなるほどねとゾーイは納得し、
「えー、じゃ、私達もいいの?」
とニヤリと微笑む、
「うん、みんなで来てー、食べよー、絶対美味しいと思うー」
若干落ち着いたのかニコーと微笑むミナ、フフッそっかーとゾーイが微笑むと、カトカが戻ってきて今度はなによとユーリが続く、
「あっ、いた、ユーリ、来てー、あと、ほかのもー」
「ほかのもって・・・もう」
呆れつつも腰を上げるゾーイ、
「何がどうしたのよ」
作業を中断させられ不愉快そうなユーリであった、カトカもさてと腰を下ろしてしまう、
「だからー、早くしてー」
もう何でもいいとばかりにジタバタと腕を振り回すミナ、まったくとゾーイが微笑み、
「ほら、さっき言ってた新しい料理?試食させてくれるらしいです」
「あらま・・・それは大事だ」
あっさりと理解するユーリ、カトカもエッと顔を上げる、
「じゃ、行くか、サビナ呼んできて、あと・・・タロウにも声かけておくか」
「ですね、私行きます」
カトカが再び腰を上げ、ゾーイは一応とテーブル上の書類をまとめる、
「そっか、で、どんなもんなの?」
と階段に向かうユーリ、
「あのねー、ブルブルでヤワヤワなのー」
「またそれー」
「またってなんだー?」
「またでしょう、なんだっけプリンとか蒸しパンとかもプルプルだったじゃないのさ」
とスリッパに履き替えるユーリ、
「そうなの?」
キョトンとユーリを見上げるミナ、
「そうよー、忘れた?」
「・・・わすれたー」
「そっか、まぁいいけどねー」
何とも気の抜けた会話であった、ゾーイが何を言っているんだかと微笑みつつスリッパに履き替え、カトカとサビナも合流する、
「あっ、タロウは?」
「俺は別にいいよーって言ってました」
「そっか、じゃ、行くぞ」
ミナの脇をスッと通り抜けて駆け下りるユーリ、
「あっ、だめー、先に行くなー」
ギャーと叫んで追いかけるミナ、だから危ないからと眉を顰める助手三人、そうして食堂に入ると、エルマ達に出迎えられお疲れさまーと労いの声が交わされる、そして、
「あらま・・・確かにこりゃまた違うのかしら?」
皿の上には切り分けられたその新しい料理とやらが並んでいる、
「これですか?」
「へー・・・なんか・・・あれですね」
「うん、プリンと蒸しパンを合わせた感じ?」
「あっ、それ近いわね」
ニヤリと微笑むソフィア、
「そうなんですか?」
「そうよー、でね、作り方はまぁいいとして、あれよ、玉子料理だわね」
「玉子料理?」
ヘーと女性達の声が響く、確かにタロウは玉子が大量にいるとかなんとかと言っていた、となれば玉子料理なのであろう、
「で、結構難しくてね、二個くらい失敗しちゃったわ、タロウさんは妙に上手く焼いたんだけど、まぁ、ほれ、食べてみて」
ニコーと微笑むソフィアである、ちなみにその上手く焼けた品は当然のようにタロウを含めた四人で試食しており、こりゃ凄いとソフィアもティルもミーンも夢中になってしまった、だろうと得意気に微笑むタロウ、ソフィアがムッと不愉快そうに睨むもまぁいいかとすぐに手を伸ばしてしまう程の品である、
「いいの?いいの?」
ミナがテーブルに手を着いてピョンピョン飛び跳ねた、ハナコも一緒になって飛び跳ねる、
「いいわよー、ただし一口ずつね、夕飯の後には丸っと一個ずつ頂きましょう」
「わかったー」
と言うが早いか手を伸ばすミナ、一番大きそうな欠片を選びヒョイと口に運ぶ、レインが意地汚い奴めと横目で睨みつつも手を伸ばし、女性達の手も自然と伸びた、そして、
「うわっ・・・フワフワ・・・」
「うん、柔らかいねー」
「それにしっとりしてる・・・」
「へー・・・こりゃまた違うわね」
「そうなのよー」
ウフフと満足そうに微笑むソフィア、どうやらこの品も成功らしい、厨房で夕食を作りつつ試行錯誤した甲斐があったというもので、厨房からそっと顔を覗かせたティルとミーンも笑顔であった、
「美味しー、もっとー、もっとたべたい」
ガシッとソフィアに抱き着くミナ、
「はいはい、夕飯の後ね、冷めても美味しいらしいから」
「そうなんですか?」
エルマもゴクリと飲み込んで自然な笑顔となっている、
「そうみたいよー、だから、まぁ楽しみにしてなさい」
ソフィアはウフフと腰を上げ、皿に手を伸ばす、少しばかり欠片が残ったようで、
「・・・このくらいならいいかしら?」
と一応とエルマをうかがう、
「このくらい?」
ハテ?と問い直すエルマ、
「ほら、ハナコにね」
ソフィアがニヤリと視線を落す、その先ではハナコがこれでもかと尻尾を振り、期待に満ちた眼差しをソフィアに向けている、今にも飛び掛からんとする勢いで、そういうことかーと女性達の目が一斉にハナコに向けられた、
「・・・そう・・・ですね、それほど甘くないですし・・・少しだけなら、はい」
やれやれと微笑むエルマ、正直癖になる為与えるべきではないのであるが、まぁ偶にはいいだろうなとも思う、
「そっか、じゃ、ミナ、これ、ハナコにあげて、ちょっとだけどね」
と手にした皿をミナに預けるソフィア、
「ウン、わかったー」
ミナはピョンと飛び跳ね、
「ハナコー、マテ、マテが先ー」
と暖炉の前の定位置に向かう、素直にそれを追うハナコ、いやこの場合ハナコはその皿に従っているだけであってミナに従っている訳では無いのであろう、ウフフと微笑んでしまう女性達である、そこへ、
「ウガー・・・なんとかなったぞー」
ノソリとタロウが階段を下りて来た、
「そうなの?」
ユーリがよっと腰を上げ、もっと食べたいなーと思いつつ助手三人も立ち上がる、
「まずねー・・・あれだな、製法から考えなければならない感じでなー・・・しかし、まぁ、なんとかはなったなー・・・しんどかったー」
やれやれと肩を落とすタロウである、
「そっ・・・じゃ、見せなさい」
ギンとタロウを睨むユーリ、
「ん、そのつもり、あっ、エルマさん戻ってたのね、丁度いいや、見てみる?」
ニヤリと微笑むタロウ、今度はなんだと目を細めるエルマ、ミシェレはこれがあれか毎日が騒がしい上に目新しいという事かとただただ驚いてしまっていたりした。
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彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
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【あらすじ】
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王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。
彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。
追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった!
石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。
【主な登場人物】
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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