セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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82話 貴人の虜囚 その4

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それからユーリとデニスが転送陣を潜り天幕から飛び出すと、

「おせーぞ」

クロノスに思いっきり睨まれ、

「なんかあった?」

タロウがのんびりと微笑む、コノーと頬を引きつらせるユーリ、ムカムカとタロウを睨みつけ、

「なんも無いわよ、別にね」

フンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた、

「ならいい、向こうを頼む、こっちの手が離せなくてな、三つとも起動して欲しい」

早速とクロノスが事務的に告げる、

「あっ、そうよね、でも、遅くない?」

ハッと振り返るユーリ、

「遅くはないようだ、向こうさんもドタバタしてるらしくてな、まぁ・・・そうなる事を見越してはいるんだが、取り合えずこっちはいつも通りだ」

何がいつも通りよと目を細め、

「わかったわ、勝手に開けていいの?」

「リンドが行っている、指示に従え」

はいはいとユーリは駆け出し、どうやら用は済んだようだとデニスは手持無沙汰で周囲をうかがう、転送陣が置かれた天幕内に軍団長らの姿が無く、はて先程は居た筈なにのと思っていたのだ、そしてどうやらお歴々はこぞって寒空の中に出て来たらしい、風が無いのにはためく煌びやかな旗を見上げてガヤガヤと楽しそうで、デニスもまた、こりゃまた凄いなーと目を奪われてしまった、

「さて・・・じゃ、向こうは任せていいか、いや・・・なんか足りないなーとは思ってたんだよー」

アッハッハとタロウが笑う、ユーリその人の事であった、

「だな・・・あっ、お前も見ておけ、中々だろ?」

クロノスがジロリとデニスを見下ろす、

「ハッ、ハイ、あれですよね、あれが皇帝の旗・・・」

目を輝かせるデニス、すっかり敬語も忘れている、

「だな・・・ついでだ、皇帝のお宝を見ておけ」

クロノスが旗を見上げてすぐにデニスを見下ろした、

「あっ、だねー、あれは勉強になるかもねー」

タロウも思い出す、デニスがイフナースの小姓として特別扱いされている理由、それはデニスに様々な工芸品やら美術品やらを見せる為である、

「お宝ですか!!」

ピョンと飛び跳ねてしまったデニス、

「あぁ、ついてこい、監視の近衛に一言言っておく」

クロノス自ら足を向け、タロウはお優しいー事だなーとニヤリと微笑み、デニスはハイッと大声でもってその後についていく、何のことは無いクロノスは単純に手持無沙汰であったのだ、軍団長らが囲む荷車を仕立てたのはクロノスであり、その説明役はイフナースが担っている、タロウと二人、取り合えず待つかと距離を置いていたのであった、

「・・・じゃ、俺も・・・」

二人に置いて行かれ若干寂しくなるタロウである、この後の恐らく緊張する他無い会談の事もあり、今の内に抜けるだけ気を抜いておこうとすっかり弛緩していた、何せクロノスとイフナースらを連れての状況確認でさえ、タロウは脇の下に大量の発汗を感じている、やはり皇帝となるとそれなりに威圧感もあり、また知らぬ相手でもある、意識せずに精神的に張り詰めていたのであろう、先程のそれでは大した会話も交わされなかったが、ボニファースと皇帝との会談となればそれなりに交わす言葉も多く、また重いものとなる筈で、いや、そうなってもらわないと困るんだよなー等と思いつつ、二人の後を追うタロウである、そして、

「スゲー・・・素晴らしい装飾です」

収奪品を前にして目を輝かせるデニス、

「やはり違うか?」

クロノスがどんなもんだと片眉を上げ、番兵となっている近衛も思わず微笑んだ、その番兵もデニスの事はよく知っている、また重用されている理由も把握していた、

「はい、王国ではまず見ないと思います、特にこの宝石の処理とか、ここの細かい装飾とか・・・全然違います」

一振りの剣を光柱の灯りに向けて仔細に検分するデニス、

「わかる?」

タロウもニコリと微笑んでしまう、タロウから見てもやはり王国のそれと帝国のそれは大きく異なっている、どちらが上と言う訳では無く、それぞれの文化と風習に根差した装飾があるもので、しかしやはりというかどちらの国も技術的にはまだまだこれからと言えた、タロウの感覚からすればより豪奢にも出来るし緻密にも出来ると感じる、特に金属加工に関しては山の民とソフィアが呼び、ドワーフだとタロウが断じた民族の足元にも及んでいないと感じる、王国もであるが帝国もであった、彼等の技術こそデニスに見せ、教えるべきかなとタロウは思うも、しかしそれではやはり面白くない、彼等に匹敵し、かつ彼らをも驚嘆するほどの品を作らないと、彼等はこちら側に興味を持たないであろう、そうなった時にやっと彼らはこちらとの交流を望むはずで、そうなればいいんだけどなとタロウは思っていたりする、しかしもう暫く、いや、数十年は先の事になるかもしれない、

「はい、えっと・・・はい、でも、あれですか、このやたらと蛇が彫られているのはどういう訳ですか?」

スッと振り返るデニス、その瞳はランランと輝いており、しかしそれは宝物を目にした為では無く、より純粋な職人の目であった、

「聞いてなかったか?帝国とやらは蛇が象徴なんだとよ」

クロノスが側の箱に手を伸ばす、中央に置かれていた皇帝旗は持ち出されており、ポカンと広く筵が露わになっている、その皇帝旗を囲むように置かれた装飾箱が何とも侘しく見えた、

「あっ、ですよね、ですよね、でも、これ、この蛇とか、足があります」

エッとデニスを見つめるタロウとクロノス、すぐさまどれどれと首を伸ばすと、

「あっ・・・」

「ホントだ・・・これ・・・」

「はい、蛇ではないかもですね」

「へー・・・面白いね」

「そうなのか?」

「うん、もしかして・・・ドラゴン?」

「これが?」

「ドラゴンって、もっと、ほら、太くないと・・・ですよ・・・」

クロノスとデニスが不思議そうにタロウを見つめる、

「いや・・・そっか、いや・・・君らはドラゴンを知ってるの?」

そう言えばと首を傾げてしまうタロウ、

「知ってるって・・・」

「だって、あれだろ、神殿連中がよく言ってる、あれ」

「そっか・・・そっちで知ってる感じか・・・でも、実物って見た事ある?」

「・・・無いな・・・」

「ですね・・・」

ハテと首を傾げてしまうクロノスとデニス、番兵の近衛も首を傾げている、

「っていうか、いるのか・・・あっ、いや、いるって言ってたな、お前」

ギンとタロウを睨むクロノス、

「そうなんですか?」

デニスもピョンと飛び跳ねた、

「まずねー・・・でも、俺が知る限りそいつはそれだけだと思ったけど・・・あー・・・そっか、難しいんだよなー・・・そういう対象なのかな・・・帝国にもいるのかな?」

ムーと大きく首を傾げるタロウ、勿論のことであるが、タロウの故郷にドラゴンなる生物は存在しない、無論龍だの竜と呼ばれる生物も同様である、近いものとしては恐竜などというものが居た事はあるが、あれであっても伝承されるそれらとは大きく異なる、而してこちらの世界である、タロウが調べた限りでは魔族の大陸に一匹だけ存在する、いや一頭とするべきか、数え方など決まっていないかもしれないが、少なくともその個体の存在は確認されており、タロウも一度だけだが見た事があった、しかしそれは何とも巨大で、同行していた者達があれがドラゴンだと教えてくれた為にそう理解したのであるが、それは天を覆う程に大きく、タロウの視界にも収まらないほどであり、その全体像を把握する事も出来なかった、そして感じたのは畏怖であり、恐怖であった、タロウと同行者はただただ見上げるばかりで身動き一つ取れなかった、もう少しそのドラゴンの動きが遅かったら窒息死してしまったかもしれないと感じる程に、あらゆる生命活動が瞬時に停滞した事を覚えている、

「待て、詳しく話せ」

「教えて下さい」

クロノスが目を細め、デニスもグワッと前のめりになり、

「・・・んー・・・詳しくって言われても困るんだけど・・・いや、問題はね・・・俺の国だとさ・・・」

右に左に首を傾げるタロウ、ドラゴンとは単純に脅威の転化である、それは自然災害であったり、宗教的な禁忌を象徴した存在であり、英雄であったり宗教的指導者がそれを征伐することにより、自らの力と威信を示す為のおとぎ話にしている、つまりは架空の存在であった、故に実はドラゴンとは実に小さく描かれている、英雄なりなんなりが足蹴にする程度にしか描かれていない、宗教的にはである、逆に脅威として存在するのはエンターテイメントを目的とした物語の中のみで、それであっても大概はなんとかかんとか討伐されるなり懐柔されるもので、つまりは宗教的な意味に於いても娯楽作品であったとしても舞台装置として実に便利な存在なのである、翻って帝国である、その文化にはまだそれほど詳しくないタロウであったが、もしかしたらこのドラゴンという存在は帝国に於いても似たような存在なのかもしれなかった、なにせタロウが知る限り帝国の地にはドラゴンは存在しておらず、また知る限り魔族の大陸とも交流は無かった筈で、いや、そう考えていくと、行きつく先は文化論になってしまい、完全にお手上げとなってしまう、ここは学園長なりなんなりにぶん投げたいほどに深く大きなテーマなのであった、

「いや・・・やっぱり駄目だ・・・難しい・・・」

「何がだよ」

「いやな・・・どう言うべきか・・・確かにいるんだよ、でもさ、君らは見た事がないんだろ?」

同時に頷くクロノスとデニス、近衛も思わず頷いた、

「なんだけど、存在は知っている?」

「だな」

「はい・・・」

「で、その形がこれに似ている・・・」

とデニスが手にする剣を見つめるタロウ、

「ですね」

「まずな、蛇みたいのに足が生えていて・・・」

「翼があって、火を吹きます」

「他には?」

タロウが二人をうかがう、他にはって言われてもと顔を見合わせる二人、デニスがすぐに、

「でも、これには翼は無いし、火も吹いてない?」

アレッと小首を傾げた、

「だろ?だから・・・そっか、じゃ、ドラゴンじゃないのか?これ?」

「お前がそう言ったんだ」

ムスッとタロウを睨みつけるクロノスである、

「そっか・・・そうだっけ?」

「だろうがよ」

「じゃ・・・何だこれ?」

「だからー」

ムーと眉を顰めるクロノス、デニスも何を言っているんだかと呆れている様子である、

「まぁ・・・うん、そうなるとね、ドラゴンの違う形・・・姿って事になるのかな?恐らくだけど」

「・・・要領を得んな」

クロノスがすっかり呆れてめんどくさそうに眉を顰める、

「ですねー」

とこちらもすっかり敬語を忘れるデニスである、

「・・・まぁ、ちょっとね、なんとも難しいんだよ、ほら、デニス君もさ、なにも・・・あれだ、いや・・・そっか・・・伝承とか伝聞とかも面白いんだよな・・・」

ムーと腕を組んでしまうタロウ、思い出したのは象の絵である、遠い昔に伝聞のみで描かれたそれは正にモンスターであった、もしかしたら王国にも帝国にも実際にドラゴンを目にした者がおり、それが流れ流れて伝わっていったのかもしれない、しかし実際のドラゴンは一望するのも難しい程に巨大であった、あれを蛇に置き換えるのは少々乱暴だよなと感じるタロウである、いや、結局人は何かに似ているとか、あの動物に似ていた等と例示して説明する他無いもので、これが俗に言うキメラという想像上の動物が生まれた原因でもあろう、となるとドラゴンを説明するの蛇に手足と翼を付け、挙句火を吐くとなったのであろうか、しかし今度は火を吐くというその行動がまさに宗教的価値概念の転嫁のように思える、つまりはこの世界であってもドラゴンはそういう価値概念で便利な舞台装置でしかないのかもしれない、実在はすれどもである、

「まぁいい・・・あっ、ついでだデニス、この宝物の目録を作れ」

クロノスがあっさりと切り上げた、エッとクロノスを見上げるデニス、

「お前も手伝え、あっ、デニス、数人呼んで来い、このまま置いておいてもあれだしな」

ハッと近衛が背筋を正し、デニスもガッとばかりに直立する、

「この箱の中身までは確認してなくてな、どれもこれも貴重品だとタロウは言っていたが・・・だろ?」

「ん、あっ、そうだねー」

パッと顔を上げるタロウ、

「ついでにデニス、しっかり学べ」

以上だとばかりに踵を返すクロノス、

「はい、ありがとうございます」

従者らしく返すデニスであった。
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