セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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82話 貴人の虜囚 その9

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その頃ソウザイ店である、午前の中頃となり、呼び出されたエレインが息を切らせて階段を上がりキッサ店に入ると、貴族の奥様方、御令嬢達でいっぱいであった、あっ今日もかとエレインが思わず足を止める、テラから報告は受けていたが、まさかこれ程に集まっているとは思っていなかったのだ、故にここはと何とか呼吸を整える、自分もまた貴族の端くれである、恥ずかしい姿は見せられないなと背筋を正し二度三度と呼吸を深くした、そこへ、

「お疲れ様です」

ケイランがニコリと笑みを浮かべて近寄り、

「お疲れ様」

フーと大きく息を吐きつつ微笑むエレイン、

「奥でお待ちです」

「そうね、聞いております」

嬉しそうに微笑むケイランに、若干顔を緊張させるエレイン、ケイランはそれでいいとばかりに微笑みスッと店内へ向かう、その最奥、ガラス窓から入る寒々しく頼りない陽光に照らされた上席とされたテーブルに向かうと、

「失礼いたします」

とエレインの来訪を告げた、そうと微笑むのはユスティーナ、

「うむ、速いな」

レアンがサンドイッチをモグモグやりつつ顔を上げる、そこへ、

「ようこそ、御機嫌麗しゅう、皆様」

息を整え落ち着いた笑みを浮かべるエレインが静かに近寄り優雅に腰を折った、あっこの人がそうなのねと奥様方、御令嬢らの視線が集まる、

「御免なさいね、忙しいのでしょう」

優しく微笑むユスティーナ、

「そのようじゃのう」

レアンも笑顔で迎えた、

「そんな、ユスティナー様、レアン様のお召しとなれば何を置いてもと思っております」

優雅に微笑むエレイン、

「それは嬉しいわ、じゃ、ほら、座りなさい」

「うむ、相談事があるのじゃ」

ムフンと胸を張るレアン、

「相談事ですか?」

エレインはケイランが引いた席に腰を下ろす、ケイランはそのままスッと後退り別のメイドが茶を配した、

「そうなのじゃ、実はな」

茶を啜りつつ話し始めるレアン、まったくとユスティーナが目を細めるも止める事は無い、それよりも先に同席する方々にはどうしようかと若干焦るエレインである、そのテーブルにはユスティーナとレアンの他にもいかにも貴族らしい奥様が三人、そしてなんとも厳しい顔つきの女性も一人同席している、ユスティーナとレアンの背後にはメイドであろう従者が従っており、ライニールの姿は無い、ライニールさんも忙しいのだろうなと思いつつ傾聴するエレイン、

「と言う訳でじゃな、エレイン会長のお力も借りたいと思ってな」

どうかな?とムフンと偉そうなレアンである、エレインはまぁと目を丸くし、

「嬉しく思います、その・・・実はなのですが・・・」

ここはどうしようかと首を傾げつつ、変に誤魔化すのも取り繕うのも違うなと正直に話すこととした、同席する御夫人もテーブルが違う御婦人方や令嬢達も静かにレアンの言葉に耳を傾けていたようで、キッサ店内は静まり返ってしまい、階下のガヤガヤとした賑わいが響いている、

「私も本日、ユスティーナ様にお目通り願おうかと思っておったのです」

「あらそうなの?」

「はい、昨晩の事ですが、レアン様がお話しされた事をタロウさんから伺いました」

マァと目を丸くするユスティーナ、レアンもそうなのかと身を乗り出す、

「はい、そこで・・・」

エレインはここはタロウの言葉の通り、タロウの案である事は一旦伏せた方がいいのかなと考え、しかしそうなるとさて誰の発案とするべきかと考えるも、まぁそこは寮の皆で考えた事にしてしまえばいいかと、

「こちらなのですが、実際に作ってみました・・・のです、レアン様の意図している所とは若干違うかなとも思うのですが、寮の仲間達と考えまして、このような物を贈りたいと・・・そう思った次第です」

エレインは手にした小物入れから一輪の造花を取り出す、今朝早く、早速とマフダらに計画を説明し、それはいいと事務所の従業員らには好評であった、であればと取り合えずと作ってみた一輪である、完成とほぼ同時にソウザイ店から呼び出しがあり、聞けばユスティーナが来店しており、エレインと話したいとの事らしく、丁度良かったとその一輪を手にして駆けつけた次第であった、

「ほう・・・」

「あら・・・かわいらしい・・・」

「ですねー・・・」

レアンは目を丸くし、ユスティーナも素直に驚いたようである、同席する御夫人方も小さな溜息でもって感心を示した、

「いかがでしょうか、これであれば花の代替・・・にするにはもう少し・・・その、美しさが欲しいと思いますが・・・しかし、平民の手で作られたとなればそれなりに・・・見えるかと思います、何より気持ちを贈る、これが最も大切な事とも思いますし・・・それと、あまりに華美にしても手間がかかり過ぎまして、数を揃えるとなると難しいとも思います・・・失礼な言い方になるかもなのですが、この程度が丁度良いのかなと考えます」

どうだろうと不安そうにユスティーナをうかがうエレイン、エレインが取り出したその造花、花は毛糸で織られ若干立体的になっている、マフダと奥様達がこうすればより花らしく、そして作りも簡単にできると張り切って編み上げ、枝の部分も昨晩は針金を使おうかとテラ達と話したのであるが、それだと手間も金もかかるとなって藁の枝を芯にして作られていた、あっこれでいいんだと感心したエレインである、やはりマフダはしっかりとした職人であり、奥様達も手練れなのであった、しかし惜しむらくはやはり少々寂しい事であろうか、実際の花に比べるとあまりに小さく、みすぼらしくすら見える、マフダはレースやら何やらと手間は増やす事も可能であると言っていたが、奥様達はそこまでは難しいだろうなと現実的であった、

「・・・悪くないですね・・・」

レアンがスッとユスティーナを見つめ、

「そうね、こちらの方が、それらしく見えるかしら・・・」

じっくりとエレインの手元を見つめるユスティーナ、エレインがどうぞ御覧下さいとユスティーナに差し出し、ユスティーナは柔らかく受け取ってシゲシゲと観察する、先程レアンから話されたのは、英雄となった兵士達にモニケンダムの住人達からも何か感謝を伝えるべく贈り物をしたいとの事であり、レアンは顔布に刺繍を施し、それでもって感謝を示したいとの事であった、顔布とは遺体の顔を隠す白布の事である、エレインはなるほど、確かにそれもいいのかなと思いつつ、既に作成してしまった造花を取り出した形となる、ユスティーナとレアンの案に反対しているようで若干心苦しかった、

「しかし・・・顔布への刺繍も良いと思います、なので、こちらはあくまで案としてお持ちしたいなと考えた次第でした・・・」

慎重にユスティーナとレアンを見つめるエレイン、側に控えていたケイランもスッと首を伸ばす、

「・・・どうしようかしら・・・」

ムーと眉根を寄せてしまうユスティーナ、

「そう・・・ですね、これはこれで良いと思います、なにより・・・刺繍よりも手間がかからないように思えますが・・・」

レアンも大きく首を傾げる、

「あっ、あれです、あくまでその、一例として作ってみただけなのです、私としてもなにより感謝を御遺族に伝えるのが肝要と考えておりました、なので、刺繍も良いと思います、なにより材料が少なくて良いのは確定ですし、顔布であれば他の活用も可能かと思いますし」

ワタワタと慌てるエレイン、タロウの思惑というべきか、想定通りと言うべきか、ユスティーナとレアンはカラミッドから事の次第を聞いたのであろう、そして思いついたのが顔布に刺繍を入れることであり、タロウは毛糸の造花を添える事であったのだ、この二つは大きく異なるが、目的は全く以て同じである、

「ふむ・・・」

「そうねー・・・」

ムーと首を傾げてしまう二人、すると、

「その・・・私達も協力する事は出来ますわよね」

同席する御夫人がそっと口を挟む、他二人もスッと背筋を正した、

「勿論よ、後で声をかけようと思っていたの、まさかここで会えるとは思わなくて」

フフッと微笑むユスティーナ、

「それは良かったです、であればなのですが、どちらも可能と思います、そうですね・・・その英雄の数にもよりますが・・・うん、モニケンダム在住の貴族、それと平民達の力を合わせれば難しくないかと・・・」

「どちらも?」

「はい、レアン様の刺繍も素晴らしいと思いますし、その花もまた素晴らしいです、なので、ここはどうでしょう・・・モニケンダムに住む者で一斉に協力する、それが出来る者達と私は思っております」

力強く言い切ったその御夫人、ユスティーナはまぁと目を丸くし、レアンも確かにと頷く、

「・・・そうね、うん、では、もう、ここは女の、いや、モニケンダム総出で事に当たりましょうか」

ゆっくりと笑顔を見せるユスティーナ、これは大事になって来たぞと直感するエレイン、他のテーブルの貴族達もキラリと目を輝かせた。



そしてより具体的な相談に入っていく、三階で別の打合せをしていたテラも合流し、ケイランとユスティーナのメイドが書記係となった、顔布への刺繍にしろ造花にしろやはり材料の準備が課題であり、その技術的な部分については何とかなりそうであった、なにせ針仕事に関しては上手い下手、得意不得意はあれど女性であれば嗜みとされる世の中である、さらにはどうやって人を集めるか、大きな会場を設定すればよりやりやすいであるとか、他の商会をどう巻き込んでいくか等ともう実行に移す事を前提とした打ち合わせとなっていた、ユスティーナもレアンもそこは任せろ、そっちは頼むと積極的で、エレインとテラも市井の実情を踏まえた上での意見を出す、そこへ、

「アーーーーー、お嬢様だーーーーー」

すっかり打合せに集中していた所に甲高い女児の叫びが響いた、なんだ?と振り返る一同、

「どうしたのー、なにやってるのー、あー、ユスティーナ様もいるー」

バタバタと駆け込んできたのはミナであった、

「こりゃ、うるさい!!」

レアンが満面の笑みで叱り付けるも、

「えー、だってー」

「だってじゃない、どうした、勉強中であろう」

ムフンと嬉しそうなレアン、

「そうなのー、きゅうけいなのー、お手伝いなのー」

「お手伝い?」

「そうなのー、お水もらいに来たのー」

と振り返るミナ、その先で二人の女児がいいのかなと不安そうにミナを見つめており、その手には水差しが握られている、

「そうか、であればお手伝いをするのだ」

ムンとミナを睨みつけるレアン、

「えーーーー」

「えーーーではない」

「ブーーー」

「ブーーーでもない」

レアンの前とありすっかりふざけるミナ、レアンもレアンで楽しそうにはしゃいでいる、まったくと微笑むユスティーナ、エレインもこれだからと微笑んでしまう、御婦人達と御令嬢達は何事かと目を丸くするも、レアンもユスティーナも笑顔であった為何も言えなくなっていた、

「もう・・・ほら、ミナちゃん、先に御挨拶でしょ」

ケイランがゆっくりとミナに近寄る、エッ?とケイランを見上げるミナ、

「お勉強したでしょ、ほら、おいで、折角だから、ちゃんと御挨拶」

階段付近で足を止めていた二人に微笑むケイラン、いいのかな?と顔を見合わせおずおずと近寄る二人、

「さっ、どうするんだっけ?」

ケイランが優しく促す、ミナがえっとーと二人に目配せし、

「じゃ、ミナがやる」

とピョンと飛び跳ね、

「皆様、御機嫌麗しゅう」

すぐさま向き直り、背筋を正すとゆっくりと頭を垂れた、それに合わせる背後の二人、

「うむ、ミナも元気そうじゃな」

ニヤーと微笑むレアン、すぐさま、

「元気だよー、お嬢様はー」

とピョコンと顔を上げるミナ、まったくと微笑むユスティーナ、

「それではいかんな、しっかりと最後までおしとやかにしなければならんぞ」

ムッとミナを睨むレアン、しかしその目はキラキラと笑っている、

「えー、おしとやかでしょー、だったよねー」

背後の二人に確認するミナ、どうかなーと無言で顔を見合わせる二人、

「ムー・・・おしとやかなのー、これでいいのー」

ギャーと叫ぶミナ、こらこらとケイランが窘める、

「そうね、じゃ、先にこっちの方がいいかしら、レアン頼むわね、先生はお手透きかしら、休憩中であれば丁度いいわね」

ユスティーナがレアンに微笑みかける、

「ですな、では今の内に・・・先生宜しいですか?」

スッと立ち上がるレアン、厳しい顔つきの女性も腰を上げる、

「あっ、違うな、その前にじゃ、エレイン会長、こちらがな、我が家の家庭教師である、マリレーナ先生じゃ」

ムフンと胸を張るレアン、あら、それはそれはとエレインとテラも腰を上げた。
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