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本編
82話 貴人の虜囚 その15
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午後の中頃の時間となった、ソフィアが今日も疲れたなーと階段から食堂へ入ると、
「ソフィー」
ダダッとミナがハナコを抱いて駆け寄った、オオゥと抱き留めるソフィア、ハナコが二人に挟まれムギューと顔を潰してしまい、あらあらと隙間を作るソフィア、ハナコはすぐにヘッヘッと舌を出し、ミナは満面の笑みである、
「お疲れ様です」
昨日同様にソフィアを迎える面々、コタツに入って背を丸めているのはエルマにミシェレ、ニコリーネである、レインもめんどくさそうに顔を上げる、
「お疲れさまー」
ニコーと微笑むソフィア、すかさず、
「新しい先生来たのー!!」
こっちを向けとばかりに飛び跳ね叫ぶミナ、
「新しい先生?」
スッと視線を下ろすソフィア、
「そうなの、マル・・・マリ・・・マルなんとか先生ー」
エッとミナを見つめる大人達、
「マル・・・なんとか先生?」
「そうなのお嬢様の先生なんだってー、だからー、お嬢様も来たー」
「お嬢様ってレアン様?」
「うん、おゆうぎしたのー、下手だったー」
ありゃと苦笑するソフィア、アーと困惑するエルマにミシェレ、ニコリーネがそうなんだーと微笑む、
「ミナちゃん、マリレーナ先生ですよ」
ミシェレがやんわりと窘めた、
「そうとも言うー」
ピョンと跳ねるミナ、いやいやと苦笑するしかないエルマとミシェレ、ミナちゃんらしいなーと微笑むニコリーネ、
「駄目ですよ、ちゃんと覚えなさい」
ここはとエルマも窘めた、エーと振り返るミナ、
「そうねー、マリレーナ先生?」
ソフィアが優しくミナの頭に手を置いた、
「うん、マリ、マル・・・マル先生!!」
ありゃーと目を細めるエルマとミシェレ、そんなに難しい名前かしらとニコリーネも流石に首を傾げる、
「こりゃ、マリレーナ先生」
ソフィアが言い含めるも、ウーと口を尖らせるミナである、
「言ってみて、マリレーナ」
「・・・マリレーナ・・・」
「言えたじゃない」
「マリ・・・先生」
「省略しないの」
「えーーーーでもーーー、ニコはニコ先生でしょー」
「そう呼んでるのはミナだけよ」
「そうでもないー」
「そうなの?」
「そうなのー、エミーちゃんもアンスちゃんも呼んでるー、あー、思い出したー、でねーでねー、明日ねー、みんなが遊びに来るってなったー」
「みんな?」
ハテ?と首を傾げるソフィア、
「うん、エミーちゃんとー、アンスちゃんとー、シーラちゃん、あと、ノールちゃんとノーラちゃんと、あと、サスキアちゃんもー」
あらずいぶん増えたと微笑むソフィア、フロールの名が無いように思うがまぁそこに一人増えようが減ろうが大した事ではないように思う、
「あっ、そっか、明日って教室もお休みか」
すぐに気付いて顔を上げるソフィア、
「そうなんです」
ミシェレがニコリと微笑み、エルマもフフッと笑顔になる、明日は五の付く日つまり六花商会の休日兼給料日である、あっという間だなーと溜息をついてしまうソフィア、何もソフィアが給料を受け取る事は無いのであるが、やはり区切りのような日があるとどうしてもそう感じてしまう、
「あー、それでかー・・・えっ、でも聞いてない?」
ミナを見下ろすソフィアである、
「なにが?」
キョトンと返すミナ、ハナコもワフッと首を傾げる、
「あれですよね、商会の花作り?」
エルマがスッと背筋を正した、
「それそれ、こっちにもねー、ユスティーナ様達がいらっしゃってねー」
ソフィアはやれやれとミナと共にコタツに向かい、そのままゆっくりと腰を下ろした、暖炉の暖かさも嬉しく感じるがここはやはりコタツでヌクヌクしたかった、なにせ学園は寒かった、要所要所で暖炉も湯沸し器も稼働しているが、その程度ではやはりあの広い講堂も学園も簡単に温まるものではないし、方々が大きく外へ開かれている、温めたければ外気を遮断するのが当然であるが、仕事上それはできない、もうすっかり慣れた感じで治療にあたっていたが、だからといって寒いものはやはり寒いのであった、
「そなのー?」
「そうよー、レアン様も来てたわよー」
「えー、ミナも行きたかったー」
「駄目よ、忙しかったからねー」
「あっ、それも聞いてました」
エルマがスッと目を細め、ミシェレとニコリーネも表情を硬くする、
「そっか、でもね、朗報と言えば朗報なんだけど、もうほら、あそこでの戦闘は無いから」
フーと背中を丸くしてあっさりと告げるソフィア、
「そうなんですか!!」
ミシェレが思わず叫んでしまう、
「そうよー、だから・・・まぁ、もう暫くはね、バタバタすると思うけど・・・それでもね・・・それはまぁ、偉い人達のお仕事って感じになるから・・・」
「良かったですー」
「ねー・・・」
顔を見合わせるミシェレとニコリーネ、エルマも安堵の笑みを浮かべ、レインがそうなのかとソフィアを見つめる、ミナはハナコを抱き直し暖炉の前にペタンと座り込む、どうやら興味が無いらしい、
「そうねー・・・あっ、で、聞いた?」
と顔を上げるソフィア、どのことだろうと曖昧に微笑んでしまう三人、
「エレインさん達の・・・」
「あっ、はい、伺っております、なので、私達も協力したいなと話してました」
エルマがニコリと微笑みミシェレとニコリーネもそうですねと笑顔を見せる、
「そっか、だから・・・あっ、まぁどうなのかな?ほら、タロウが昨日言ってた感じだとさ、子供達にもやらせた方がいいのかなって思ってね、と言っても・・・お手伝いどまりだろうけど・・・」
「それなんですけど・・・やっぱりほら、送る時には子供達もいるべきだとなったみたいなんですよね、で、お花とか刺繍については・・・」
エルマがミシェレに確認する、
「ですねー、確かにお手伝い程度ならよいかなって思いますけど・・・なんか、大人の方が盛り上がっちゃってる感じで・・・」
ミシェレが思い出しながら続けた、つい先ほど、午後の早い時間、子供達がクリームパンと温かいミルクを楽しみ、これは美味しいとマリレーナも歓声を上げていた頃、エレインとテラがソウザイ店に戻って来て、数人の従業員らと打合せを持っていた、エルマとミシェレ、マリレーナもそれに加わり、なるほど随分と大事になったようだと驚いたものである、
「まぁ・・・明日はね、その準備って事になるからだけど・・・やっぱりあれね、貴族様が絡むと事が大きくなるもんだわ・・・」
ソフィアがやれやれと溜息をつき、
「そりゃそうですよ・・・」
エルマもこれには苦笑いである、エレインとテラから聞いたところによると、ユスティーナは兵士達の遺体に祈りを捧げた後、これはやはり街を上げての対応が必要であると決心したらしい、同行した貴族達も同意のようで、その勢いはエレインやテラは勿論、学園長らもおののかせるものであったとか、となればエレインも改めて本気で対応する事になったらしい、また明日は丁度商会の休日でもある、故に明日は商会の全従業員を動員しての対応となる事が決定していた、その従業員の奥様も生徒達からも異論は無かった、
「あっ、でも、あれですか、学園でもやるんですか?」
ミシェレが聞いた内容を思い出す、
「そうね、ほら、大人数を集めて、で、やっぱりね、御遺体に面会するのが重要って事で・・・で、それに先だってね、明日にも御遺族に連絡がいくみたい、モニケンダム出身の兵士さんだけだろうけどね・・・だから・・・明日はちょっときついかな・・・そういう意味でね・・・」
あー・・・そうなるのかー・・・とソフィアを見つめる三人、エレインとテラからは御遺体を前にしてやっと理解できたと静かに告げられている、そういうものなのだろうかと思ったエルマとミシェレ、なんとなく想像は出来るが、やはりそれは想像でしかない、それは生徒達やソフィア達から聞いている状況とまるで変わりない状態である、
「まぁ、御遺体は増えるでしょうけどね、今も・・・回収してるみたいだし、でも、もう怪我する人も亡くなる人もいない筈だから・・・ただ、今晩また何かやるって言ってたけど・・・クロノスやらタロウがやるらしいからね、そっちはそっちで任せるしかないんだけど・・・まぁ・・・取り合えずだわね・・・」
ニコリと微笑むソフィア、その笑みの意味が今一つ理解できないが、静かに受け止める三人である、
「さて、あっ、じゃ、明日はどうしようかしら、レイン、子供達のお世話頼める?」
レインを見つめるソフィア、あっ、そうだったと大人達もレインへ視線を向ける、
「構わんぞ、いつもの事じゃ」
フンスと鼻息を荒くするレイン、
「そっ、頼むわね、ミナー、お友達はいいけど、無茶しちゃ駄目よー」
とソフィアがミナへ視線を移せば、ミナは暖炉の前でハナコを撫で回している、気持ちよさそうに為すがままのハナコ、
「分かってるー」
ニマーと微笑むミナ、
「ホントかしら」
フフッとソフィアは微笑み、さてとと腰を上げる、厨房からゆったりと夕食の香りが漂って来ていた、少しは手伝うかとそのまま厨房へ向かうソフィアであった。
そうして夕食となる、話題はやはり戦場の事やら葬送の事であった、途中から参加したタロウに説明すると、
「そんな大事になった?」
見事に目を丸くするタロウ、
「はい、でも、お陰様で、ユスティーナ様ともいい感じにお話しできました」
エレインが嬉しそうに申し添えた、
「そっか、でも、奥様も似たような事、思いついてたって事か」
いらないことを口にしたかなと少しばかり反省するタロウである、話しを聞く限り、どうやら平民は造花を、貴族達が刺繍をそれぞれに贈る事となったらしい、見事な二度手間だなとタロウは思うも、しかし想いを伝えるのに多過ぎるという事はないとも思う、それに貴族を巻き込めと言ったのは自分である、まぁ、今回に関しては放っておいてもエレインを経由して巻き込まれたようであるが、いずれにしてもそれなりの形にはなるであろう、
「レアン様らしいですよ、言い出したの」
ニコリと口を挟むテラ、
「そうなんだ、お嬢様らしいね」
「お嬢様ー?」
ミナが口いっぱいにモグモグやりながら大声を上げた、コリャとレインが叱りつける、
「ん、ミナもいい友達を持ったな・・・」
ニコリと微笑むタロウ、そうだねーと大人達と生徒達が優しくミナを見つめてしまう、
「うん、そうなのー、あっ、でねでね、明日ねー」
とゴクリと急いで飲み込み友達が遊びに来ると慌てて叫ぶミナ、そっかーと微笑むタロウ、
「あっ、で、明日、明後日の明日にしてー」
ミナがガッと立ち上がる、明後日の明日って何だろうと首を傾げてしまう一同、コラッとソフィアとレインに同時に怒られ、ムーと座り込むミナ、
「なんだっけ?」
ハテ?と首を傾げるタロウ、明後日の明日となると三日後かな?などと思う、
「ほらー、作るっていったー、楽しいヤツー」
楽しいヤツ?ギランと生徒達と大人達の視線がタロウに向かう、
「アッ・・・あー・・・今朝のやつ?」
「それー」
「あー・・・それを明後日の明日・・・三日後?」
さらに首を傾げるタロウ、先に延ばすのであればありがたい限りである、
「違うー、明日ー、明日にしてー、みんなが来るのー、だからー、みんなで作るー」
ブーと叫ぶミナ、
「あー・・・そっか、そういう事か」
とやっと理解するタロウ、他の面々もそういう事ねと微笑んだ、
「でもさ・・・気持ちは分かるけど、子供が作れるものでは・・・」
さてどうしとようかと首を傾げるタロウ、約束した雪像または滑り台の事となる、タロウとしても明後日であれば何とかと考えており、そのつもりでなんとなくであるが動いていた、
「何を作るんですか?」
ニヤーと微笑むカトカ、
「子供では無理なんですか?」
それにサビナがのっかり、
「何の事?」
ユーリもジロリと横目で睨む、
「・・・内緒・・・」
スッと視線を外すタロウ、
「そうなのー、ユーリには内緒なのー」
ミナがニヤニヤと勝ち誇る、
「なんだとー」
「知らないのが悪いのー」
「この・・・ガキンチョがー」
フフーンと得意そうに微笑み食事に戻るミナ、わなわなとミナを睨みつけるユーリ、またこれだーと微笑む大人達と生徒達であった。
「ソフィー」
ダダッとミナがハナコを抱いて駆け寄った、オオゥと抱き留めるソフィア、ハナコが二人に挟まれムギューと顔を潰してしまい、あらあらと隙間を作るソフィア、ハナコはすぐにヘッヘッと舌を出し、ミナは満面の笑みである、
「お疲れ様です」
昨日同様にソフィアを迎える面々、コタツに入って背を丸めているのはエルマにミシェレ、ニコリーネである、レインもめんどくさそうに顔を上げる、
「お疲れさまー」
ニコーと微笑むソフィア、すかさず、
「新しい先生来たのー!!」
こっちを向けとばかりに飛び跳ね叫ぶミナ、
「新しい先生?」
スッと視線を下ろすソフィア、
「そうなの、マル・・・マリ・・・マルなんとか先生ー」
エッとミナを見つめる大人達、
「マル・・・なんとか先生?」
「そうなのお嬢様の先生なんだってー、だからー、お嬢様も来たー」
「お嬢様ってレアン様?」
「うん、おゆうぎしたのー、下手だったー」
ありゃと苦笑するソフィア、アーと困惑するエルマにミシェレ、ニコリーネがそうなんだーと微笑む、
「ミナちゃん、マリレーナ先生ですよ」
ミシェレがやんわりと窘めた、
「そうとも言うー」
ピョンと跳ねるミナ、いやいやと苦笑するしかないエルマとミシェレ、ミナちゃんらしいなーと微笑むニコリーネ、
「駄目ですよ、ちゃんと覚えなさい」
ここはとエルマも窘めた、エーと振り返るミナ、
「そうねー、マリレーナ先生?」
ソフィアが優しくミナの頭に手を置いた、
「うん、マリ、マル・・・マル先生!!」
ありゃーと目を細めるエルマとミシェレ、そんなに難しい名前かしらとニコリーネも流石に首を傾げる、
「こりゃ、マリレーナ先生」
ソフィアが言い含めるも、ウーと口を尖らせるミナである、
「言ってみて、マリレーナ」
「・・・マリレーナ・・・」
「言えたじゃない」
「マリ・・・先生」
「省略しないの」
「えーーーーでもーーー、ニコはニコ先生でしょー」
「そう呼んでるのはミナだけよ」
「そうでもないー」
「そうなの?」
「そうなのー、エミーちゃんもアンスちゃんも呼んでるー、あー、思い出したー、でねーでねー、明日ねー、みんなが遊びに来るってなったー」
「みんな?」
ハテ?と首を傾げるソフィア、
「うん、エミーちゃんとー、アンスちゃんとー、シーラちゃん、あと、ノールちゃんとノーラちゃんと、あと、サスキアちゃんもー」
あらずいぶん増えたと微笑むソフィア、フロールの名が無いように思うがまぁそこに一人増えようが減ろうが大した事ではないように思う、
「あっ、そっか、明日って教室もお休みか」
すぐに気付いて顔を上げるソフィア、
「そうなんです」
ミシェレがニコリと微笑み、エルマもフフッと笑顔になる、明日は五の付く日つまり六花商会の休日兼給料日である、あっという間だなーと溜息をついてしまうソフィア、何もソフィアが給料を受け取る事は無いのであるが、やはり区切りのような日があるとどうしてもそう感じてしまう、
「あー、それでかー・・・えっ、でも聞いてない?」
ミナを見下ろすソフィアである、
「なにが?」
キョトンと返すミナ、ハナコもワフッと首を傾げる、
「あれですよね、商会の花作り?」
エルマがスッと背筋を正した、
「それそれ、こっちにもねー、ユスティーナ様達がいらっしゃってねー」
ソフィアはやれやれとミナと共にコタツに向かい、そのままゆっくりと腰を下ろした、暖炉の暖かさも嬉しく感じるがここはやはりコタツでヌクヌクしたかった、なにせ学園は寒かった、要所要所で暖炉も湯沸し器も稼働しているが、その程度ではやはりあの広い講堂も学園も簡単に温まるものではないし、方々が大きく外へ開かれている、温めたければ外気を遮断するのが当然であるが、仕事上それはできない、もうすっかり慣れた感じで治療にあたっていたが、だからといって寒いものはやはり寒いのであった、
「そなのー?」
「そうよー、レアン様も来てたわよー」
「えー、ミナも行きたかったー」
「駄目よ、忙しかったからねー」
「あっ、それも聞いてました」
エルマがスッと目を細め、ミシェレとニコリーネも表情を硬くする、
「そっか、でもね、朗報と言えば朗報なんだけど、もうほら、あそこでの戦闘は無いから」
フーと背中を丸くしてあっさりと告げるソフィア、
「そうなんですか!!」
ミシェレが思わず叫んでしまう、
「そうよー、だから・・・まぁ、もう暫くはね、バタバタすると思うけど・・・それでもね・・・それはまぁ、偉い人達のお仕事って感じになるから・・・」
「良かったですー」
「ねー・・・」
顔を見合わせるミシェレとニコリーネ、エルマも安堵の笑みを浮かべ、レインがそうなのかとソフィアを見つめる、ミナはハナコを抱き直し暖炉の前にペタンと座り込む、どうやら興味が無いらしい、
「そうねー・・・あっ、で、聞いた?」
と顔を上げるソフィア、どのことだろうと曖昧に微笑んでしまう三人、
「エレインさん達の・・・」
「あっ、はい、伺っております、なので、私達も協力したいなと話してました」
エルマがニコリと微笑みミシェレとニコリーネもそうですねと笑顔を見せる、
「そっか、だから・・・あっ、まぁどうなのかな?ほら、タロウが昨日言ってた感じだとさ、子供達にもやらせた方がいいのかなって思ってね、と言っても・・・お手伝いどまりだろうけど・・・」
「それなんですけど・・・やっぱりほら、送る時には子供達もいるべきだとなったみたいなんですよね、で、お花とか刺繍については・・・」
エルマがミシェレに確認する、
「ですねー、確かにお手伝い程度ならよいかなって思いますけど・・・なんか、大人の方が盛り上がっちゃってる感じで・・・」
ミシェレが思い出しながら続けた、つい先ほど、午後の早い時間、子供達がクリームパンと温かいミルクを楽しみ、これは美味しいとマリレーナも歓声を上げていた頃、エレインとテラがソウザイ店に戻って来て、数人の従業員らと打合せを持っていた、エルマとミシェレ、マリレーナもそれに加わり、なるほど随分と大事になったようだと驚いたものである、
「まぁ・・・明日はね、その準備って事になるからだけど・・・やっぱりあれね、貴族様が絡むと事が大きくなるもんだわ・・・」
ソフィアがやれやれと溜息をつき、
「そりゃそうですよ・・・」
エルマもこれには苦笑いである、エレインとテラから聞いたところによると、ユスティーナは兵士達の遺体に祈りを捧げた後、これはやはり街を上げての対応が必要であると決心したらしい、同行した貴族達も同意のようで、その勢いはエレインやテラは勿論、学園長らもおののかせるものであったとか、となればエレインも改めて本気で対応する事になったらしい、また明日は丁度商会の休日でもある、故に明日は商会の全従業員を動員しての対応となる事が決定していた、その従業員の奥様も生徒達からも異論は無かった、
「あっ、でも、あれですか、学園でもやるんですか?」
ミシェレが聞いた内容を思い出す、
「そうね、ほら、大人数を集めて、で、やっぱりね、御遺体に面会するのが重要って事で・・・で、それに先だってね、明日にも御遺族に連絡がいくみたい、モニケンダム出身の兵士さんだけだろうけどね・・・だから・・・明日はちょっときついかな・・・そういう意味でね・・・」
あー・・・そうなるのかー・・・とソフィアを見つめる三人、エレインとテラからは御遺体を前にしてやっと理解できたと静かに告げられている、そういうものなのだろうかと思ったエルマとミシェレ、なんとなく想像は出来るが、やはりそれは想像でしかない、それは生徒達やソフィア達から聞いている状況とまるで変わりない状態である、
「まぁ、御遺体は増えるでしょうけどね、今も・・・回収してるみたいだし、でも、もう怪我する人も亡くなる人もいない筈だから・・・ただ、今晩また何かやるって言ってたけど・・・クロノスやらタロウがやるらしいからね、そっちはそっちで任せるしかないんだけど・・・まぁ・・・取り合えずだわね・・・」
ニコリと微笑むソフィア、その笑みの意味が今一つ理解できないが、静かに受け止める三人である、
「さて、あっ、じゃ、明日はどうしようかしら、レイン、子供達のお世話頼める?」
レインを見つめるソフィア、あっ、そうだったと大人達もレインへ視線を向ける、
「構わんぞ、いつもの事じゃ」
フンスと鼻息を荒くするレイン、
「そっ、頼むわね、ミナー、お友達はいいけど、無茶しちゃ駄目よー」
とソフィアがミナへ視線を移せば、ミナは暖炉の前でハナコを撫で回している、気持ちよさそうに為すがままのハナコ、
「分かってるー」
ニマーと微笑むミナ、
「ホントかしら」
フフッとソフィアは微笑み、さてとと腰を上げる、厨房からゆったりと夕食の香りが漂って来ていた、少しは手伝うかとそのまま厨房へ向かうソフィアであった。
そうして夕食となる、話題はやはり戦場の事やら葬送の事であった、途中から参加したタロウに説明すると、
「そんな大事になった?」
見事に目を丸くするタロウ、
「はい、でも、お陰様で、ユスティーナ様ともいい感じにお話しできました」
エレインが嬉しそうに申し添えた、
「そっか、でも、奥様も似たような事、思いついてたって事か」
いらないことを口にしたかなと少しばかり反省するタロウである、話しを聞く限り、どうやら平民は造花を、貴族達が刺繍をそれぞれに贈る事となったらしい、見事な二度手間だなとタロウは思うも、しかし想いを伝えるのに多過ぎるという事はないとも思う、それに貴族を巻き込めと言ったのは自分である、まぁ、今回に関しては放っておいてもエレインを経由して巻き込まれたようであるが、いずれにしてもそれなりの形にはなるであろう、
「レアン様らしいですよ、言い出したの」
ニコリと口を挟むテラ、
「そうなんだ、お嬢様らしいね」
「お嬢様ー?」
ミナが口いっぱいにモグモグやりながら大声を上げた、コリャとレインが叱りつける、
「ん、ミナもいい友達を持ったな・・・」
ニコリと微笑むタロウ、そうだねーと大人達と生徒達が優しくミナを見つめてしまう、
「うん、そうなのー、あっ、でねでね、明日ねー」
とゴクリと急いで飲み込み友達が遊びに来ると慌てて叫ぶミナ、そっかーと微笑むタロウ、
「あっ、で、明日、明後日の明日にしてー」
ミナがガッと立ち上がる、明後日の明日って何だろうと首を傾げてしまう一同、コラッとソフィアとレインに同時に怒られ、ムーと座り込むミナ、
「なんだっけ?」
ハテ?と首を傾げるタロウ、明後日の明日となると三日後かな?などと思う、
「ほらー、作るっていったー、楽しいヤツー」
楽しいヤツ?ギランと生徒達と大人達の視線がタロウに向かう、
「アッ・・・あー・・・今朝のやつ?」
「それー」
「あー・・・それを明後日の明日・・・三日後?」
さらに首を傾げるタロウ、先に延ばすのであればありがたい限りである、
「違うー、明日ー、明日にしてー、みんなが来るのー、だからー、みんなで作るー」
ブーと叫ぶミナ、
「あー・・・そっか、そういう事か」
とやっと理解するタロウ、他の面々もそういう事ねと微笑んだ、
「でもさ・・・気持ちは分かるけど、子供が作れるものでは・・・」
さてどうしとようかと首を傾げるタロウ、約束した雪像または滑り台の事となる、タロウとしても明後日であれば何とかと考えており、そのつもりでなんとなくであるが動いていた、
「何を作るんですか?」
ニヤーと微笑むカトカ、
「子供では無理なんですか?」
それにサビナがのっかり、
「何の事?」
ユーリもジロリと横目で睨む、
「・・・内緒・・・」
スッと視線を外すタロウ、
「そうなのー、ユーリには内緒なのー」
ミナがニヤニヤと勝ち誇る、
「なんだとー」
「知らないのが悪いのー」
「この・・・ガキンチョがー」
フフーンと得意そうに微笑み食事に戻るミナ、わなわなとミナを睨みつけるユーリ、またこれだーと微笑む大人達と生徒達であった。
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【主な登場人物】
ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。
ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。
アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。
リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。
ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。
【読みどころ】
「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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