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本編
9話 豊穣の神の祭りあるいはレインの日 その8
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「では、皆さん、また遊びに来ますわね」
パトリシアはそう言って席を立つ、その腰にはしっかりと木工細工が括られていた、
「あ、すいません、こちらこそ、気を使って頂いてありがとうございました」
エレインが腰を上げ申し訳なさそうに礼を伝える、
「いえいえ、大変、楽しかったですわ、良い土産も手に入りましたし、ね」
ミナに向けて微笑むと、
「では、ソフィアさん、また、お邪魔しますね、その際には例の件どうぞ宜しく」
「例の件・・・」
ソフィアはあっと手を叩いて、
「はい、了解致しました、明日にでもご連絡致します」
ニコヤカに微笑む、それではとパトリシアは優雅に目礼をして厨房に入っていった、アフラを含めた従者も残る者達に目礼をしつつ音もなくパトリシアの後に続く、生徒達は席を立ち笑顔で彼等を見送った、やがて彼等の背が完全に見えなくなったところで、
「リシア様ってば今日すんごい綺麗だったわねー」
ジャネットがたまらず吐き出した、
「そうそう、なにかしら、常人とは違う輝きに溢れてました」
「独特の圧力が常にこう周囲に振り撒かれているような」
「ええ、畏れ多くて近寄れない感じでした」
疲れ切っていた姿は何処へやらと行った風で、女生徒達は実に彼女達らしくやや下世話な話に花が咲く、
「こら、失礼な話で盛り上がらない、元気になったなら経理関係纏めておきなさいよ」
ソフィアはあまりの騒々しさに大声を上げる、
「はーい、すいませーん」
一同は一瞬で静かになり、話に付いていけなかったエレインはホッと胸を撫で下ろす、
「では、決算してしまいましょう、ソフィアさんの言う通りです」
オリビアがスッと立ち上がり足元に置いていた革袋をテーブルの上に置いた、重い金属音が騒がしい、つまり銅貨と銀貨が詰まった袋なのである、
「んじゃ、こっちも」
ジャネットがパウラに目配せする、頷いたパウラが革袋をテーブルに置いた、こちらも実に景気の良い音がしている、
「あ、その前に言っておくけど、全部、正直に集計なさいよ、こういう時のお金のトラブルが一番問題だからね、後々まで尾を引くから、仲良くやっていきたいなら注意しなさい」
ソフィアはそう忠告し、自身は夕飯の支度をと腰を上げる、女生徒達はそれぞれに革袋から銅貨と銀貨を山にして計算を始めた、
やがて、
「ふぅ、こっちは終了、予想通りの金額だと思うけど、そうよね、予定した数をしっかりと捌けたんだから予想通りの金額になるわよね」
ミナから借りた黒板を手にしてアニタは一息吐いた、
「はい、やはり端数は切り上げたので会計も楽でしたね、その分単価が高くなってしまいましたが、それこそお祭り価格で問題無かったですし」
「うん、エレイン様、出して貰っていた分をお返ししたいのですが」
ジャネットは真面目な口調でエレインに返金分のお金を差し出す、
「えーと、黒板設置代と足りなくて出して貰ったトレー分、他です、確認お願い致します」
パウラが金額について詳細を説明すると、オリビアが金額を確認してエレインに目配せする、
「確かに、返金分確認致しました、では、そこから、櫛の代金を返却しますね、これで、貸し借りは無しで宜しいでしょう」
オリビアが銅貨を数枚ジェネットに返金した、
「ん、いいの?差し上げた物っていう感じだったけど」
「無料で頂くわけにはいきませんよ、そちらからはしっかりと取って、こちらは出さないでは私の矜持が許しません」
「いやー、エレインさん、流石、男らしい」
ジャネットはやっと普段のように軽口を叩く、
「なんですって?」
エレインのきつい視線をヒラリと交わして席に着くと、
「では、どうしよう、これで払うモノは払った状態?」
「そうなりますかねぇ」
銅貨の小山を前にしてパウラは小首を傾げる、
「ブノワトさんへはどうしようかと考えているんですが」
アニタはボソリと呟いた、
「それと、ソフィアさんへも」
「そうよねぇ」
3人はそれぞれに思案する、
「エレインさんの方はどうするの?」
ジャネットはエレインに素直に問い掛けた、
「どうとは何ですか?」
「いや、店をやってた時から気にしてたんだけど、ブノワトさんとソフィアさんへのお礼というか手間代というか、ある程度・・・お気持ちだけでのお礼では駄目かなぁと思いまして」
ジャネットの意見に、
「それもそうですわね、うーん、であれば、お互い決まった金額を、お礼の名目で確保しておいて、正直にその点をお話してお渡しするのが良いのかしら?」
エレインの意見に、
「そうですね、何も無しでは申し訳ありません、私達だけでは全然駄目駄目でしたから」
ケイスの言葉に一同は深く頷いた、
「じゃ、銀貨2枚分を2人分で合わせて4枚かな、お互い確保しておいて、そうね、オリビアさんに取り纏めてもらって欲しいんだけどいい?」
「それはかまいませんわよ、お礼として1人辺り各組2枚ずつ、銀貨にして4枚分のお礼という事かしら」
「そうですね、銀貨4枚なら恥ずかしくない金額と思います」
パウラは胸を張る、
「分かりました、こちらもそれに合わせましょう、ではオリビアそのように」
はい、お嬢様とオリビアは立ち上がり、ジャネット達から銀貨4枚を受け取った、
「それじゃ、これで本当に確定ね、さて、分けますか」
ジャネットは盟友2人に目配せする、
「ふう、そうなると再計算して・・・でた、一人あたり・・・」
「うん、銀貨にして5枚、はっきり言って」
「大儲け!!」
3人の声が揃った、笑い声と大歓声が食堂に響く、花びらの山で遊んでいたミナとレインが何事かと顔を上げた、
「やったー、すごい、実質半日で銀貨5枚分は大成功です、神様ありがとうー」
「だね、これもあれもなにもそれも、皆のお陰だよー、やったね、私達」
「うんうん、まさかこんなに上手くいくとは、神様大好き、ソフィアさん、ありがとう、ブノワト先生、愛してるー」
「いや、愛してるは言い過ぎ」
再び3人は声を合わせて笑いあった、
「まったく、で、こちらは如何です?」
エレインははしゃぐ3人を尻目にオリビアに確認する、
「はい、こちらも・・・でました、まずは、エレイン様の持ち出し分を回収します、ケイスさん確認して下さいね」
オリビアの冷静な瞳にケイスは神妙に頷く、
「それと、先程のお礼分をわたくしが確保しまして」
手にする黒板の数字を変更し、整頓され縦に積まれた銅貨の柱を一本二本と避けていく、
「はい、これで宜しいかと、ケイスさん、確認下さい」
「はい、えっ、でもこんなに儲かったんですか?」
ケイスは黒板の数字と目の前の硬貨の様を見比べながら絶句する、
「あの、エレインさんも御確認下さい、その、正直、驚いています」
「そう?」
黒板を手にしたエレインもケイスと同じように計算結果と実際の硬貨を見比べつつ、
「まぁ、私が本気を出したのですからこのくらいは当然では無くて?」
エレインは高飛車な言動を取りつつもその口元には隠しきれない笑顔がこびり付いている、
「お嬢様、素直になっていいんですよ」
オリビアも笑顔を隠せない上にその声は喜びで震えていた、
「はい、ここは、私達も・・・」
何とも不器用な二人を見て、さらに不器用なケイスは一計を案じる、
「なんですの?」
「雄叫びましょう?」
「雄叫び?」
「はい、大声で喜びを表現しましょう、嬉しいときは嬉しい、それが人の在り方です」
「・・・まぁ、ケイスさんがそうしたいというのなら・・・」
エレインは渋々と了承した風を気取る、
「うーん、では、どのように?」
オリビアが眉間に皺を寄せた、
「はい、では、大成功、それから、やったーで如何でしょう?」
ケイスはこそこそと二人に耳打ちし、
「せーのでいきますよ・・・せーの」
「大成功、やったー!!」
エレイン達は素直にその喜びを爆発させた、ミナとレインが再び何事かと顔を上げる、続く大笑いの最中3人は3人共に思う所があるのであろう、泣き笑いの様相であった。
パトリシアはそう言って席を立つ、その腰にはしっかりと木工細工が括られていた、
「あ、すいません、こちらこそ、気を使って頂いてありがとうございました」
エレインが腰を上げ申し訳なさそうに礼を伝える、
「いえいえ、大変、楽しかったですわ、良い土産も手に入りましたし、ね」
ミナに向けて微笑むと、
「では、ソフィアさん、また、お邪魔しますね、その際には例の件どうぞ宜しく」
「例の件・・・」
ソフィアはあっと手を叩いて、
「はい、了解致しました、明日にでもご連絡致します」
ニコヤカに微笑む、それではとパトリシアは優雅に目礼をして厨房に入っていった、アフラを含めた従者も残る者達に目礼をしつつ音もなくパトリシアの後に続く、生徒達は席を立ち笑顔で彼等を見送った、やがて彼等の背が完全に見えなくなったところで、
「リシア様ってば今日すんごい綺麗だったわねー」
ジャネットがたまらず吐き出した、
「そうそう、なにかしら、常人とは違う輝きに溢れてました」
「独特の圧力が常にこう周囲に振り撒かれているような」
「ええ、畏れ多くて近寄れない感じでした」
疲れ切っていた姿は何処へやらと行った風で、女生徒達は実に彼女達らしくやや下世話な話に花が咲く、
「こら、失礼な話で盛り上がらない、元気になったなら経理関係纏めておきなさいよ」
ソフィアはあまりの騒々しさに大声を上げる、
「はーい、すいませーん」
一同は一瞬で静かになり、話に付いていけなかったエレインはホッと胸を撫で下ろす、
「では、決算してしまいましょう、ソフィアさんの言う通りです」
オリビアがスッと立ち上がり足元に置いていた革袋をテーブルの上に置いた、重い金属音が騒がしい、つまり銅貨と銀貨が詰まった袋なのである、
「んじゃ、こっちも」
ジャネットがパウラに目配せする、頷いたパウラが革袋をテーブルに置いた、こちらも実に景気の良い音がしている、
「あ、その前に言っておくけど、全部、正直に集計なさいよ、こういう時のお金のトラブルが一番問題だからね、後々まで尾を引くから、仲良くやっていきたいなら注意しなさい」
ソフィアはそう忠告し、自身は夕飯の支度をと腰を上げる、女生徒達はそれぞれに革袋から銅貨と銀貨を山にして計算を始めた、
やがて、
「ふぅ、こっちは終了、予想通りの金額だと思うけど、そうよね、予定した数をしっかりと捌けたんだから予想通りの金額になるわよね」
ミナから借りた黒板を手にしてアニタは一息吐いた、
「はい、やはり端数は切り上げたので会計も楽でしたね、その分単価が高くなってしまいましたが、それこそお祭り価格で問題無かったですし」
「うん、エレイン様、出して貰っていた分をお返ししたいのですが」
ジャネットは真面目な口調でエレインに返金分のお金を差し出す、
「えーと、黒板設置代と足りなくて出して貰ったトレー分、他です、確認お願い致します」
パウラが金額について詳細を説明すると、オリビアが金額を確認してエレインに目配せする、
「確かに、返金分確認致しました、では、そこから、櫛の代金を返却しますね、これで、貸し借りは無しで宜しいでしょう」
オリビアが銅貨を数枚ジェネットに返金した、
「ん、いいの?差し上げた物っていう感じだったけど」
「無料で頂くわけにはいきませんよ、そちらからはしっかりと取って、こちらは出さないでは私の矜持が許しません」
「いやー、エレインさん、流石、男らしい」
ジャネットはやっと普段のように軽口を叩く、
「なんですって?」
エレインのきつい視線をヒラリと交わして席に着くと、
「では、どうしよう、これで払うモノは払った状態?」
「そうなりますかねぇ」
銅貨の小山を前にしてパウラは小首を傾げる、
「ブノワトさんへはどうしようかと考えているんですが」
アニタはボソリと呟いた、
「それと、ソフィアさんへも」
「そうよねぇ」
3人はそれぞれに思案する、
「エレインさんの方はどうするの?」
ジャネットはエレインに素直に問い掛けた、
「どうとは何ですか?」
「いや、店をやってた時から気にしてたんだけど、ブノワトさんとソフィアさんへのお礼というか手間代というか、ある程度・・・お気持ちだけでのお礼では駄目かなぁと思いまして」
ジャネットの意見に、
「それもそうですわね、うーん、であれば、お互い決まった金額を、お礼の名目で確保しておいて、正直にその点をお話してお渡しするのが良いのかしら?」
エレインの意見に、
「そうですね、何も無しでは申し訳ありません、私達だけでは全然駄目駄目でしたから」
ケイスの言葉に一同は深く頷いた、
「じゃ、銀貨2枚分を2人分で合わせて4枚かな、お互い確保しておいて、そうね、オリビアさんに取り纏めてもらって欲しいんだけどいい?」
「それはかまいませんわよ、お礼として1人辺り各組2枚ずつ、銀貨にして4枚分のお礼という事かしら」
「そうですね、銀貨4枚なら恥ずかしくない金額と思います」
パウラは胸を張る、
「分かりました、こちらもそれに合わせましょう、ではオリビアそのように」
はい、お嬢様とオリビアは立ち上がり、ジャネット達から銀貨4枚を受け取った、
「それじゃ、これで本当に確定ね、さて、分けますか」
ジャネットは盟友2人に目配せする、
「ふう、そうなると再計算して・・・でた、一人あたり・・・」
「うん、銀貨にして5枚、はっきり言って」
「大儲け!!」
3人の声が揃った、笑い声と大歓声が食堂に響く、花びらの山で遊んでいたミナとレインが何事かと顔を上げた、
「やったー、すごい、実質半日で銀貨5枚分は大成功です、神様ありがとうー」
「だね、これもあれもなにもそれも、皆のお陰だよー、やったね、私達」
「うんうん、まさかこんなに上手くいくとは、神様大好き、ソフィアさん、ありがとう、ブノワト先生、愛してるー」
「いや、愛してるは言い過ぎ」
再び3人は声を合わせて笑いあった、
「まったく、で、こちらは如何です?」
エレインははしゃぐ3人を尻目にオリビアに確認する、
「はい、こちらも・・・でました、まずは、エレイン様の持ち出し分を回収します、ケイスさん確認して下さいね」
オリビアの冷静な瞳にケイスは神妙に頷く、
「それと、先程のお礼分をわたくしが確保しまして」
手にする黒板の数字を変更し、整頓され縦に積まれた銅貨の柱を一本二本と避けていく、
「はい、これで宜しいかと、ケイスさん、確認下さい」
「はい、えっ、でもこんなに儲かったんですか?」
ケイスは黒板の数字と目の前の硬貨の様を見比べながら絶句する、
「あの、エレインさんも御確認下さい、その、正直、驚いています」
「そう?」
黒板を手にしたエレインもケイスと同じように計算結果と実際の硬貨を見比べつつ、
「まぁ、私が本気を出したのですからこのくらいは当然では無くて?」
エレインは高飛車な言動を取りつつもその口元には隠しきれない笑顔がこびり付いている、
「お嬢様、素直になっていいんですよ」
オリビアも笑顔を隠せない上にその声は喜びで震えていた、
「はい、ここは、私達も・・・」
何とも不器用な二人を見て、さらに不器用なケイスは一計を案じる、
「なんですの?」
「雄叫びましょう?」
「雄叫び?」
「はい、大声で喜びを表現しましょう、嬉しいときは嬉しい、それが人の在り方です」
「・・・まぁ、ケイスさんがそうしたいというのなら・・・」
エレインは渋々と了承した風を気取る、
「うーん、では、どのように?」
オリビアが眉間に皺を寄せた、
「はい、では、大成功、それから、やったーで如何でしょう?」
ケイスはこそこそと二人に耳打ちし、
「せーのでいきますよ・・・せーの」
「大成功、やったー!!」
エレイン達は素直にその喜びを爆発させた、ミナとレインが再び何事かと顔を上げる、続く大笑いの最中3人は3人共に思う所があるのであろう、泣き笑いの様相であった。
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※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
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