セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

19話 スリッパとお掃除?魔法 その4

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夕食時、エレインは皆が集まった頃合いを見て改めて屋敷の件を報告した、

「へー、すごーい」

とソフィアは驚き、

「え、あの家って結構な値段よ、大したもんね」

とユーリも目を剥いている、

「ありがとうございます、なので、準備が出来次第商会の仕事をあちらへ移していこうと考えておりました」

「そっかー、それは良かった」

「そうよね、いつまでも食堂で打合せってわけにはいかないわよね」

「いいなー、新居かー、羨ましいー」

とこれはサビナである、

「はい、で、ふと思ったのですが、明日は大工さんが入るので朝から開けるのですね、なので、何か面白い案があれば頂きたいと考えるのですが」

とエレインはソフィアに視線を向ける、

「えっ、わたし?」

とソフィアは自分を指差す、

「はい、それと、研究所の皆様も」

と研究所の3人を見るエレイン、

「ふふん、分かってきたじゃない」

とユーリはニヤリと笑みし、

「あー・・・」

「あー・・・」

とカトカとサビナは嫌そうにユーリを見るのであった。



翌日、ブラス達、大工衆が作業中の所にソフィアと研究所の面々、勿論ミナとレインがワイワイと後に続きエレインはその後ろに付いて屋敷へ入って来る、

「あー、大工のおっちゃんだー」

ミナはブラスを見付けるとすぐさま駆け寄る、

「おう、ミナ坊、これは皆さんでどうしたんです?」

「うんとねー、エレイン様のお屋敷を見学に来たのー」

ミナはキャッキャと飛び跳ねる、

「そうか、そうか」

とブラスは笑みし、

「ほら、ブラスさんの邪魔しちゃ駄目よ」

とソフィアがミナの手を引いた、

「大丈夫ですよ、大方終わってます、後は組み込んでって感じの所でした」

「そう、で、どう、このお屋敷は?」

ソフィアの愛想全開の不明瞭な質問に、

「どうと言われてもあれですが、作りは良いですよ、しっかり手入れしてやれば孫の代どころかもっと持ちますね」

「そっかー、やっぱり貴族様のお屋敷って違うのかしら」

「そりゃもう、壁と床も石造りですし、暖炉も躯体に組み込まれた立派な物です、木材の質も良いもんですしね」

「なるほどねー、だそうよ、エレインさん」

とソフィアが振り返ると、

「ありがとうございます」

エレインは少しばかり恥ずかし気に俯く、

「じゃ、他を見せて貰いますね」

とソフィアはブラスから離れて一団に合流した、それから1階から屋根裏それから地下室迄を観光経路のように巡回して内庭へ出る、

「あー、面白かったー、ミナ、屋根裏がいいー」

内庭に出た途端に走り出したミナがソフィアに振り返って叫ぶ、

「こらこら、ここはエレインさんのお家で、ミナが住むわけでは無いのよ」

「えー、でもー、ミナ、屋根裏がいいなー、天井が斜めなのがいいなー、ねぇ、ねぇ」

「ねぇって言われても、あの部屋は夏は暑くて冬は寒いわよ、雨が振ったらうるさいし」

「でも、でも、いい、楽しそうだったー」

はいはいとソフィアは困った顔でミナの肩を抑える、

「で、如何でしたでしょうか」

とエレインはユーリに問う、

「うーん、面白かった、ではすまないわよね」

とユーリも困った顔になりつつ、

「でも、あれね、地下が広くていいわよね・・・」

と顎に手を当てて思案する、

「うん、ソフィア、ちょっといい?」

とユーリはソフィアを呼びつけると、

「あー、黒板・・・そうか、一旦食堂に戻りましょう」

と一行は内庭から屋敷の脇を抜けると寮へ戻る、食堂へ入りユーリは白墨を手にすると、

「考えたんだけど、これは金額とかは考えないでの話だからね」

とユーリは前置きをした上で黒板に向かった、

「まずは地下室の有効利用の案ね、ソフィアからも意見が欲しいのだけれど」

と研究対象としていた浄化槽の実験について、大まかな図を黒板に書きつける、

「えっ、浄化槽って、下水道の事ですよね、もうそんなに進んでいたんですか?」

エレインは驚き、カトカとサビナも詳細迄は知らされていなかった様子で、驚きつつも真面目にユーリの説明を聞く、

「それでね、この浄化槽を設置する一番の長所が」

と図にトイレの設置、水質の浄化、を記入し、

「他には・・・」

とソフィアを見ると、

「お風呂を作れるわ、それと、貯水槽が必要になるわね、そうなると給水の方法が・・・うーん、やっぱりあれを使いたいけど・・・あとは・・・あれはまだ実験もしてないから無理ね、そうなるとあれも難しいから・・・」

と何やら悩んでいる、

「なるほど、お風呂ね、それと貯水槽が必須・・・と」

ユーリは黒板に書き込みつつ、

「うん、たぶんだけど言葉で言われても実感できない事ばかりのような気がするわね、家主さんには失礼だけど」

とエレインを見る、

「いえいえ、何となくですが想像はできます、はい、でも、そうですね、かなりの大工事になるのではないですか」

「・・・そうね、下手すると躯体にも影響がでるかしら・・・止めときましょう」

ユーリはあっさりと白墨を手放した、

「えー、所長、そこまで言っておいてそれは無いですよー」

サビナの非難が響く、

「まったくです、これじゃただの浄化槽の講習会じゃないですか」

カトカもそれに続いた、

「あによ、面白かったでしょ、実現するのは難しいだけで」

「いや、そういう問題ですかー」

「その難しいのを何とかするのが研究じゃないですか」

カトカが至極真っ当な事を言うと、ユーリはニヤリと笑みし、

「そうね、それが研究よね」

とカトカとサビナを怪しく見詰めた、

「あ、ヤバ」

「うん、これは、別の何かだ・・・」

二人は察してユーリの罠に落ちた事を理解した、

「えっとね、エレインさんには悪いんだけど、この浄化槽についてはこちらで別に企画していてね、それが上手くいったら、そちらのお屋敷にも作ってみるってことで如何かしら」

「はー、まぁ、はい、その、上手くいったらで、はい」

と話を振られたエレインは何とも歯切れの悪い返答となる、

「うん、じゃ、私からは以上で、ソフィアは何かある?」

「あー、そうね、私からは・・・」

とソフィアも思案しつつ立ち上がると白墨を手にした、

「あー、書くほどでも無いかな、タロウと住んでた頃にねこういう生活していたのよ」

と黒板に外履きと上履きと記入して振り返った、

「えっと、それは?」

エレインの問いに、

「えっとね、これが外履き」

と自身が履くサンダルを差す、

「でね、上履きというのは室内用の履物の事ね」

「それがどうしたのですか?」

「うん、タロウの郷里だと、外に出る時は外用の履物を履いて、室内では室内用の履物を履いているらしいのね、で、一緒に住んでた時に実際にそうしてたんだけど、これが中々に良かったのよ」

とソフィアはうんうんと頷いた、

「あー、そうよね、あんたの家に行った時、入ろうとしたら怒られたのよね、サンダル脱げって言われて何のことか分からなかったわ」

「そうそう、で、あの時履き替えて貰ったでしょ」

「あの軽くて柔らかい履物でしょ、確かにあれは快適だったわ・・・そうか、それ良いかもね」

とユーリは納得したようである、

「そうなのよ、でね、2階に貴賓室?を作るとすると、お金はそうだし、なにより調度品とかに拘らないと・・・あ、あれもあるな・・・お金か・・・タロウがいれば・・・」

不意にソフィアは悩み出す、

「ちょっとソフィア・・・」

ユーリが心配そうに声を掛けると、

「あ、御免なさいね、気楽にできることから始めてみましょう、で、なんだっけ、あ、うん、でね、貴賓室とかだとどうしてもほら上を見たらきりがないでしょう?」

とエレインに問う、

「はい、そうですね」

「うん、だから他の部分でこれは面白いと思えるような策?仕掛けがあったら良いかなと思ってね、で」

と黒板を差し、

「上履きなのよ」

と一同を見渡す、がユーリは理解出来ている様子であったが他の面々の顔は暗い、

「そっか、分かった、ならね、これもこの寮で始めてみる?それで良さが理解できたら広めればいいわよ」

ソフィアはあっさりと言い放つが、体験した事のない他三人はポカンとソフィアの顔を眺めているだけであった。
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