セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

27話 トイレと楽しいキャンプ その8

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それから女性達は笑いながら食事の支度にかかり、ミナとレインは焚火を囲んで静かにしている、

「ほう、これは良い絵だな」

「うむ、クロノス様もそう思いますか」

クロノスと学園長は2枚の絵を前にして腕組みをしていた、

「こちらがレインさんの、実に正確な絵ですな、あの歳頃で描けるものではないです、で、こちらがミナさんの、写し取る技術は無いですが、力強い線と色彩が生き生きとしております、どちらもそれぞれに魅力のある作品ですな」

「確かにな、レインの絵も良いが、絵としてはミナの方が楽しくなるな、これは額装する価値があるな、うむ、職人の手配をするか」

「そこまでですか」

学園長は驚くが、

「大事な盟友の作だぞ、なにしろあの二人はこの俺に尻もちをつかせたのだからな」

クロノスは明るく笑い、

「それもそうですな」

学園長も一緒に軽い笑い声を上げた、

「ほら、準備出来たわよ、二人もあっちへ」

ソフィアが二人を呼びに来る、

「おう、そうか、ソフィア、この絵、額装したいがどうだ?」

「どれ?」

とソフィアも覗き込み、

「あら、良い絵ね、え、紙に描いたの?それに絵具まで使って、すいません、学園長、貴重なものを」

一目で二人の作品であると看破したらしい、しかしソフィアは別の視点で恐縮した、

「かまわん、かまわん、二人の才能に驚いていた所じゃよ、良い絵を描くのう、うん」

学園長はしみじみと絵を眺める、

「でも額装ってあれでしょ、額に入れて飾れるようにするやつ」

「おう、そうだ、これは中々の作品だぞ」

「やりすぎじゃない?」

「そうか?せっかく上等な紙に描いたうえに顔料だって高価なものを使ったのだ、折角だからな、良い記念にもなるぞ」

「・・・あなたがそこまで言うなら、だけど・・・」

「ふん、悪いようにはならんよ、ま、任せとけ、学園長この二つを持ち帰りたいのだが」

「では、画板で挟みましょうか、画板も3枚ありますし、顔料は十分乾いてますな」

学園長が手ずから画板で2枚の絵を挟みこみ、

「とりあえずこれで、さて、準備が出来たのかな」

揉み手でソフィアに向き直る、

「はい、こちらへ、少々趣向を凝らしてみました、楽しんで頂ければ幸いですが」

ソフィアが二人を皆の所へ先導した。



場は実に乱雑な状態であった、木箱を真ん中に置いてその上には真っ黒い溶岩板が3枚置かれ、食材の入ったボールや、まな板の上に細かく切られた生肉等がその側に置かれている、それらを中心にして皆それぞれに木の根や木箱、莚に座っている者もいる、野営となれば当然の光景であるが、パトリシアのみ丸椅子に座っていた、これは彼女の体調への配慮であろう、クロノスと学園長が居場所を確保した事を確認したソフィアは、溶岩板の前に立つと、

「えー、突発ですが、野営会です、そんな会があるとは思えませんが、まぁ楽しみましょう」

と適当な挨拶をすると、皆それぞれに小さく笑顔を見せた、

「皆さん杯を、お酒の方はお好きに、ソーダ水の方は準備できてますね」

ニコニコと一同を見渡す、クロノスと学園長が杯を受け取りワインを注がれるのを待ち、

「まずは乾杯を、そうね、今日の言い出しっぺはミナだから、ミナ、お願いできる?」

ソフィアが不意にミナを指名すると、

「なに、なにするの、どうするの?」

ミナはキョトンと問い返した、

「そうね、元気に乾杯って言って」

「あ、分かった、いつものあれ?」

「そうよ」

「うん」

ミナはピョンと立ち上がり、

「えっと、カンパーイ」

元気な声が広場に木霊し、一同も笑顔でカンパイを叫び杯を呷った、

「あー、美味しい、やっぱりソーダ水って美味しいわねー」

パトリシアがそれだけで満足したような笑顔となり、

「緑の中で頂くのもまた格別ですね、気分が全然違います」

エレインも上機嫌である、店を閉めた後で合流したオリビアも楽しそうに微笑んでいる、

「はい、じゃ、今日の料理なのですが、えっと、恐らく初めての方が多いかな?ミナとレインは前にやったことがあるんですが、その時は鉄板だったわよね」

ソフィアは溶岩板を作動させつつ話しだす、一同はいよいよかとソフィアの手元に注目した、

「えっとですね、この溶岩板を見たときに使えるなーって思っていた事がありましてー」

と溶岩板に手のひらを翳して温度を確認する、

「うん、熱いわね、良い感じかしら、で、十分に熱くなったら、ここで焼いていきます」

ソフィアは油を落として木へらで伸ばすと薄い肉を並べていった、ジュワっという肉の焼ける音と共に臭いが風にのり薄い煙が立ち上る、

「ほう、中々の火力だな」

クロノスは楽しそうにその様を眺めている、

「そうですね、で、そちらに野菜もあるので、お好みで焼いて下さい、今日のはあれです、皆で焼いて、皆で食べる、そういう感じです」

「なるほど、理解しました」

サビナが率先して立ち上がるとソフィアの隣に立つ、カトカもここは自分が動くべきと判断したのかそれに続いた、

「ミナもやるー」

それから皆がワイワイと立ち上がりそれぞれに食材を眺めて食べたいものを溶岩板に並べだした、

「それで、取り皿をどうぞ、さらにこちらの濃厚なスープ、旦那がタレと呼んでるんですが、こちらを漬けて食べてみてください、くどいようならお塩でどうぞ」

ソフィアが木皿を配り、さらに壺からタレを少量ずつ木皿へ注いで回った、

「ふむ、野菜が随分柔らかいのう」

学園長が気付いたようである、

「そうですね、野菜は下茹でしてあります、軽く焼目が付くぐらいで食べれますよー」

「む、この木製のフォークはなんだ?聞いてないぞ」

クロノスは皿と共に手渡された4本フォークに驚いている、

「あ、それは新製品ですわ、使いやすいですよ」

エレインがクロノスとパトリシアに説明している、

「んー、美味しい、お肉、美味しいー」

ミナがピョンピョン飛び跳ねた、

「美味しい?良かったー、タレはどう?」

「タレ美味しい、これ好きー」

ミナは笑顔でソフィアを見上げる、

「そっか、あ、どうだろう、大人な方々はこちらの葉っぱでお肉を包んで食べてみてください、美味しいですよー」

ソフィアは別の皿に野草を盛って木箱に置く、

「では早速」

リンドが手を伸ばし、

「うむ、これは旨いぞ、リシアも試してみろ」

クロノスもリンドに続いた、

「あなたが摘んできた野草ですわね」

パトリシアも手を伸ばす、

「ミナもー」

野草に群がる大人達をミナが見上げ、

「ミナはどうだろう、ちょっと試してみて、嫌なら無理しないのよ、辛いからね」

「分かったー」

小さい葉を選んで摘まむと肉と一緒に口へ放り込む、暫し咀嚼して、

「むー、辛いー」

大きく口を空けて泣き顔となる、

「ほら、言わんこっちゃない、お水飲む?」

「大丈夫、でも、辛いー」

「はいはい、なら、お野菜でお口直しね」

ソフィアは焼けた野菜をミナの皿へ取り分けた、

「流石のミナもこの大人の味は分らんようだのう」

レインが旨そうに野草を口にして、ニヤリと笑うと、

「むー、分かるもん、辛かっただけだもん」

「あっはっは、その辛みが旨いんじゃぞ」

「レイン、ミナをからかわないの、ミナも無理しちゃ駄目よ、美味しいお肉は美味しく食べなきゃ駄目よ」

「・・・分かった、タレちょうだい」

ミナは不承不承に納得してタレの追加をねだるのであった。
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