セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

44話 殿下が来た その7

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その頃事務所である、オリビアがダナとネスケーと共に顔を出し、テラを交えて人材募集に関しての打ち合わせを始めた、

「すいません、会長は接客?・・・中でして、私とオリビアさんで対応させて頂きます」

オリビアが茶を立てている間にテラとダナとネスケーはお互いの紹介を済ませた、テラはそのまま主が不在である事を謝罪し、

「そんな、エレイン会長は忙しいでしょうから、構いませんよ」

ダナが真面目に返答し、ネスケーは、

「えっと、あれが鏡?ガラス鏡よね、ダナが言ってたやつでしょ・・・すごいね・・・いいなー」

視線がしっかりとガラス鏡に奪われている、

「ふふ、そうですね、打ち合わせが終わったらゆっくり見て下さい、開発中の品もあるので楽しいですよ」

テラの優しい言葉に、

「開発中?」

「それ凄くない?」

年相応の反応を示す二人である、

「凄いですよ、絶対に欲しくなる一品なのですが、まだまだこれからですね、お高くなるのは確実なので、お二人が気楽に買えるようになるまではもう暫くお待ち頂く事になるかと思います」

「えー、でも、見せてくれるんでしょー」

「嬉しいなー、えー、やっぱり、私も応募しようかな、楽しそうだよ」

「事務長に怒られるでしょ、職権乱用だって」

「けどさー、エレインさん・・・会長も事務員が欲しいって言ってたしー」

「本気だったらちゃんと学園を辞めてからよ」

「・・・それもあれだなー危険が危ない感じだなー、安定は大事だなー」

「でしょう・・・まったく」

ダナとネスケーが楽しそうにはしゃぐ中オリビアが茶を供してテラの隣りに腰を下した、

「では、すいません、本題を」

テラがニコリと先を促す、

「はい、えーと、こちらが応募頂いた生徒になります」

ネスケーが軽く咳払いをして思考を切り替えたようである、名前と年齢と学科が記された木簡をテーブルに置く、

「5名ですか・・・うん、なるほど」

さっと目を通したテラが頷き、オリビアはじっくりと読み込んでいる、

「こちらの木簡が個人情報になります、出身地と現住所、それと学園での成績関連、講師からの評価ですね」

ネスケーが別の木簡をまとめてテーブルに置く、テラはそれを一枚一枚目を通してオリビアへと渡していった、

「なるほど、現地の人ばかりですね、これはありがたいですね」

「それは良かった、時期が時期ですからね、地方出身者はこちらでの職探しは諦める時期なのですね、もう帰る算段をつけているようでした、もっと早く知りたかったと文句を言われましたけど、これもまた縁なので」

ネスケーが事務的に答え、

「それで、学科にもあります通り、3名が生活科・・・メイド科と呼んだ方が分かりやすいですね、1人が錬金学科、1人が戦術科になります」

「錬金学科とは?」

「はい、えっと、どう言えばいいんだろう・・・」

ネスケーが一瞬首を傾げる、

「カトカさんの後輩になると思います」

ダナが助け舟を出す、

「ついでにいうと戦術科はジャネットさん達の先輩になりますね」

「なるほど・・・すると本来は研究気質の方と兵士志望の方ですか・・・」

「そうですね、ま、錬金学科を研究気質と一括りにするのは難しいですが、講師曰く、何でも器用に出来るように広い知識を取り込ませているそうです、本来であれば鉱物関係の研究から始まった学科なのですが、そういった方面は勿論、魔法関連や技術関連にも造詣があるとそう考えて下さい」

「・・・確かに、カトカさんを見る限りはそういった知識が豊富そうですよね・・・」

「あー、カトカさんは別格ですよ」

「そうですよ、あの人はだって、在籍中は図書館の華と呼ばれた才媛ですから、成績もぶっちぎりで一番でしたし」

「そうそう、で、ユーリ先生が助手にしたら先生達がみんなして悔しがってね」

「うん、気持ちはわかるけど、あれはちょっとねー、ユーリ先生で良かったと思うなー」

「まったくだよね、何か事務所にいるだけで華やかになるって言ってた講師もいたな、あれは駄目だよねー」

急に懐かしそうな同級生談義である、正確に言えば同級というわけではないのであろうが、同年代の出来る人の噂話はどうしても夢中になってしまうものである、

「そうですか、でも、接客対応の仕事になるのですが大丈夫でしょうか?」

「はい、その点は5人共に説明しております、メイド科の3人は言わずもがなですが、他の二人も、この子はいろいろな分野を知りたいと意欲に溢れてました」

ネスケーが示したのは錬金学科の娘である、

「で、こちらの子は兵士は向いてないとそう思い知ったそうです、根が優しい子なんですよね、学業は抜群なんですが、実技が今一つでした、ユーリ先生が詳しいと思いますが、そういう感じです」

「・・・うん、ま、そういう事もありますよね、本人がやる気があれば良いのですが、ご家族の方はどうなんでしょう?」

「すいません、そこまでは伺ってないです」

ネスケーがあっさりと答える、テラはそういうものかと思いつつ、

「オリビアさんからは何かありますか?」

静かに木簡を見ているオリビアへ確認する、

「はい、私が知っているのはこの3人ですね、この方々は失礼な言い方になりますが悪くないと思います、成績も良かったですし、立ち居振る舞いもしっかりしてました、メイドとしてしっかりやっていけそうな方々ですね、でも、メイドで無くて良いのかしら・・・」

「そうですね・・・実はなんですがメイドの募集が少ないのもあります、メイドはどうしても欠員が出なければ募集がかからないので、少なくとも学園での募集では少ないですね、それにメイド科に関してはオリビアさんが詳しいと思いますが、既に所属が決まっている方が大半です、なので、こう言うと失礼ですがこの3人もメイドに準じる形の仕事として応募したものと思います、それにこちらの商会の評判が良いというのもあったのかなとも考えます」

「なるほど、理解できました・・・はい、私から言えるのは、こちらの3名に関しては期待して良いかと思います、ほぼ同窓になりますし仲良くさせて頂いてましたし」

オリビアはそこまで言って口を紡ぐ、その言葉はそのままの意味合いで受け取ってよいであろうとテラは判断し、

「わかりました・・・うん、5名ですか・・・」

そう呟いて沈思する、実のところ募集人員は3名程度を予定していた、しかし、今後の事を考えれば多いに越したことは無く、かつ、ガラス鏡の店舗はもとよりその裏にある店舗についても考えていかなければならない、裏の店舗についてはエレインの夢想に近い構想のみがある状態であったが、手に入れた以上活用しなければ意味が無いのである、

「えーと、すいません、まずは、明日書類選考の連絡をしなければならないです」

ネスケーがテラの思考を遮った、

「あ、そうですね、はい」

テラがハッと気付いて顔を上げる、

「すいません、まだ前段階なのですよね、最終的には面接して頂いて決定という事になると思います、学園で処理するのは選考通知の連絡までです、その後、出来ればですが決定した場合はその際に連絡頂ければと、採用不採用を問わずで」

「わかりました、うん・・・そうですね、ではこちらの5名にお会いしたい旨をお願いします」

「・・・全員で良いのですか?」

「はい、折角ですしね、若い人の力は大事です、それでどうでしょう?」

テラがオリビアへ視線を向ける、

「はい、異存はありません、面接時にはお嬢・・・会長が対応されるでしょうし5人程度であれば手間もかかりません」

「そうですね、では、そのようにお願いできますか」

「はい、ありがとうございます」

ネスケーは明るく答え別の木簡にメモ書きを加えた、ネスケーとしても書類選考の時点で断りを入れる仕事が一番嫌な仕事なのである、悲しそうに肩を落とす生徒や、怒り出す生徒もいる、これも仕事と思ってやっているが正直居た堪れないのであった、

「面接は29日の午後で宜しいですか?」

「はい」

「あ、では、私が学園からまとめて連れてきます」

オリビアがテラに告げる、

「・・・うん、そうですね」

テラもそれが良いであろうと素直に提案を受け入れた、

「はい、では、そのように段取りをお願いできますか?」

「了解です、集合場所は事務室でいいですね」

「はい」

こうして、さらに詳細を詰め、こんなもんかと一息吐いた4人である、そして、ダナとネスケーはガラス鏡と3面鏡台に歓声を上げるのであった。
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