セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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本編

47話 沈黙の巨漢 その8

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そのほぼ同じ頃事務所では、

「いやー壮観だねー」

ジャネットがテーブル3つを使って並べられた下着類を見下ろし御機嫌である、昨日購入した下着はどれも薄い皮革の色合いと光沢の無い綿の白色である、その為華やかな光景とは言えないが、広く並べられたそれらは想像以上に興味深い光景であるのは間違いない、

「そうですねー、えへへ、なんか下着屋さんって感じです」

パウラも楽し気に微笑み、

「・・・でも、これどうやってまとめるの?」

アニタが腕を組んで首を傾げる、

「そうですね・・・マフダさんどんなもんです?」

ケイスがマフダに問いかける、しかし、

「どうしましょう・・・えっと、昨日は価格と販売手法をまとめてまして・・・こっちに関してはなんとも・・・はい・・・」

マフダが心底困った顔で答える、昨日、マフダの元に4人が駆け込み事情を聞いたマフダは助力に感謝しつつ購入した下着類を事務所へと運び込んだ、しかし、作業を考えると時間が遅く、通勤組は勿論アニタとパウラも帰寮する頃合いであった為、今日改めて調査する事となり解散したのである、そして、今朝はマフダの出勤とアニタとパウラを待って下着をテーブルに並べ始め、店毎と種類別に大騒ぎしながら陳列し作業を終えたのであった、ちなみにリーニーとカチャー、メイド3人衆も興味はあったようであるが、リーニーとカチャーは研修に、メイド達は当然ながら屋敷へ御奉公である、

「こうなると、あれですね、やっぱりサビナさんを呼んできましょうか、私達では分類も分析もどうやっていいものかって感じですね」

パウラがマフダに提案する、

「そうですね、でも、大丈夫でしょうか、サビナ先生忙しいですし・・・」

「あー、それは大丈夫だよ、昨日話したら手伝うって言ってた、面白そうねーって、カトカさんも興味あるってー、ユーリ先生もいいんじゃないのって感じだったよ」

「それは嬉しいです、正直どうしたもんだか悩んでいたんですよー」

「だよねー、こういうのは頭の良い人連れてこないとだよ、ノーキン部隊じゃ駄目だよねー」

「ノーキンってなんですか?」

「脳が筋肉なんだってー」

「ちょっと、それジャネットの事でしょ、私達を一緒にしないでよ」

「アニタも似たようなもんでしょがー」

「私は別ですー」

「試験はギリギリだったでしょー」

「・・・むかー、たまたま良かったアンタに言われたくないわよー」

「私のは実力ですのよ、ちょっと本気を出しただけですわよ」

「こっの・・・なら普段から本気出しなさいよ」

「えー、疲れるからやだー、それに、アニタ様が寂しがるしー」

「寂しいわけないでしょ」

「えー、ホントかなー、パウラー、アニタがなんか言ってるよー」

「はいはい、じゃ、サビナさん呼んできますか、もう出てるかな?」

「あ、私行きますね」

ジャネットとアニタのいつもの口喧嘩を軽くいなしつつケイスが寮へと向かう、マフダは自宅の騒々しさに似た二人のやり取りに思わず微笑んだ、やがて、

「おおー、こりゃすごいねー」

「ホントだ、すごーい」

ケイスがサビナとカトカを伴って戻ってくる、二人は共に並べられた下着の平原を目にして目を丸くした、

「おはようございます、先生方」

ジャネットがピシリと背筋を伸ばし、その気合とはかけ離れた間延びした朝の挨拶がそこかしこから飛んで来る、

「おはよー、ジャネットさんは朝から元気だね、で、マフダさん、どんな感じ?」

サビナがマフダの隣りに立つ、マフダは恐縮しながら状況説明を始め、カトカは、

「へー、でも、もうこんなに販売してるんだー、全部別の店なんでしょ、凄いねー・・・最近街にでてないからなー、へー、面白いねー」

並べられた下着の一つを手にして感心しきりである、

「そうなんですか?やっぱり忙しいです?」

パウラもその隣りで下着へ手を伸ばす、

「まぁね、私はほら研究が楽しくてね、研究所と宿舎の往復だから・・・そうよね、たまには街をぶらつかないとね、取り残されちゃいそう」

「そうですよねー、でも、この街で一番新しい物はこの商会だと思いますよ、学園でもよく言われますから、何か新しいの無いのーって」

「そっかー、楽しそうね、でも、確かにね、新しい物か・・・服も食べ物も装身具迄手掛けているんだからそうなるよね、それも次から次へと」

「えへへ、そう考えると凄いですよね」

「まったくだわ」

「今も上で商談なんですよ」

「商談?」

「はい、レアンお嬢様とライニールさんが来てます」

「へー、レアンお嬢様と商談かー、なんだろう?売るの?買うの?」

「どうなんでしょう?詳しくは聞いてないです、でも、知らない職人さんと一緒でした」

「ふーん、エレインさんも忙しいのね、こりゃ負けてらんないなー」

「えー、負けてないですよー、研究所さんのお陰じゃないですかー、調理道具も冷凍箱も大活躍ですよー」

「そうなの?まー、それはね、嬉しいけどね、奥様方から改良意見も貰ってるし、良い感じで使って貰ってるし、お互い様なんだけど・・・あれも商品化したいんだけどね、手が回らなくて・・・」

「ですよね、家に一台欲しいですよどれもこれも」

「それは良く言われるー、でも、どこまで拡げていいのやらって感じの物ばかりだから、大量生産も難しいし、所長も悩んでいるのよね」

「そうなんですか・・・」

「そうなのよ、それに魔力がある事が前提だからね、所長はそれが一番嫌みたい」

「それ聞きましたね」

「そうなのよ、で、今頑張っているのがそれをなんとかする方法なんだけど・・・ま、それはそれね、で、どうしたいのかな?」

「どうなんでしょう、取り敢えずマフダさんの指示待ちかな?ジャネットが理解している筈なんですが」

パウラがジャネットを伺うが、ジャネットはアニタと一緒に下着の物色に忙しい様子で、

「これ、可愛いね」

「こっちもいいなー、レースが良い感じ」

「これなんか手触りが優しくていいよ」

「そうなんだ、これは見た目通りだね、やっぱり皮よりも布の方が好きだなー」

「それ分かるなー」

「だよねー、汗かいても気にならない感じがする、試してないけど」

「確かに、皮だと汗が気になるよね」

「うん、あと、匂いも」

「そう?」

「気になるでしょー、私、毎日洗ってるよ、お湯で拭いて乾かすだけだけど」

「えっ、そうなんだ・・・」

「・・・あんた、着けっぱなし?」

「・・・寝るときは外してる・・・」

「はあー?それだけじゃ臭いでしょ」

「・・・そうでもないよ・・・」

「絶対、臭いわ、ちょっと近寄んないで」

「えー、そう言うなしー」

「言うわよ」

「むー、でも気にならないから大丈夫だよ、あ、これもいいね」

「もー・・・あ、こっち軽くていいかも」

「そうなの?」

「うん、でもなんか頼りない感じだなー」

「・・・そうだね、動いてたら破けそう・・・」

「でも、丈夫そうなのって・・・」

「うん、なんか無骨だね・・・これとか」

「兵士として考えたらそれしか無いんじゃない?」

「そっかー、でもなー、兵士だからこそ、こういう所だけはお洒落したくない?」

「そうだけど・・・兵士じゃないからな、どうなんだろう?」

「イース様に聞いてみようか?」

「イース様は男でしょ、これ着けるの?」

「着けないか・・・」

「たぶんね」

テーブル上の下着を手に取ってはあーでもないこーでもないと二人の世界に埋没している、

「うん、了解、そうなると・・・カトカー、ちょっといい?」

サビナがマフダからの聞き取りを終え、カトカを呼びつける、

「えっとね、エレインさんとテラさんからは価格と種類、それと販売手法についての調査みたいなのね」

サビナがざっと説明し、カトカは、

「なるほど、であれば、簡単じゃないですか」

その程度かと白けた顔である、

「そうね、で、マフダさんとしてはそれだけだとつまらないから、特徴をまとめたいらしいのよ」

「特徴ですか・・・なるほど・・・それは一つ一つ見ていかないとですね」

「そうなのよ、ただ特徴と言っても難しいと思うんだよね、取り敢えず店ごとの特色を出していって、その中からより特徴といえる項目を特記する感じかなって思うんだけど」

サビナの提案にカトカはうーんと考えつつ、

「・・・それしかないですよね、そうなると、検査項目を明確にする必要がありますね・・・黒板は、ありますね」

「うん、じゃ、みんな集まってー」

サビナが中心となって本格的に動き出した、やはりこういう事は私には無理だなー等とマフダは考えつつ、それでは駄目だと思い直し、サビナやカトカの思考方法や調査という行為そのものを身に着けるべく真剣な瞳で二人の言葉に耳を傾けるのであった。
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