セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

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48話 モニケンダムお土産探訪 その2

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「そうだ、ルルっちはどうする?」

ジャネットが振り向き鏡の前で髪留めをとっかえひっかえして遊んでいるルルに問いかけた、早起きしたルルは朝食はとっくに済ませ、エレインとテラ、オリビアもさっさと済ませて事務所に向かった、休日の朝を優雅に楽しんでいるのはジャネットとケイスである、すっかりこのまったりとした朝食とお茶の時間に馴染んだようで、朝食を終えた二人はソフィアにピーピー言われながらトレーを片付け、さて今日は何をするかと茶を片手に額を突き合わせる、ミナとレインは読書の時間である、こちらもまったりと朝食後の時間を過ごしていた、

「どうするって何がですか?」

ルルは髪留めを数本挿して御満悦で振り返る、

「わ、可愛いね」

ケイスがニコニコとルルを褒め、ルルはエヘヘとだらしない笑みを浮かべる、

「ホントだ、なんだルルっちよく見れば美形だな・・・」

ジーっとルルを見つめるジャネットに、

「よく見ればは失礼ですよー」

ケイスが微笑みながら窘める、

「えへへー、そんなー、私なんか全然ですよー」

だらしない笑顔はそのままに鏡に向き直るルルである、

「あ、で、なんですか?」

ルルは鏡越しにジャネットに問い返した、

「うん、ほら、街中の案内とかもしておいた方がいいのかなーって、話してたんだよ、で、今日やるんならルルっちの予定もあるべなーって思ってさー」

「それ嬉しいです、予定って言われてもまったく考えてないですよー、こんなに早く着くなんて思ってなかったですし、学校が1日からって言われて、それまでどうすればいいんだろうって感じです」

「あー、そうなるよねー、私の時はどうだったっかなー、2・3日はブラブラしてたと思うけど・・・」

ケイスがうーんと天井を仰ぐ、

「そうだよねー、そう言えば・・・こんなに仲良くなかったよね、寮の中って」

ジャネットもうーんと悩みながら頬を掻いた、

「そうだよねー、みんなで食事をする事も無かったしなー」

「うんうん、他の人と話すことも無かったしね・・・」

ジャネットとケイスはしみじみと呟いた、

「えっ、そうなんですか?昨日の感じだと皆さん仲良さそうですけど・・・」

ルルは不安そうに振り向いた、

「うん、今は仲良いよ」

「そうですね、ソフィアさんのお陰だと思ってますけど・・・」

「そうだねー、前はゴミ屋敷だったからねー」

「ゴミ屋敷ですか?」

「うん、この部屋も何だか分んない物でいっぱいだったし、2階も3階もだけど」

「そうですね、玄関も匂いが酷かったですよね・・・」

「そうそう、で、ソフィアさんが来て、なんじゃこりゃーって大掃除して」

「うん、あっという間に綺麗になってね、有難かったなー」

「あー、で、ケイスが姿を現して・・・」

「それは言わないで下さい」

ケイスはジロリとジャネットを睨む、

「ありゃ、言っちゃダメ?」

「駄目じゃないけど・・・言いふらして欲しくないです・・・」

「それもそっか・・・ふふ、まぁ、良かったじゃない、あのままだと、ホントにどうにかなってたよ」

「そう・・・ですね、そうなんですよね・・・感謝してもしきれないな・・・」

ケイスは懐かしそうにそして悲しそうに顔を顰めて俯いた、

「何かあったんです?」

ルルが興味を引かれたのか席を立ってジャネットの隣りに腰を下す、

「そうだねー、そのうち、ケイスから話すんじゃない?」

ジャネットは適当に誤魔化し、

「どうでしょう、少なくとも自慢できる事ではないですから・・・」

ケイスは口籠る、ルルはそんなに深刻な事なのかなと二人を見比べながらそれ以上追及する事は無かった、

「あ、でね、アニタ達の寮もさ、綺麗になったらみんな仲良くなったって言ってたよ」

「へー、そうなんですか?」

話題が変わりケイスはパッと顔を上げ、ルルはアニタとはと首を傾げるも黙ってその先を待つ、

「うん、あっちは2人部屋が基本じゃん、だから、アニタもパウラとしか話しもしなかったらしいんだけど、大掃除して寮母さんが増えて、そしたら食事もみんなで一緒に摂れるようになって、で、話しするようになったってさ」

「それは良かったねー、へー、そうなんだー」

「他の寮って2人部屋なんですか?」

「そうよー、1人部屋って贅沢なんだからねー」

「そうそう、男共なんか4人部屋もあるらしいよ」

「うわっ、それ汚そう」

「だよねー」

「絶対汚いですよ、その上臭そう」

「あはは、ルルっち言いすぎー」

「えー、うちの男共の部屋なんて酷いですよ、あれを思い出すと・・・」

「それはあるね」

「そうなの?うちは女ばっかだからなー」

「酷いですよ、男だけの部屋は」

「うんうん、確かにね、うちも母ちゃんがいくら言っても掃除しなくてねー」

「そうですよね」

「うん、寝藁とか真っ黒なのよ」

「そうそう、で、寝台の下から変な色の下着とか出てきて」

「あー、それわかるー」

「・・・汚いなー・・・」

ジャネットとルルは共通の話題で笑い合い、ケイスはそういうものなのかと想像して身震いする、

「さてと・・・あら、朝からお茶会?」

そこへ片付けを終えたソフィアが顔を出す、

「えへへ、今後の作戦会議です」

ジャネットがニヘラと答える、

「作戦会議?」

「はい、ルルさんに街を案内したりした方がいいのかなーって、話してました」

ソフィアの不思議そうな顔にケイスが答える、

「へー、それいいわねー、私も案内して欲しいなー」

「えー、そうなんですかー」

「そうよー、私もほらこっちに来て3か月か・・・うん、街の中って詳しくないのよねー」

「なら、みんなで行きましょうか、どうしようかなマフダっちに頼んでさ、モニケンダムの名所巡りとかどう?」

「それいいですね、現地の人巻き込めば楽ですよね」

「うん、私らも知らない所多いしね」

「あら、楽しそうね」

ソフィアもそれは良いかもと腰を下す、

「ですよねー、マフダっちに聞いてみようかな?」

「いいんじゃないですか、ブノワトさんでもいいですしね」

「あ、そっか、ねーさんでもいいのか・・・うん、そうと決まれば・・・」

ジャネットがムンと立ち上がるが、

「あー、ジャネットさん、もしちゃんとやるのであれば、全員揃ってからの方が良いかもねー」

ソフィアがやんわりと押し留めた、

「全員ですか?」

3人の目がソフィアに集まる、

「そうよ、予定だと後4人来るからね」

「へー、そうなんだー」

「一気に5人も増えるの?」

「うわ、姦しくなるなー」

「今でも十分姦しいわよ、だから、5人揃った後の方が良いんじゃない?」

「なるほど、分かりました」

ジャネットは改めてムンと胸を張ると、

「では、どうしようかな、うん、新入生歓迎モニケンダム観光会ってのはどうでしょう?」

「うわ、本格的」

ソフィアは微笑み、

「仰々しいなー、でも良いかもねー」

「・・・楽しそうですね」

ケイスとルルも嬉しそうにジャネットを見上げる、

「じゃ、早速、マフダっち来てるかな?」

「マフダさんも早いですから来てるんじゃないですか?」

「そうなると、あっ、そうだ、ルルっち暇ならさ、事務所に遊びに来れば?」

「事務所?ですか?」

「うん、俺達の商会の事務所」

「俺達の商会?」

「そうなんですよ、エレインさんが会長で、私達はなんと創業者扱いなんです」

「えっ、どういう事ですか?」

「ふふん、話せば長いんだけどね、ま、そういう訳」

「どういう訳よ」

「ま、いいじゃんいいじゃん」

「えっと・・・大丈夫ですか?」

ルルは若干不安そうにソフィアを伺う、

「大丈夫よー、身の危険は少ないかしらねー、取って食われる事はない筈よ、あ、ジャネットさんに扱き使われるかも、そうなったらちゃんとお給金貰うのよー」

「えー、駄目ー?」

「駄目って、そりゃそうでしょー、創業者の偉い人なんだから、ルルさんはまだお客様なんだからね、大事に扱いなさい」

「えー、後輩なら手下みたいなもんじゃんさー」

「手下ってあんたねー、あー、でもあれか学科が一緒だとそんな感じになるのかー」

「そうですよー、後輩は先輩の言う事に絶対服従っすよ」

「・・・そうなんですか?」

ルルはいよいよ不安そうな顔となる、

「そういうものよね・・・あっ、でもあれだ、ジャネットさんに虐められたら私に言いなさい、ちゃんと締めてあげるから」

ソフィアはニヤリとルルを見つめ、

「締めるって具体的には?」

ケイスがニヤニヤと問う、

「そうね、夕飯が一品少なくなるとかー」

「えっ」

「毎日洗濯させるとかー」

「えっ」

「あっ、ユーリにチクルとか?」

「げぇっ」

ジャネットはソフィアを見下ろして固まり、ソフィアはうふふと見上げつつ、

「ま、大丈夫よジャネットさんは姉御肌のいい女だからね、先輩として頼ってあげなさい、逆に扱き使ってあげるくらいで丁度いいわよー」

ニコリと微笑んだ、

「え、えっと、うん、ルルっち、お手柔らかにね・・・」

急に萎れたジャネットに、ルルは忙しい人だなーと微笑み、

「ふふ、先輩を作るのは後輩の仕事だからね、良い先輩に鍛え上げるのよ」

ソフィアはさらにジャネットを追い込む事を口にする、そこへ、

「おあよー」

階段から寝ぼけた声が響いた、ユーリである、

「えっ、起きてなかったの?」

ソフィアは驚いて腰を上げ、

「んー、今起きたー」

ボリボリと腹を掻きながらボーっと近寄るユーリ、

「朝御飯はー?」

虚ろな瞳で綺麗に何も無い配膳台を見る、

「あっ・・・そっか、御免、ルルさんの分を作らなかったんだ・・・そっか、なんか変だなーって思ったのよー」

ソフィアは大声で喚きながら誤魔化すように笑いだす、

「ん?どういう事?」

「だからー、人数分作ったんだけどー、ルルさんが増えているのを忘れてたのー」

「それは・・・つまり・・・」

ユーリはうーんと唸りながら小首を傾げ、

「うん、ユーリの分無いわ、あはは、御免ね」

明るく笑って開き直るソフィアと、

「んー、じゃ・・・どうする?」

普段であればギャーギャーと喚き立てる所であろうが、まだ寝ぼけているのか困った顔で問いかけるユーリ、

「どうしようか?リンゴならあるかな?干し肉と卵はすぐ焼いてあげる」

「・・・んー・・・あーそういう事か・・・じゃ、それでいいわー」

「あはは、ごめんねユーリ、しっかり忘れてたわ」

ソフィアはバタバタと厨房へ戻り、

「ソフィアさんでも忘れる事あるんだねー」

「うん、完璧寮母と思ってた・・・」

「完璧寮母ってなんですか?」

ユーリの有様とソフィアの慌てぶりに3人は呆けた顔を並べていた。
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