セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました

今卓&

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本編

50話 光柱は陽光よりも眩しくて その13

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「さっきの見たー?」

「見た見た、綺麗だったねー」

「ねー、ピカって、バーンで、ピカピカーって」

「ねー」

駆け寄ったミナは国王への挨拶はそこそこにウルジュラと両手を繋いでユラユラと不思議な踊りを踊りながらはしゃぎ始め、レインはめんどくさそうにその側で仏頂面である、ソフィアは土埃に塗れたミナを綺麗にするべく捕まえようとしたのであるが、国王や従者達の手前上手く動けず、結局そのままウルジュラが先にミナを捕まえてしまっていた、

「えへへー、でねでね、レインとお絵描きしてたのー」

「そうなの?」

「うん、広いから描き放題なんだよー」

「へー、楽しそうー」

「ユラ様も行こー」

「えー、どうしようかなー」

渋く深刻な面相の大人達を尻目にミナとウルジュラの楽し気な嬌声が響き、そこへユーリとゾーイが戻ってきた、

「ふむ、では、改めてどういう事か説明願えるかな」

国王は押し黙る一同を代表して戻ってきた二人とソフィアへと問いかける、

「どういう事かと言われても・・・」

「見たままですね」

ソフィアとユーリは顔を見合わせ、また最初から説明が必要かしらと首を傾げ合った、国王はその様を見て、質問が間違っているなと思い直し、

「いや、仕組み云々は良い、何と言うか・・・うん、あれで成功なのだな?」

「はい、私共の想定通りの動作でありました、ゾーイさんには光の攻撃系統の魔法のうち、最も得意なものを本気で撃てと指示しました」

「そうなのか?」

「はい、ユーリさんの仰る通りです」

やや疲れたような顔のゾーイが口を開く、

「ユーリさんからはその通りに伺いまして、であればと私の最も得意とする光の攻撃魔法を渾身の力で放ちました」

「ほう・・・これはどう見るべきかな」

国王はロキュスへ意見を求める、

「そのままでございましょう、ゾーイの言葉通り、彼女は攻撃魔法のうちでは光と雷系統を得意としています、いざ戦場に立てば当千の活躍も期待できる実力であります、その彼女の渾身の魔法、それをあのように霧散する事が出来るとなると・・・うむ、言葉もありません」

ロキュスは先程迄のどこか馬鹿にしたような態度は完全に鳴りを潜めており、深い皺をより深くして結界陣が存在する修練場を見渡す、

「ほっほっほ、なんじゃ素直に負けを認めよ、学者には現実認識が何よりも重要じゃぞ、ん?」

学園長が得意気に煽るようにロキュスを睨みつけるが、

「うむ、負けだの勝ちだの問題ではないぞ、なるほど、結界にこのような使い方があるとはな・・・頓悟とはまさにこれじゃのう、先程の漏斗部分な、あそこにはユーリ先生の説明通りに二重三重の力場が形成されておる、一つ目は閉じ込める力場、次に上方への力場、さらに力の分散も見てとれる、あそこに入った魔法は、この3つの力で本来の指向性を歪ませた上に力を分散され上方へ拡散されている、うむ、ユーリさんの説明通りじゃ、しかし、あのような反応になるとはな・・・光の魔力が緑色に変化したのはどういう訳かな?」

ロキュスは学園長を放っておいてユーリへと視線を移し、

「そうですね、ソフィアと何度か試したのですが、色を変化させないと余りにも目に悪かったのです、ですので」

「はい、眩しすぎたのですね、なので、減衰目的もありまして光の色を緑に変える仕組みを組み込みました」

「そうですね、お陰で視認しやすくなったかと思います」

ユーリとソフィアが交互に答え、

「なるほど、うむ、素晴らしい仕掛けじゃな、いや、うん・・・素晴らしい」

そして、幾つかの質問が一同から投げかけられた、それらにユーリとソフィアは真摯に対応し、サビナとカトカは白墨の音を立てて黒板に記録し続けた、やがて、一通りの質疑が終わったようで、一同に沈黙が下りると、

「では、どうしましょうか、殿下に試して頂く前にもう少し実践しても良いかなと思います」

ユーリはそう提案するが、誰も手を上げる者はいない、

「ふむ、そうじゃな、儂も改めて見てみたい、誰かいるか?」

国王がゆるりと一行を見渡す、皆困った顔で隣りの者と顔を見合わせたが、

「では、私が・・・」

リンドが静かに進み出て、

「私も」

アフラもそれに追従する、

「ふっ、何だ、力試しか?」

クロノスが二人を茶化すと、

「はい、これはソフィアさんとユーリ先生からの挑戦状と受け取りました」

「そうですね、せめて・・・6陣のうちの半分以上は発動させませんと」

「名折れとなりましょうな」

リンドとアフラは静かに頷く、その顔はその言葉通りの決意もあるであろうが、内から沸き起こる愉悦を抑えられないようで、口元は微かに歪み、目元に浮かぶ皺は笑顔のそれである、

「そうか・・・陛下、良いですかな?」

クロノスはニヤリと楽しそうに微笑み、

「うむ、我が軍が誇る英傑の力見せてみよ」

「はっ、ありがたき幸せ」

急に軍隊口調になる二人である、リンドは元よりアフラも生粋の軍人であり騎士である、さらにその魔力を買われ栄達の道にある二人にとって、国王や直属の主であるクロノスの前で恥をかかせるような事は出来ない、故に本来であればロキュスのように他者に任せるのが賢いのであろう、しかし、クロノス一派との付き合いが長い二人にとってこれは遊びの一環なのである、そして二人共にある目的があった、

「では・・・」

リンドがユーリへ目配せしユーリはニコリと微笑んで二人は修練場に歩み出る、

「わー、またやるのー?」

「そうみたいねー」

「楽しみー」

いつの間にやらミナの姿はゲインの肩の上であった、すぐ隣にウルジュラを侍らせ、ゲインはいつもの通りの石仮面である、そして、視線を集める二人は旗の前に立つと一言二言言葉を交わし、リンドはゆっくりと手を翳し、ユーリは先程よりも遠目に位置して両手で額に庇を作った、そのまま暫く時が過ぎる、何かあったかと一同が身を乗り出した瞬間、カッと光線が修練場を覆いドンッと先程よりも大きな衝撃音が響き、突風を伴った衝撃が一帯を襲う、一行は身構えてはいたが衝撃は強く前傾姿勢で両足を踏ん張り耐えるしかなかった、

「これは」

「凄いな」

ゾーイのそれとは比較できない程の衝撃波であった、一同が突風に耐え顔を上げると、そこにあったのは先程とは異なった光景である、中央の緑色の漏斗とその上空に吹き上がる光の柱、それと発動者を包む様に展開された黒色の幕は変わらなかったが、黒色の幕の上部にはさらに巨大な虹色の幕が開いていた、

「あら、3段目まで発動してますね、流石リンドさん」

ソフィアはもう慣れたのか腕を組んで光柱を見上げ、

「あれが3段目?」

「これは美しい・・・」

「うむ、何と言うか・・・」

「巨大なお花みたいですねー」

「ホントだー、キレーだねー」

ウルジュラとミナの明るい声に一同はなるほどと頷かざるをえなかった、ソフィアの言う3段目の結界が光柱の根本を鮮やかに彩り、陽光の下でも煌びやかに輝くそれは魔力によって咲いた巨大な一輪の花のようである、

「うーん、ですが・・・そうですね」

ソフィアは首を捻りながら進み出ると、タッタッとユーリの元へと駆け出した、それを止める者は居らず皆リンドの作り上げた光景に目を奪われている、やがて、ユーリとソフィアが何事か話し込んでいるのを横目に大輪は唐突に消え去った、

「先程のは?」

国王が誰にともなく尋ねる、答える者がおらず皆、オロオロとするが、

「申し訳ありません、私が代わりまして」

サビナがサッと進み出ると、

「3段目の結界は御覧頂いたように上方へと向けられた多種結界であるとの事です」

サビナは黒板を手に解説する、

「これも発動者を守る為の結界になっておりまして、2段目の結界は光を吸収する為、3段目は熱やその他あらゆる事象を拡散する為の結界であるとの事です、その為、傍目に見ると七色に見えましたのは多種の事象を緩和し跳ね返している為である・・・と考えられます」

「多種結界?」

「確かに・・・うん、あの反応は見た記憶があるな・・・」

ロキュスはうんうんと頷いている、クロノスやアフラを始め、大戦時に前線に居たものには馴染み深い代物であった、3段目に展開されたそれはソフィアらが大戦時に活用していた汎用性の高い結界である、光はおろか炎、雷撃、氷塊等々さまざまな魔法を由来とする現象を弾き返さないまでも逸らし減衰させる事ができる結界なのである、

「そうか・・・うん、なるほど・・・としか言いようがないが・・・」

「全くです・・・」

一同が更なる困惑の表情を浮かべる中、

「キレーだったねー」

「ねー、さっきより凄かったー」

「流石リンドさんだねー」

「リンドさんカッコイー」

ミナとウルジュラはキャッキャッと楽しそうに笑い合っていた。
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