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本編
52話 小さな出会いはアケビと共に その4
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そこへ2階の掃除を終えてソフィアが顔を出す、思った以上に冬支度が早く終わった為、なら通常業務かしらとソフィアは動き続けていたのであった、
「ソフィー、アケビー、アケビー採るー」
ミナがだだっと駆け寄り、
「今度はなに?」
ソフィアはまた始まったと眉間に皺を寄せた、
「アケビ、アケビ美味しいんだって、裏山にあるのー」
「へー、そうなんだ、それは気付かなかったわねー」
「だから、採るの、でも、チッコイから駄目ってレインがいけずなの」
「いけずって、もう、変な言葉ばかり覚えてこの子はー」
ソフィアの困った声に小さく笑い声が起きる、
「あれ?でも、ミナ、アケビ嫌いじゃなかった?」
とこれまた新情報である、やっぱりーとルルとサレバが微笑んだ、
「えー、そうなの?」
「そうよー、苦いからイヤーって、あの苦味が美味しいのに・・・あっ、もしかしてあれ、アケビがなんだか分んない?」
「・・・知らない、憶えてない」
プイッとソッポを向くミナに、ソフィアはもーと微笑みつつ、一同の顔が不思議そうにソフィアへ集まった、その視線に気付いたソフィアが、
「ん?どうしたの?」
と真顔になる、
「えっと、アケビですよね」
「アケビでしょ?」
「苦いですか?」
「苦いじゃない、あく抜き面倒だし」
「あく?抜き?」
「でしょ、あく抜きしないと苦いし渋いし・・・えっ、何か変?」
説明すればするほど生徒達はおろかユスティーナとライニールまでが怪訝な顔となる、
「えっ、何か変?アケビよね?」
ソフィアが不安そうに問い返すと、
「アケビですよね」
ジャネットが再度確認し、
「アケビだよー」
ミナも流石に雰囲気に気付いてキョロキョロと皆の様子を伺って、ソフィアを見上げた、
「えっ?」
とソフィアは心底困惑して絶句し、
「えっ?」
と一同も混乱するのであった。
そして当然のように裏山である、スリッパ作りが一段落付いた頃合いで、一同は揃って腰を上げるとゾロゾロと裏山を登り、オリビアが留守番として食堂に残った、
「これー、これ良い棒なのー」
ミナが学園から大事に持って帰った木の枝を嬉しそうに振り回して先頭を歩き、
「へー、凄いなー、上まで登れるんですねー」
「ふふん、上は上で広場になってるんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
新入生達は初めて踏み入る裏山にキャッキャッと楽し気である、若干肌寒く感じるようになった風を気持ちよく感じつつも汚物が流れる小川に顔を顰め、赤や黄色に輝き始めた木々に季節を感じて歓声を上げる、若い紅葉の有様は遠目にも楽しく見ていたが根元から見上げる景色もまた格別であった、日差しを木漏れ日に変えて薄い影を作る3色の葉は今しか見れない光景の一つである、そして紅葉が盛りとなればまた別の美しさにまみえる事が出来るであろう、さらにそれが過ぎると寂しくなるのであるが、この裏山には針葉樹も多く、完全に枯れ落ちた風景は見れそうにない、
「わっ、あれなんですか?」
「ブランコだよー」
「ブランコ?」
「うふふ、教えてあげるー」
天辺広場に着いた一行は精霊の木の威容を見上げ、当然であるがそこに垂れた異質な荒縄にすぐに気付いた、ミナは棒を振り回しつつブランコへ走り、サレバとコミンがそれを追って駆けて行く、
「街中にこんな気持ちの良い広場があるとは、面白いですねー」
グルジアが嬉しそうに呟くと、
「そうね、ここは格別ですわね」
ユスティーナもどこか安心したように微笑し、街中とは一味違う大気を大きく吸い込む、
「ふふ、森というよりも林の匂いがしますわね」
「確かに、少し乾燥していて、なのに瑞々しい・・・森のような排他的な圧が無くて、受け入れてくれる優しさが感じられます」
「あら、グルジアさんは詩人なのね」
「そんな、お恥ずかしい」
上品に微笑みあう二人を尻目に、
「おっ、何とか見えるね」
「あっ、ホントだ」
「しかし、木が邪魔だのう、仕方無いとも思うが」
「そうですねー、でもこれはこれで」
「うん、暗くなったらまた変わると思います」
ジャネットとルルとレアンが学園の方を見上げている、木々の隙間から僅かに光柱の姿が見えており、残念ながら角度の問題であろうかその全容は見えない、しかし灯りとしては十分に広場に届いている様子で、その存在感はそろそろ正午を迎える太陽光より強く感じられる、恐らく本能的に異質である為にそう感じるのであろう、
「えっと、ここでその夕食なんですか?」
レスタがおずおずとソフィアを見上げた、
「そうよ、お外で食事した事無い?」
「えっと、ありますけど、はい、でも、あれです、村でみんなで畑仕事の後とかですね、えっと、はい・・・」
ゴモゴモと不安そうにレスタは答える、
「そうよねー、で、あれでしょ、おっちゃん共が酒盛り始めるんでしょ」
「そうですね、母さん達はなんか勝手に盛り上がってましたね」
どうやらレスタは大人数での宴会にあまり良い思い出は無いらしい、ソフィアは子供であればそう思うわよねと察して、
「ふふ、今日は女達だけだしね、ユスティーナ様もレアン様もいらっしゃるんだから楽しいわよ」
「そう・・・ですか・・・」
レスタは半信半疑で取り敢えず納得したらしい、ソフィアは裏山に行くのであればと今日の夕食に二人を招待した、最初はやや渋っていたが、ユーリやサビナも顔を出すと言った所、そういう事ならと二人は快諾し、ライニールは困り顔となったがユーリとの距離をより縮めておくに越したことはないと屋敷に報告へ戻っている、
「ふふ、ほら、レスタもブランコ乗ろうよ」
ケイスがレスタを笑顔で誘い、
「えっと、いいんですか?」
「勿論よ、楽しんで、あっ、程々にしておきなさいよ、気持ち悪くなるかもだから」
ソフィアが笑顔で答えると、レスタは小さく頷きケイスと連れ立ってブランコに向かう、
「じゃ、どうしようか、レイン、アケビはどこ?」
ソフィアがやれやれと手にした籠を肩から降ろした、
「うむ、こっちじゃ、しかし、ルルかジャネットでないと届かんだろうな」
「ふふん、そういう事なら任せなさーい」
「はい、お役に立ちます」
ジャネットとルルがニヤリと腕捲りをし、
「うむ、こっちじゃ、足元に気をつけるのじゃぞ」
「りょうかーい」
3人は喜々として木々に分け入ると、確かにそこは道などあるはずも無い坂というよりも崖に近い急勾配である、
「おお、これは確かに危ないね」
「そうですね、でも、これくらいなら普通です」
「おおー、ルルっち逞しいー」
「それって誉め言葉ですか?」
「そうだよー」
「あんまり嬉しくないです」
「そう?」
軽口を叩きながら大人の背丈程下がった所で、
「あれじゃな」
レインが指差す先には紫色の果実が数個固まりになって重そうにぶら下がっている、その固まりが幾つも木々の間に垣間見えた、
「おお、立派なアケビだー」
「そだねー、じゃ、やりますか」
「うむ、小さいのは駄目じゃぞ、リスと鳥も食べたいじゃろうからな」
「ふふ、優しいね」
「ふん、当然じゃろ」
ジャネットとルルは足場を確認しながら手を伸ばして次々とアケビを収穫し、レインの持つ籠はあっという間にいっぱいになった、
「こんなもんじゃろ」
「ん、じゃ、これだけ」
「はい、私も」
ジャネットとルルはやや物足りないと感じながらも作業を切り上げ広場へ戻る、
「お疲れ様」
一応とその作業を監視していたソフィアが3人を出迎え、
「えへへ、いっぱい採れました」
「そうだねー」
「じゃ、どうしようか、皆で頂きますか」
二人は顔を綻ばせるが、
「えっ?」
とソフィアは怪訝そうな顔になる、
「?駄目ですか?」
「駄目じゃないけど、そのままだと苦いじゃない」
再び不思議そうにソフィアを見つめる3人である、
「すまんが、ソフィア・・・どうもお前さんズレてるぞ」
レインが完全に話しが嚙み合っていない事に業を煮やして、真顔でソフィアを見上げた、
「ズレてる?」
「うむ、あのな、アケビはの・・・」
籠から綺麗に割れて独特の奇妙な身を覗かせた一つを取り出すと、
「ここを食べるんじゃ」
と巨大な芋虫のような身を取り出して小さく千切ると口に運んだ、
「えっ、それはだって、毒じゃない」
ソフィアが目を剥いてレインを見つめ、ジャネットとルルは、
「あっ・・・」
「もしかして・・・」
「うむ、ソフィア、ここが美味いんじゃ、ほれ食べてみろ、種は吐き出すんじゃぞ」
レインは手にした果実をそのままソフィアに差し出す、ソフィアは恐る恐る受け取るとグネグネと柔らかい身を慎重に極少量を千切って口に運ぶ、途端、
「んーーーーー」
と声にならない叫び声を上げたのであった。
「ソフィー、アケビー、アケビー採るー」
ミナがだだっと駆け寄り、
「今度はなに?」
ソフィアはまた始まったと眉間に皺を寄せた、
「アケビ、アケビ美味しいんだって、裏山にあるのー」
「へー、そうなんだ、それは気付かなかったわねー」
「だから、採るの、でも、チッコイから駄目ってレインがいけずなの」
「いけずって、もう、変な言葉ばかり覚えてこの子はー」
ソフィアの困った声に小さく笑い声が起きる、
「あれ?でも、ミナ、アケビ嫌いじゃなかった?」
とこれまた新情報である、やっぱりーとルルとサレバが微笑んだ、
「えー、そうなの?」
「そうよー、苦いからイヤーって、あの苦味が美味しいのに・・・あっ、もしかしてあれ、アケビがなんだか分んない?」
「・・・知らない、憶えてない」
プイッとソッポを向くミナに、ソフィアはもーと微笑みつつ、一同の顔が不思議そうにソフィアへ集まった、その視線に気付いたソフィアが、
「ん?どうしたの?」
と真顔になる、
「えっと、アケビですよね」
「アケビでしょ?」
「苦いですか?」
「苦いじゃない、あく抜き面倒だし」
「あく?抜き?」
「でしょ、あく抜きしないと苦いし渋いし・・・えっ、何か変?」
説明すればするほど生徒達はおろかユスティーナとライニールまでが怪訝な顔となる、
「えっ、何か変?アケビよね?」
ソフィアが不安そうに問い返すと、
「アケビですよね」
ジャネットが再度確認し、
「アケビだよー」
ミナも流石に雰囲気に気付いてキョロキョロと皆の様子を伺って、ソフィアを見上げた、
「えっ?」
とソフィアは心底困惑して絶句し、
「えっ?」
と一同も混乱するのであった。
そして当然のように裏山である、スリッパ作りが一段落付いた頃合いで、一同は揃って腰を上げるとゾロゾロと裏山を登り、オリビアが留守番として食堂に残った、
「これー、これ良い棒なのー」
ミナが学園から大事に持って帰った木の枝を嬉しそうに振り回して先頭を歩き、
「へー、凄いなー、上まで登れるんですねー」
「ふふん、上は上で広場になってるんだよ」
「えっ、そうなんですか?」
新入生達は初めて踏み入る裏山にキャッキャッと楽し気である、若干肌寒く感じるようになった風を気持ちよく感じつつも汚物が流れる小川に顔を顰め、赤や黄色に輝き始めた木々に季節を感じて歓声を上げる、若い紅葉の有様は遠目にも楽しく見ていたが根元から見上げる景色もまた格別であった、日差しを木漏れ日に変えて薄い影を作る3色の葉は今しか見れない光景の一つである、そして紅葉が盛りとなればまた別の美しさにまみえる事が出来るであろう、さらにそれが過ぎると寂しくなるのであるが、この裏山には針葉樹も多く、完全に枯れ落ちた風景は見れそうにない、
「わっ、あれなんですか?」
「ブランコだよー」
「ブランコ?」
「うふふ、教えてあげるー」
天辺広場に着いた一行は精霊の木の威容を見上げ、当然であるがそこに垂れた異質な荒縄にすぐに気付いた、ミナは棒を振り回しつつブランコへ走り、サレバとコミンがそれを追って駆けて行く、
「街中にこんな気持ちの良い広場があるとは、面白いですねー」
グルジアが嬉しそうに呟くと、
「そうね、ここは格別ですわね」
ユスティーナもどこか安心したように微笑し、街中とは一味違う大気を大きく吸い込む、
「ふふ、森というよりも林の匂いがしますわね」
「確かに、少し乾燥していて、なのに瑞々しい・・・森のような排他的な圧が無くて、受け入れてくれる優しさが感じられます」
「あら、グルジアさんは詩人なのね」
「そんな、お恥ずかしい」
上品に微笑みあう二人を尻目に、
「おっ、何とか見えるね」
「あっ、ホントだ」
「しかし、木が邪魔だのう、仕方無いとも思うが」
「そうですねー、でもこれはこれで」
「うん、暗くなったらまた変わると思います」
ジャネットとルルとレアンが学園の方を見上げている、木々の隙間から僅かに光柱の姿が見えており、残念ながら角度の問題であろうかその全容は見えない、しかし灯りとしては十分に広場に届いている様子で、その存在感はそろそろ正午を迎える太陽光より強く感じられる、恐らく本能的に異質である為にそう感じるのであろう、
「えっと、ここでその夕食なんですか?」
レスタがおずおずとソフィアを見上げた、
「そうよ、お外で食事した事無い?」
「えっと、ありますけど、はい、でも、あれです、村でみんなで畑仕事の後とかですね、えっと、はい・・・」
ゴモゴモと不安そうにレスタは答える、
「そうよねー、で、あれでしょ、おっちゃん共が酒盛り始めるんでしょ」
「そうですね、母さん達はなんか勝手に盛り上がってましたね」
どうやらレスタは大人数での宴会にあまり良い思い出は無いらしい、ソフィアは子供であればそう思うわよねと察して、
「ふふ、今日は女達だけだしね、ユスティーナ様もレアン様もいらっしゃるんだから楽しいわよ」
「そう・・・ですか・・・」
レスタは半信半疑で取り敢えず納得したらしい、ソフィアは裏山に行くのであればと今日の夕食に二人を招待した、最初はやや渋っていたが、ユーリやサビナも顔を出すと言った所、そういう事ならと二人は快諾し、ライニールは困り顔となったがユーリとの距離をより縮めておくに越したことはないと屋敷に報告へ戻っている、
「ふふ、ほら、レスタもブランコ乗ろうよ」
ケイスがレスタを笑顔で誘い、
「えっと、いいんですか?」
「勿論よ、楽しんで、あっ、程々にしておきなさいよ、気持ち悪くなるかもだから」
ソフィアが笑顔で答えると、レスタは小さく頷きケイスと連れ立ってブランコに向かう、
「じゃ、どうしようか、レイン、アケビはどこ?」
ソフィアがやれやれと手にした籠を肩から降ろした、
「うむ、こっちじゃ、しかし、ルルかジャネットでないと届かんだろうな」
「ふふん、そういう事なら任せなさーい」
「はい、お役に立ちます」
ジャネットとルルがニヤリと腕捲りをし、
「うむ、こっちじゃ、足元に気をつけるのじゃぞ」
「りょうかーい」
3人は喜々として木々に分け入ると、確かにそこは道などあるはずも無い坂というよりも崖に近い急勾配である、
「おお、これは確かに危ないね」
「そうですね、でも、これくらいなら普通です」
「おおー、ルルっち逞しいー」
「それって誉め言葉ですか?」
「そうだよー」
「あんまり嬉しくないです」
「そう?」
軽口を叩きながら大人の背丈程下がった所で、
「あれじゃな」
レインが指差す先には紫色の果実が数個固まりになって重そうにぶら下がっている、その固まりが幾つも木々の間に垣間見えた、
「おお、立派なアケビだー」
「そだねー、じゃ、やりますか」
「うむ、小さいのは駄目じゃぞ、リスと鳥も食べたいじゃろうからな」
「ふふ、優しいね」
「ふん、当然じゃろ」
ジャネットとルルは足場を確認しながら手を伸ばして次々とアケビを収穫し、レインの持つ籠はあっという間にいっぱいになった、
「こんなもんじゃろ」
「ん、じゃ、これだけ」
「はい、私も」
ジャネットとルルはやや物足りないと感じながらも作業を切り上げ広場へ戻る、
「お疲れ様」
一応とその作業を監視していたソフィアが3人を出迎え、
「えへへ、いっぱい採れました」
「そうだねー」
「じゃ、どうしようか、皆で頂きますか」
二人は顔を綻ばせるが、
「えっ?」
とソフィアは怪訝そうな顔になる、
「?駄目ですか?」
「駄目じゃないけど、そのままだと苦いじゃない」
再び不思議そうにソフィアを見つめる3人である、
「すまんが、ソフィア・・・どうもお前さんズレてるぞ」
レインが完全に話しが嚙み合っていない事に業を煮やして、真顔でソフィアを見上げた、
「ズレてる?」
「うむ、あのな、アケビはの・・・」
籠から綺麗に割れて独特の奇妙な身を覗かせた一つを取り出すと、
「ここを食べるんじゃ」
と巨大な芋虫のような身を取り出して小さく千切ると口に運んだ、
「えっ、それはだって、毒じゃない」
ソフィアが目を剥いてレインを見つめ、ジャネットとルルは、
「あっ・・・」
「もしかして・・・」
「うむ、ソフィア、ここが美味いんじゃ、ほれ食べてみろ、種は吐き出すんじゃぞ」
レインは手にした果実をそのままソフィアに差し出す、ソフィアは恐る恐る受け取るとグネグネと柔らかい身を慎重に極少量を千切って口に運ぶ、途端、
「んーーーーー」
と声にならない叫び声を上げたのであった。
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