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本編
53話 新学期 その14
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ソフィアが目を覚ましたのは公務時間終了の鐘の音が耳に入ったからであった、これは休み過ぎたかしらと半身を上げ、頭痛も吐き気も無い事を確認して寝台から足を下ろす、ヤレヤレと首を回し、ふー、と一息吐いた、以前のようにギリギリまで耐えた上で意識を喪った訳ではない、しかし、たかが一言程度でこれ程に苦しいものかと再認識し、レインはやはり人外である事を思い知る、
「普通にしてれば普通なのにな・・・難しいもんだわ」
ソフィアはレインの事を家族の一員とは思っていても子供とは思っていない、奇妙な理由で生活を共にする事になり、それはミナにとっては死活問題であるらしいのであるが、その理由を理解出来たのはタロウだけであった、ソフィアとしてはタロウがそう言うならと子供として受け入れる事にした、故に最初はそのように接していたがやはりそれは難しく、であればと思考錯誤の末、自身の妹のような同居人のような関係となっている、ミナが姉のように慕っているのがせめてもの救いであろうか、レイン本人がそうあろうとしているのであるから、レインとミナの関係は理想的と言える、しかし、先程起きた二つの事件はレイン自身が考えるソフィアに約束した自身に対する戒めから大きく逸脱した行為であった、それほどに浮かれ思考を奪われる程の何かがあの石くれにあるのであろうか、ソフィアの知る限りレインがあそこまで歓喜し興奮しているのを見た事がない、いつもどこかつまらなそうであらゆる物事から一歩引いている感のあるレインである、その正体を考えればこの世に飽いていると言われてもそうなのだろうと頷くしかなく、であれば、あの石くれはレインを持ってしても望み得なかった代物なのであろうか、それに近い事を口走っていたような気もする、
「ミスリル・・・ねー」
ソフィアは不思議そうに呟く、まるで未知の名前である、聞き覚えがあると言えばあるし無いと言えば無い、昔話がどうとはカトカとの共通見解であるが、所詮御伽噺の類である、しかし、エルフは存在し山人も存在した、どちらも御伽噺の存在であり、さらに言えば魔族もいる、魔族もまた大戦以前は御伽噺の住人であったように思う、実際のそれは御伽噺のそれを遥かに越える知性を持った存在であり、御伽噺と同様かそれ以上に脅威と言える存在であった、それはまたエルフや山人も同様で、彼等が敵対した場合、こちら側の有利は数しかないとソフィアは感じた、大戦が終わって間もなくであった為、どうしてもそのように彼等を分析してしまったが、その憶測は間違っていないと今でも思う、そう考えるとそのミスリルとやらも価値のある物のように思えてくる、御伽噺とは何とも厄介なものだなとソフィアは軽く頭を振って腰を上げた、
「暇と爵位は不善の始まり・・・違うな、阿呆の長口上のがあってるのかな?」
ソフィアはそう呟いてつまらない事は考えない事とした、特にレインに関しては悩むだけ無駄である、なるようにしかならないだろうなとタロウも言っており、ソフィアも同じ見解である、しかし、要所要所で釘を刺さないと宜しくない事だけは分かる、そして、レインもそうする事を望んでいた、ソフィアやミナと共にこちら側の社会で生活するにあたり話し合った上での結論である、
「少しは反省したのかしら」
ソフィアは呟いて、そうであって欲しいと願って寮へ向かい、妙に騒がしい食堂へ入る、
「あっ、大丈夫ですか?ソフィアさん」
ルルがソフィアに感付いて声を上げ、同時に視線がソフィアに集まった、
「大丈夫よー、ちょっとほら調子悪いだけだから、もう平気ー」
ソフィアは笑顔になっているかしらと若干不安に思いながら笑顔を見せる、
「ならいいですけどー、無理しないで下さいよー」
ルルが口をへの字に曲げ、
「ソフィー、平気?」
ミナが駆け寄って心配そうに見上げる、
「平気だよ、心配させちゃったか、ビックリしたでしょ」
「うん、ビックリしたー」
「ふふ、ごめんね」
漸くソフィアは自然な笑顔を浮かべ、ミナは安心したのか、
「静かだったのに、うるさくなったのー」
いきなり苦情である、
「えー、そんな事言ってー」
「そうだよー、心配そうにしてたのにー」
「うー、うるさいー、静かで良かったのー、レインとご本読んでたのー」
今朝の寂しそうな顔は何処へやらである、学園から戻った寮生達によって食堂内は確かに姦く騒々しくなったようだ、なにより閑散とした雰囲気は何処に行ったのやらという程に跡形も無い、比較するのも馬鹿らしい程に華やかで和やかな食堂となっている、
「はいはい、で、初日はどうだったの?」
テーブル上には教科書であろうか数種の書物が並び、真新しい黒板とこちらも真新しい白墨が置かれている、
「そうですね、予定どおりだったと思います」
グルジアが教科書を開きながら答え、
「はい、えっと、これが教科書で、生徒一人一人に貸出なんだそうです、凄いですよねー」
レスタが嬉しそうに頬擦りしそうな勢いで書物を抱え込んでいる、
「でもー、半年は授業だけって言われたなー」
「それはだって、ジャネット先輩も言ってたじゃない」
「だけどさー、土いじりしたいのにー」
「ミナちゃんの菜園でいいんじゃない?」
「冬になるのに?土いじり?あっ、小麦の植え付けそろそろだよね、土が固くなる前にやらないと・・・」
「ミナちゃんの菜園でやるの?」
「駄目か・・・狭いしな・・・」
「でしょ、取り敢えず座学をしっかりやらないとでしょ」
「そうだけどー、学園長先生の所に通おうかなー」
「ミナも、ミナも行きたい」
「じゃ、一緒に行こうか?」
サレバとコミンも騒がしく、ミナは学園長の名が出た瞬間にサレバの側に走り寄った、
「もー、あら、先輩達は?」
「あっ、はい、今日からちゃんと授業だそうです、私達は少し早めに終わりました」
「そうですね、戻って教科書をジックリ読んでおけって事だそうです」
「あっ、それ私も言われたー」
「うん、そうだね、あと、なんだっけ、勉強の仕方を覚えるようにって言われたなー」
「私もー」
「勉強の仕方って言われてもなー」
「えっと、予習?と復習?でしたっけ、あれです、授業の内容を前の日に頭に入れて、で、授業を受けて、で、勉強したのをその日の内に見直す?」
「それって同じことを3回もやるって事?」
「大変だー」
「だねー」
「でも、覚えるにはそれが一番だって」
「レスタは真面目だニャー」
「ニャー、ニャー、ニャー」
取り敢えず若者達は今朝の緊張等欠片も残さず明るいようだ、ミナも一緒になってはしゃいでいる、ソフィアはこれならまぁいいかと判断し、
「洗濯物取り込まないとだわ」
安心した笑みを浮かべて腰を上げかけると、
「あの、ユーリ先生が先生を辞めるって聞いてました?」
ルルがおずおずとソフィアに問う、ソフィアはありゃと座り直し、
「そうね、あー、発表された?」
「はい、えっと、式典の最後に、光柱の騒動がどうとかで」
ルルが静かに答えると食堂は一転静けさに包まれる、何せ今朝まで良い教師ヅラであったユーリが突然実質的にクビになった事を知らされたのだ、生徒達としてはそれなりに衝撃的な事態なのであろう、
「聞いてはいたわよ」
ソフィアは真顔で答え、
「でも、私が聞いた所によると、研究所はそのままらしいし、上に住むのもそのままみたい」
「あっ、そうなんですか?」
「うん、何でもほら、あんな事しでかしたでしょ、責任を取るって事もあるけど、研究に専念する為とかなんとかって言ってたかな?」
ソフィアは自身の責は棚に放り上げて他人事のように答える、真相が明らかになればどちらも大した責を負う話でもない、その真相が一番の問題なのであるが、またそれが公表されたとすれば今度はユーリどころかもソフィアも寮母等やっていられないであろう、何よりも周りがいよいよ許さない状況になり、大騒ぎどころか安穏としていられない事は目に見えている、
「えっと・・・それって・・・」
「変わりないって事・・・そうね、変わるとすればユーリが常時上にいる感じになるかしら、でもな、余計忙しくなるかもね、まっ、あれだ、あんた達には何の影響もないんじゃない?」
「そうはいいますけど、ユーリ先生の授業楽しみにしてたんですよー」
「あー、私もー」
「私もです」
それなりに人望があるのであろうか、皆若干寂しそうな顔となる、
「なら、あれだ、学園終わってから教わりに行けばいいんじゃない?・・・それも迷惑かな?まぁユーリだし、大丈夫じゃないの?面倒見だけはいいしねー」
適当に口にして良いのかなと首を傾げるソフィアである、ま、ユーリであれば邪険にしつつも相手はするであろう、
「えっと、それ、いいんですか?」
「どうだろう?忙しいと駄目だと思うけど・・・ケイスさんが魔法の訓練してたはずね・・・一緒にやれば?」
「それ面白そうですね」
「うん、どんな事するんだろう?」
「楽しそう」
若者達は実に現金なものである、一転してあーだこーだと姦しく騒ぎ出し、暖炉の前に寝そべって書を開いているレインが薄く一同を睨み付けた、ソフィアもこの雰囲気であればなんとでもなるであろうと安心しつつ、しかし、締めるところは締めるべきだわねと考えを改め、
「まったく、折角なんだからまずは学園の勉強をしっかりなさい、ユーリと遊び惚けて進級できなかったなんて事になったら夕食から一品減らすからね」
ソフィアはバンと机を叩いて苦言を呈し、一同はえっと驚きつつ一斉に不満の声を上げた、何故かミナまで一緒になってブーブーと騒がしい、実に楽しそうではある、
「何言ってるの、勉強しに来たんでしょ、今日から本格的な新生活なんだから、気合を入れ直す事、良いわね?」
寮母らしい事を口にするソフィアと、不安そうな顔、やる気のある顔、得意そうに微笑む者、それぞれの感情が自然と表に現われその上でそうであったと初心を思い出す若者達であった。
「普通にしてれば普通なのにな・・・難しいもんだわ」
ソフィアはレインの事を家族の一員とは思っていても子供とは思っていない、奇妙な理由で生活を共にする事になり、それはミナにとっては死活問題であるらしいのであるが、その理由を理解出来たのはタロウだけであった、ソフィアとしてはタロウがそう言うならと子供として受け入れる事にした、故に最初はそのように接していたがやはりそれは難しく、であればと思考錯誤の末、自身の妹のような同居人のような関係となっている、ミナが姉のように慕っているのがせめてもの救いであろうか、レイン本人がそうあろうとしているのであるから、レインとミナの関係は理想的と言える、しかし、先程起きた二つの事件はレイン自身が考えるソフィアに約束した自身に対する戒めから大きく逸脱した行為であった、それほどに浮かれ思考を奪われる程の何かがあの石くれにあるのであろうか、ソフィアの知る限りレインがあそこまで歓喜し興奮しているのを見た事がない、いつもどこかつまらなそうであらゆる物事から一歩引いている感のあるレインである、その正体を考えればこの世に飽いていると言われてもそうなのだろうと頷くしかなく、であれば、あの石くれはレインを持ってしても望み得なかった代物なのであろうか、それに近い事を口走っていたような気もする、
「ミスリル・・・ねー」
ソフィアは不思議そうに呟く、まるで未知の名前である、聞き覚えがあると言えばあるし無いと言えば無い、昔話がどうとはカトカとの共通見解であるが、所詮御伽噺の類である、しかし、エルフは存在し山人も存在した、どちらも御伽噺の存在であり、さらに言えば魔族もいる、魔族もまた大戦以前は御伽噺の住人であったように思う、実際のそれは御伽噺のそれを遥かに越える知性を持った存在であり、御伽噺と同様かそれ以上に脅威と言える存在であった、それはまたエルフや山人も同様で、彼等が敵対した場合、こちら側の有利は数しかないとソフィアは感じた、大戦が終わって間もなくであった為、どうしてもそのように彼等を分析してしまったが、その憶測は間違っていないと今でも思う、そう考えるとそのミスリルとやらも価値のある物のように思えてくる、御伽噺とは何とも厄介なものだなとソフィアは軽く頭を振って腰を上げた、
「暇と爵位は不善の始まり・・・違うな、阿呆の長口上のがあってるのかな?」
ソフィアはそう呟いてつまらない事は考えない事とした、特にレインに関しては悩むだけ無駄である、なるようにしかならないだろうなとタロウも言っており、ソフィアも同じ見解である、しかし、要所要所で釘を刺さないと宜しくない事だけは分かる、そして、レインもそうする事を望んでいた、ソフィアやミナと共にこちら側の社会で生活するにあたり話し合った上での結論である、
「少しは反省したのかしら」
ソフィアは呟いて、そうであって欲しいと願って寮へ向かい、妙に騒がしい食堂へ入る、
「あっ、大丈夫ですか?ソフィアさん」
ルルがソフィアに感付いて声を上げ、同時に視線がソフィアに集まった、
「大丈夫よー、ちょっとほら調子悪いだけだから、もう平気ー」
ソフィアは笑顔になっているかしらと若干不安に思いながら笑顔を見せる、
「ならいいですけどー、無理しないで下さいよー」
ルルが口をへの字に曲げ、
「ソフィー、平気?」
ミナが駆け寄って心配そうに見上げる、
「平気だよ、心配させちゃったか、ビックリしたでしょ」
「うん、ビックリしたー」
「ふふ、ごめんね」
漸くソフィアは自然な笑顔を浮かべ、ミナは安心したのか、
「静かだったのに、うるさくなったのー」
いきなり苦情である、
「えー、そんな事言ってー」
「そうだよー、心配そうにしてたのにー」
「うー、うるさいー、静かで良かったのー、レインとご本読んでたのー」
今朝の寂しそうな顔は何処へやらである、学園から戻った寮生達によって食堂内は確かに姦く騒々しくなったようだ、なにより閑散とした雰囲気は何処に行ったのやらという程に跡形も無い、比較するのも馬鹿らしい程に華やかで和やかな食堂となっている、
「はいはい、で、初日はどうだったの?」
テーブル上には教科書であろうか数種の書物が並び、真新しい黒板とこちらも真新しい白墨が置かれている、
「そうですね、予定どおりだったと思います」
グルジアが教科書を開きながら答え、
「はい、えっと、これが教科書で、生徒一人一人に貸出なんだそうです、凄いですよねー」
レスタが嬉しそうに頬擦りしそうな勢いで書物を抱え込んでいる、
「でもー、半年は授業だけって言われたなー」
「それはだって、ジャネット先輩も言ってたじゃない」
「だけどさー、土いじりしたいのにー」
「ミナちゃんの菜園でいいんじゃない?」
「冬になるのに?土いじり?あっ、小麦の植え付けそろそろだよね、土が固くなる前にやらないと・・・」
「ミナちゃんの菜園でやるの?」
「駄目か・・・狭いしな・・・」
「でしょ、取り敢えず座学をしっかりやらないとでしょ」
「そうだけどー、学園長先生の所に通おうかなー」
「ミナも、ミナも行きたい」
「じゃ、一緒に行こうか?」
サレバとコミンも騒がしく、ミナは学園長の名が出た瞬間にサレバの側に走り寄った、
「もー、あら、先輩達は?」
「あっ、はい、今日からちゃんと授業だそうです、私達は少し早めに終わりました」
「そうですね、戻って教科書をジックリ読んでおけって事だそうです」
「あっ、それ私も言われたー」
「うん、そうだね、あと、なんだっけ、勉強の仕方を覚えるようにって言われたなー」
「私もー」
「勉強の仕方って言われてもなー」
「えっと、予習?と復習?でしたっけ、あれです、授業の内容を前の日に頭に入れて、で、授業を受けて、で、勉強したのをその日の内に見直す?」
「それって同じことを3回もやるって事?」
「大変だー」
「だねー」
「でも、覚えるにはそれが一番だって」
「レスタは真面目だニャー」
「ニャー、ニャー、ニャー」
取り敢えず若者達は今朝の緊張等欠片も残さず明るいようだ、ミナも一緒になってはしゃいでいる、ソフィアはこれならまぁいいかと判断し、
「洗濯物取り込まないとだわ」
安心した笑みを浮かべて腰を上げかけると、
「あの、ユーリ先生が先生を辞めるって聞いてました?」
ルルがおずおずとソフィアに問う、ソフィアはありゃと座り直し、
「そうね、あー、発表された?」
「はい、えっと、式典の最後に、光柱の騒動がどうとかで」
ルルが静かに答えると食堂は一転静けさに包まれる、何せ今朝まで良い教師ヅラであったユーリが突然実質的にクビになった事を知らされたのだ、生徒達としてはそれなりに衝撃的な事態なのであろう、
「聞いてはいたわよ」
ソフィアは真顔で答え、
「でも、私が聞いた所によると、研究所はそのままらしいし、上に住むのもそのままみたい」
「あっ、そうなんですか?」
「うん、何でもほら、あんな事しでかしたでしょ、責任を取るって事もあるけど、研究に専念する為とかなんとかって言ってたかな?」
ソフィアは自身の責は棚に放り上げて他人事のように答える、真相が明らかになればどちらも大した責を負う話でもない、その真相が一番の問題なのであるが、またそれが公表されたとすれば今度はユーリどころかもソフィアも寮母等やっていられないであろう、何よりも周りがいよいよ許さない状況になり、大騒ぎどころか安穏としていられない事は目に見えている、
「えっと・・・それって・・・」
「変わりないって事・・・そうね、変わるとすればユーリが常時上にいる感じになるかしら、でもな、余計忙しくなるかもね、まっ、あれだ、あんた達には何の影響もないんじゃない?」
「そうはいいますけど、ユーリ先生の授業楽しみにしてたんですよー」
「あー、私もー」
「私もです」
それなりに人望があるのであろうか、皆若干寂しそうな顔となる、
「なら、あれだ、学園終わってから教わりに行けばいいんじゃない?・・・それも迷惑かな?まぁユーリだし、大丈夫じゃないの?面倒見だけはいいしねー」
適当に口にして良いのかなと首を傾げるソフィアである、ま、ユーリであれば邪険にしつつも相手はするであろう、
「えっと、それ、いいんですか?」
「どうだろう?忙しいと駄目だと思うけど・・・ケイスさんが魔法の訓練してたはずね・・・一緒にやれば?」
「それ面白そうですね」
「うん、どんな事するんだろう?」
「楽しそう」
若者達は実に現金なものである、一転してあーだこーだと姦しく騒ぎ出し、暖炉の前に寝そべって書を開いているレインが薄く一同を睨み付けた、ソフィアもこの雰囲気であればなんとでもなるであろうと安心しつつ、しかし、締めるところは締めるべきだわねと考えを改め、
「まったく、折角なんだからまずは学園の勉強をしっかりなさい、ユーリと遊び惚けて進級できなかったなんて事になったら夕食から一品減らすからね」
ソフィアはバンと机を叩いて苦言を呈し、一同はえっと驚きつつ一斉に不満の声を上げた、何故かミナまで一緒になってブーブーと騒がしい、実に楽しそうではある、
「何言ってるの、勉強しに来たんでしょ、今日から本格的な新生活なんだから、気合を入れ直す事、良いわね?」
寮母らしい事を口にするソフィアと、不安そうな顔、やる気のある顔、得意そうに微笑む者、それぞれの感情が自然と表に現われその上でそうであったと初心を思い出す若者達であった。
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