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本編
55話 5本の光柱 その14
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夕食を終えるとソフィアは先日のようにユーリに呼び出され3階のホールに顔を出す、ホールでは木簡を手にしたユーリが先日と同じようにワインを手にしており、カトカとサビナも同席していた、違う点があるとすればゾーイがいない事であった、
「あら、また呑んでるの?」
ソフィアが片眉を上げると、
「昨日は呑んでないわよ、明日は楽できそうだからねー」
ユーリが顔を上げてこれ見よがしに杯を傾ける、
「好きにすればいいわ、で?」
とソフィアも腰を下ろした、
「うん、一応今日の報告ね、いろいろ面白い事になりそうでね」
とユーリは微笑んで、今日起きた一連の出来事を順繰りに語っていく、そして、
「で、要点はあれね、領主様ね、だいぶあれよ、あれ」
「あれって何よ?」
「なんていうか柔らかくなった感じ?」
「それ前も言ってなかった?」
「そうだっけ、今日なんか昨日強引にライニールに頼み込んで時間を貰ったんだけどさ、何か機嫌良くてねぇー、何か聞いてない?」
「あー、どうだろう、エレインさんが何かやってるみたいだけど詳しくは聞いてないわねー」
「そうなんだ、それかな?ま、いいか、で、リシャルトって筆頭従者?知ってる?」
「リシャルト・・・どうだろう印象無いな・・・」
「そっか、うん、どうもその人がバリバリのヘルデル側の人らしいんだわ」
「へー、そうなの」
「うん、で、ライニールの伯父さんなんだって」
「ありゃま」
「ま、これもライニールから聞いたんだけどさ、でね、その人がね、うん、レアンお嬢様を学園に入れられないかって相談したらしいのよ、ライニールに」
「へーへー、良いんじゃない?でも、お嬢様まだ若いでしょ」
「それはそうなんだけどね、で、学園長と事務長とも話したんだけど、どうやら学園との関係をしっかりしたものにしたいらしくてね、資金提供の話しまであるらしいのよ」
「えっ、そりゃ凄いじゃない」
「うん、事務長がね、うちの学部長も交えて呼び出されたらしくさ、うん、そんな感じ」
ユーリは適当に切り上げワインを呷る、
「そうなるとあれですか?学園としてはどうするんです?」
サビナが不思議そうに口を挟む、
「うん、どうなるんだろうね?」
「いや、それを聞いてるのよ」
「私に聞かれても答えられないわよ、学園の経営に口出ししたいって訳では無いらしいのよ、単に何て言うか何かあったらすぐに知らせる様にって感じ?」
「それだけですか?」
カトカも眉根を寄せる、それなりの社会人であれば資金提供という手段は何らかの意思をその活動に反映させる最も確実で簡単な方法である事に理解が及ぶ、現状の学園に全く不満が無いわけではないが、それでも変に手を入れられて、良しとしているあらゆる事に不具合が出るような状況は、学園に勤める者として好意的には受け止められない、
「今の所はね、ま、その資金を受け取ったらなんやかやと口出しするのかもしれないけどね、学園長もそれを危惧してたかな?」
「ふーん、で、それがどうしたの?」
「どうしたのって、あのね、そうなると、私達みたいなのが好きでもない事を嫌々研究させられる事態になりかねないのよ」
「あー、そういう事・・・」
「それは勘弁ですね」
「私もー」
見事に拒否反応を示したカトカとサビナ、ソフィアは直接関係無いとは言え渋面を見せ、
「だから、ほら、あんたはお嬢様とか奥様と仲良いじゃない、情報が入ったらなんでもいいからこっちとも共有して欲しいかなって」
「なるほどね・・・仲が良いって言われたらそうだけど、私よりもエレインさんじゃない?あとミナね」
「エレインさんはいいけど、ミナが何の役に立つのよ」
「接待係?」
「言ってなさいよ」
「酷いなー、大事じゃないの」
「大人にはね、子供を子供が接待するなんて悪辣にすぎるわ」
「それは同意するわ」
「でしょー」
「ま、冗談はそこまでで、うん、エレインさんにも情報入れとく?」
「あー、今忙しいんでしょ」
「そうだけど、それにあの子は別に学園側の人間ってわけじゃないしね」
「そうね、王国側の人間ではあるけどね、ま、今の所は上手い事付き合っていればそれでいいんじゃないの?政治的な力は皆無なのは向こうも知ってるだろうし、あくまで商売と良い友人って事よね、そういう意味では良い仲介者にはなれるんだろうけど、それを求めるのはまだ早いわね」
「でしょうね」
「うん、ま、そんな感じだから、あんたもあんたらも耳をそばだてておいてね」
ニヤリとユーリは三人を見渡し、
「めんどくさい・・・」
「そうですよ、無茶言わないで下さい」
「うん、そんな器用じゃないです」
早速非難の声が上がる、
「ふふん、これも大事な社会勉強よ、で、後は、あれだ、ゾーイさんが正式にこっちに来る事になったから」
「あらそうなの?なんかめんどくさい事言ってなかった?」
「うん、だけど、ロキュス大先生がね、どうしてもって学園長に頼み込んだみたいでね、ゾーイさんも乗り気らしくて、この間みたいな感じの会議?打合せ?すんごい楽しかったですーって」
「あ、それ私も言われました」
「私もー」
「でしょー、ほら、向こうのお弟子さん達って野郎ばっかりだからね、やっぱりあれでしょ、女性としてどうしても一歩引いてたんじゃないかな?大先生の前だと静かだしね、うん、それはいいんだけど、やっぱりこれも大先生の罠?っぽくて」
「それはまた・・・」
「そうですよ、良い表現ではないでしょ」
「そうだけど、だって、私が見る限りお弟子さん達の中でもゾーイさんは一番じゃない?魔力は桁が違うし、真面目だし、他の子達がどうかはちゃんと探ってはいないけど、今日見る限りだと普通ね」
「それは分かるかなー」
「うん、ただまぁこっちとしては使える人材だと思うしね、あんたらは気にしないで仲良くやって欲しいかな?」
「なら素直にそう言ってくださいよ」
「そうですよ、変な見方しちゃうじゃないですかー」
「そう?でも良い子じゃない」
「それはそうですけど」
「はい、異論はないです」
「そ、じゃ、そういう事で」
ユーリはニンマリと笑顔を見せて杯を呷る、
「で、ソフィアには夕飯の対応頼みたいんだけど大丈夫そう?」
「それはかまわないわよ、今更一人増えても変わんないわ」
「だよね、それでお願い」
「住むところあるの?それが問題みたいな事言ってなかった?」
「確保したみたいよ、ま、落ち着くまでは行ったり来たりするみたいだけどね、転送陣も使えるみたいだし」
「ありゃ、教えた?」
「うん、アフラさんが教えたみたい、あの子の魔力量なら問題無いでしょ」
「そうね、本人が無理してないなら私は別にどうでもいいかな」
「私もそう思う、で、あれだ、さっきカトカから報告貰ってね、クロノスが乗り気なの?」
ユーリは手にしていた木簡をヒラヒラと振る、どうやら光柱の廃案となった構想をまとめたものらしい、
「そうみたいね、好きにしたらって言ったけど、いいでしょ」
「うん、それは大丈夫、向こうも明確にやる事が出来て活気付くでしょうしね、ただ、一度はちゃんとしたのを見せた方がいいかなって思うけど・・・」
「ロキュス大先生が見せたんじゃないの?」
「あっ、そっか、ゾーイさんも一緒だったもんね、大丈夫か・・・」
「リンドさんも一緒だったしね、悪いようにはならないと思うわよ」
「そうね、じゃ、お任せしちゃおうか、学園長も事務長もあれは手に余るって言ってたしね、学園では今の所生徒には教えないし、そうなるとロキュス大先生の所かクロノスの所で開発が続くのかな?ま、楽しみにしておきましょう」
「えっと・・・それでいいんですか?」
カトカが渋い顔となり、サビナも何か言いたそうな不満顔になる、
「別にー、だって、私の研究はそっちじゃないもの、知ってるでしょ」
「ですけどー」
「そうですよ、なんか上前はねられたみたいでなんか嫌です」
「あー、そんな感じ?」
「はい、でも、クロノス様はそのうち何とかするって言ってましたけど・・・」
「あら、なら何とかするんじゃない?お金か爵位か好きにしなさいな」
「爵位って・・・」
「そんな簡単に・・・」
「それだけの価値はあるんじゃないの?だって、これを見る限りでもまるで世の中変わるわよ、これが普及したらあれね、夜が長くなるわね、良い事かどうかは分からないけど」
「そうかもですが・・・」
「はい、クロノス様もリンドさんも言ってましたけど、ソフィアさんと所長は余りにも対価を求め無いからやりづらいって愚痴ってました・・・言うなって言われましたけど・・・」
カトカが言い難そうに俯いた、
「あら・・・」
「へー・・・」
ソフィアとユーリは顔を見合わせ、
「じゃ、なんか寄越せって言ってあげようかしら?」
「別にいいでしょ、欲しい物あるの?」
「特に無いかな?」
「でしょうね」
「お金はあるしねー」
「うん、無くなってもクロノスに泣き付けばいいし」
「そうなのよね」
何とも不穏な事を言う二人に、ソフィアは元々こうであったが、ユーリもどうやら欲はあるが、普通の人が抱くそれではないのであろうなとカトカとサビナは思い知る、
「お二人がそう言うなら・・・」
「いいですけど・・・」
「そうね、ただ、あれだ、あんたらはくれるって言ってる物は素直に貰いなさいよ」
「そうそう、拒否する方が無礼らしいからね」
「そうですか?」
「そうよ、エレインさんにも言ったかな、偉い人達の褒賞でしょ、受け取らない方が問題になるからね」
「私らに遠慮する事ないからね、光柱に関してはあんたらもちゃんと功績あるんだし、たかが数刻で作った魔法とは思えないもの、完成度が高いわよね、あれ」
「そうねー、だから、胸を張りなさい、クロノスにも言ったけど、カトカさんとサビナさんとゾーイさんがいたからあんなになったのよ、私とユーリじゃあそこまではならなかったわね」
「あっ、それ激しく同意だわ、若しくはあれよ、誰にも再現出来なくて私とソフィアで街中駆けずり回る事になったかもよ、祭りの日」
「それは勘弁だわ」
「まったくよ」
あっはっはと明るく笑う二人に、はぁと気の抜けた溜息で返答するしかないカトカとサビナであった。
「あら、また呑んでるの?」
ソフィアが片眉を上げると、
「昨日は呑んでないわよ、明日は楽できそうだからねー」
ユーリが顔を上げてこれ見よがしに杯を傾ける、
「好きにすればいいわ、で?」
とソフィアも腰を下ろした、
「うん、一応今日の報告ね、いろいろ面白い事になりそうでね」
とユーリは微笑んで、今日起きた一連の出来事を順繰りに語っていく、そして、
「で、要点はあれね、領主様ね、だいぶあれよ、あれ」
「あれって何よ?」
「なんていうか柔らかくなった感じ?」
「それ前も言ってなかった?」
「そうだっけ、今日なんか昨日強引にライニールに頼み込んで時間を貰ったんだけどさ、何か機嫌良くてねぇー、何か聞いてない?」
「あー、どうだろう、エレインさんが何かやってるみたいだけど詳しくは聞いてないわねー」
「そうなんだ、それかな?ま、いいか、で、リシャルトって筆頭従者?知ってる?」
「リシャルト・・・どうだろう印象無いな・・・」
「そっか、うん、どうもその人がバリバリのヘルデル側の人らしいんだわ」
「へー、そうなの」
「うん、で、ライニールの伯父さんなんだって」
「ありゃま」
「ま、これもライニールから聞いたんだけどさ、でね、その人がね、うん、レアンお嬢様を学園に入れられないかって相談したらしいのよ、ライニールに」
「へーへー、良いんじゃない?でも、お嬢様まだ若いでしょ」
「それはそうなんだけどね、で、学園長と事務長とも話したんだけど、どうやら学園との関係をしっかりしたものにしたいらしくてね、資金提供の話しまであるらしいのよ」
「えっ、そりゃ凄いじゃない」
「うん、事務長がね、うちの学部長も交えて呼び出されたらしくさ、うん、そんな感じ」
ユーリは適当に切り上げワインを呷る、
「そうなるとあれですか?学園としてはどうするんです?」
サビナが不思議そうに口を挟む、
「うん、どうなるんだろうね?」
「いや、それを聞いてるのよ」
「私に聞かれても答えられないわよ、学園の経営に口出ししたいって訳では無いらしいのよ、単に何て言うか何かあったらすぐに知らせる様にって感じ?」
「それだけですか?」
カトカも眉根を寄せる、それなりの社会人であれば資金提供という手段は何らかの意思をその活動に反映させる最も確実で簡単な方法である事に理解が及ぶ、現状の学園に全く不満が無いわけではないが、それでも変に手を入れられて、良しとしているあらゆる事に不具合が出るような状況は、学園に勤める者として好意的には受け止められない、
「今の所はね、ま、その資金を受け取ったらなんやかやと口出しするのかもしれないけどね、学園長もそれを危惧してたかな?」
「ふーん、で、それがどうしたの?」
「どうしたのって、あのね、そうなると、私達みたいなのが好きでもない事を嫌々研究させられる事態になりかねないのよ」
「あー、そういう事・・・」
「それは勘弁ですね」
「私もー」
見事に拒否反応を示したカトカとサビナ、ソフィアは直接関係無いとは言え渋面を見せ、
「だから、ほら、あんたはお嬢様とか奥様と仲良いじゃない、情報が入ったらなんでもいいからこっちとも共有して欲しいかなって」
「なるほどね・・・仲が良いって言われたらそうだけど、私よりもエレインさんじゃない?あとミナね」
「エレインさんはいいけど、ミナが何の役に立つのよ」
「接待係?」
「言ってなさいよ」
「酷いなー、大事じゃないの」
「大人にはね、子供を子供が接待するなんて悪辣にすぎるわ」
「それは同意するわ」
「でしょー」
「ま、冗談はそこまでで、うん、エレインさんにも情報入れとく?」
「あー、今忙しいんでしょ」
「そうだけど、それにあの子は別に学園側の人間ってわけじゃないしね」
「そうね、王国側の人間ではあるけどね、ま、今の所は上手い事付き合っていればそれでいいんじゃないの?政治的な力は皆無なのは向こうも知ってるだろうし、あくまで商売と良い友人って事よね、そういう意味では良い仲介者にはなれるんだろうけど、それを求めるのはまだ早いわね」
「でしょうね」
「うん、ま、そんな感じだから、あんたもあんたらも耳をそばだてておいてね」
ニヤリとユーリは三人を見渡し、
「めんどくさい・・・」
「そうですよ、無茶言わないで下さい」
「うん、そんな器用じゃないです」
早速非難の声が上がる、
「ふふん、これも大事な社会勉強よ、で、後は、あれだ、ゾーイさんが正式にこっちに来る事になったから」
「あらそうなの?なんかめんどくさい事言ってなかった?」
「うん、だけど、ロキュス大先生がね、どうしてもって学園長に頼み込んだみたいでね、ゾーイさんも乗り気らしくて、この間みたいな感じの会議?打合せ?すんごい楽しかったですーって」
「あ、それ私も言われました」
「私もー」
「でしょー、ほら、向こうのお弟子さん達って野郎ばっかりだからね、やっぱりあれでしょ、女性としてどうしても一歩引いてたんじゃないかな?大先生の前だと静かだしね、うん、それはいいんだけど、やっぱりこれも大先生の罠?っぽくて」
「それはまた・・・」
「そうですよ、良い表現ではないでしょ」
「そうだけど、だって、私が見る限りお弟子さん達の中でもゾーイさんは一番じゃない?魔力は桁が違うし、真面目だし、他の子達がどうかはちゃんと探ってはいないけど、今日見る限りだと普通ね」
「それは分かるかなー」
「うん、ただまぁこっちとしては使える人材だと思うしね、あんたらは気にしないで仲良くやって欲しいかな?」
「なら素直にそう言ってくださいよ」
「そうですよ、変な見方しちゃうじゃないですかー」
「そう?でも良い子じゃない」
「それはそうですけど」
「はい、異論はないです」
「そ、じゃ、そういう事で」
ユーリはニンマリと笑顔を見せて杯を呷る、
「で、ソフィアには夕飯の対応頼みたいんだけど大丈夫そう?」
「それはかまわないわよ、今更一人増えても変わんないわ」
「だよね、それでお願い」
「住むところあるの?それが問題みたいな事言ってなかった?」
「確保したみたいよ、ま、落ち着くまでは行ったり来たりするみたいだけどね、転送陣も使えるみたいだし」
「ありゃ、教えた?」
「うん、アフラさんが教えたみたい、あの子の魔力量なら問題無いでしょ」
「そうね、本人が無理してないなら私は別にどうでもいいかな」
「私もそう思う、で、あれだ、さっきカトカから報告貰ってね、クロノスが乗り気なの?」
ユーリは手にしていた木簡をヒラヒラと振る、どうやら光柱の廃案となった構想をまとめたものらしい、
「そうみたいね、好きにしたらって言ったけど、いいでしょ」
「うん、それは大丈夫、向こうも明確にやる事が出来て活気付くでしょうしね、ただ、一度はちゃんとしたのを見せた方がいいかなって思うけど・・・」
「ロキュス大先生が見せたんじゃないの?」
「あっ、そっか、ゾーイさんも一緒だったもんね、大丈夫か・・・」
「リンドさんも一緒だったしね、悪いようにはならないと思うわよ」
「そうね、じゃ、お任せしちゃおうか、学園長も事務長もあれは手に余るって言ってたしね、学園では今の所生徒には教えないし、そうなるとロキュス大先生の所かクロノスの所で開発が続くのかな?ま、楽しみにしておきましょう」
「えっと・・・それでいいんですか?」
カトカが渋い顔となり、サビナも何か言いたそうな不満顔になる、
「別にー、だって、私の研究はそっちじゃないもの、知ってるでしょ」
「ですけどー」
「そうですよ、なんか上前はねられたみたいでなんか嫌です」
「あー、そんな感じ?」
「はい、でも、クロノス様はそのうち何とかするって言ってましたけど・・・」
「あら、なら何とかするんじゃない?お金か爵位か好きにしなさいな」
「爵位って・・・」
「そんな簡単に・・・」
「それだけの価値はあるんじゃないの?だって、これを見る限りでもまるで世の中変わるわよ、これが普及したらあれね、夜が長くなるわね、良い事かどうかは分からないけど」
「そうかもですが・・・」
「はい、クロノス様もリンドさんも言ってましたけど、ソフィアさんと所長は余りにも対価を求め無いからやりづらいって愚痴ってました・・・言うなって言われましたけど・・・」
カトカが言い難そうに俯いた、
「あら・・・」
「へー・・・」
ソフィアとユーリは顔を見合わせ、
「じゃ、なんか寄越せって言ってあげようかしら?」
「別にいいでしょ、欲しい物あるの?」
「特に無いかな?」
「でしょうね」
「お金はあるしねー」
「うん、無くなってもクロノスに泣き付けばいいし」
「そうなのよね」
何とも不穏な事を言う二人に、ソフィアは元々こうであったが、ユーリもどうやら欲はあるが、普通の人が抱くそれではないのであろうなとカトカとサビナは思い知る、
「お二人がそう言うなら・・・」
「いいですけど・・・」
「そうね、ただ、あれだ、あんたらはくれるって言ってる物は素直に貰いなさいよ」
「そうそう、拒否する方が無礼らしいからね」
「そうですか?」
「そうよ、エレインさんにも言ったかな、偉い人達の褒賞でしょ、受け取らない方が問題になるからね」
「私らに遠慮する事ないからね、光柱に関してはあんたらもちゃんと功績あるんだし、たかが数刻で作った魔法とは思えないもの、完成度が高いわよね、あれ」
「そうねー、だから、胸を張りなさい、クロノスにも言ったけど、カトカさんとサビナさんとゾーイさんがいたからあんなになったのよ、私とユーリじゃあそこまではならなかったわね」
「あっ、それ激しく同意だわ、若しくはあれよ、誰にも再現出来なくて私とソフィアで街中駆けずり回る事になったかもよ、祭りの日」
「それは勘弁だわ」
「まったくよ」
あっはっはと明るく笑う二人に、はぁと気の抜けた溜息で返答するしかないカトカとサビナであった。
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